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ハリウッド流映画脚本講座・特別編 「ゲーム」は「キャラクター」がドライブする 〜ヒットする、原作付きキャラクターゲームシナリオの作り方〜

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2016/10/29 シナリオ工房月光主催・ハリウッド流映画脚本講座・特別編「ゲーム」は「キャラクター」がドライブする 〜ヒットする、原作付きキャラクターゲームシナリオの作り方〜で使用したスライドです。
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セッション紹介:
シド・フィールドが提唱した「ドラマチックストラクチャー(三幕構成法)」は、今や様々な映像コンテンツで活用されているシナリオ構成法の基礎中の基礎ですが、ゲームシナリオにおいてもそれは十分に役に立つものです。

しかしゲームシナリオには、その他映像コンテンツ向けシナリオとは明らかに違うポイントが複数あり、しかもそれがドラマチックストラクチャー的構造をそのままシナリオ構成に持ち込むのを難しくしています。しかしこれらの一見困難に思えるポイントは、ドラマチックストラクチャーを「キャラクターがストーリーをドライブするための方法論」と捉えてみれば、全て解決してしまうものばかりです。

本セッションでは、ゲームシナリオに対しドラマチックストラクチャーを適用する際にどんな問題点が生じるかを考察しつつ、それらを「ゲーム」としてどのようにクリアしていくか提案をいたします。そしてその有効な活用例として、すでに多くのファンを抱えている版権タイトル向けに、まったく新規にゲームを企画する際に、どのようなポイントを押さえていけば、原作タイトルに負けない優れたゲームシナリオを作り上げることができるか、そのノウハウをご紹介しようと思います。

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ハリウッド流映画脚本講座・特別編 「ゲーム」は「キャラクター」がドライブする 〜ヒットする、原作付きキャラクターゲームシナリオの作り方〜

  1. 1. ハリウッド流映画脚本講座・特別編 「ゲーム」は「キャラクター」がドライブする ∼ヒットする、原作付きキャラクターゲームシナリオの作り方∼ ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社 コミュニティエバンジェリスト 小林信行 2016/10/29 Sat
  2. 2. 自己紹介 : 小林 信行 ユニティテクノロジーズジャパン合同会社 コミュニティエバンジェリスト  UnityやMayaをはじめとする各種3Dツールの研究、ゲーム制作のノウハウの普及 をしてます。『ユニティちゃんプロジェクト』の言い出しっぺの一人でもあります。 前職は『涼宮ハルヒの追想』『涼宮ハルヒの約束』『とらドラ・ポータブル!』などの 原作付きキャラクターゲームの企画&監督(クリエィティブ・ディレクター)。 結果、Motion PortraitやLive2Dに代表される2.5D系キャラクター表現が、多くの コンシューマゲームに導入されるきっかけを作りました。 最近は暇があると、Shader Forgeでいろいろなシェーダーを作ってます。 元々は統計を使った経済学を研究していたのですが、コンテンツ業界に入る きっかけがGAINAXに入ったことだったので、アニメーションの制作技術に関して もむやみに詳しいです。
  3. 3. ゲームシナリオは何故、 作るのが難しいのか? ゲーム用にシナリオを書くことは、一般的に難しいと言われています。 そこで実際にどんな部分が難しいのか、その他のメディア向けのシナリオとどう違う のかを考えてみましょう。 そこからゲームシナリオならではの、シナリオ設計の仕方が見えてきます。
  4. 4. 優れたゲームシナリオを作る人は、 「ゲームデザイナー」である必要がある l  「優れたゲームシナリオ」とは、ゲームプレイとの相性がよいシナリオのことと言っても よいでしょう。そのようなシナリオは、ほとんどの場合、「プレイヤーがどんな遊び方を するか?」を想定しながら書かれることになります。 l  「プレイヤーの遊び方」を設計するのは、ゲームデザイナーです。 もし優れたゲームシナリオが欲しいならば、ゲームデザインをする時点で、 どのようなテキストが必要になるか、前もって設計&構成されている必要があります。 l  ゲームシナリオの特異性は、この設計&構成部分に「面白さ」のほとんどがかかってい ることにあります。しばしばフレーバーテキストと呼ばれる、一見簡単なテキストでも ゲーム内で配置されると高い効果をあげられるのは、ゲームプレイ上で「高い効果が あげられるように」前もって設計された上で、ゲームに実装されるからなのです。
  5. 5. 本日は、 「ゲームシナリオの作り方」 のセミナーなのですが、まずは 「映像向けのシナリオの作り方」 から入ります。
  6. 6. おさらい:シド・フィールド流の三幕構成法         「ドラマティック・ストラクチャー」 Ø  シド・フィールドが名作と呼ばれる映画脚本に共通として見られるエピソード構成上 の特徴を、パラダイムという形式でまとめたもの。 Ø  さらに名作脚本に共通する経験則を理論化して、新規にシナリオを執筆する際に 注意すべきこととして、方法論(脚本術)として提示した。 Ø  映画脚本を視覚による時間芸術と規定し、シナリオ構成とは 「設定したテーマを表現するのに必要な、出発点と終点を決めること」と定義した。 「120分の上映時間内で、いかに無駄なくテーマに沿ってイベントを割り当てていく ことを通じて、ドラマを構築する」という方法論。 Ø  内容は実践的であり、かつ具体的。ワークブックの形式となっている。 Ø  オチがある脚本を執筆する際に非常に有効な方法論であると同時に、 シナリオの良い点/悪い点を評価する際の視点としても有効な方法論。
  7. 7. まとめ:「ドラマチック・ストラクチャー」とは l  「120分の上映時間内で、いかに無駄なくテーマに沿ってイベントを割り 当てていくことを通じて、ドラマを構築する」という方法論 シナリオライターが表現したい「テーマ」を、映像を通じて 観客に無駄なく、わかりやすく伝えるための方法論が、 「ドラマチック・ストラクチャー」である。
  8. 8. まとめ:テーマ、ストーリー、劇的欲求とキャラクター l  「テーマ」とは、シナリオライターがこれから書こうとしているシナリオを、「登場人物(キャラクター)と その行動」とに絞って、前もって簡潔にまとめた、「劇的内容」のことである。 l  「テーマ」は、「ストーリー」という形式で描かれる。 「ストーリー」とは、「キャラクター同士の行動がぶつかり合う様」を描いたものである。 l  「キャラクターの性格」は「その行動」に表れる。 キャラクターは、何をいうかではなく、何をするかによって表現される。 l  魅力あるキャラクターは、必ず「超目的(劇的欲求)」(そのシナリオを通じて、キャラクターが達成し たいと願うもの)を持っている。 l  ストーリーは、主人公であるキャラクターが、「当初より持っていた超目的を果たす」か、もしくは 「そのストーリーを通じて、そのキャラクター自体が変化する(超目的自体がより高位にシフトする)」 ことでオチを付けることができる。 「魅力あるキャラクター」とは、そのシナリオのテーマを体化した存在であり、 それらのキャラクターが行動することで、ストーリーは描かれる。
  9. 9. 「キャラクター」 と 「キャラクターゲーム」 の関係 ここで、「映像向けシナリオ」と「ゲームシナリオ」を結ぶものとして、 「キャラクター」という要素が出てきました。 今度は「キャラクター」について注目してみましょう。
  10. 10. 「キャラクター」とは? ​ その存在を他と区別するために、名称を付与され、その他 音声、外見、性格、世界観等によって特徴づけられた抽象的 概念を表現するために創作された、絵画の著作物を指す。 ゆえに、一度公開された「キャラクター」は、その生みの親で すら自由に改変できない部分が発生する。そういう意味では、 実在の人物と同じ。
  11. 11. 「キャラクターゲーム」の定義 l  そのゲームに登場する各キャラクターの「外見」「性格」「行動原理」、さらには「超目的」を含む 「設定」等、そのキャラクターを特徴づける各要素が、ゲームをプレイする以前からプレイヤーに 知られている(「プレイ以前から、キャラがすでに立っている」)ゲームのこと。 l  もしくはそれらの各要素を深く知ることが、ゲームプレイの報酬となっているゲームのこと。 (それらのキャラクターと親しむために、プレイヤーがゲームプレイを始めるゲームのこと。) l  様々なメディアで展開されるIP(Intellectual Property/知的財産)活用の一環として製作される ゲームのこと。いわゆる「二次メディア創作としてのゲーム」だが、ゲームが一次メディアである、 IP作品としてのゲームも存在する。 ※Blizzard Entertainmentの『OVERWATCH』が、それをものすごく意識しているのに驚いた。 登場する各キャラクターが、プレイヤーやファンの中で、 すでに確立しているゲームが、「キャラクターゲーム」である。
  12. 12. ゲームプレイにおけるキャラクターの役割 Ø  プレイヤーが直接操作し、ゲームにインタラクトするためのアバター (インタフェース的役割) Ø  AIによって制御される、ゲームプレイの関門になるエネミー (アグレサー的役割) Ø  ゲームプレイを円滑にするヘルパー(サポート的役割) Ø  プレイヤーの愛着や好意を受ける対象(フレンド的役割) Ø  ゲームプレイの全体を通じて、シナリオライターの用意した ストーリーテリングを担う役者(アクター的役割) ゲームジャンルが進化し、多様化することでキャラクターの役割も進化する。
  13. 13. ゲームプレイにおけるキャラクターの役割 Ø  プレイヤーが直接操作し、ゲームにインタラクトするためのアバター (インタフェース的役割) Ø  AIによって制御される、ゲームプレイの関門になるエネミー (アグレサー的役割) Ø  ゲームプレイを円滑にするヘルパー(サポート的役割) Ø  プレイヤーの愛着や好意を受ける対象(フレンド的役割) Ø  ゲームプレイの全体を通じて、シナリオライターの用意した ストーリーテリングを担う役者(アクター的役割) ゲームジャンルが進化し、多様化することでキャラクターの役割も進化する。 ゲームプレイの 「体験」に左右される 要素 (プレイヤーに委ねられる) 「シナリオ」に 基づく要素 (シナリオライターが制御可)
  14. 14. まとめ:「ゲーム」におけるキャラクター体験とは? Ø  ゲームにおける「キャラクター」とは、 特定の外見や設定によって他のグラフィックと区別される、 個々のゲームプレイをプレイヤーに代わって実行し、 結果そのゲームプレイを体験するための 「エージェント/アバター」であるのと同時に、 ゲームプレイ全体を通じてストーリーテリングを行う 「アクター」でもある。 Ø  プレイヤーが「あるゲーム」で体験する、キャラクター体験には、 常に上の2つが入り混じっている。 ⇒従って、シナリオライターが完全に制御しきれない、   プレイヤーとの共同作業に結果が委ねられる部分が常にある
  15. 15. 世界観、シナリオ、プレイ体験、ストーリーテリング の4つに分けて、「キャラクター体験」を考えよう! l  ゲーム内でプレイヤーが体験する「キャラクター体験」は次の4つから構築される 1.  世界観:プレイヤーが入る世界を規定する、プレイヤーも含めたキャラクターが存在する世界 の前説部分。プレイヤーがその世界に登場する前提説明でもある。 2.  シナリオ:プレイヤーがそのゲームで体験しうるゲームパーツの集合体(だから、この中には、 NPCによるフレーバートークも、ダンジョンにおけるレベルデザイン、さらにADVの選択肢も全て 含んでしまう)。そのゲームで体験できる「遊びの趣向」のこと。 ※本定義は岩崎氏の独自定義 3.  ストーリー:シナリオの中で順番が決まっており、一連の順序でしか実行できない複数のパー ツ。ゲームデザイナーが前もって用意するもので、それらをプレイヤーが順次展開して体験す ると、その体験は「ストーリーテリング」になる。ゲームデザイナーのコントロール下にある。 4.  プレイ体験:プレイヤーがゲームをプレイすることでシナリオから得られる体験。プレイヤーはこ れを「ストーリー」と受け取るが、実際にはストーリーテリングとユーザー自身のプレイ体験が入 り混じったものになっている。 岩崎啓眞『Colorful Pieces of Game 16 Re:ゼロから始めるゲームシナリオ』2016/08/13
  16. 16. Gameplay First (まずゲームプレイありき) が意味するもの
  17. 17. Ø  Gameplay First(まずゲームプレイありき) Ø  Commit To Quality(クオリティに全力をあげよ) Ø  Play Nice; Play Fair(素晴らしい仕事をフェアな方法で行おう) Ø  Embrace Your Inner Geek(自らのオタクマインドを信ぜよ) Ø  Every Voice Matters(すべてのスタッフの意見に耳を傾けよ) Ø  Think Globally(世界規模で考え、各国の文化を尊重しよう) Ø  Lead Responsibly(責任をもってリードしよう) Ø  Learn and Grow(学びそして成長しよう) The massive 12-foot high orc and wolf statue in the courtyard is cast in bronze, and was created especially for Blizzard by WETA, the New Zealand special effects workshop that worked on the Lord of the Rings movies (and the upcoming Hobbit films). It's an impressive piece of work, and the plaque lays out Blizzard's motto: Dedicated to creating the most epic entertainment experiences... Ever.
  18. 18. 「ゲームプレイ」を構成するもの 1.  「挑戦/選択/掛け」による、「勝敗」の決定、 もしくは「成功/不成功」の決定があること 2.  ゴールが存在することと、そのゴールに至るまでのルールがあること。 ルールにもとづいて、様々な挑戦への成否が決まり、 それによって進行や結果が分岐すること 3.  エンターティンメントであり、かつインタラクティブであること 4.  競合するアクティブなエージェント(エネミー)が存在し、 プレイヤーに挑戦してくること 5.  敵や競争者のパフォーマンスを阻害するために、 「攻撃」という手段がとれること 後半の要素が加われば加わる程、その「ゲームプレイ」はよりエキサイティングになる
  19. 19. ゲームにとって、Gameplay Firstは欠かせない要件だが… Ø  「ゲームプレイ」に相応しくないストーリーテリングは、まず間違いなくプレイヤーを 飽きさせる。 Ø  ドラマ性の高いストーリーテリングはしばしば、ゲームプレイとの間に難易度という 形で不整合を発生させる ⇒ 「ルーク・スカイウォーカー問題」 Ø  ゲームプレイはプレイヤーにとって、強力なキャラクター体験でもある。 故に、「あるゲーム」中でプレイヤーが体験する「キャラクター体験」は、 必ずゲームプレイに基づく「プレイ体験」と、ゲームプレイ中に差し込まれる ストーリーテリングに基づく起承転結のある「ストーリー」を寄せ集めたものになる ⇒ 「ゲームにおけるストーリーとナラティブの関係」 従って、Gameplay Firstを前提とする限り、シナリオライターは ゲーム内でプレイヤーが体験する「ストーリー」を100%制御 (演出)することはできない
  20. 20. その他にもゲームシナリオには難しい点がある ü  ゲーム用のシナリオは、他のどんな映像作品のシナリオよりも長いので、作るのが大変だ! ü  ゲームには、ふつう何らかの分岐があるけど、その分岐の取り扱いをどうする? ü  同じく、複数エンディング場合、その取り扱いをどうする? ü  「ドラマチック・ストラクチャー」では時間配分を重視するけど、ゲームの場合、プレイ時間は プレイヤーごとに異なるもの。それをどのようにして、一定に時間配分をする? ü  仮に、「シングルスタート/マルチエンド」のゲームシナリオに「ドラマチック・ストラクチャー」 を適用する場合、ミッドポイントはどこになる? ü  原作付きの場合、ゲームプレイヤーのアバターは、原作と同じ主人公がいい? それともゲームオリジナルのプレイヤー用キャラクターを用意したほうがいい? ü  ゲームの主人公には超目的がないほうが、プレイヤーは扱いやすくない? ü  一口に、ゲームといっても様々なジャンルがあるし、結果、シナリオも全然違うんじゃないの?    etc…
  21. 21. 以下の要素が、「ゲームシナリオ」を難しいもの にしている l  ゲームプレイから得られる「ストーリー」は、シナリオライターが完全に 制御できない部分がある。 l  ゲームプレイには、映画のように決まったプレイ時間があるわけではない。 l  ゲームプレイには、プレイヤーによるなんらかの選択や挑戦が必要であり、 その結果として発生する分岐が欠かせない。 従って映画のように一本道で描けるシナリオはほとんどない。 ⇒従って、「ドラマチック・ストラクチャー」のような一般的で、かつ優れた   シナリオ構成法をそのまま適用できるゲームシナリオは数がすくなく、   それ以外の多くのゲームシナリオは、毎回手探りでつくらざるをえない。
  22. 22. 「ゲーム」は ストーリーを語る手段としては、 ふさわしくないのか?
  23. 23. ゲームプレイと一体化したシナリオは、プレイヤーに 強烈なキャラクター体験を与えることができる l  「キャラクターは、何をいうかではなく、何をするかによって表現される」という言葉 があったが、ゲームシナリオの場合、必ずしも「キャラクターにセリフを語らせる」こ とだけで、エピソードポイントを作る必要はない。 l  むしろ、ゲームプレイを構成する要素となるものを、エピソードポイントに配置する ことで、そのシナリオはよりゲームプレイとの一体化を増すことができる。 l  次のページは、ドラマチック・ストラクチャーの各エピソードポイントに配置すること ができる、ゲームプレイの構成要素の一例である。
  24. 24. ゲームシナリオのあり方は、融通無碍。 ゲームプレイとシステムの数だけあるもの l  「あるキャラクターのあり方(シナリオ)」に対し、矛盾が生じるぐらいに自由なゲーム プレイを許す場合(例えば、「シナリオ上は誰からも尊敬を受ける立派な騎士なの に、ゲーム中、村で自由に略奪をしたりNPCを虐殺できる」など)は、プレイするプレ イヤーにとっても違和感の原因になり得る。そのような場合、プレイヤーがシナリオ の想定以上の行動をとった場合、ゲームシステム側でペナルティを設けることで、 プレイヤーが体験するキャラクタープレイ上での辻褄を合わせることはできる。 l  むしろゲームシナリオは、ゲームシステム上でゲームプレイと積極的に組み合わせる ことで、プレイヤーと共に完成させるものと考えると、既存のメディア向けのシナリ オでは考えられないほどの幅が出てくる。
  25. 25. ゲームプレイとシーンも含めたメカニクス (視覚的仕組み)の設計を常に優先すべし l  ゲームシステムが固まらない内のテキスト発注は、大抵うまくいきません。 ゲームシステムが固まった段階で、シナリオ構成を開始することになります。 l  またゲーム制作の場合、実際のシナリオテキストの「ライティング工程」と ゲームプレイを設計する「シーン設計/スクリプティング工程」は、よほど恵まれた 環境でない限り平行作業となります。ですので、ゲームデザインをする人は、実際 のライティングに入る前に、シナリオ構成を全て終了し、シナリオライターチームの チーフに発注を済ませておく必要があります。 この段階では、ディレクション権限がある人は、プレイヤーが直接見て、手に触れる もののディレクションを最優先とし、迷わず「シーン設計」に専念すべきです。 l  シナリオの出来/不出来は、ほぼこの最初のシナリオ構成段階にかかっています。
  26. 26. 優れたゲームシナリオを 構成するためには? 優れたゲームシナリオとは、プレイヤーが体験するゲームプレイに積極的に絡んでくる シナリオだと言ってもよいでしょう。ところであるシナリオにおいてストーリーをドライ ブするのは、キャラクターです。同時にキャラクターは、ゲームプレイにおいても重要な ユニットを占めるものです。そのような観点から、キャラクターを見直してみることで、 優れたゲームシナリオの構成法が見えてきます。
  27. 27. ドラマチック・ストラクチャーの要点 ⇒4つにまとめることができる 1.  各シナリオのテーマに沿って、7つのエピソードポイントを、三幕構成を意識しつつ 冒頭から結末まで配置できれば、シナリオは完結する 2.  テーマとは、主人公であるキャラクターの行動によって描かれる 3.  シナリオ中で、主人公であるキャラクターは自己の持つ超目標(劇的欲求)を 実現しようと行動する 4.  オチで描くべきなのは、そのシナリオで語られるエピソードがどう決着するか、 もしくはそのシナリオを通じて主人公であるキャラクターがどのように変化したか (あるいは変わらなかったか)である
  28. 28. ドラマチック・ストラクチャーのメソッドをゲームシナリオ にそのまま適用しようとする際に発生する問題点 1.  ルート分岐と複数エンディングがそのままでは扱えない Ø  ドラマチックストラクチャーの構成法は、映画などのように、一本道で表現できるシナリオを前提にして いるので、複数エンディングがあったり、途中でルートが分岐するような場合をそのままでは扱えない 2.  ゲームの場合、主人公はプレイヤーキャラである場合が多く、しばしばキャラクター としての色がない(目立った特徴がない/超目的がない)場合も多い Ø  一人称視点のゲームだと、しばしば主人公はゲーム内のカメラでしかない取り扱いの場合も多い 3.  複数エンディングがあるということは、プレイヤーごとに、主人公に複数の 超目的を持たせるようなプレイができるという意味なのだろうか?
  29. 29. ドラマチック・ストラクチャーのメソッドをゲームシナリオ にそのまま適用しようとする際に発生する問題点 1.  ルート分岐と複数エンディングがそのままでは扱えない Ø  ドラマチックストラクチャーの構成法は、映画などのように、一本道で表現できるシナリオを前提にして いるので、複数エンディングがあったり、途中でルートが分岐するような場合をそのままでは扱えない 2.  ゲームの場合、主人公はプレイヤーキャラである場合が多く、しばしばキャラクター としての色がない(目立った特徴がない/超目的がない)場合も多い Ø  一人称視点のゲームだと、しばしば主人公はゲーム内のカメラでしかない取り扱いの場合も多い 3.  複数エンディングがあるということは、プレイヤーごとに、主人公に複数の 超目的を持たせるようなプレイができるという意味なのだろうか? これらの問題点のほとんどは、 マルチエンディングタイプのゲームの 「主人公」をプレイヤーキャラだと 考えていることから発生する。 その発想自体を変えてみよう!
  30. 30. 発想の転換:ストーリーテリングをNPキャラクターに体化する l  マルチエンディングタイプのゲームの場合、各エンディングへとつながるルート(パス)の テーマとなっているNP(ノンプレイヤー)キャラクターが「各ルートの主人公」と考えるべき。 なぜなら、そのような作品の多くは、そのルートのキャラクターが自分の超目的を果たすか、 プレイヤーの介入によってその超目的が変化するシナリオがほとんどだからである。 ⇒ギャルゲーの場合、それは「攻略ヒロイン」という形をとる。 l  プレイヤーキャラクターは、ゲーム内におけるプレイヤーのエージェントとして、 各ルートの主人公であるNPキャラクターのいずれかを選択し、シナリオに配置されている エピソードポイントを「NPキャラクターと共に体験する」存在である。 ⇒つまり、ストーリーテリングを「攻略ヒロイン」という「NPキャラクター」に体化し、   プレイヤーキャラと共に各ヒロインのエピソードポイントを体験させることで   「ストーリーテリングとプレイヤーのキャラクター体験を共存させている」 この手法は、世界観を背負っているキャラクターが多く存在する 「キャラクターゲーム」では、ほぼ共通して使えるメソッドである。 ※「泣きゲー」の日常芝居テキストが長くなりがちなのは、これを積極的に利用しているからとも言える。  「泣きゲー」の場合、日常芝居描写を長時間プレイヤーに読ませることで、「時間に基づく愛着」を疑似恋愛体験としてプレイヤーに体験させている。
  31. 31. キャラ別ルートの主題となるキャラクター がそのルートの主人公である l  キャラ別ルートにおいて、超目的を果たす主人公なのは、 そのルートの攻略対象とされる「NPであるキャラクター」である。 ギャルゲーの場合、それはしばしば「攻略対象のヒロイン」として提示される。 l  「ストーリーテリング」の主役は、「NPであるキャラクター」(攻略キャラ)で、 「プレイ体験」の主役は「プレイヤーキャラクター」と分けるとスッキリする。
  32. 32. マルチエンディングタイプのゲームシナリオに ドラマチック・ストラクチャーを導入する手順 1.  マルチエンディングタイプのゲームシナリオにドラマチックストラクチャーのメソッド を取り入れる場合、各攻略キャラ単位にドラマチックストラクチャーのメソッドで構 成した個別ルートのプロットを、各エピソードポイントが発生する『場所』と『時間』 に着目して一度分解した後で、各イベントをゲーム進行のタイムテーブル上で並 列化し、プレイヤー視点から再構成することで実現することができる。 2.  共通イベントを各ルートの結節点及び分岐点として利用することで、ルートの途 中変更ポイントを効果的に配置することができる。その際、各ルートを辿ることで どのような情報をプレイヤーが得るか、しっかりと確認しておく必要がある。 3.  各分岐ポイントを個別ルートのエピソードポイントに一致させることで、分岐後の 展開をドラマチックに演出することが可能となる。
  33. 33. マルチエンディングタイプのゲームシナリオに ドラマチック・ストラクチャーを導入する手順 1.  マルチエンディングタイプのゲームシナリオにドラマチックストラクチャーのメソッド を取り入れる場合、各攻略キャラ単位にドラマチックストラクチャーのメソッドで構 成した個別ルートのプロットを、各エピソードポイントが発生する『場所』と『時間』 に着目して一度分解した後で、各イベントをゲーム進行のタイムテーブル上で並 列化し、プレイヤー視点から再構成することで実現することができる。 2.  共通イベントを各ルートの結節点及び分岐点として利用することで、ルートの途 中変更ポイントを効果的に配置することができる。その際、各ルートを辿ることで どのような情報をプレイヤーが得るか、しっかりと確認しておく必要がある。 3.  各分岐ポイントを個別ルートのエピソードポイントに一致させることで、分岐後の 展開をドラマチックに演出することが可能となる。 「関連性のある物語要素をつなげて、結節点や分岐を作っていく」という発想は、物語自動生成AIにおける「プランニングによる 物語生成技術」の手法(http://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-66656409 三宅陽一郎/2016)とよく似ていて興味深い。
  34. 34. シナリオ構成表とシナリオフローを作ることが、 ゲームシナリオ制作の本質である l  個々の「ゲームプレイ」と密接に絡む「シナリオ」を作成するという意味では、 シナリオ構成表とシナリオフローを完成することが、ゲームシナリオ制作の 本質だということができます。何故ならば、これらの資料にもとづいて実際に ライティングされるテキストには、必ず「ゲームの仕様」に基づく制約が課せら れることになり、自由度はないからです。 もしテキストライティングの際に、シナリオ構成表やシナリオフローを変更したく なった場合には、その変更がバグを引き起こさないかチェックした上で、変更を 許可するかどうかという判断になります。一方、シナリオ構成表やシナリオフロー にバグが発見された場合には、必ずその変更はシナリオテキスト側に反映される ことになります。 l  どんな場合でも「シナリオ構成表とシナリオフロー」は、「シナリオテキスト」よりも 上位のドキュメントであるという意識をもつようにしましょう。
  35. 35. 完成したシナリオをさらに 磨き上げるには? ドラマチック・ストラクチャーなどの優れた構成法を用いて作られたゲーム用シナリオ は、それ自体が「物語」という名の「迷宮(ダンジョン)」を構成しています。 ダンジョンはそれ自体で十分に攻略する面白さがあるものですが、同時に多くの人 が迷宮の中で迷い、クリアできないこともしばしばあるものです。ここではさらにそれ を遊びやすくし、プレイヤーが自力でクリアできるためには、どういう工夫をする必要 があるかについて、考えていきます。 いわば、あなたが作り上げた迷宮のガイドの仕方です。
  36. 36. 「シナリオディレクション」は、 「校正」とは違うことを理解しよう l  「シナリオディレクション」とは単なる「校正」ではなく、エピソードを適切に配置し、 ストーリーをより面白くするためにあるものです。 l  「シナリオディレクション」で見るべきポイントは、以下の4つです。 1.  伝えるべきテーマがきちんと伝わっているか? 2.  キャラクターの行動原理は一貫としているか? 3.  ふさわしいタイミングでふさわしいエピソードが展開されているか? 4.  そのエピソードを見せるのにふさわしい演出が提案されているか?   以上のことを、シナリオライターにアドバイスすることで「気づかせ」、そして   「よりよい方向へリライトを促す」ことがシナリオディレクションの目的です。 l  もちろん誤字脱字や言い回しのチェックも重要ですが、それだけではいけません。 上の4点を心がけるようにしましょう。   
  37. 37. コントラストのある「分岐選択」を 意識しよう l  人の認識は、コントラストが高いものほど、違いがはっきりとわかります。 l  同様に、選択肢を設ける場合には、「各選択肢の内容」と「選択した結果がどのよ うに変わるのか?」が、プレイヤーに違いが明確に認識できるものになっているか、確 認をします。 l  もし「選択の内容」や「選択した結果の違い」がはっきりとしないような選択肢が沢 山あると、それはプレイヤーのストレスへと繋がります。そのような選択肢設計は、 極力ないように、構成段階から注意しておく必要があります。 l  特に「選択の成功と失敗」は、なるべく早いうちにプレイヤーに知らせたほうが、 良い効果をもたらしますが、もし演出上それが難しい場合には、エンディングで どの選択肢がキーであったのか、ヒントを出すような工夫をします。
  38. 38. ケーススタディ: 『涼宮ハルヒの追想』に搭載されている選択形式 l  『涼宮ハルヒの追想』に搭載されている選択形式は、以下の4つの形式。 1.  SDキャラによるマップ移動:しかもマップは、北高祭パンフをモチーフにした、 タイムテーブルになっている⇒世界線が変わるとタイムテーブルも変更される。 2.  アイテムによる行動選択:その場の課題に対して、どのアイテムを使って切り抜けるかという形 で返答する。所持していないアイテムに関わる行動は、選択肢上ではロックされており、当初は 見えない。そのロック状態で選択すると、キョンのモノローグという形でヒントが与えられる 3.  会話シミュレーションでのミッションクリア:『とらドラP!』に搭載されている会話シミュレーション の複数会話相手バージョン。話題を選択しながら、各キャラクターと会話ができる。各キャラク ターは振られた話題に対してリアクションする。それらを繰り返し、会話を上手に進めながら、 キャラクターの気持ちや思考を、望む方向へと導くことができれば、ミッションクリアとなる。 4.  通常選択肢:二択もしくは三択による行動選択 l  このように様々な形の選択形式を設けることで、その場の選択の重要性を わかりやすく示すことにした。
  39. 39. アイテムを手に入れたことで、同じ時空間ポイントで 「遅刻をとがめる朝倉」から逃れることができるようになる。 朝倉に呼び 止められる なにもしない ???(遅延証明を使う) 「遅延証明」 をもらう
  40. 40. 「次元ブックマーカー」画面は、プレイヤーが意識的に時間線をループ させたり、別の時間線にジャンプする手段に使うだけでなく、ヒント画 面にもなっている。次元ブックマーカー画面内の「プレゼントボックス」 は、その位置でなんらかのアイテムがもらえることを意味している。 同時に、現在自分のいる場所(赤いランプの点滅している場所)の先 に、どれくらいの規模の分岐があるかをスクロールして見ることができ るので、今後の展開を予測しつつ、プレイをすることができる。
  41. 41. 「アイテム」を、プレイヤーが 知った情報の整理に活用しよう l  コントラストのある分岐構成のひとつとして、重要な分岐が発生するポイントで プレイヤーにアイテムを渡すのはよい方法です。 l  重要な分岐では、しばしばシナリオ上で重要な情報がプレイヤーに対して開示さ れることになります。そのポイントで、特定のアイテムをプレイヤーに渡しておくこ とで、「その情報を知っていること」と「特定のアイテムを持っていること」が 同じフラグで管理できます。 l  これはプレイヤーが後に攻略情報を友人間で共有する際に、シナリオのネタバレ をしないで、ヒントを教えるためのよい手段となります。 l  アイテムがある場合とない場合とで、あるルートへの入り方の説明がどう変わる かを考えてみましょう。アイテムがあることの有用性が、すぐにわかると思います。
  42. 42. 「意識できない分岐」が発生する時には、 プレイヤーが気づくシグナルとなりえる 演出を設けよう l  優れたテキストアドベンチャー作品の多くは、「パズル」に似ています。これらの 「パズル」を楽しく遊ぶためには、「解き味」を作ってやる必要があります。 l  パズルの解き味とは、適度なタイミングで「試行錯誤」(選択)の「結果」がわかる メカニクスのことです。 l  これらの試行錯誤で一番むずかしいのが、その結果が選択を行ったかなり後でわ かる場合です。これは多くの場合、「プレイヤーが意識できない分岐」という形で 発生するので、プレイヤーにとっては何を間違ったのかが理解しずらく、ストレスの 原因になります。 l  以上の対策として、例えば『とらドラP!』では、SDキャラクターによる寸劇を取り入れ ました。SDキャラクターによる寸劇の多くは、これらの選択肢の直後と、意識できな い分岐が発生した直後に入れてあります。
  43. 43. マルチエンディングタイトルは、 エンディング後にヒントを入れよう l  マルチエンディングタイトルの「面白さ」であり、同時に一番むずかしいことは、「様々 なエンディングが存在することを、いかにプレイヤーに伝え、繰り返しプレイをうなが すか?」という点です。多くのプレイヤーは、マルチエンディングタイトルであっても全 てのエンディングを見るまでプレイしないという、アンケート結果もあるぐらいです。 l  その対策として、『とらドラP!』では、各エンディングを迎えた後に、担任のゆりちゃん から、「今のエンディングの点数と、別のエンディングを見るためのヒント」をガイドし てもらうことにしました。点数というのは、今のエンディングが、バッドエンデイングな のか、ノーマルエンディングなのか、それともスペシャルなのかをプレイヤーが知るた めのよい手段となります。 l  このように、エンディングの後は、他にもっと良いエンディングがあることを示唆し、 間違った理由をヒントとして提供できる良いタイミングです。積極的に利用しよう。
  44. 44. ゲーム世界が変化していく様を プレイヤーに印象深く気づかせるには? l  プレイヤーの選択の結果によって、ゲーム世界が変化していく様をみるのは、ゲーム 体験の中でも最も刺激的なものです。 これらの世界の変化も、「コントラスト」を意識して変化させると、プレイヤーに驚きと 共に受け入れられることになります。 l  このような演出で特に有効なのは、「細かい持続的な変化」と「大胆な結果の変化」 でコントラストをつけてやることです。 l  「細かい持続的な変化」は、当初は気づきにくいもので、ある時点でプレイヤーが振 り返ってみると変化していることに気づくものです。このような変化は、シーン背景 だったり、BGMなどに少しづつ仕込んでおきます。 l  「大胆な結果の変化」は、ゲームの場合、ストーリーテリングを司るキャラクターとのイ ベントの中で設けると、非常にドラマチックです。その時に、それまでの細かい変化 についても触れるとよいでしょう。
  45. 45. ゲームの序盤では、展示スペースを完全にコンピ研に取られていた 文芸部であったが、プレイヤー「キョン」が活躍をすることで、合法 的に取り戻すことができる。 時空間の修正が行われる度に『THE DAY OF SAGITTARIUS』の バージョンが下がっていくのに注目。
  46. 46. 「最初の10分間の展開」には、 特に気を払おう l  シナリオがウリの作品の場合、オリジナルゲームでも、原作付きゲームでもまったく 同様ですが、プレイヤーが体験する最初の10分間の展開(つかみの展開)には、 特に気をはらいましょう。 l  これらのゲームで、最初の10分間がつまらない場合は、ほとんどのプレイヤーが脱 落します。ですので、この最初の10分間はとにかくプレイヤーの興味を惹くものにし て、そのゲームに含まれる様々なギミックを極力見せるようにしたほうが、よい結果 をもたらします。 くれぐれも、背景のみのまったく変化のない画面で、画面にでない プレイヤーキャラが延々とモノローグを続けるような展開にはしないように!
  47. 47. 原作付きゲームの場合には、 原作と同じ展開をするように心がけよう l  各原作には、その作品特有の「物語の盛り上がり方のカーブ」というものがあります。 それを「物語曲線」といいます。 l  ある原作を別のメディアで展開する時には、元々の原作が持っている物語曲線を、 メディアごとのプレイセッションの時間単位を元にスケーリングした上で、元の原作 が持っているカーブと同じような形状を構成するように、緊張と緩和のコントラスト を作ってやり、全体として同じような盛り上がりをするようにしてやると、非常に高 い効果が得られます。 l  メディアごとの時間単位のスケーリングは、映像なら「分単位」で構成されるのが、 ゲームならば「5∼10分単位」になるというようなものです。 例えば、『涼宮ハルヒの追想』の場合は、原作である『涼宮ハルヒの消失』が約160 分の作品だったのに対し、平均クリア時間が約20時間程度になるように、上の変 換タイムスケールに則るような形になるように構成しています。
  48. 48. 自力でのクリアを促すように プレイヤーを上手に誘導しよう! l  どんなゲームでもそうですが、プレイヤーが強烈な「プレイ体験」を経験するのは、 自力でクリアした場合です。その一方で、ゲームに沢山の選択肢が搭載され、自由 度を増していくと、その分自力でのクリアは難しいものとなっていきます。 l  そこで、プレイヤーの自力プレイを促すように「ガイド」を設けましょう。ガイドを設ける タイミングは、シナリオやゲームプレイが搭載し終わった直後のβ版が最適です。 l  『涼宮ハルヒの追想』の場合、ほぼ遊べるようになった段階で、猿楽庁さんに依頼し て、ノーヒント状態でのオールクリアにあたってどんな困難に出会い、どのようなルート に陥りがちか、テストプレイをしてもらいました。その結果を元に、迷いやすいポイント やわかりづらい選択肢を改めて見直し、プレイヤーが正しい選択に気がつきやすいよ うに、様々な「ガイド」を設けました。 結果として、『とらドラP!』の時以上に自力でクリアするプレイヤーが増えただけでなく、 「二徹して一気にクリアした」という感想などもいただきました。
  49. 49. ケーススタディ: 『涼宮ハルヒの追想』に搭載されているガイドについて l  『涼宮ハルヒの追想』に搭載されている「ガイド」目的のシステムは、以下の4つ。 1.  朝比奈さん(大)からのメール:朝比奈さんからのメールは、重要分岐が発生した後か、間もなく 発生するようなポイントにプレイヤーが至ると手に入る。イベント予告のようなもの 2.  ロック選択肢でのキョンのモノローグ:キョンのモノローグは、心のつぶやきの形式をとっているが、 そのロックを解除できるアイテムが、ゲーム中のどの辺りにあるかを暗示している 3.  タイムテーブル画面上でのスタンプ:タイムテーブルの特定の場所を通ると、スタンプが手に入 るが、実はそのスタンプが手に入る地点のイベントが重要イベントになっている 4.  各セーブポイントごとのあらすじ:文庫の背表紙にある「あらすじ」風のテキストは、そのセーブ ポイントに至るまでの大体のあらすじと、キョンがこれからすべきことのヒントになっている。 セーブ後しばらくすると忘れがちな、その時点までのプレイの記憶と、次にやらなければいけな いことをプレイヤーに思い出させるために、「あらすじ風」に実装されている。 l  これらのガイドは、テストプレイの結果を元に実装したもの。(当初からその予定) これらのガイドシステムに用いられているテキストも、全てP. 23で定義されている 「シナリオ」であることに、注意して欲しい。
  50. 50. 原作付きゲームの 企画の一例 最後に、原作付きゲームの企画の一例として、『涼宮ハルヒの追想』はどのように作ら れたのかを簡単にご紹介します。 『涼宮ハルヒの追想』はいわゆる、「シングルスタート/マルチパス&マルチエンド/シン グルグランドエンド」のシナリオ構成をとっていますが、これはADVのシナリオ構成の 中でも、特に難易度の高いものです。 その構成を作る際にどのような注意をしたのかを見てましょう。
  51. 51. ケーススタディ: 「シングルスタート/マルチパス&マルチエンド/ シングルグランドエンド」形式のADV構成法 l  「シングルスタート/マルチパス&マルチエンド/シングルグランドエンド」とは、複数のマルチエンドをプレイ ヤーが体験した後で、はじめて全体の大トリを務めるテーマルートがオープンし、最終的にシングルのグラン ドエンドへと至るものを言う。 l  例としては、『この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO』や『涼宮ハルヒの追想』など。ADVゲームの特徴でも ある周回プレイを、「ループする世界」のような設定で取り扱うような場合となじみが良い。 l  そもそも、何故そのような構成にするかというと、プレイヤーは周回プレイを繰り返す度にゲーム内で同じ 経験をするにも関わらず、ゲーム内のキャラクター達はまったくその影響を受けないという、「至極当たり前 のこと」をなんとか「ゲーム内で収拾してやりたい」という、シナリオライター的な挑戦(欲望)がその発端だ と思う。 l  この手法は、「プレイヤーの選択によって、ゲーム世界が変わっていく」ような状況を表現したい場合に、特に 有効なのだが、その一方で、このタイプのゲームを作る場合には、「シナリオ構成をいかに破綻させないか、 最初にきっちりと設計をしておくこと」が普段以上に重要になる。特にクリアするのに必要なアイテムを各 ルート間にばらまくように配置するような場合、シナリオ構成がしっかり出来ていないと、下手するとクリア できないゲームが出来てしまうこともある。 l  この章では、「シングルスタート/マルチパス&マルチエンド/シングルグランドエンド」の構成である、 『涼宮 ハルヒの追想』を制作するにあたって、どのような資料を作りながらシナリオを構築したかを見てみよう。
  52. 52. 原作者サイドに確認する資料には、 全てのオチを付けること l  原作付きゲームの場合、必ず原作サイドにその企画を打診する機会があります。 その際に原作者サイドに出す資料には、扱うキャラクターの行動原理の分析も 含めてて、「全てのシナリオの発端からオチまで確認する」ようにします。 l  また、その機会に、原作者サイド側が制作にあたってもっているガイドラインを 確認するようにします。ガイドラインとは、具体的には「このキャラクターにはどんな ことをやって欲しくないか」です。ここを各キャラクターの行動原理の確認と共に、 きちんと詰めていくことで、各キャラクターへの理解を深めることが重要です。 l  原作サイド側と打ち合わせができるタイミングはそう多くはありません。 従って、ゲームを企画するゲームデザイナーには、その打ち合わせの際にわかった 様々な条件をその場で、素早く反映して、即提案できることが望まれます。
  53. 53. ゲーム構成に必要なシナリオフローと、 プレイヤーが体験するストーリーフローは 違うものであることを意識せよ l  これはしばしば勘違いされているのですが、制作側がゲームを構成する際に必要 とする「シナリオフロー」と、プレイヤーがゲームをプレイする際に体験することにな る「ストーリーフロー」はまったく違うものです。 l  これは普段は表には出ない問題なのですが、『涼宮ハルヒの追想』で搭載したよう な「次元ブックマーカー」画面や、『この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO』の 「A.D.M.S」のような、パズルゲーム的な解き味を高めるシステムを搭載したい場合 には、きちんと意識をしておく必要があります。 l  『涼宮ハルヒの追想』の場合、「次元ブックマーカー」画面は、ゲーム制作用のシナリ オフローに独自のアドレスを設定することで、最終的にそのアドレスからストーリー フローが自動作成されるようにしました。そのことで、万が一シナリオフローに変更 が発生しても、ストーリーフローの再調整が必要ないように作業の軽減化を図りま した。
  54. 54. http://www.psychelia2.com/haruhi_tsuiso_flow.html シナリオフローをストーリーラインに展開することで、 実際にプレイヤーが直面するストーリーフローが完成する。 『涼宮ハルヒの追想』の場合、それは5つの階層(フェイズ) に分かれている。 これらをゲーム中でUI/UX向け画面として表示したものが、 「次元ブックマーカー」画面である。 アドレスによるノード管理:シナリオフローをストーリーラインに 展開するための工夫
  55. 55. ケーススタディ: そもそもなんで『ハルヒ』のゲーム化に あたって『YU-NO』をモチーフとしたのか? l  それは、原作である『涼宮ハルヒ』シリーズおよびそのアニメ化作品が、そのジャン ルにおいて「古典」と評される他の傑作のパロディでもあるからです。 従って、ハルヒをゲーム化するにあたっても、なんらかの「古典的傑作ゲーム」の パロディであるべきだと考えたわけです。 l  その意味では、『この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO』という作品は、美少女ゲー ムの文脈の中で生まれたマルチエンディングタイプのADVゲームの中でも、 その解き味までも再現することが難しい、まごうことなく古典的傑作です。 l  それを今の技術で再現し、さらに未来への可能性を示すことが、『涼宮ハルヒ』を ゲームの題材とするからにはふさわしいだろうと考えたのです。 l  ちなみに、『涼宮ハルヒの追想』が完成した時に、菅野ひろゆき氏に贈呈させていた だきました。その後、氏から「古いゲームだけど、それを復活させてくれてありがと う」とのお言葉をいただいたのは、よい思い出です。
  56. 56. 参考文献 l  『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術』 シド・フィールド/フィルムアート社/2009 l  ゲームシナリオ構成法 小林信行 http://www.slideshare.net/nyaakobayashi/2015-62958129 l  『Colorful Pieces of Game 16 Re:ゼロから始めるゲームシナリオ』 岩崎啓眞/2016 l  CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン 大野功二 http://www.slideshare.net/KoujiOhno/cedec2016 l  『「レベルアップ」のゲームデザイン 実戦で使えるゲーム作りのテクニック』 スコット・ロジャース/オライリー・ジャパン/2012 おまけ:作業用ワークシート「ストーリー構成マスター」 https://drive.google.com/file/d/0B3oaXWaXwfzOUGF3RHUxZWxSUFU/view?usp=sharing 自分だけのオリジナルストーリーを作りたい人のためのワーク用雛形シートです。

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