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意志+面白さ=魅的?

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意志+面白さ=魅的?

  1. 1. 意志+面白さ=魅的? M2 小田切史士
  2. 2. 大人を探して そもそも大人の学習とは何なのだろうか? 身近なところから「大人」の学習方法を探していくことにしていきたい。 2 つの典型的学習方法  一般的な学習方法は大きく分けて 2 つ存在する。 皆さんは子供の時、英単語を繰り返しノートに書いて 覚えようとしたり、友人と問題を出し合ったりした経 験があると思う。このような入力(刺激)と出力(反応) を繰り返す学習は「行動主義」と呼ばれ、大人になっ てからも推奨される学習方法である。  もう1つは、皆さんの周りには「○○が好きでしょ うがない」という所謂オタクがいたと思われる ( ある いはあなたがそうだったのかもしれない )。彼らの学 習は「好きだからやる」という純粋な意志が存在す るのみの、「趣味としての学習」と言える。  この2つの学習はどちらも大人が行う学習方法であ る。しかしこれらの学習は子供が行う学習方法でもあ る。そのため、上記の学習を「大人が行う時」と「子 供が行う時」には一体どんな違いが存在するのか?̶ という疑問が生まれてくる。  私は今回、後者の「趣味としての学習」に焦点を あて、「大人の学習とは何か」を掘り下げていくこと にする。 行動主義的な学習は図の通りである。 最初に問題 ( 刺激 ) を読み、次に解答 ( 反応 ) をする。そしてそれが正解であればそれが強化 となり、これをひたすら繰り返すことで記憶に定 着させる。 ノートに何度も書く行為など、このような学習方 法を実践している方は少なくないと思われる。 標本採集、オタク、部活動̶etc 今回はこの趣味としての学習に焦点を当てていく。 ○○について 答えよ。 解答する。 正解する。 刺激 反応 強化 繰り返す
  3. 3. 足りない欠片は? ∼ 2 つの魅力∼ 魅力ある学習者  「趣味としての学習」をもとに大人の学習を考える 時、ヒントとなるのは近年増加しつつある社会人大学 院生の方々である。彼らは必要がないにも関わらず、 あえて「学びたい」という意志の下に、再び学習の場 へ戻ってくる̶彼らの大多数は社会の中で「学ばねば ならない」と感じた問題を深い洞察の中から得たから であろう。  だが学びたいと思っても、多様な理由で学習の場 へ足を踏み入れることが出来ないまま終わってしまう 人が多い。では学びの場に戻れる人間は何が違うの か?̶それは恐らく「やるべきである」という「確固 たる意志」を持っていることだろう。この「確固たる 意志」による情熱的な姿勢は「趣味としての学習」 より1つ上の次元のものと考えて良いと私は考える。  また自身のやりたいことを精力的に取り組む姿に は誰しもが胸を打たれ、そこに「輝ける何か」を感 じさせてくれるものである。そんな周囲の者を魅了し てやまない学習者である事は、「大人の学び」を考え る上で大事ではなかろうか? そして学習にも魅力を!    では魅力のある人物による学習が「大人の学習」でよ いだろうか?いくら学習者の精神に魅力を感じたとして も、その内容も大人の学習であるとは限らない̶中身に も「魅力」があってこそ、「大人の学習」足りえるだろう。  学習における魅力とは人に注目されるような「面白 さ」のことであると言える。   認知科学会の現会長である鈴木宏昭氏は自身のブログ にて、「面白い研究」とは「何らかの参照系が存在し、 かつその参照系から見ると説明がつかないこと」と述 べている̶つまりある種の考え方(一般常識や既存の 学術的事象など)に対して、別の考え方から検証する と異なる事実が浮かび上がることである。  これは「意外な事実」が面白さであると言い換える ことができる。赤ん坊は意外な事実を目の当たりにする としばらくその事実を凝視し、我々も例えば手品師の起 こす意外な出来事を目の当たりにすると驚くと同時に面 白さを感じる。 「面白い」とは驚きを人々に与える意外性のことだとい えるだろう。 ある妥当な もの考え方 (参照系) その考え方に 基づいた 考え方 別の考え方に 基づいた 意外な事実 別の 参照系 当 然 実 は
  4. 4. 私が魅了された学習 ペパーバーグ博士とアレックス 鳥と会話した女性  心理学者の「アイリーン・M・ペパーバーグ」博 士はその「人を魅了する学習」を行い続けた研究者 の 1 人である。  彼女は化学物理学の博士課程の真っただ中にいる 時に、偶然テレビで取り上げられていた動物と人間 のコミュニケーションに関する番組の内容に大きな感 銘を受けたとして、全くの畑違いであるにも関わらず 比較心理学の世界へと転向してしまったという̶はた から見たら無謀以外の何物でもないことを実践してし まった女性である。  彼女は動物の中でも鳥類を採り上げ、鳥類がいか に高度な認知機能を有するかの研究を行い、最終的 にアレックスと言う名のヨウム ( 鳥類 ) が訓練次第で は少なくとも「50 の物体、7つの色、5つの形、6 までの数字」の意味を理解した上で会話の際に用い ることが可能であり、また彼らヨウムが「2 歳児の感 情と 5 歳児の知性」を有することを学術的に示した。 数々の名著が出版されており、かつ高校英語の教科書に博士 の研究の内容が採り上げられたこともある。
  5. 5. バードブレインと 揶揄するには賢すぎるアレックス 鳥に秘められた「知性」  当時の動物学習に関する研究は先程取り上げた行 動主義的な方法̶即ち、刺激と反応による「オペラ ント条件付け」と呼ばれるものが主流であった。しか し彼女は社会的な営みなくしては、学習が成立する 訳がないという考えの下、従来の単なる反復練習と は異なり、自分以外に競う相手が存在する中での学 習を行わせた。またこの時に、ただ単語 ( 物の名前 ) を覚えさせるのではなく、その物体の「区別」をつ けさせながら学習を行わせた。  その結果、訓練を始めて僅か数週間で、アレックス は食後に普段貰っている紙が偶々、貰えなかった時 に「ペーパー」と喋ることで要求をする行為を行うよ うになった。また「銀色の鍵」を与える訓練を行い 始めると、「赤い鍵」をたまたま見かけた時に、色が 異なるにも関わらず「キー」と叫んだことも知られて いる。 単語だけではなくアレックスは文章を適切に使うこと もできる。日常で他の研究者が博士に叱られた時に 「アイム・ソーリー」と言っていたのを見て、自分が博 士に悪戯をして怒鳴られた時に、そうつぶやくことを訓 練なしに成し遂げた。  また「バナナ」と「チェリー」という用語を覚えた結果、 その 2 つが果物であることから、他の果物に対して「バ ネリー」と名付けて造語の作成まで彼はやってのけてい る。   特に印象的なものとしては、ある日の訓練で客人に知 性を見せたいという博士の意図が分かっていたアレック スは、あえて客人が帰るまで博士の出す問題には一切 答えず沈黙に徹するという悪戯をしかけた。そして客人 が帰宅した瞬間に、彼は大声で正解を何度も繰り返し たとのことである。  こんな彼が行った奇跡のような数々は従来の「鳥は 馬鹿である」という常識を覆すもので、実に多くの人 に驚きを与え、また「面白い」と思わせた。 鳥は馬鹿で 人語を 理解しない。 鳥は馬鹿である 訓練で単語を 覚えても 意味は 理解出来ない 物のカテゴリー化 文章の適切な使用 造語の作成 意図を汲んで沈黙 社会的な 営みの中で 知性は磨かれる 当 然 実 は 参照系に照らし合わせた彼女の研究
  6. 6. 私が魅了された学習者 アイリーン・ペパーバーグ博士 逆境の中での折れない意志  彼女の研究は以上のような数々の事実を持ってして も、「鳥類はオウム返ししない」という考えに縛られ た人々からは理解が得られなかった。また常に彼女 は研究費が貰えるかどうか、研究施設が確保できる かどうかの戦いの日々の中で研究を進めて行かなけ ればならなかった。  例えば研究費の申請を NIMH に行った結果、「魅 力的」であるという評価を受けて一度は採用となった のに、資金不足のためという理由で結局は支払われ ないということがあった。  また数年毎に研究施設との契約が切れてしまうた め、その度に自分の研究に理解を示してくれる場所 を求めてアメリカ中を転々としなければならず、思う ように研究が捗らないことも少なくなかった。  何よりも彼女にとって逆風となったのが、論文を提 出しても審査員が読む価値がないとしてロクに中身も 読まずに不採用とすることが多々あったことである。  だがそんな中でも彼女は研究を辞めることはなく、 実に楽しみながらヨウムとの日々を過ごしてきた。い 上の写真はアレックスが色や形を識別するのを 実演している様子である。 つでも辞められる ( むしろ続けることの方が困難な ) 状況の中で、彼女はこの道を進み続けるという意志 を人々に見せつけてきた。その結果があの数々の魅 力的なアレックスの言動となっている。  彼女のような逆境にも負けず、意外な事実を突き 付けることで見る人々に面白いと感じさせ、そして本 人が率先して学ぶことを楽しむその姿に多くの人々が 魅了され続けていることこそ、「大人の学び」と呼ん で良いのではないだろうか? 参考文献 『アレックスと私』 幻冬舎 著:アイリーン・M・ペパーバーグ 訳:佐柳信男 (2010) 『ことばと思考』 岩波新書 今井むつみ (2010)  「鈴木宏昭 創発と相互協力のために」 http://wsd.irc.aoyama.ac.jp/ hiblog/suzuki/ 『ヒルガードの心理学』 ブレーン出版 R.L.アトキンソン他 (2002)

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