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生殖医療相談士養成講座 「不妊の心理学基礎」より

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生殖医療相談士養成講座 「不妊の心理学基礎」より

  1. 1. 第3講 不妊の心理学基礎 平山史朗
  2. 2. 個人にとっての不妊問題 Sense of Self ストレス反応 としての抑う つ、不安 孤立感 孤独感 罪悪感 欠損感 内面化された 不妊嫌悪 個人/家族の発達課題 生殖性/世代性 Narcissistic injury 危機 発達的 偶発的 喪失体験 複雑な悲嘆 あいまいな喪失 生殖物語 不妊(治療)に よるストレス周囲の 無理解 不妊に対する 偏見 生殖トラウマ
  3. 3. 不妊の(個人内)心理の理解 • 生殖物語 • 喪失としての不妊 –一般的な喪失と悲嘆 –不妊の喪失の特徴 –あいまいな喪失 • 生殖トラウマとしての不妊 –喪失のトラウマ –がん関連心的外傷後ストレス(PTS) • 生涯発達の視点 • マイノリティ臨床の視点
  4. 4. 生殖物語の理解 REPRODUCTIVE STORY
  5. 5. 生殖物語(Reproductive Story) • 定義:子どもの頃から始まって大人になっても抱き続けて いる無意識の語りごとであり、親になる人生をどのように 考えているかという物語 • 前提:私たちは誰でも生殖にかかわる物語を持っている • 起源:発達段階のごく初期から形成され、自己感(sense of self)やアイデンティティの中核をなす • 子どもの時から“書き”始められ、修正されながらも大人に なるにつれ、“書き直され”ていく • 一人ひとりに個々の生殖物語がある • 不妊と生殖物語:不妊という事態に直面したとき、物語が 進行しないことに気づく=傷つき(トラウマ)
  6. 6. 生殖物語を不妊ケアに生かす • 不妊という体験により変更を余儀なくされた生殖物語を、書 き換える作業を援助する • 「不妊患者に対するサイコセラピーでは,まずその患者がど のような生殖物語を持っているのかを丁寧に聞いていくこと が重要である。不妊という危機により意識化された部分と, まだ意識化されてはいないが抱き続けた生殖の物語を共に 辿っていき理解することである。そして不妊によって物語の “編集”を迫られることとなった患者に対し,それを書き直さ なくてはならなくなった悲しみを共有し,編集作業を共にし ていくことがサイコセラピーのプロセスだといえる。その際, セラピストは,患者の生殖の物語が当初の期待通りに進まず 書き直されたとしても,十分に満足し納得のできる物語とす ることが可能だという信念を持つ態度を一貫して患者に示し ていることが,患者の生殖物語の編み直しの支えとなるので ある」(平山,2010)
  7. 7. “喪失”としての不妊理解
  8. 8. 喪失とは • 喪失:その人にとって大切な人やものを失う体験 –精神分析学における対象喪失:愛情や依存の対象 を、その死あるいは生き別れによって失う体験 (小此木,1997) –人の資源において、 重大な減少を伴う出来事 (Harvey,1996) • 対象喪失はもっとも重大なストレス因 –ホルムスとレイ(Holmes & Rahe)のライフイ ベントのストレス値研究:重大な精神的ストレス を作り出すストレス因となる出来事のほとんどが 対象喪失であるという事実
  9. 9. 不妊の心理的喪失(Burns) 不妊によって失われるのは… • (潜在的な)人間関係、子どもを望む気持ち • 身体的/精神的健康 • 社会的地位 あるいは 威信 • 自尊心、アイデンティティ • 予定していた世界への信頼 • 安定した対人関係 • コントロール(統制)感覚 • プライバシー
  10. 10. 不妊の喪失の性質(平山) 1. 反復性:生理周期ごとに繰り返されるため喪失を悲しむ時間 的余裕がない 2. あいまい性:すでに存在する人を失うのではなく“誕生しな かった子を失う”事態のため喪失の対象が明確でない 3. 多様性:授かるはずだった子ども、親・家族イメージ、親に 孫を授ける機会(やそれに伴う婚家や実家における地位)、 社会的信用、女性・男性としての自信や価値、経済的時間的 損失など具体的象徴的さまざまな喪失を意味する 4. 非公認性:当事者も周囲も、さらには医療関係者にも悲しむ べき喪失として認識されにくい 5. フラクタル性:生理周期ごとのミクロな喪失と究極的に幼い ころから夢見ていた子ども(想像の赤ちゃん)を得られない ことによるマクロな喪失の両方のグリーフプロセスが同時並 行的に進行する
  11. 11. 不妊の喪失を理解したケアの基本 • 不妊は複雑であいまいな喪失体験であると認識 する • 不妊症治療は喪失体験の連続であると認識する • 喪失を悲しむことは“必要なこと”であり積極的 に促進される必要がある • 悲しみの感情を適切に表現できるように援助す ることが大切である –悲しみの表現には個人差がある • 不妊の喪失を悲嘆することの難しさも理解する • 喪失体験を人生の物語に意味づけるための支援
  12. 12. 不妊という喪失の受容とは • 「子どもなんてほしくなかった」「悲し くない」と否認することではない • 望んでいた子どもがもてなかった悲しみ は一生消えるものではないが、その悲し みによって打ちのめされたり、「自分の 人生は不幸だ(失敗だ)」と感じたりす ることがない状態 • 「もてなかった子」の居場所を作ること
  13. 13. “トラウマ”としての不妊理解
  14. 14. トラウマ? • もともとは外科の用語:身体的外傷 • 現在では精神的な傷のこともトラウマ(心 的外傷)と • 心的外傷体験はPTSD症状を引き起こしうる –再体験、回避と麻痺、過覚醒など • 複雑性PTSD(ハーマン)概念の出現
  15. 15. 不妊はトラウマとなりうる • 不妊体験はトラウマ反応を引き起こしうる 外傷的な出来事(Traumatic event) • 不妊の診断、侵襲的な検査、治療の不成功、 これらすべてがトラウマとなりうる • 流産、死産、新生児死亡、障がい児の出産 なども同様 → 生殖のトラウマ reproductive trauma
  16. 16. 生殖のトラウマ • 不妊のどんな経験がトラウマになるのか?不妊症 と診断されたり、そのために必要な治療をするこ とが、私たちの身体の完全性、つまり健康であり、 欠陥はないという感覚を脅かすことになるからで ある。人間の身体の最も基本的な役割の中に、生 殖能力がある。もしそれがうまく機能しなければ、 自分に関する全てに対して疑問を抱くことになる。 こうして不妊は身体的にも精神的にも自己という 感覚を脅かしトラウマになるのである。不妊は 様々な複雑な喪失を意味し、最も大切なパート ナーとの関係を脅かし、世間との連帯感を揺るが すのである。 「子守唄が唄いたくて」 J.ジャフェ,M.ダイアモンド,D. ダイアモンド(著) 小倉智子(訳) バベルプレス社
  17. 17. PTSD概念の適用可能性 • がん関連心的外傷後ストレス(PTS) –がんの診断を受けた一部の患者が発症する病態。 がん関連の心的外傷後ストレス(PTS)の症状に は、恐怖を伴う思考や睡眠障害、集中力低下や過 度の興奮、孤独感、日常生活への関心の喪失など がある。また、ショックや恐れ、無力感、不快感 などの感情が症状に含まれることもある。がん関 連PTSは診断後いつでも起こりうる病態で、治療 中やその後にも生じうる。PTSの症状を軽減する ために、リラクゼーション法、カウンセリング、 支援グループ、特定の薬剤などが利用できる。 (「がん情報サイト」より) • 「不妊関連心的外傷後ストレス」はありうる?
  18. 18. その他 不妊心理の理解に有用な概念
  19. 19. 不妊は“発達的危機”である • 個人としての発達 –Eriksonの漸成的発達理論 •「Ⅶ.生殖性・世代性」の課題達成の困難 • 夫婦・家族としての発達 –Carter & McGoldrickの家族発達理論 • 「新婚期」の次は「小さな子どものいる時期」 • 「成長」しない不妊のまま発達する発達ライ ンは? –複線経路・等至性モデル(TEM)の可能性 ⇒停滞イメージ
  20. 20. 移行期としての不妊状態 • 子どものいない夫婦から子どものいる 家族へ • どちらの世界にも属していない:帰属 感がもてない • アイデンティティが確立しにくい:不 妊プライドはもちにくい • 移行期に生きる今の自分を大事にしに くい
  21. 21. 内面化された不妊嫌悪 • 「不妊であること」に対する社会の偏見を、 当事者自身が取り入れ、自分を「異常であ る」と感じてしまうこと • 「不妊患者の不妊嫌い」

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