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はじめての生成文法 《後編》   TokyoNLP #6 - 2011/6/25 中谷秀洋@サ゗ボウズ・ラボ株式会社     id:n_shuyo / @shuyo
おことわり• これだけで生成文法がわかったりしません – あくまでもダ゗ジェスト – 通年の講義するわけにもいかないしね!• 素人です – 独断と偏見も多いよ – 鵜呑みにしないでね• 生成文法は「仮定」「仮説」のかたまり – NGつっこみ:「...
ねらい• 生成文法の流れを見てみる – 「生成文法の目的って何?」 – 「生成文法にもいろいろあるみたいだけど」 – 「どうしてこうなった?」• 生成文法に興味を持つ – 「難しいってよく聞くけどホント?」 – 「ぶっちゃけ、おもしろいの?」 ...
もくじ 《後編》1. 生成文法ってどんな文法?2. 生成文法の概略と変遷 – 生成文法 0.0 (句構造文法) – 生成文法 1.x ([[改訂]拡大]標準理論) – 生成文法 2.0 (GB理論/原理とパラメータのゕプローチ) – 生成文法 ...
前編のあらすじ
なぜヒトは言葉を話せるのか    まだわかっていない• 言語獲得 – なぜ子供は言葉をかんたんに覚えられるの?• 言語機能の生得説 – 生まれたときから「言語のための機能」を脳   に持っているんだよ! きっと!• でも「言語のための機能」って...
言語機能があるとしたら  いったいどんなものだろう• 乏しいデータからかんたんに言語獲得 – 4歳児でも、ほぼ完全に近い言葉を使う – ゗ンプットの違いに寄らず、個体差が小さい• 言語専用の機能(他の認知機能とは独立) – 認知機能の発達した大...
言語機能は「言語の共通ルール」だと   チョムスキーは考えた• 普遍文法=言語の共通ルール – 全ての言語に共通の語の並べ方のルール – 共通ルールを生まれたときから知っていれば  • 個別言語との差分を身につければいいだけ• 普遍文法を明らか...
生成文法ってどんな文法?
チョムスキーの生成文法• 生成文法とは、 – 普遍文法を研究するフレームワーク• 具体的には、 – ヒトの言語の文法的現象を演繹的に記述し、 – 言語獲得を説明するための仮説群• キーワード:                  文法じゃあない?...
文法的現象• 文法的現象(統語現象)                                       文法以外の現象は – 語を並べるときに生じる現象                                      対象外...
演繹                      (Wikipedia より)演繹(えんえき、英: deduction)は、一般的・普遍的な前提から、より個別的・特殊的な結論を得る推論方法である。対義語は帰納。帰納の導出関係は蓋然的に正しいのみだ...
「演繹」を柔らかく言うと• 「正しいこと」の積み重ね – 前提となる仮定(仮説・原理・公理)を認めた上で – 順に読んでいけば、全てが正しいと言える• 主観が入らない。人によらない – 誰がやっても同じ理解・結論になる• 一番重要なことは「何を...
文法により言語を「記述」する• 次のことが出来れば、「言語を記述した」と定義 – 全ての文法的な文を文法操作で生成できる – 非文法的な文は生成できないことを示す• 実際には、個々の「文法的現象」について – 適格な文を生成できることを示す  ...
言語獲得を「説明」• 言語獲得を次のように「説明」する – 普遍文法   = 言語に共通のルール – 英語を獲得 = (英語 ー 普遍文法) を身につける• 言語獲得がかんたんということは……?                     普遍文法...
チョムスキーの生成文法• 生成文法とは、 – ヒトの言語の文法的現象を演繹的に記述し、 – また言語獲得を説明するための仮説群            ≒ – 個別かつ例外だらけの言語それぞれが – きちんと生成できるルールを – できるだけ共通...
生成文法の概略と変遷
まずは
言語を記述するルールを   手に入れよう
句構造文法                 (生成文法 0.0)• 「文法」を表現する道具がなかった  – 「句構造」と「句構造規則」を発明        S                             範疇      説明    ...
句構造規則• Sからたどって、句構造を「生成」する     – 書き換え規則=句構造の枝分かれ                                                     句構造規則        S        ...
句構造文法  仮説群生得説、普遍文法、 句構造、……、                                                その言語の                                          ...
チョムスキーの階層• 句構造文法はチューリングマシンと等価  – どんな言語も記述できる!(原理的には)• しかし規則が膨大になる  – 現在形・過去形・否定文・疑問文・受動態    ……を生成する規則を動詞ごとに用意、とか 階層       ...
記述力のある「文法」を手に入れた!  (原理的には)
次は
実際に文法ルールを構築できるようにしよう
[[改訂]拡大]標準理論          (生成文法 1.x)• 句構造文法に「変形規則」を導入 – 例:受動文を生成する「受動変形」  • 動詞ごとに受動文を生成する規則がいらなくなる• 文法を現実的に構築可能に!   John    ca...
接辞繰り下げ変形                             動詞ごとに過去・                                               完了・進行の規則を                     ...
英語の変形規則日本語に当てはまりそうな         中井悟/上田雅信「生成文法を学ぶ人のために」(p71)より 規則は……
英語の記述はだいぶ出来たけど• こんな状態             日本語          ドイツ語     英語
こうしたい!• 「個別言語ー普遍文法」が  限りなく小さいほど嬉しい             日本語      ドイツ語         英語
今のアプローチのままでは  絶対無理だ……
いっそ「全部同じ文法」 ってのはどう?
GB理論/原理とパラメータのゕプローチ            (生成文法 2.0)• 普遍文法に重点を置いて、完全リニューゕル – 前バージョン(標準理論)と互換性はありません• 言語を「共通部分」と「可変部分」に分離 – 共通部分 →   原...
Xバー理論                最初は ������と                                 書いていたけど、                                 印刷の都合で ������′ と...
Xバーの構造例                            X=I, Y=DP, Z=VP        IP                            ※) I は「屈折辞」(時制などを含む範疇)でDP         ...
句構造規則 vs. Xバー理論• 句構造規則            • Xバー  S    →   NP VP     XP → YP X  VP   →   V NP      X → XP ZP  NP   →   N  NP   →   ...
α移動• 変形規則に変わるもの – αは「なんでもいい」の意味(テンプレート)• 「任意の句を任意の位置に移動する」 – そんなんでいいの!?   John    calls   Tom                          ダメで...
フゖルタ • α移動で生成された「文」のうち、非文   法的な文を「フゖルタ」で制約する      – フゖルタは共通原理として仮定する       John calls Tomα移動       John calls Tom     フ   ...
フゖルタ• さまざまなフゖルタがあるが、詳細は省略 – 拡大投射原理 – 空範疇原理 – θ基準 – 格フゖルタ – 束縛原理 – 下接の条件 –   :
パラメータ• 各言語固有の現象は「パラメータ」で切り替える – パラメータ=(主に)2値の「ス゗ッチ」• 例)語順のパラメータ(主要部位置パラメータ)パラメータ = 主要部(X)は補部(ZP)の前   パラメータ = 主要部(X)は補部(ZP)...
パラメータ• さまざまなパラメータがあるけど(ry – 主要部位置パラメータ – 空主語パラメータ – whパラメータ –   :                       ベイカー「言語のレシピ」より                    ...
原理とパラメータのゕプローチ/GB理論         (生成文法 2.0)• パラメータが違うだけの「一種類の文法」 – 句構造規則 → Xバー理論 – 変形規則 → α移動+フゖルタ(制約)• 記述力も一定以上(少なくとも英語は)     ...
問題点• 説明的妥当性(言語獲得の容易さ)は文句な  し – パラメータを決めるだけ• しかし、原理が膨大かつ複雑怪奇に – 言語の例外をカバー&全ての言語を共通の原   理で記述しているうちに……
文法を1つにするのに   夢中で
「生得しているとしたら?」    ということをあまり考えてなかったなあ
……
よし!
ミニマリスト・プログラム(MP)          (生成文法 3.0β)• 生得性に重点を置いて、完全リニューゕル – ヒトの言語器官はどういう条件を満たさなければ   ならないか? – その必要最小限の条件だけから、普遍文法を構成   する...
Bare Phrase Structure                (最小句構造、裸句構造)• Xバー理論の N’ とか D’ とかって、「最小限  の条件」から説明つかないよね?          DP        • そういう余計な...
Move F(素性移動)• 時間の都合で、詳細は省略 – GBでの「α移動」の代わり
last resort(最後の手段)• GB理論の「α移動」では – 任意の要素を、 – 任意の位置に自由に移動  • 各種制約によってフゖルタリング• MP の「素性移動」は – 移動が必要な要素のみを、 – 移動が可能な位置に移動  • 移...
3つの生成文法を 比べてみよう
生成文法で愛をささやく• I love you の構造を見てみよう     – 全部似てるけど、MP が一番シンプル?     – でもこれは時制などなどを考慮していない手抜き      S                IP         ...
ちゃんと手抜き無しで   やってみた
標準理論版         SNP    Aux           VPN     Tns     V          NPI     Pres   love        you
GB理論版                  IP    DP                          I’∅        D’              I           VP    D         NP        ...
ミニマリスト・プログラム版        IP              I’ N       I               ������P  I                                      ������’ [D...
どうしてこうなった……
ミニマリスト・プログラム• 記述力はまだ GB 理論におよばない• 抽象性が高すぎて実感が困難• 発展途上 – まとまった書籍は [Chomsky 1995] か、それをベー   スにしたもの(つまり新しくない) – 用語の日本語訳がまだ定まっ...
生成文法って信じていいの?
生成文法って本当なの?• そもそも範囲はかなり限定されている – 理想的母語話者を想定 – 意味や言語使用を捨象• 生成文法を演繹的に導出したわけではない – 状況証拠オンリー(反論多数←こっちも状況証拠) – ゕブダクション(仮説形成) = ...
生成文法への批判• トマセロによる生成文法批判 – 普遍文法とか言っときながら英語ばっかり! – 生成文法家以外には認識されたことすらない概念   ばかり! – 「名詞」や「動詞」の言語普遍性すら怪しいのだ   から、普遍文法なんてあるわけない...
生成文法にこだわる必要はない• 生成文法には “fork” がいっぱいある – 主辞駆動句構造文法   (Head-driven Phrase Structure Grammar, HPSG)   • 語彙が規則を持っている。文法≒辞書(レキシ...
じゃあ生成文法ってウソ?• 機械学習諸分野で「真のモデル」や「真の分  布」って見たことあるの? – 自分は持ってないのに、他の分野には「真のモデ   ル」を求めるなんて、ゕンフェゕだよね• 言語学習分野では役に立っている – 精緻に記述された...
まとめ• 生成文法はきもかわいい刺激的でおもしろい – 恐ろしく高い目標に肉薄したら、目標をもっと高く   して仕切り直し×2とか野心的すぎる…… – 60年前は句構造文法すらなかったのに!• 直接なにかの役には……立たないかなあw – 間接的...
参考文献•   中島文雄「英語の構造」, 1980•   中井悟/上田雅信「生成文法を学ぶ人のために」, 2004•   大津由紀雄/他「言語研究入門 -生成文法を学ぶ人のために」, 2002•   A. ラドフォード「入門ミニマリスト統語論」...
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はじめての生成文法 《後編》

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TokyoNLP #6 での発表資料です。
前編 : http://www.slideshare.net/shuyo/tokyonlp-5

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はじめての生成文法 《後編》

  1. 1. はじめての生成文法 《後編》 TokyoNLP #6 - 2011/6/25 中谷秀洋@サ゗ボウズ・ラボ株式会社 id:n_shuyo / @shuyo
  2. 2. おことわり• これだけで生成文法がわかったりしません – あくまでもダ゗ジェスト – 通年の講義するわけにもいかないしね!• 素人です – 独断と偏見も多いよ – 鵜呑みにしないでね• 生成文法は「仮定」「仮説」のかたまり – NGつっこみ:「それ本当? 証拠は?」
  3. 3. ねらい• 生成文法の流れを見てみる – 「生成文法の目的って何?」 – 「生成文法にもいろいろあるみたいだけど」 – 「どうしてこうなった?」• 生成文法に興味を持つ – 「難しいってよく聞くけどホント?」 – 「ぶっちゃけ、おもしろいの?」 – 「なんかの役に立つ?」
  4. 4. もくじ 《後編》1. 生成文法ってどんな文法?2. 生成文法の概略と変遷 – 生成文法 0.0 (句構造文法) – 生成文法 1.x ([[改訂]拡大]標準理論) – 生成文法 2.0 (GB理論/原理とパラメータのゕプローチ) – 生成文法 3.0β (ミニマリスト・プログラム)3. 生成文法は信じていいの? – 自然科学とフゔンタジーのすきま
  5. 5. 前編のあらすじ
  6. 6. なぜヒトは言葉を話せるのか まだわかっていない• 言語獲得 – なぜ子供は言葉をかんたんに覚えられるの?• 言語機能の生得説 – 生まれたときから「言語のための機能」を脳 に持っているんだよ! きっと!• でも「言語のための機能」って何だろう?
  7. 7. 言語機能があるとしたら いったいどんなものだろう• 乏しいデータからかんたんに言語獲得 – 4歳児でも、ほぼ完全に近い言葉を使う – ゗ンプットの違いに寄らず、個体差が小さい• 言語専用の機能(他の認知機能とは独立) – 認知機能の発達した大人に言語習得が難しい• 任意の言語に対応 – 獲得速度にも差がない
  8. 8. 言語機能は「言語の共通ルール」だと チョムスキーは考えた• 普遍文法=言語の共通ルール – 全ての言語に共通の語の並べ方のルール – 共通ルールを生まれたときから知っていれば • 個別言語との差分を身につければいいだけ• 普遍文法を明らかにすれば 言語獲得の謎は解決!
  9. 9. 生成文法ってどんな文法?
  10. 10. チョムスキーの生成文法• 生成文法とは、 – 普遍文法を研究するフレームワーク• 具体的には、 – ヒトの言語の文法的現象を演繹的に記述し、 – 言語獲得を説明するための仮説群• キーワード: 文法じゃあない? – 文法的現象 / 演繹 / 記述 / 説明
  11. 11. 文法的現象• 文法的現象(統語現象) 文法以外の現象は – 語を並べるときに生じる現象 対象外 (音韻・意味・形態など)• 多くは各言語に固有 – 英語と日本語の文法的現象は全く異なる 文法的現象 説明 語順 SVO, 前置詞 一致 三単現の -s とその分布 格 格変化(he/himなど)とその分布 疑問文 助動詞倒置 DO支持 疑問文・否定文のDO挿入 wh移動 文頭の疑問詞(what/whoなど) 受動文 S V O => O be V-en by S 虚辞 意味を持たない it や there を主語に 主語繰り上げ It seems that S V => S seems to V 英語の文法的現象(一部)
  12. 12. 演繹 (Wikipedia より)演繹(えんえき、英: deduction)は、一般的・普遍的な前提から、より個別的・特殊的な結論を得る推論方法である。対義語は帰納。帰納の導出関係は蓋然的に正しいのみだが、演繹の導出関係は前提を認めるなら絶対的、必然的に正しい。したがって実際上は、前提が間違っていたり適切でない前提が用いられれば、誤った結論が導き出されることがある。近代的には、演繹法とは記号論理学によって記述できる論法の事を指す。 わかりませんw
  13. 13. 「演繹」を柔らかく言うと• 「正しいこと」の積み重ね – 前提となる仮定(仮説・原理・公理)を認めた上で – 順に読んでいけば、全てが正しいと言える• 主観が入らない。人によらない – 誰がやっても同じ理解・結論になる• 一番重要なことは「何を前提としたか」
  14. 14. 文法により言語を「記述」する• 次のことが出来れば、「言語を記述した」と定義 – 全ての文法的な文を文法操作で生成できる – 非文法的な文は生成できないことを示す• 実際には、個々の「文法的現象」について – 適格な文を生成できることを示す 全ての文の列挙なんて できないからね! – 非文を生成できないことを示す 仮説群生得説、普遍文法、 その言語の = 句構造、…… 文法 生成された 操作 文法的な文 (演算) 文全体 全て 辞書 (レキシコン) 完全一致!
  15. 15. 言語獲得を「説明」• 言語獲得を次のように「説明」する – 普遍文法 = 言語に共通のルール – 英語を獲得 = (英語 ー 普遍文法) を身につける• 言語獲得がかんたんということは……? 普遍文法=言語に共通のルール 日本語 ドイツ語 英語
  16. 16. チョムスキーの生成文法• 生成文法とは、 – ヒトの言語の文法的現象を演繹的に記述し、 – また言語獲得を説明するための仮説群 ≒ – 個別かつ例外だらけの言語それぞれが – きちんと生成できるルールを – できるだけ共通のものとして抜き出そう!
  17. 17. 生成文法の概略と変遷
  18. 18. まずは
  19. 19. 言語を記述するルールを 手に入れよう
  20. 20. 句構造文法 (生成文法 0.0)• 「文法」を表現する道具がなかった – 「句構造」と「句構造規則」を発明 S 範疇 説明 VP S 文または節 名詞NP N NP V 動詞 P 前置詞 N V Det N 形容詞 A D/Det 決定詞(冠詞) ~P ~句This is a pen
  21. 21. 句構造規則• Sからたどって、句構造を「生成」する – 書き換え規則=句構造の枝分かれ 句構造規則 S S S → NP VP NP VP VP VP → V NPNP NP V NP NP NP → N N V NP N V Det N N V Det N NP → Det N 品詞 → 単語This is a pen This is a pen
  22. 22. 句構造文法 仮説群生得説、普遍文法、 句構造、……、 その言語の = 文法 句構造規則 生成された 操作 文法的な文 (演算) 文全体 辞書 全てa, is, pen, this, …… ∈ ∈ S This is a pen VP NP NP こうやって N V Det N 言語を記述して This is a pen いく
  23. 23. チョムスキーの階層• 句構造文法はチューリングマシンと等価 – どんな言語も記述できる!(原理的には)• しかし規則が膨大になる – 現在形・過去形・否定文・疑問文・受動態 ……を生成する規則を動詞ごとに用意、とか 階層 文法 オートマトンタイプ-0 句構造文法 チューリングマシン 記述力がタイプ-1 文脈依存文法 線形有界オートマトン 一番高いけどタイプ-2 文脈自由文法 プッシュダウン・オートマトン 扱うのも 一番難しいタイプ-3 正則文法 有限オートマトン
  24. 24. 記述力のある「文法」を手に入れた! (原理的には)
  25. 25. 次は
  26. 26. 実際に文法ルールを構築できるようにしよう
  27. 27. [[改訂]拡大]標準理論 (生成文法 1.x)• 句構造文法に「変形規則」を導入 – 例:受動文を生成する「受動変形」 • 動詞ごとに受動文を生成する規則がいらなくなる• 文法を現実的に構築可能に! John calls Tom 句構造規則 で生成した Tom is called by John 文を変形
  28. 28. 接辞繰り下げ変形 動詞ごとに過去・ 完了・進行の規則を 用意しなくていい• 助動詞(Aux)は時制・法・相(完了・進行)からなる• 接辞(-ed や –ing)は「接辞繰り下げ変形」により直後の要素に付く S 中村他「生成文法の新展開」(p39)より NP Aux VP N Tns Modal Perf Prog V Mary [Pres] will have͡ en be͡ ing love 接辞繰り下げ変形 Mary will have been loving
  29. 29. 英語の変形規則日本語に当てはまりそうな 中井悟/上田雅信「生成文法を学ぶ人のために」(p71)より 規則は……
  30. 30. 英語の記述はだいぶ出来たけど• こんな状態 日本語 ドイツ語 英語
  31. 31. こうしたい!• 「個別言語ー普遍文法」が 限りなく小さいほど嬉しい 日本語 ドイツ語 英語
  32. 32. 今のアプローチのままでは 絶対無理だ……
  33. 33. いっそ「全部同じ文法」 ってのはどう?
  34. 34. GB理論/原理とパラメータのゕプローチ (生成文法 2.0)• 普遍文法に重点を置いて、完全リニューゕル – 前バージョン(標準理論)と互換性はありません• 言語を「共通部分」と「可変部分」に分離 – 共通部分 → 原理 • 全ての言語の文法的現象を共通の原理で記述 – 可変部分 → パラメータ • パラメータ:主に2値 • 脳内に「言語のデゖップス゗ッチ」がある゗メージ
  35. 35. Xバー理論 最初は ������と 書いていたけど、 印刷の都合で ������′ と 書くように• 句構造規則に変わるもの – X’ と書いて「Xバー」と読む XP• 右の XP ツリーが基本形 – X,Y,Z は範疇のテンプレート • X,Y,Z = N, V, P, …… YP X’ – Y, Z は空も可 X ZP
  36. 36. Xバーの構造例 X=I, Y=DP, Z=VP IP ※) I は「屈折辞」(時制などを含む範疇)でDP I’ Xバーでは文は IP で表すと仮定している I VP X=V, Y= ∅, Z=DPJohn V’ ∅ X=D, Y= ∅, Z=NP [Pres] V DP ∅ D’ love構造は全て D NP Xバーで the dog
  37. 37. 句構造規則 vs. Xバー理論• 句構造規則 • Xバー S → NP VP XP → YP X VP → V NP X → XP ZP NP → N NP → Det N – 1種類だけ! : – 原理(共通ルール化) にできる! – いろんなパターン
  38. 38. α移動• 変形規則に変わるもの – αは「なんでもいい」の意味(テンプレート)• 「任意の句を任意の位置に移動する」 – そんなんでいいの!? John calls Tom ダメでしょ う…… calls Tom John
  39. 39. フゖルタ • α移動で生成された「文」のうち、非文 法的な文を「フゖルタ」で制約する – フゖルタは共通原理として仮定する John calls Tomα移動 John calls Tom フ John calls Tom John Tom calls ィ × calls John Tom ル calls Tome John タ Tom John calls Tom calls John
  40. 40. フゖルタ• さまざまなフゖルタがあるが、詳細は省略 – 拡大投射原理 – 空範疇原理 – θ基準 – 格フゖルタ – 束縛原理 – 下接の条件 – :
  41. 41. パラメータ• 各言語固有の現象は「パラメータ」で切り替える – パラメータ=(主に)2値の「ス゗ッチ」• 例)語順のパラメータ(主要部位置パラメータ)パラメータ = 主要部(X)は補部(ZP)の前 パラメータ = 主要部(X)は補部(ZP)の後 XP XP SOVは SVOは こっち こっち YP X’ X’ YP X ZP ZP X
  42. 42. パラメータ• さまざまなパラメータがあるけど(ry – 主要部位置パラメータ – 空主語パラメータ – whパラメータ – : ベイカー「言語のレシピ」より パラメータの階層図ベイカー「言語のレシピ」を読むと、「あーほんとにパラメータだけで全ての言語が記述できるんだ~」という気分になれます♪
  43. 43. 原理とパラメータのゕプローチ/GB理論 (生成文法 2.0)• パラメータが違うだけの「一種類の文法」 – 句構造規則 → Xバー理論 – 変形規則 → α移動+フゖルタ(制約)• 記述力も一定以上(少なくとも英語は) 日本語 ドイツ語 英語
  44. 44. 問題点• 説明的妥当性(言語獲得の容易さ)は文句な し – パラメータを決めるだけ• しかし、原理が膨大かつ複雑怪奇に – 言語の例外をカバー&全ての言語を共通の原 理で記述しているうちに……
  45. 45. 文法を1つにするのに 夢中で
  46. 46. 「生得しているとしたら?」 ということをあまり考えてなかったなあ
  47. 47. ……
  48. 48. よし!
  49. 49. ミニマリスト・プログラム(MP) (生成文法 3.0β)• 生得性に重点を置いて、完全リニューゕル – ヒトの言語器官はどういう条件を満たさなければ ならないか? – その必要最小限の条件だけから、普遍文法を構成 することができるのではないか?• これまでのバージョン(標準理論、GB理論) と互換性はありません – またかよ
  50. 50. Bare Phrase Structure (最小句構造、裸句構造)• Xバー理論の N’ とか D’ とかって、「最小限 の条件」から説明つかないよね? DP • そういう余計な情報は D’ 一切加えない D NP N’ the N the book the book Xバー理論 Bare Phrase Structure
  51. 51. Move F(素性移動)• 時間の都合で、詳細は省略 – GBでの「α移動」の代わり
  52. 52. last resort(最後の手段)• GB理論の「α移動」では – 任意の要素を、 – 任意の位置に自由に移動 • 各種制約によってフゖルタリング• MP の「素性移動」は – 移動が必要な要素のみを、 – 移動が可能な位置に移動 • 移動は「認可が必要な素性」によって引き起こされる (詳細は省略)
  53. 53. 3つの生成文法を 比べてみよう
  54. 54. 生成文法で愛をささやく• I love you の構造を見てみよう – 全部似てるけど、MP が一番シンプル? – でもこれは時制などなどを考慮していない手抜き S IP love VP I’N N I VP love V N V N I love you I love you I love you 標準理論 GB理論 ミニマリスト・プログラム
  55. 55. ちゃんと手抜き無しで やってみた
  56. 56. 標準理論版 SNP Aux VPN Tns V NPI Pres love you
  57. 57. GB理論版 IP DP I’∅ D’ I VP D NP ∅ V’ [Pres] [] V NP I love you
  58. 58. ミニマリスト・プログラム版 IP I’ N I ������P I ������’ [D] [EPP] tI[Nom] [Nom] [φ] [Pres] ������ VP [φ] FF(you) ������ tlove NP [Acc] love ������ [Pres] you [Acc]
  59. 59. どうしてこうなった……
  60. 60. ミニマリスト・プログラム• 記述力はまだ GB 理論におよばない• 抽象性が高すぎて実感が困難• 発展途上 – まとまった書籍は [Chomsky 1995] か、それをベー スにしたもの(つまり新しくない) – 用語の日本語訳がまだ定まっていないものも多い• 専門家になる気がないなら、GB でやめとくのが いいかも
  61. 61. 生成文法って信じていいの?
  62. 62. 生成文法って本当なの?• そもそも範囲はかなり限定されている – 理想的母語話者を想定 – 意味や言語使用を捨象• 生成文法を演繹的に導出したわけではない – 状況証拠オンリー(反論多数←こっちも状況証拠) – ゕブダクション(仮説形成) = 何も証明していない言語獲得の研究には、2つの極端な立場がある。一つは、合理主義者(rationalist)の立場であり、デカルトからチョムスキーに至る。人間には生まれつき豊かな言語能力が備わると考える。もう一つは、経験主義者(empiricist)の立場であり、人間はいわば白紙状態で生まれると主張する。おそらく、真実はその中間にあるだろう。 テイラー/瀬戸「認知文法のエッセンス」より
  63. 63. 生成文法への批判• トマセロによる生成文法批判 – 普遍文法とか言っときながら英語ばっかり! – 生成文法家以外には認識されたことすらない概念 ばかり! – 「名詞」や「動詞」の言語普遍性すら怪しいのだ から、普遍文法なんてあるわけない!• ピンカー&ジャッケンドフによるMP批判 – Xバーはある!
  64. 64. 生成文法にこだわる必要はない• 生成文法には “fork” がいっぱいある – 主辞駆動句構造文法 (Head-driven Phrase Structure Grammar, HPSG) • 語彙が規則を持っている。文法≒辞書(レキシコン) • 記述力のある文法でありながら、コンピュータで扱える – 文法がオープンソースで開発&公開されている• 対案もあれこれ – 認知言語/認知文法 • カテゴリー、プロトタ゗プ、メタフゔー、メトニミー • 音韻と意味のレベルのみ認める – 「品詞」も意味的に定義(無茶しやがって……)
  65. 65. じゃあ生成文法ってウソ?• 機械学習諸分野で「真のモデル」や「真の分 布」って見たことあるの? – 自分は持ってないのに、他の分野には「真のモデ ル」を求めるなんて、ゕンフェゕだよね• 言語学習分野では役に立っている – 精緻に記述された英文法(標準理論ベース)• 個人的にはおもしろければOK!“Essentially, all models are wrong, but some are useful.” http://lingpipe-blog.com/2011/03/11/what-is-a-mathematical-model/
  66. 66. まとめ• 生成文法はきもかわいい刺激的でおもしろい – 恐ろしく高い目標に肉薄したら、目標をもっと高く して仕切り直し×2とか野心的すぎる…… – 60年前は句構造文法すらなかったのに!• 直接なにかの役には……立たないかなあw – 間接的なら、 • FSNLP/黒本が楽勝に!(統計的な内容除く) • モデル設計に気付きや根拠を与えてくれる(ことを期待) • 「言語処理と言語学(生成文法)」は 「機械学習と数学」みたいな関係かな(゗メージ)
  67. 67. 参考文献• 中島文雄「英語の構造」, 1980• 中井悟/上田雅信「生成文法を学ぶ人のために」, 2004• 大津由紀雄/他「言語研究入門 -生成文法を学ぶ人のために」, 2002• A. ラドフォード「入門ミニマリスト統語論」, 2004/2006• M. C. ベ゗カー「言語のレシピ – 多様性にひそむ普遍性をもとめて」, 2001/2003• M. D. Hauser/N. Chomsky/W. T. Fitch “The Faculty of Language: What Is It, Who Has It, and How Did It Evolve?”, 2002• M. Tomasello “What kind of evidence could refute the UG hypothesis?”, 2004• S. Pinker/R. Jackendoff “The faculty of language: what’s special about it?”, 2005• S. Pinker “Language Instinct – How the Mind Creates Language”, 1994 (邦題「言語を生み出す本能」, 1995)• 中村捷/金子義明/菊地朗「生成文法の新展開―ミニマリスト・プログラム」, 2001• 山梨正明/有馬道子「現代言語学の潮流」, 2003• 吉村公宏「はじめての認知言語学」, 2004• J. R. テ゗ラー/瀬戸賢一「認知文法のエッセンス」, 2008• 酒井邦嘉「言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか」, 2002• N. Chomsky “The Minimalist Program”, 1995• R. D. Levine/W. D. Meurers "Head-Driven Phrase Structure Grammar: Linguistic Approach, Formal Foundations, and Computational Realization", 2006• M. Tomasello “Language is Not an Instinct”, 1995

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