Successfully reported this slideshow.

Jeremy L. England "Statistical physics of self-replication" 自己複製の統計物理学

0

Share

1 of 52
1 of 52

More Related Content

Related Audiobooks

Free with a 14 day trial from Scribd

See all

Jeremy L. England "Statistical physics of self-replication" 自己複製の統計物理学

  1. 1. Statistical physics of self-replication 自己複製の統計物理学 Author: Jeremy L. England sun_ek2 雑誌会 Journal club 1
  2. 2. 著者・掲載雑誌 <著者> Jeremy L. England マサチューセッツ工科大学 准教授 →ジョージア工科大学 教授 <掲載雑誌> The Journal of Chemical Physics Volume 139, Issue 12, 28 September 2013 2 引用元 https://www.quantamagazine.org/ a-new-thermodynamics-theory-of-the-origin-of-life-20140122/ 引用元 https://aip.scitation.org/action/ showLargeCover?doi=10.1063%2Fjcp.2013.139.issue-12
  3. 3. 導入 • 生物は自己複製する。そして自己複製は不可逆的。 →1つのバクテリアが2つになることはあっても逆は起こらな い。 • 熱力学では不可逆性は、熱力学第二法則で語られる。 →エントロピー増大則。 熱力学・統計力学の言葉で、「自己複製」を語ることができ るのか? 3
  4. 4. 導入 [困難] • 生物は熱力学的平衡から大きくかけ離れている。 • 従来の理論は熱力学的に平衡な状態間の遷移を取り扱って きた。 →非平衡状態を取り扱うのは難しい…。 • 生物の際限なき多様性。 →「物理学で生物を記述するのは不可能ではないか」…と物理 学者を不安にさせる。 4
  5. 5. 導入 [目的] 情報熱力学(非平衡統計力学)を用いて、「不可逆性とエン トロピーの定量的な関係」が「非平衡・巨視的な生命現象を 記述するために重要で一般的な知見」を与える。 …ということを示す。 • 巨視的な不可逆過程に対する熱力学第二法則の一般化。 • 自己複製子の大きさ、成長速度、内部エントロピー、耐久 性の観点から、自己複製体の熱出力の下界を求める。 • 理論値(熱出力の下限)と実験値(バクテリアの熱出力) を比較する。 5
  6. 6. 復習 [熱力学のエントロピー] 【カルノーサイクル】 • ここからエントロピーの概念が誕生。 • 温度の異なる2つの熱源の間で動作する 可逆熱サイクル。 • カルノーサイクルよりも熱効率が高い エンジンをつくることは理論的に不可 能(熱力学的な制約)。 • 熱効率は… η一般的な熱エンジン = 1 − Q低熱源 𝑄高熱源 ≤ 1 − 𝑇低熱源 𝑇高熱源 = ηカルノーサイクル 𝑄高熱源 𝑇高熱源 + −Q低熱源 𝑇低熱源 ≤ 0 引用元 https://d-engineer.com/netsuriki/kcycle.html 6
  7. 7. 復習 [熱力学のエントロピー] 【任意の熱サイクルとクラウジウスの不等式】 • 先ほどの話を拡張すると… 𝑑′ 𝑄 𝑇 ≤ 0 → クラウジウスの不等式 • 任意の経路でAからBへ、準静的過程でBからA に戻ると… 𝐴→𝐵 𝑑′ 𝑄任意 𝑇 + B→A 𝑑′ 𝑄可逆 𝑇 ≤ 0 • 状態量 B→A 𝑑′𝑄 可逆 𝑇 にエントロピーという名前を付け る。 𝑆 = B→A 𝑑′ 𝑄可逆 𝑇 ≥ 𝐴→𝐵 𝑑′ 𝑄任意 𝑇 →エントロピー増大則(熱力学第二法則) 引用元 https://butsurimemo.com/ inequality-of-clausius/ 引用元 https://eman-physics.net/ thermo/entropy.html *注 d’Qは熱が不完全微分であることを示している。物理量が完全微分(状態量)か否かはすごく大事! 7
  8. 8. 復習 [統計力学のエントロピー] • 統計力学とは?…微視的な分子などの集まりを仮定し、そこ から巨視的な熱力学的性質(温度、圧力とか)を導く学問。 • 統計集団...条件を満たす系の微視的状態を無数に集めたもの (巨視的な熱力学的性質を導くための単なる道具)。 小正準集団(ミクロカノニカルアンサンブル) 正準集団(カノニカルアンサンブル) 大正準集団(グランドカノニカルアンサンブル、今回は扱わない) . . . 他にもある。 • ボルツマンの関係式(統計力学のエントロピー) 𝑆 = 𝑘 log𝑒 𝑊 (𝑘: ボルツマン定数, 𝑊: 微視的状態数) *エントロピーは 示量状態量𝑆 = 𝑆𝐴 + 𝑆𝐵。微視的状態数は部分数の積W = 𝑊𝐴 × 𝑊𝐵 𝑆𝐴 + 𝑆𝐵 ∝ 𝑓 𝑊𝐴 + 𝑓 𝑊𝐵 = 𝑓 𝑊𝐴 × 𝑊𝐵 この関係式を満たす関数は「対数」。 8
  9. 9. 復習 [統計力学のエントロピー] 【小正準集団】 • 小正準集団とは?…孤立系(エネルギー, 体積, 粒子数が 一 定)の微視的状態を無数に集めた統計集団。 • ミクロカノニカル分布 𝑃𝑖 = 1 𝑊 (等確率の原理) →どんな微視的状態でも同じ確率で出現する。 (例: 100℃のお湯が沸騰するという1つの微視的状態と100℃のお湯から氷ができるという1つ の微視的状態の出現確率は同じ) • 小正準集団のエントロピーは、 𝑆 = 𝑘 log𝑒 𝑊 真面目に微視的状態数を書くと. . . 𝑊~ 1 𝑁! 1 3𝑁 2 ! 𝑚 2π 3 2 1 ħ3 𝑁 𝐸 3𝑁 2 𝑉𝑁 *導出法 N粒子3次元無限井戸型ポテンシャルのシュレーディンガー方程式を解き、6N個の量子数で張られた状態空間内の 第一象限の6N次元の球の体積を求める。これは、ものすごく面白いので、興味のある人は是非調べてみてください! 9
  10. 10. 復習 [統計力学のエントロピー] 【ボルツマン分布】 • 小正準集団から適当に微視的状態をサンプリング。どんな 微視的状態が得られやすいか? (固定されたN個の粒子に固定されたエネルギーEをどのよう に分配すれば、場合の数が一番大きくなるのか?) →ボルツマン分布に従う微視的状態が小正準集団に一番多く 含まれる。 𝑃𝑖 = 1 𝑍 𝑒−β𝐸𝑖 𝑍 = 𝑒−β𝐸𝑖 (分配関数) *ボルツマン分布を導出する際に使う「ラグランジュの未定乗数法」の幾何的解釈がものすごく面白いので、興味のある人 は是非調べてみてください! *RNA構造予測(dot plot)は、ひたすらRNAの分配関数を計算している。 10
  11. 11. 復習 [統計力学のエントロピー] 【正準集団】 • 正準集団とは?…閉鎖系(温度, 体積, 粒子数が 一定)の微視 的状態を無数に集めた統計集団。 • カノニカル分布 𝑃𝑖 = 1 𝑍 𝑒−β𝐸𝑖 𝑍 = 𝑒−β𝐸𝑖 (正準分配関数) *注 ボルツマン分布と形が一緒。小正準集団の中に正準集団が入れ子になっている系を用いて、カノニカル分布を導出す るので、導出法はボルツマン分布と全く違う。ボルツマン分布は、小正準集団で最も場合の数が大きい微視的状態を取って いる系内の分子のエネルギー分布を表しているのに対し、カノニカル分布は、微視的状態(系)のエネルギー分布を表して いる。 • 正準集団のエントロピー(ギブスエントロピー)は、 𝑆 = 𝑘 log𝑒 𝑊 = 𝑘 log𝑒 1 𝑃𝑖 = −𝑘 log𝑒 𝑃𝑖 = ⋯ = −k 𝑖 𝑃𝑖log𝑒 𝑃𝑖 引用元 https://eman-physics.net/ statistic/canonical1.html 11
  12. 12. 復習 [情報理論のエントロピー] 【シャノンエントロピー(平均情報量)】 S = − 𝑖 𝑃𝑖log2 𝑃𝑖 →「情報の不確かさ」、「観測した時に得られる平均の情報 量」を表している。 • 統計力学のギブズエントロピー(S = −k 𝑖 𝑃𝑖log𝑒 𝑃𝑖)に似 ている。 • 式が似ているのは偶然ではない。 →マクスウェルの悪魔。 →シラードのエンジン、ランダウア―の原理による悪魔退治。 情報科学+熱力学→情報熱力学の誕生 引用元 https://ja.wikipedia.org/wiki/ マクスウェルの悪魔 12
  13. 13. 前提 [情報熱力学・非平衡統計力学の話] 【詳細釣り合い】 • ニュートン力学(ハミルトン力学)の運動方程式は、時間 反転対称性を持つ。 →時間反転させても(正準)運動方程式の形が不変。 • 時間τにおける遷移確率行列のi, j成分をπ(𝑖 → 𝑗; τ)とする。 →微視的状態𝑖が𝑗に移る確率。 • 微視的状態𝑖、𝑗の(正準)運動量ベクトルを反転させた状態 を𝑖∗、𝑗∗とするとπ(𝑖 → 𝑗; τ)の時間反転はπ(𝑗∗ → 𝑖∗; τ)。 13
  14. 14. 前提 [情報熱力学・非平衡統計力学の話] • 微視的状態𝑖、 𝑗を取る確率をp 𝑖 、p 𝑗 とする。ニュートン 力学(ハミルトン力学)の時間反転対称性より、 𝑖 → 𝑗と 𝑗∗ → 𝑖∗の確率流は同じになる。 p 𝑖 π 𝑖 → 𝑗; τ = p 𝑗 π(𝑗∗ → 𝑖∗; τ) →詳細釣り合い • 熱平衡状態のカノニカルアンサンブルの場合 𝑒−β𝐻𝑖 𝑝,𝑞 𝑍 π 𝑖 → 𝑗; τ = 𝑒−β𝐻𝑗 𝑝,𝑞 𝑍 π(𝑗∗ → 𝑖∗; τ) (1) π(𝑗∗ → 𝑖∗ ; τ) π 𝑖 → 𝑗; τ = 𝑒 −β 𝐻𝑖 𝑝,𝑞 −𝐻𝑗 𝑝,𝑞 = 𝑒−βΔ𝑄𝑖→𝑗 = 𝑒−Δ𝑆𝑖→𝑗 𝑏𝑎𝑡ℎ *注 ボルツマン定数𝑘(統計熱力学の代表的な定数)が1になるような単位系を用いている。他分野だと、プランク定数ℎ (量子力学の代表的な定数)や光速𝑐(相対性理論の代表的な定数)が1になるような単位系が使われることがある。 • 逆方向・順方向の遷移確率行列の比と湯浴(環境)のエン トロピー増加分が結ばれた。 14
  15. 15. 前提 [情報熱力学・非平衡統計力学の話] 【局所詳細釣り合い】 • 系が熱力学的平衡状態ではないとこの話は使えない… →微視的状態の確率分布p 𝑖 、p 𝑗 はカノニカル分布には従わ ない! • しかし、遷移確率行列は熱力学的非平衡状態でも平衡状態 と同じであると見なすことができるのではないか? →ハミルトン力学の正準運動方程式(状態の確率遷移を記述 していると見なせる)は、熱力学的に非平衡であっても、平 衡であっても形は変わらない。 π𝑛𝑒𝑞(𝑗∗ → 𝑖∗; τ) π𝑛𝑒𝑞 𝑖 → 𝑗; τ = π𝑒𝑞(𝑗∗ → 𝑖∗; τ) π𝑒𝑞 𝑖 → 𝑗; τ = 𝑒−Δ𝑆𝑖→𝑗 𝑏𝑎𝑡ℎ (2) →局所詳細釣り合い(あくまで仮定) 15
  16. 16. 前提 [情報熱力学・非平衡統計力学の話] 【参考にしたwebサイト(備忘録を兼ねて)】 • 非平衡統計力学ー熱的系から非熱的系へー https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/189515/1/bussei_el_033204.pdf • ゆらぐ系の熱力学から熱機関への法則へ:パワーと効率の 普遍的関係 http://mercury.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~bussei.kenkyu/wp/wp- content/uploads/6300-072213.pdf • 情報熱力学入門:情報理論のその先へ https://segfault11.hatenablog.jp/entry/2019/12/02/000000 • Fluctuation Theoremによる分子モーターの駆動力測定 https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/51/4/51_4_188/_pdf 16
  17. 17. 巨視的な不可逆性 • 前回: 微視的状態𝑖から𝑗に遷移する経路は1つ。 • 今回: 𝑖から𝑗に遷移する経路は無数。 βΔ𝑄 𝑥 𝑡 = 𝑙𝑛 π 𝑥 𝑡 π 𝑥 τ − 𝑡 (3) → 𝑥 𝑡 は、 𝑖 → 𝑗の任意の軌道の時刻𝑡 時点での微視的状態。 (𝑥 𝑡 = 0 = 𝑖、𝑥 𝑡 = τ = 𝑗) → 𝑥 τ − 𝑡 は、 j → 𝑖の任意の軌道の時刻𝑡 時点での微視的状態。 (𝑥 τ − 𝑡 = τ = 𝑖、𝑥 τ − 𝑡 = 0 = 𝑗) 17
  18. 18. 巨視的な不可逆性 • 軌道の式(3)から微視状態間の遷移確率行列の関係式を導 出する(遷移確率行列は時間非依存であるとする)。 βΔ𝑄 𝑥 𝑡 = 𝑙𝑛 π 𝑥 𝑡 π 𝑥 τ − 𝑡 𝑡=0 τ π 𝑥 τ − 𝑡 π 𝑥 𝑡 = 𝑡=0 τ 𝑒−βΔ𝑄 𝑥 𝑡 = 𝑒−β 𝑡=0 τ Δ𝑄 𝑥 𝑡 𝑡=0 τ π 𝑥 τ − 𝑡 = 𝑒−β 𝑡=0 τ Δ𝑄 𝑥 𝑡 𝑡=0 τ π 𝑥 𝑡 𝑥 𝑡=0 τ π 𝑥 τ − 𝑡 = 𝑥 𝑒−β 𝑡=0 τ Δ𝑄 𝑥 𝑡 𝑡=0 τ π 𝑥 𝑡 ∗ 注 𝑥 = 𝑥 τ … 𝑥 0 𝑥 𝑡=0 τ π 𝑥 τ − 𝑡 𝑥 𝑡=0 τ π 𝑥 𝑡 = 𝑥 𝑒−β 𝑡=0 τ Δ𝑄 𝑥 𝑡 𝑡=0 τ π 𝑥 𝑡 𝑥 𝑡=0 τ π 𝑥 𝑡 π(𝑗 → 𝑖) π 𝑖 → 𝑖 = 𝑒−β 𝑡=0 τ Δ𝑄 𝑥 𝑡 𝑖→𝑗 = 𝑒−βΔ𝑄𝑖→𝑗 𝑖→𝑗 18
  19. 19. 巨視的な不可逆性 • 粗視化を行う(微視的状態に対応する巨視的状態を恣意的に考え る)。 →巨視的状態Ⅰ:バクテリアが1匹(微視的状態iに対応) →巨視的状態Ⅱ:バクテリアが2匹(微視的状態jに対応) • バクテリアが分裂…巨視的状態Ⅰ→Ⅱ(微視的状態i→j) • Ⅰ→Ⅱ、Ⅱ→Ⅰの遷移確率行列の成分を π Ⅰ → Ⅱ 、π Ⅱ → Ⅰ 、 微視的状態𝑖、 𝑗 の条件付確率𝑝 𝑖 Ⅰ 、𝑝 𝑗 Ⅱ をとすると π Ⅰ → Ⅱ = Ⅱ 𝑑𝑗 Ⅰ 𝑑𝑖 𝑝 𝑖 Ⅰ π(𝑖 → 𝑗) (4) π Ⅱ → Ⅰ = Ⅰ 𝑑𝑖 Ⅱ 𝑑𝑗 𝑝 𝑗 Ⅱ π(𝑗 → 𝑖) (5) 19
  20. 20. 巨視的な不可逆性 • 式変形でやりたいこと…分母と同じ形を分子に作る。 π Ⅱ → Ⅰ π Ⅰ → Ⅱ = Ⅰ 𝑑𝑖 Ⅱ 𝑑𝑗 𝑝 𝑗 Ⅱ π(𝑗 → 𝑖) Ⅱ 𝑑𝑗 Ⅰ 𝑑𝑖 𝑝 𝑖 Ⅰ π(𝑖 → 𝑗) = Ⅰ 𝑑𝑖 Ⅱ 𝑑𝑗 𝑝 𝑗 Ⅱ 𝑝 𝑖 Ⅰ 𝑝 𝑖 Ⅰ π(𝑗 → 𝑖) Ⅱ 𝑑𝑗 Ⅰ 𝑑𝑖 𝑝 𝑖 Ⅰ π(𝑖 → 𝑗) = Ⅰ 𝑑𝑖 Ⅱ 𝑑𝑗 𝑒 𝑙𝑛 𝑝 𝑗 Ⅱ 𝑝 𝑖 Ⅰ 𝑝 𝑖 Ⅰ π(𝑖 → 𝑗) 𝑒−βΔ𝑄𝑖→𝑗 𝑖→𝑗 Ⅱ 𝑑𝑗 Ⅰ 𝑑𝑖 𝑝 𝑖 Ⅰ π(𝑖 → 𝑗) = Ⅰ 𝑑𝑖 Ⅱ 𝑑𝑗 𝑝 𝑖 Ⅰ π(𝑖 → 𝑗) 𝑒 𝑙𝑛 𝑝 𝑗 Ⅱ 𝑝 𝑖 Ⅰ 𝑒−βΔ𝑄𝑖→𝑗 𝑖→𝑗 Ⅱ 𝑑𝑗 Ⅰ 𝑑𝑖 𝑝 𝑖 Ⅰ π(𝑖 → 𝑗) = 𝑒 𝑙𝑛 𝑝 𝑗 Ⅱ 𝑝 𝑖 Ⅰ 𝑒−βΔ𝑄𝑖→𝑗 𝑖→𝑗 Ⅰ→Ⅱ (6) 20
  21. 21. 巨視的な不可逆性 π Ⅱ → Ⅰ π Ⅰ → Ⅱ = 𝑒 𝑙𝑛 𝑝 𝑗 Ⅱ 𝑝 𝑖 Ⅰ 𝑒−βΔ𝑄𝑖→𝑗 𝑖→𝑗 Ⅰ→Ⅱ 𝑒 −𝑙𝑛 π Ⅱ→Ⅰ π Ⅰ→Ⅱ +𝑙𝑛 𝑝 𝑗 Ⅱ 𝑝 𝑖 Ⅰ 𝑒−βΔ𝑄𝑖→𝑗 𝑖→𝑗 Ⅰ→Ⅱ = 1 7 𝑒 −𝑙𝑛 π Ⅱ→Ⅰ π Ⅰ→Ⅱ +𝑙𝑛 𝑝 𝑗 Ⅱ 𝑝 𝑖 Ⅰ −βΔ𝑄𝑖→𝑗 𝑖→𝑗 Ⅰ→Ⅱ = 1 • マクローリン展開の1次の項まで取ると −𝑙𝑛 π Ⅱ → Ⅰ π Ⅰ → Ⅱ + 𝑙𝑛 𝑝 𝑗 Ⅱ 𝑝 𝑖 Ⅰ − βΔ𝑄𝑖→𝑗 𝑖→𝑗 Ⅰ→Ⅱ ≤ 0 β Δ𝑄 Ⅰ→Ⅱ + 𝑙𝑛 π Ⅱ → Ⅰ π Ⅰ → Ⅱ + −𝑙𝑛 𝑝 𝑗 Ⅱ 𝑝 𝑖 Ⅰ Ⅰ→Ⅱ ≥ 0 21
  22. 22. 巨視的な不可逆性 【論文に書かれてある道筋】 • A Ⅰ→Ⅱは、Aを巨視的な集団Ⅰの微視的状態iから巨視的集 団Ⅱの微視的状態jに遷移する全ての経路の確率で加重平均 を取ったものである。 なので… −𝑙𝑛 𝑝 𝑗 Ⅱ 𝑝 𝑖 Ⅰ Ⅰ→Ⅱ = − 𝑝 𝑗 Ⅱ log𝑒 𝑝 𝑗 Ⅱ + 𝑝 𝑖 Ⅰ log𝑒 𝑝 𝑖 Ⅰ = 𝑆Ⅱ − 𝑆Ⅰ = Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 • 𝑆Ⅰ、𝑆Ⅱは、シャノンエントロピー(平均情報量)である。 • 個人的な疑問…そもそもこの式、成り立たないと思う。 22
  23. 23. 巨視的な不可逆性 【個人的に思う道筋】 • そもそも −𝑙𝑛 𝑝 𝑗 Ⅱ 𝑝 𝑖 Ⅰ Ⅰ→Ⅱ ≠ − 𝑝 𝑗 Ⅱ log𝑒 𝑝 𝑗 Ⅱ + 𝑝 𝑖 Ⅰ log𝑒 𝑝 𝑖 Ⅰ だと思う。 −𝑙𝑛 𝑝 𝑗 Ⅱ 𝑝 𝑖 Ⅰ Ⅰ→Ⅱ = − Ⅰ 𝑑𝑖 Ⅱ 𝑑𝑗 𝑝 𝑖 Ⅰ π(𝑖 → 𝑗) log𝑒 𝑝 𝑗 Ⅱ − log𝑒 𝑝 𝑖 Ⅰ Ⅱ 𝑑𝑗 Ⅰ 𝑑𝑖 𝑝 𝑖 Ⅰ π(𝑖 → 𝑗) • 𝑝(𝑖│Ⅰ)𝜋(𝑖→𝑗) Ⅱ 𝑑𝑗 Ⅰ 𝑑𝑖 𝑝 𝑖 Ⅰ π(𝑖→𝑗) は、巨視的状態Ⅰのある微視的状態iが 巨視的状態微Ⅱのある微視的状態jへ遷移する確率。これを 𝑝(𝑖Ⅰ → 𝑗Ⅱ)とすると、 −𝑙𝑛 𝑝 𝑗 Ⅱ 𝑝 𝑖 Ⅰ Ⅰ→Ⅱ = − Ⅰ 𝑑𝑖 Ⅱ 𝑑𝑗 𝑝 𝑖Ⅰ → 𝑗Ⅱ log𝑒 𝑝 𝑗 Ⅱ − log𝑒 𝑝 𝑖 Ⅰ 23
  24. 24. 巨視的な不可逆性 −𝑙𝑛 𝑝 𝑗 Ⅱ 𝑝 𝑖 Ⅰ Ⅰ→Ⅱ = − Ⅰ 𝑑𝑖 Ⅱ 𝑑𝑗 𝑝 𝑖Ⅰ → 𝑗Ⅱ log𝑒 𝑝 𝑗 Ⅱ − log𝑒 𝑝 𝑖 Ⅰ = Ⅰ 𝑑𝑖 Ⅱ 𝑑𝑗 𝑝 𝑖Ⅰ → 𝑗Ⅱ 𝑆Ⅱ ′ − 𝑆Ⅰ ′ = Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 Ⅰ→Ⅱ • シャノンエントロピー(平均情報量)ではなく、自己エン トロピー(選択情報量)の期待値では? • シャノンエントロピーは、𝑝 𝑖 Ⅰ と𝑝 𝑗 Ⅱ の2つの確率分布 間に相関関係はない。 • 今回の場合、両者の相関関係は、確率遷移行列で記述され ている。 −𝑙𝑛 𝑝 𝑗 Ⅱ 𝑝 𝑖 Ⅰ Ⅰ→Ⅱ は、iからjへ状態が「遷移」するときの微視状 態のエントロピー変化の期待値 24
  25. 25. 巨視的な不可逆性 【巨視的な不可逆過程に対する熱力学第二法則の一般化】 β Δ𝑄 Ⅰ→Ⅱ + Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 Ⅰ→Ⅱ + 𝑙𝑛 π Ⅱ → Ⅰ π Ⅰ → Ⅱ ≥ 0 (8) • β Δ𝑄 Ⅰ→Ⅱは、湯浴のエントロピー変化の期待値、 Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 Ⅰ→Ⅱは、系のエントロピー変化の期待値。つまり、 β Δ𝑄 Ⅰ→Ⅱ + Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 Ⅰ→Ⅱは、全系のエントロピー変化の期待 値を表している。 • 巨視的状態ⅠとⅡが同一のものである場合、 β Δ𝑄 Ⅰ→Ⅱ + Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 Ⅰ→Ⅱ ≥ 0 →熱力学第二法則 25
  26. 26. 巨視的な不可逆性 • 巨視的状態ⅠとⅡが同一のものである場合、 先ほどの 𝑒 −𝑙𝑛 π Ⅱ→Ⅰ π Ⅰ→Ⅱ +𝑙𝑛 𝑝 Ⅱ→Ⅰ 𝑗 Ⅱ 𝑝 𝑖 Ⅰ 𝑒−βΔ𝑄𝑖→𝑗 𝑖→𝑗 Ⅰ→Ⅱ = 1 7 は、 𝑒 𝑙𝑛 𝑝 j 𝑝 𝑖 𝑒−βΔ𝑄𝑖→𝑗 𝑖→𝑗 Ⅰ→Ⅱ = 1 𝑒−Δ𝑆𝑖𝑛𝑡−βΔ𝑄𝑖→𝑗 𝑖→𝑗 Ⅰ→Ⅱ = 1 →ゆらぎの定理 • マクローリン展開で展開し、一次近似を行うと、 β Δ𝑄 Ⅰ→Ⅱ + Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 Ⅰ→Ⅱ ≥ 0 →熱力学第二法則は、全系の期待値では成立しているが、微 視状態で見ると、破れることもある。 (ここら辺の話は、生物を記述ために一番適している物理学だと思うので、勉強 しておくと役に立つかも?) 26
  27. 27. 巨視的な不可逆性 • 巨視的な不可逆過程に対する熱力学第二法則の一般化 β Δ𝑄 Ⅰ→Ⅱ + Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 Ⅰ→Ⅱ ≥ 𝑙𝑛 π Ⅰ → Ⅱ π Ⅱ → Ⅰ • 熱力学第二法則 β Δ𝑄 Ⅰ→Ⅱ + Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 Ⅰ→Ⅱ ≥ 0 • 巨視的な不可逆性(π Ⅰ → Ⅱ ≫ π Ⅱ → Ⅰ )が全系のエントロ ピー変化(エントロピー生成)により厳しい制限を課して いる。 (π(Ⅰ→Ⅱ)、π Ⅱ → Ⅰ は実験により推定。) 巨視的な状態遷移が不可逆であればあるほど、 より多くのエントロピー生成が求められる。 27
  28. 28. 自己複製の一般的制約 • 生物は指数関数的に自己複製し適応度に従って自然選択さ れる(この論文では進化の話には踏み込んでいない…)。 →過去から未来への過程は非常に不可逆的。 →けれども今回、この不可逆性がもたらすものを情報熱力 学・非平衡統計力学の言葉で定量的に知れるようになった。 • 逆温度βで生きている集団サイズn(≫1)の自己複製子を考 えるとマスター方程式(確率の時間発展を記述)は次のよ うに書ける。 𝑝𝑛 𝑡 = 𝑔𝑛 𝑝𝑛−1 𝑡 − 𝑝𝑛 𝑡 − δ𝑛 𝑝𝑛 𝑡 − 𝑝𝑛+1 𝑡 (9) 𝑝𝑛 𝑡 は、時刻tのときに集団サイズがnである確率。gは比増加 率、δは比減少率(𝑔 > δ > 0)。複製子の減少は増加の巻き 戻し過程で起こるとする。 28
  29. 29. 自己複製の一般的制約 • 十分短い時間幅で複製子が1つから2つになる遷移確率は π Ⅰ → Ⅱ = 𝑔𝑑𝑡、複製子が2つから1つになる遷移確率は、 π Ⅱ → Ⅰ = δ𝑑𝑡と書くことができる。 (π Ⅰ → Ⅱ = 1 − 1 − 𝑔 𝑡 。𝑡 = 𝑑𝑡ならπ Ⅰ → Ⅱ ≈ 1 − 1 + 𝑔𝑑𝑡。π Ⅱ → Ⅰ も 同様) • これを先ほどの一般化された熱力学第二法則に代入すると β Δ𝑄 Ⅰ→Ⅱ + Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 Ⅰ→Ⅱ ≥ 𝑙𝑛 π Ⅰ → Ⅱ π Ⅱ → Ⅰ = 𝑙𝑛 𝑔 δ (10) *注 2つの複製子が1つになる過程だからと言ってδを2δとしてはいけない。古典系の粒子は、 量子系の粒子とは異なり、互いの位置を区別することができる。1つの複製子が2つに分裂すると、混合エ ントロピーが増加する。その増加分が2δの2と相殺するため、2は加えない。また、粗視化の定義を見直し て、生まれたばかりの複製子だけを考えると、2を加えなくてもいいことが分かる。どちらの方法で考えて もいいが、個人的には前者の方がしっくりくる。 29
  30. 30. 自己複製の一般的制約 β Δ𝑄 Ⅰ→Ⅱ + Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 Ⅰ→Ⅱ ≥ 𝑙𝑛 𝑔 δ 𝑒β Δ𝑄 Ⅰ→Ⅱ+ Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 Ⅰ→Ⅱ ≥ 𝑔 δ 𝑔 ≤ δ𝑒β Δ𝑄 Ⅰ→Ⅱ+ Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 Ⅰ→Ⅱ 𝑔𝑚𝑎𝑥 = δ𝑒β Δ𝑄 Ⅰ→Ⅱ+ Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 Ⅰ→Ⅱ (11) →自己複製子の理論的に許される最大比増加率は、内部エン トロピー変化( Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 Ⅰ→Ⅱ)、耐久性(1 δ)、複製反応中に 外部に放出される熱量( Δ𝑄 Ⅰ→Ⅱ)の3要素で決まる。 【より多く増える複製子とは?】 • Δ𝑄 Ⅰ→Ⅱが大きい…環境中に放出する熱量が大きい。 • 1 δ が小さい…自己複製反応が可逆に近い。 • Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 Ⅰ→Ⅱが大きい…構造が単純。 *注 Ⅰ→Ⅱでバクテリアが1つ増える。自由に運動していた分子・原子がバクテリアの一部 として捕捉されるのでエントロピーが減少する。構造が単純であれば、捕捉される粒子の数 が少ないので、エントロピー減少分は小さい。 30
  31. 31. 自己複製するポリヌクレオチド • ポリヌクレオチドは、自己複製のダイナミクスにおけるエ ントロピー生成の役割を研究する上で役に立つ。 • 塩基の反応の逆過程(負電荷を持つピロリン酸が同じく負 電荷を持つポリヌクレオチドに求核攻撃)は起きにくい。 • ポリヌクレオチドの倍加時間が1時間(*注)、加水分解に よる半減期が4年(*注2)とすると 𝑙𝑛 𝑔 δ ≥ 𝑙𝑛 4年 1時間 *注 出典なし、たぶんRNAの自己触媒反応、リボザイムのことを考えていると思うが、それならもっと時 間がかかると思う。伸長反応のdoubling timeと書かれているが、この章の後半には、「DNAの1塩基が伸長 する時間が1 h~」と書かれているので、倍加時間のことを1 hと言っているのか、塩基が1つ伸長する時間 を1 hと言っているのかよく分からない。 *注2 RNAseの加水分解実験より推定。伸長反応の逆反応はピロリン酸による求核攻撃。一方、RNAseによ る加水分解は水の求核攻撃。伸長反応の逆反応ではない。RNAはDNAより可逆的(逆反応が起きやすい) という仮定の下、話が進んでいくが、加水分解の主原因はRNAの2’位に反応性の高い酸素原子がいることだ と思うので、反応の可逆性(ピロリン酸による求核攻撃の起きやすさ)で言えば、RNAもDNAもあまり変 わらないような気がする。 31
  32. 32. 自己複製の一般的制約 • 伸長反応では、基質の取り込みによって、混合エン トロピーが下がるが、その後のピロリン酸生成で、 その減少分を相殺するので、内部エントロピーの変 化は無視する。 *基質は4種類、生成物はピロリン酸の1種類なので混合エントロピーは相殺ではなく下がると 思う Δ𝑄 Ⅰ→Ⅱ ≥ 𝑙𝑛 4年 1時間 = 7 𝑘𝑐𝑎𝑙 𝑚𝑜𝑙 (12) • 実験データによると、この反応のエンタルピーHは 10 𝑘𝑐𝑎𝑙 𝑚𝑜𝑙である。この実験に使われた分子は、熱 力学的効率の限界付近(7 𝑘𝑐𝑎𝑙 𝑚𝑜𝑙以下の排熱でこ の反応は起こせない)で作動している。 *エンタルピーは、H = 𝑈 + 𝑝𝑉と書かれる状態量。等圧仮定の時、H = 𝑄と書ける。高校の化 学でこっそりお世話になったと思う(ヘスの法則)。 32
  33. 33. 自己複製の一般的制約 • 加水分解により安定なDNAの場合、 Δ𝑄 Ⅰ→Ⅱ ≥ 𝑙𝑛 3 × 107年 1時間 = 16 𝑘𝑐𝑎𝑙 𝑚𝑜𝑙 • 伸長反応のエンタルピーHの実験値は10 𝑘𝑐𝑎𝑙 𝑚𝑜𝑙なので、 DNAが自己触媒となって自己複製反応する現象は熱力学的に 禁止されている。 • 化学的に不安定なRNAの自己複製は、DNAよりも可逆的。一 般化された熱力学第二法則より、少ない排熱(少ないエネ ルギー)で、自己複製を行うことができる。 →原始地球に誕生した自己複製子がDNAではなくRNAであると 考えられていることと、関連があるかも。 33
  34. 34. 自己複製の一般的制約 • 比増加率がg、比減少率がδで表されているとき、自己複製の 倍加時間は、おおよそ1/(g-δ)であるといえる。 • 熱力学的制約は、g/δに課せられているが、倍加時間1/(g-δ) には課せられていない。 →自己複製のコストを固定したまま、倍加時間1/(g-δ)を任意に 大きくすることができる。 →RNAの壊れやすさ(δが大きい)は、ある条件下では環境適 応度が高いと考えることができる。 34
  35. 35. 自己複製の一般的制約 • バクテリア内の分子のエネルギー分布がボルツマン分布に 従っている場合、この話は反応速度論(アレニウスの式) で書くことができる。 𝑙𝑛 𝑘𝑓 𝑘𝑟 = −βΔG = −βΔQ + Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 𝑘𝑓 𝑘𝑟 = 𝑒−βΔQ+Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 • 始状態と終状態がボルツマン分布(系のエントロピーが最 大になっている分布、熱力学的平衡状態)であるときに成 立する。 • 一方、今回の理論は、始状態と終状態がボルツマン分布で あるという仮定は用いていない(用いているのは局所詳細 釣り合い)。 →熱力学的平衡状態と見なすことができない生物系でも成り 立つ。 35
  36. 36. バクテリアの細胞分裂 【巨視的状態(実験条件)Ⅰ】 • 1つの菌と周辺の培地を1つの系と考える。 • 蓋は密閉され、体積、質量は変化しない。 • 系と湯浴(T~311K)間の熱の移動は起こる。 • 細胞分裂の周期が始まったばかり。 • この系がエネルギー𝐸𝑖を持つ微視的状態iを取っている確率 は、𝑝 𝑖 Ⅰ 。もちろん、これはカノニカル分布ではない。 【巨視的状態(実験条件)Ⅱ】 • バクテリアが細胞分裂し、2つになる。 36
  37. 37. バクテリアの細胞分裂 • π Ⅰ → Ⅱ …細胞分裂でバクテリアが1つから2つになる。 • π Ⅱ → Ⅰ …一方のバクテリアが分子レベルまで分解される。 【バクテリアの崩壊確率モデルを考える( Ⅱ → Ⅰ )】 • 簡単のため、バクテリアのペプチド結合が全て分解される 過程をバクテリアの崩壊とする。 • ペプチド結合の数を𝑛𝑝𝑒𝑝、分裂時間をτ𝑑𝑖𝑣ペプチド結合の半 減期をτℎ𝑦𝑑とする。 • バクテリアの成長速度は、r = 𝑛𝑝𝑟𝑒𝑝 τ𝑑𝑖𝑣。 37
  38. 38. バクテリアの細胞分裂 【バクテリアの崩壊確率モデルを考える( Ⅱ → Ⅰ )】 • モデルを考えるためには、いつ崩壊し始めるかを指定しな いといけない。 • 時間幅が小さすぎる場合 →その期間で崩壊する確率が低くなる。 • 時間幅が大きくなる場合 →ペプチド合成が多く合成され、細胞が自然崩壊する確率が 小さくなる。 • 細胞が自然崩壊する確率が一番高くするには時間幅をどう すればいい? →自己複製の熱出力の「下界」を求めたいから。 38
  39. 39. バクテリアの細胞分裂 • 細胞が完全に自然分解される確率𝑝ℎ𝑦𝑑は、 𝑝ℎ𝑦𝑑 ≈ 1 − 𝑒−𝑙𝑛 2 𝑡 τℎ𝑦𝑑 𝑛𝑝𝑒𝑝+𝑟𝑡 𝑝ℎ𝑦𝑑 ≈ 𝑙𝑛 2 𝑡 τℎ𝑦𝑑 𝑛𝑝𝑒𝑝+𝑟𝑡 𝑝ℎ𝑦𝑑 ≈ 𝑡 τℎ𝑦𝑑 𝑛𝑝𝑒𝑝+𝑟𝑡 𝑙𝑛 𝑝ℎ𝑦𝑑 ≈ 𝑛𝑝𝑒𝑝 + 𝑟𝑡 𝑙𝑛 𝑡 τℎ𝑦𝑑 (13) • 確率𝑝ℎ𝑦𝑑の最大値は、 𝑑 𝑑𝑡 𝑙𝑛 𝑝ℎ𝑦𝑑 ≈ 𝑑 𝑑𝑡 𝑛𝑝𝑒𝑝 + 𝑟𝑡 𝑙𝑛 𝑡 τℎ𝑦𝑑 = 0 𝑟𝑙𝑛 𝑡𝑚𝑎𝑥 τℎ𝑦𝑑 + 𝑛𝑝𝑒𝑝 𝑡𝑚𝑎𝑥 + 𝑟 = 0 • r = 𝑛𝑝𝑟𝑒𝑝 τ𝑑𝑖𝑣なので 𝑙𝑛 𝑡𝑚𝑎𝑥 τℎ𝑦𝑑 + 𝑛𝑝𝑒𝑝 𝑟𝑡𝑚𝑎𝑥 + 1 = 0 𝑙𝑛 𝑡𝑚𝑎𝑥 τℎ𝑦𝑑 + τ𝑑𝑖𝑣 𝑡𝑚𝑎𝑥 + 1 = 0 39
  40. 40. バクテリアの細胞分裂 • 𝑛𝑝𝑒𝑝 ≫ 𝑟𝑡だとすると(つまり分裂直後だとすると) 𝑙𝑛 𝑝ℎ𝑦𝑑 ≈ 𝑛𝑝𝑒𝑝 + 𝑟𝑡 𝑙𝑛 𝑡 τℎ𝑦𝑑 ≈ 𝑛𝑝𝑒𝑝𝑙𝑛 𝑡 τℎ𝑦𝑑 (14) • 𝑡𝑚𝑎𝑥のとき𝑙𝑛 𝑝ℎ𝑦𝑑 は最大値をとる。 𝑙𝑛 𝑡𝑚𝑎𝑥 τℎ𝑦𝑑 + τ𝑑𝑖𝑣 𝑡𝑚𝑎𝑥 + 1 = 0 𝑙𝑛 𝑝ℎ𝑦𝑑 ≈ −𝑛𝑝𝑒𝑝 τ𝑑𝑖𝑣 𝑡𝑚𝑎𝑥 + 1 • よって、細胞分裂後の娘細胞の一方が自然崩壊する遷移確 率は、 𝑙𝑛 π Ⅱ → Ⅰ ≤ 2𝑙𝑛 𝑝ℎ𝑦𝑑 ≈ −2𝑛𝑝𝑒𝑝 𝑡𝑚𝑎𝑥 τ𝑑𝑖𝑣 + 1 (15) • そもそも、細胞分裂が始まる序盤を巨視的状態Ⅰと定義し ていたので、 π Ⅰ → Ⅱ ≈ 1 40
  41. 41. バクテリアの細胞分裂 • 自己複製によって発生する熱の下限は、 β Δ𝑄 Ⅰ→Ⅱ ≥ 𝑙𝑛 π Ⅰ → Ⅱ π Ⅱ → Ⅰ − Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 Ⅰ→Ⅱ β Δ𝑄 Ⅰ→Ⅱ ≥ 2𝑛𝑝𝑒𝑝 τ𝑑𝑖𝑣 𝑡𝑚𝑎𝑥 + 1 − Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 Ⅰ→Ⅱ (16) 自己複製によって生じる熱は、周囲の分子から生物の体を構 成することによるエントロピー減少分 Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 Ⅰ→Ⅱ のみならず、 自己複製に要する時間や自然崩壊確率を最大にするような時 間𝑡𝑚𝑎𝑥によって決まる。 41
  42. 42. バクテリアの細胞分裂 【まずは、内部エントロピー変化を具体的に考えてみる】 内部エントロピーの増加…酸素と二酸化炭素の等モル変換。 呼吸の「吸」から • 呼吸でn molの酸素を取り込む。酸素の体積は22.4n L。バク テリアの体積をΔVとする。大気中に酸素は、20.95%存在し ているので、n molの酸素は22.4n/0.2095 Lの大気に拡散して いる。 • 呼吸によって22.4n/0.2095 L中に分散してる酸素分子をバク テリア内ΔVに集めることにより、変化するエントロピーは、 ∆𝑆1 = 22.4𝑛 0.2095 Δ𝑉 𝑛𝑅𝑑𝑉 𝑉 = 𝑛𝑅𝑙𝑛 0.2095Δ𝑉 22.4𝑛 42
  43. 43. バクテリアの細胞分裂 内部エントロピーの上昇…酸素と二酸化炭素の等モル変換。 次は呼吸の「呼」 • 呼吸でn molの二酸化炭素を吐き出す。二酸化炭素の体積は 22.4n L。バクテリアの体積をΔVとする。大気中に酸素は、 0.032%存在しているので、n molの二酸化炭素は 22.4n/0.00032 Lの大気に拡散している。 • 呼吸によって発生した二酸化炭素をバクテリア内ΔVから 22.4n/0.00032 Lの大気中に分散させることによって変化する エントロピーは、 ∆𝑆2 = Δ𝑉 22.4𝑛 0.000032 𝑛𝑅𝑑𝑉 𝑉 = 𝑛𝑅𝑙𝑛 22.4𝑛 0.00032Δ𝑉 43
  44. 44. バクテリアの細胞分裂 内部エントロピーの上昇…酸素と二酸化炭素の等モル変換。 • よって、呼吸の「吸」と「呼」によって変化するエントロ ピーは、 ∆𝑆𝑟𝑒𝑠𝑝𝑖𝑟𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛 = ∆𝑆1 + ∆𝑆2 = 𝑛𝑅𝑙𝑛 0.2095Δ𝑉 22.4𝑛 + 𝑛𝑅𝑙𝑛 22.4𝑛 0.000032Δ𝑉 ∆𝑆𝑟𝑒𝑠𝑝𝑖𝑟𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛 = 𝑛𝑅𝑙𝑛 0.2095 0.00032 ~6𝑛𝑅 = 6𝑛𝑘𝑁𝐴 = 6𝑛𝑁𝐴 • 𝑁𝐴はアボガドロ定数。この論文では、ボルツマン定数が1に なるような自然単位系を使っているので、𝑘 = 1。 • 呼吸によって内部エントロピーは、6𝑛𝑁𝐴増加する。 44
  45. 45. バクテリアの細胞分裂 【まずは、内部エントロピー変化を具体的に考えてみる】 内部エントロピーの減少…同化(環境中のアミノ酸からタンパク質 合成)。 【論文に書かれてある道筋】 100 𝑛𝑚3中に浮遊しているアミノ酸がタンパク質合成に使われ、最 終的にタンパク質の一部領域0.001 𝑛𝑚3 に折り畳まれた。 ∆𝑆𝑎𝑛𝑎𝑏𝑜𝑙𝑖𝑠𝑚~𝑛𝑅𝑙𝑛 0.001 100 ~ − 12𝑛𝑁𝐴 • 𝑁𝐴はアボガドロ定数。この論文では、ボルツマン定数が1になる ような自然単位系を使っているので、𝑘 = 1。 • 同化によって内部エントロピーは、−12𝑛𝑁𝐴増加する。 45
  46. 46. バクテリアの細胞分裂 【個人的に思う道筋】 • 論文では、100 𝑛𝑚3 のアミノ酸がタンパク質の一部として 0.001 𝑛𝑚3まで折り畳まれるという仮定を置いて、同化によ る内部エントロピー変化を計算していた。 →100 𝑛𝑚3 、0.001 𝑛𝑚3 がどこから出てきた数字なのか不明 (出典無し)。 • もっと納得できる筋道を個人的に考えてみた。 46
  47. 47. バクテリアの細胞分裂 • 論文で想定している培地には、1% トリプトンが含まれてい る(何も書かれていないがおそらく重量%)。 • トリプトンはカゼインというタンパク質を加水分解して作 られる。加水分解によって全てアミノ酸になったとする。 • 培地が水と1%トリプトンの混合物であるとする。アミノ酸 の分子量は水の約10倍なので、水とアミノ酸のモル比は、 1000 : 1。 • タンパク質は、およそ100個のアミノ酸残基で構成されてい るとする。 • 培地中に散らばった100個のアミノ酸から1個のタンパク質 ができる。 →水と混合していた100個のアミノ酸が一か所に集まる。 47
  48. 48. バクテリアの細胞分裂 • x molのタンパク質、アミノ酸、水の体積が全て同じである と見なす(理想液体的な考え)。 • アミノ酸100x molは、100000x molの水に溶けている。 • アミノ酸溶液の体積は、 100000xVである。 • 体積(100000xV)中に浮遊している100x molのアミノ酸がタ ンパク質の体積(xV)中の領域に集まったとする。 • 水分子のモル濃度を適当にyと置くと ∆𝑆𝑎𝑛𝑎𝑏𝑜𝑙𝑖𝑠𝑚 = −100𝑥𝑅𝑙𝑛 100𝑥 𝑥𝑉 100𝑥 𝑥𝑉 + 𝑦 + 100𝑥𝑅𝑙𝑛 100𝑥 100000𝑥𝑉 100𝑥 100000𝑥𝑉 + 𝑦 ≈ −100𝑥𝑅𝑙𝑛 100𝑥 𝑥𝑉𝑦 + 100𝑥𝑅𝑙𝑛 100𝑥 100000𝑥𝑉𝑦 = −100𝑥𝑅𝑙𝑛100000 ∆𝑆𝑎𝑛𝑎𝑏𝑜𝑙𝑖𝑠𝑚 ≈ −1200𝑥𝑅 = −1200𝑥𝑘𝑁𝐴 = −1200𝑥𝑁𝐴 *注 遊離しているアミノ酸が一か所に集まっても、水のモル分率はほとんど変わらない。そのため、上記の式は、アミノ 酸のモル分率の変化だけを考慮している。𝑁_𝐴はアボガドロ定数。この論文では、ボルツマン定数が1になるような自然単位 系を使っているので、𝑘=1。 48
  49. 49. バクテリアの細胞分裂 【内部エントロピー変化は?】 内部エントロピー変化=呼吸+同化。 Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 Ⅰ→Ⅱ = ∆𝑆𝑟𝑒𝑠𝑝𝑖𝑟𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛 + ∆𝑆𝑎𝑛𝑎𝑏𝑜𝑙𝑖𝑠𝑚 = 6𝑛𝑁𝐴 − 1200𝑥𝑁𝐴 • 実験によると、細胞が分裂の際に消費する酸素分子と新し く作られた細胞のアミノ酸の数(ペプチド結合の数𝑛𝑝𝑒𝑝)は ほぼ等しい。 ∆𝑆𝑟𝑒𝑠𝑝𝑖𝑟𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛 = 6𝑛𝑁𝐴 = 6𝑛𝑝𝑒𝑝 ∆𝑆𝑎𝑛𝑎𝑏𝑜𝑙𝑖𝑠𝑚 = −1200𝑥𝑁𝐴 = −12𝑛𝑝𝑒𝑝 • よって内部エントロピー変化は、 Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 Ⅰ→Ⅱ = −6𝑛𝑝𝑒𝑝 49
  50. 50. バクテリアの細胞分裂 【不可逆性を表す項を具体的に考えてみる】 バクテリアの細胞分裂時間τ𝑑𝑖𝑣は20分、ペプチド結合の自発的 な加水分解による半減期は600年だとすると 𝑙𝑛 𝑡𝑚𝑎𝑥 τℎ𝑦𝑑 + τ𝑑𝑖𝑣 𝑡𝑚𝑎𝑥 + 1 = 0 𝑙𝑛 𝑡𝑚𝑎𝑥 − 𝑙𝑛 600 × 365 × 24 × 60 + 20 𝑡𝑚𝑎𝑥 + 1 = 0 𝑙𝑛 𝑡𝑚𝑎𝑥 + 20 𝑡𝑚𝑎𝑥 − 18.57 = 0 𝑡𝑚𝑎𝑥 ≈ 1 𝑙𝑛 π Ⅰ → Ⅱ π Ⅱ → Ⅰ ≈ 2𝑛𝑝𝑒𝑝 τ𝑑𝑖𝑣 𝑡𝑚𝑎𝑥 + 1 ≈ 2𝑛𝑝𝑒𝑝 20 + 1 = 42𝑛𝑝𝑒𝑝 50
  51. 51. バクテリアの細胞分裂 【バクテリアの自己複製によって発生する熱の下限は?】 β Δ𝑄 Ⅰ→Ⅱ ≥ 2𝑛𝑝𝑒𝑝 τ𝑑𝑖𝑣 𝑡𝑚𝑎𝑥 + 1 − Δ𝑆𝑖𝑛𝑡 Ⅰ→Ⅱ β Δ𝑄 Ⅰ→Ⅱ ≥ 42𝑛𝑝𝑒𝑝 + 6𝑛𝑝𝑒𝑝 = 50𝑛𝑝𝑒𝑝 • 生物は、自己組織化に多くのコストを割いているように思 われるが、今回の結果では、自己組織化よりも分解されに くい(不可逆な)自己複製を行うことに多くのコストをか けていることが分かる。 • 実験値は、220𝑛𝑝𝑒𝑝。今、考えている環境には最適化されて いない。しかし、広範な環境に適応できる生物の特性を考 えると、1つの条件で最適化されていないのは当然かも。 • 220𝑛𝑝𝑒𝑝の環境への放熱(エントロピーの増大)で現在のバ クテリアよりも、よく増えるバクテリアの誕生は熱力学的 に許されている。 51
  52. 52. まとめ 「自己複製の速度はどのくらいまで速くなることを許されて いるのか?」 →逆温度一定の条件下、非平衡過程の順方向と逆方向の遷移 確率と環境中への発熱量を結びつける熱力学第二法則の一般 化によって宣言することができた。 →「粗視化」を行い、注目している巨視的状態に対応する微 視的状態数が決定されることによって、巨視的な現象を確率 論的に語ることができる。 (巨視的状態Ⅰ=巨視的状態Ⅱとして、ゆらぎのある熱力学 第二法則を導出している例はよく見かけた。この論文の独創 的な点は、巨視的状態Ⅰ≠巨視的状態Ⅱとして、興味のある始 状態、終状態にⅠ、Ⅱというラベルを付けるという「粗視 化」を行ったことだと思う ) 52

×