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ウェブスケール・ディスカバリー
(WSD)利用者の利用状況と認識
―インタビュー調査による探索的研究
同志社大学 修士学位論文 審査会(2021.2.13)
久保山 健
総合政策科学研究科 総合政策科学専攻 博士課程(前期課程)
1
目次
1. WSDの現状
2. 研究目的
3. 調査手法
4. インタビューの結果
5. 考察と課題
6. 本研究の意義
2
1. WSDの現状
国内大学の低い導入率:19% (2019年)
国内の「OPAC主義」
想定する利用者層や利用シーンについて、コ
ンセンサスがない。
3
2. 研究目的
WSD利用者をインタビュー調査し、WSDの
利用要因や利用状況、WSDに対する認識はど
のようなものかを明らかにする。
4
3. 調査手法
対象:大阪大学・同志社大学のWSD利用者・
利用経験者
(両大学ともOPACが最初の検索オプション)
半構造化インタビュー。
5
4. インタビューの結果
対象者(15名)の概要 *詳細:p.48, 図5
【所属】大阪大学: 9名、同志社大学:6名
【身分】学部1-2年: 2名
学部3-6年: 4名(6年制学部卒業者1名含む)
大学院生 : 7名(修士修了1名含む)
教員 : 2名(退職者1名含む)
*身分は2020年3月時点。
【分野】総合:1名、人文社会:9名、理工:3名、生
物:2名。文系: 9名、理系:6名。
*1名はWSDを「(現在は)ほぼ使っていない」。結果から一部除外。
6
4. インタビューの結果
利用目的:「補完的に」「幅広く」の発話が
多い(メインツールというよりサブツール)。
好きな点:「幅広さ」の発話が多い。
「図書」よりも「雑誌論文」を探す際にWSD
を使用する傾向(学部2年生以上の全員は、雑誌論文を
探す際にWSDを利用)。
知ったきっかけ、使い始めたきっかけ:
「自ら発見」の発話が多い。
7
4. インタビューの結果
「雑誌記事、多様な媒体なども含めて、検索
対象が広い」
→「肯定」の発話が多い。
「検索結果が多すぎて使いにくい」
→「不満なし、気にしない」の発話が多い。
8
4. インタビューの結果
「学部生向け・初学者向け」について
→「肯定」「否定」の発話ともにあり。
→「否定」=学部生・初学者に不適 の発話
が、6年制学部卒業者・大学院生以上から。
「学部生はWSDではなくOPACを優先する」
→「肯定」「否定」の発話ともにあり。
→「肯定」=OPACを優先する の発話が、
学部4年生および大学院生以上から。
9
4. インタビューの結果
インタビュー項目に含めていない「WSD自体
の名称、イメージ」についての発話。
「名前でこれ(まとめて検索)だったら多分その全
部のデータベースでやってくれるんだろうな」
(大阪大学の対象者)
「ブランド名が足りないですね」(同志社大学の対
象者)
10
5. 考察と課題
(1) WSDはサブツールとして「補完的に」
「幅広く」利用される傾向
(OPACが最初の検索オプションである大学では)
●要因 - 自然に認知される機会が少ない。
- 周囲から教えられる機会が少ない。
- 図書館からの案内が少ない。
(2) WSD利用者のデメリット認識の低さ
●提供側の大学図書館が否定的な印象をWSDに対し
て持つべきではない。
11
5. 考察と課題
(3) WSDは大学院生・教員にも有用
●「学部生・初学者」がWSDを利用するのに一定の
ハードルがあることを示唆。
●これまでの「学部生・初学者向け」は定義が曖昧。
●「学部低年次生向け」という考え方には疑問。
●利用者への案内の改善。学部低年次生には、状況に応じ
た使い方(使い分け)のサジェスチョン。学部高年次生・
院生には、WSDでこれまで探せなかった資料を見つけられ
る可能性がある説明。
(4) 利用者向け名称は分かりやすく
12
5. 考察と課題
(5) 本研究の限界と課題
1) WSDが最初の検索オプションの大学では、状況
が異なる可能性。
2) 非利用者のWSDに対する印象、WSDを利用しな
い理由などは対象外。また、WSDをメインツー
ルとする利用者の認識は不明。
13
6. 本研究の意義
学術的意義
WSD利用者の利用要因や利用状況、認識について
の研究が非常に不十分な中、探索的な調査を実施
し、その一部を提示した。
社会的意義
実践の場面、利用状況の理解や、サービス改善に
あたって、参考になることを提示できた。
14

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