Successfully reported this slideshow.
We use your LinkedIn profile and activity data to personalize ads and to show you more relevant ads. You can change your ad preferences anytime.

ホビー・アート・インディー・産業――表現の多様化をもたらす複数のゲーム制作場の研究

556 views

Published on

2018年6月9日(土)に東北社会学会の研究例会で発表させて頂いたスライドをアップしました。

Published in: Science
  • Be the first to comment

ホビー・アート・インディー・産業――表現の多様化をもたらす複数のゲーム制作場の研究

  1. 1. ホビー・アート・インディー・産業 ―表現の多様化をもたらす複数の ゲーム制作場の研究 東北学院大学 小林 信重
  2. 2. 自己紹介  専門  社会学、経営学、ゲーム研究  著作・論文(発表関連)  『ゲーム産業成長の鍵としての自主 制作文化』(東京工業大学(博士論 文)) ,2013.  Transnational Contexts of Culture, Gender, Class, and Colonialism in Play: Video Games in East Asia, Palgrave Macmillan,2016.  『デジタルゲーム研究入門』ミネル ヴァ書房,2019(予定). 2
  3. 3. 問題意識 近年、大企業主導の既存産業の外側で、多様 なメディア作品が自主制作されている  自主制作: 制作自体が目的であるような制作  「作りたいから作る」、生計を立てることの優先度は低い  マンガ同人誌、「初音ミク」を使った楽曲など 特に、個人や小規模集団が制作したデジタル ゲーム(以下、ゲーム)が世界的人気に  Angry Birds(2009年)、LIMBO(2010)、 Minecraft(2011年)、Terraria(2011年)など
  4. 4. 自主制作ゲームに関する記事 (『日経MJ』2018年6月1日号)  出典:https://twitter.com/nikkeimj/status/1002363757069205504
  5. 5. 問題意識 文化的作品の生産・消費の条件やその影響を 分析する、「文化生産論」「文化生産場論」など の社会学的研究から見ても、興味深い現象  制作者の個性が直接的に反映された作品が登場  制作者・流通者・消費者の関係がグローバル化 しかし、ゲーム自主制作を行う人びとの場(以 下、自主制作場)の特徴や、自主制作場と産 業との様々な関係に関する研究は、管見の限 り、あまり行われていない。  場(field): 特定の関心(動機)や規範、慣習を共 有する人びとの相互作用によって形成される世界
  6. 6. 本発表の内容 そこで本発表では、次のことを考察します。  ゲーム自主制作場の盛り上がりの背景  自主制作場に関する先行研究  自主制作場と産業の差異  自主制作場の中での差異  理念型としての「4つのゲーム制作場」の特徴、作品  4つの制作場概念のメリット  日本と米国のゲーム制作場の比較  本研究の貢献と今後の研究課題
  7. 7. ゲーム自主制作場の盛り上がりの背景  情報通信技術  ブロードバンドの高速化(固定・移動)  スマートフォンの普及  デジタル配信サイト(PC、スマホ、ゲーム機)  消費  世界中のゲームが購入可能に  生産  インターネットで世界中にゲームを販売可能に  パッケージ製造費等がかからない  (無料)ゲーム制作ソフトウェアの普及
  8. 8. STEAM(PCゲーム販売サイト)  出典:https://store.steampowered.com/?l=japanese
  9. 9. Unity(ゲーム制作ソフトウェア)  出典:https://unity3d.com/jp
  10. 10. 自主制作場に関する先行研究(社会学) SF大会や同人誌即売会の自主制作者の研究  Jenkins 1992; 永井 2002; 東 2010など 課題  自主制作者が「生産者」とみなされていない。  カルスタの「受け手」論に準拠しているため、「産業=生 産者、自主制作者=消費者・ファン」という見方を前提  パロディの分析が中心。オリジナル作品は分析してない。  自主制作場と産業との間の差異や、両者の関係も 分析されていない。  制作スタイルの相違、場の間の人材・作品の移動など  自主制作者の動機や場の多様性は分析されず。
  11. 11. 自主制作場に関する先行研究 (社会学・経済学) トインビー「プロト市場」  経済の論理だけでは説明できない音楽生産の場  非経済的動機で音楽が制作される場 アンスロピー、ウエストコット「クラフト」  プロト市場をさらに二つに分類する視点を提示。自 主制作者はインディーという言葉でまとめられること が多いが、実際には関心や価値観の対立がある。  クラフト:制作自体の楽しさや自己表現に関心。ホビイスト やアーティストたちの世界。経済的利益を求めない  インディー:名声・金銭の獲得、生計を立てることに関心 出口・小山ら「多様性と経済的持続性」  多様性(ニッチな作品)と経済的持続性は対立
  12. 12. 本発表の目的 先行研究の概念の検討と、これまで行った調査 の分析結果に基づき、次の点について説明  ①自主制作場と産業の差異  ②自主制作場の中での差異
  13. 13. ゲーム制作場の分類のための主な基準 ―制作の四つの動機―  78名へのインタビューから制作の四つの動機を抽出  ①制作自体の楽しさ ②交流 ③評価 ④金銭  制作者自身が、産業との違いを説明する際に利用する基準 ―同人でゲームを作られたいというモチベーションは? A: もともと描くのが好き(①)なのもありますし、一緒に作っている人が いるからこそ、一緒にそのままやっていける(②)というか、必ず定期的 にデータとかを渡したら、レスポンスも返ってきますし。そういうふうに、 いろいろ話をしたりとか楽しいですし。 B: 大前提で、文章を書くのが好きだというのが一番で、次にはやっぱり 一人でも面白いって言ってくれる人がいれば(③)。あとはマスターアッ プ[完成]の達成感と、コミケで「面白かったです」って買っていってくれ る人たちの顔を見る、あの快感はちょっと他ではなかなか味わえない んで、そこだけですね。お金だけ考えたらね、同じ時間残業した方が、 全然お金になる(④)もんね。
  14. 14. 自主制作場 産業 主な動機 非経済的 (楽しさ、交流、評価) 経済的 (金銭) 制作人数 少ない 多い 損益分岐点 低い 高い 制作期間 短い 長い 制作の自律性 √ 制作の柔軟性 √ 作品や制作者の 多様性 √ 作品の特徴 実験的。制作者の価値観 を反映した尖った作品 保守的。売り上げが 見込めるシリーズ作品 経済的持続性 (生計維持可能性) √ 自主制作場と産業の差異
  15. 15. 自主制作場の中での差異 自主制作場における関心(動機)の対立  アンスロピー、ウエストコットは自主制作場にある対 立を、「クラフト」と「インディー」という言葉で類型化  クラフト:制作自体の楽しさや自己表現に関心。ホビイスト やアーティストたちの世界。経済的利益を求めない  インディー:名声・金銭の獲得、生計を立てることに関心  しかし、アンスロピーらが提示した「クラフト」概念に は、次の2種類の場が混在  ホビー場: 制作自体の楽しみや交流のために、ホビイス トがゲームを制作する場  アート場: 自己や社会の批判的表現、それによる評価の 獲得のために、アーティストらがゲームを制作する場  そこで「クラフト」場をさらに上の2つの場に分類してみます。
  16. 16. 理念型としての「4つの制作場」 (自主制作場と産業) 先行研究とインタビューから、ゲーム制作場、特 に自主制作場を類型化した「理念型」が下図。 具体的事例 フリーゲーム アートゲーム インディーゲーム 商業ゲーム 動機 非経済的 (制作自体、交流) 非経済的 (評価) 非経済的+経済的 (評価+金銭) 経済的 (金銭) 制作・流通規模 小規模 小規模 中規模 大規模 作品の傾向 実験的 実験的 実験的~保守的 保守的 作品・制作者の 多様性 多様性(大) 多様性(大~中) 多様性(中) 多様性(小) 経済的持続性 持続性(小) 持続性(小~中) 持続性(中) 持続性(大) ホ ビ ー 場 ア ー ト 場 イ ン デ ィ ー 場 産 業 ハ ー ド コ ア カ ジ ュ ア ル 自主制作場
  17. 17. 理念型としての「4つの制作場」 (先行研究との関係)  トインビー  文化制作場を2つ(プロト市場/産業)に分類  アンスロピー、ウェストコット  ゲーム制作場を3つ(クラフト/インディー/産業)に分類  本発表  ゲーム制作場を4つ(ホビー場/アート場/インディー場/産 業)に分類 ホ ビ ー 場 ア ー ト 場 イ ン デ ィ ー 場 産 業 プロト市場(トインビー) クラフト(アンスロピーら)
  18. 18. 理念型としての4つのゲーム制作場の特徴 動機  ホビー場: 非経済的(制作自体の楽しさ、交流)  アート場: 非経済的(評価)  アートゲーム: ゲームの伝統的文法を批評する作品や、 現代の政治・経済・社会を批評するゲーム  インディー場: 非経済的(評価)+経済的(金銭)  産業: 経済的(金銭) 場の関係  対立  分業・協力  人材・作品の移動
  19. 19. 4つのゲーム制作場の作品 ホビーゲーム  制作者の好みや立場を反映した作品 アートゲーム  ゲームの伝統的文法を批評する作品や、現代の 政治・経済・社会を批評するゲーム インディーゲーム  制作者の関心と、市場における流行の両方を考慮 しつつ作られたゲーム 商業ゲーム  市場における売上を重視して作られたゲーム
  20. 20. 4つのゲーム制作場の作品(例) ホビーゲーム ホビーゲーム  制作者の好みや立場を反映した作品  作品名: 『TUMIKI Fighters』(ABA Games)、『ハーバーランドでつかまえ て』(JAM工房)
  21. 21. 4つのゲーム制作場の作品(例) アートゲーム アートゲーム  ゲームの伝統的文法を批評する作品や、現代の 政治・経済・社会を批評するゲーム  作品名: 『The Stanley Parable』(Galactic Cafe)、『Papers, Please』 (3909)
  22. 22. 4つのゲーム制作場の作品(例) インディーゲーム インディーゲーム  制作者の関心と、市場における流行の両方を考慮 しつつ作られたゲーム  作品名: 『Stardew Valley』(ConcernedApe)、『Don‘t Starve』 (Klei Entertainment)  画像出典: https://store.steampowered.com/?l=japanese
  23. 23. 「4つの制作場」概念のメリット 自主制作場の中の多様性を分析可能  場をひとまとまりと見るのでなく、場における関心 や作品の多様性、それらと社会的属性(職業・性 別など)との関係を分析できる 各地域・時代のゲーム制作場を比較可能  日本、米国、欧州、アジアなどのゲーム制作場  本発表では、日米比較をしてみます。
  24. 24. 日本のゲーム産業 ―自主制作場と産業の連携が弱まる― 成立期:1970年代後半~80年代後半  自主制作場から作品・人材・企業が輩出 停滞期:1990年代前半~半ば  制作環境の変化、トップ制作者が産業にスカウト →自主制作者が場から離れ、交流も少なくなる 復活期/自律期:1990年代後半~  自主制作場が成熟  オリジナル人気作登場  産業と自主制作場のつながり低下  産業の支援が弱い(近年、若干変化)。  ホビー場がやや大きく、アート場・インディー場が小さい
  25. 25. 米国のゲーム産業 ―自主制作場と産業の連携が強化― 日本との共通点:自主制作場から産業が誕生 日本との相違点:連携強化→自主制作場が拡大  特にアート場、インディー場が拡大  90年代:ゲーム改造を許可  00年代:ゲーム制作ソフト、配信サイト提供  制作ソフトを使って学んだ人材が、産業の担い手に  プレイヤーの多くが自主制作も経験しているため、自主制 作ゲームやそれによる生計維持に対する理解が深い  尖った作品、実験的表現と、自主制作ゲームの売上で持続 的に生計を立てられる層が分厚く誕生  新しい発想・表現・人材が生まれる自主制作場を支援する ことで、ゲーム産業の課題である作品の保守化を克服
  26. 26. (参考)1990年代以降の米国ゲーム産業の 自主制作場の支援(一部)  ゲーム制作ソフトウェアの提供  1993年 「Doom」(id Software)プログラム公開  ファンサービス→自主制作者が新しいマップ、ネットワーク接続 改善→自主制作者の一部を雇用  1998年 「Half Life」(Valve)、改造(Mod)許可  2004年 「Unreal Tournament 2004」 (Epic Games)  ゲーム制作ソフトウェア「Unreal Engine」提供  2005年 「Unity」(Unity Technologies)  「ゲーム開発の民主化」掲げる。デンマークから米国へ本社移転  ゲーム配信サイト  2003年 「Steam」(Valve)  2005年 「Xbox Live Indie Games」(Microsoft)  2008年 「App Store」、「Google Play」
  27. 27. 本研究の貢献と今後の課題 文化生産に関する研究への貢献  ゲーム制作の多様な場を分析する概念を提示  自主制作場と産業との関係を分析する概念を提示  自主制作場が、産業やゲーム制作場全体に与える影響  各地域・時代のゲーム制作場の特徴を分析する概 念を提示 今後の課題  「アート場・アートゲーム」の研究  日本・米国・欧州  社会学的に見ても興味深い分野  国際発表
  28. 28. 文献  Anthropy, Anna, 2012, Rise of the Videogame Zinesters: How Freaks, Normals, Amateurs, Artists, Dreamers, Drop-outs, Queers, Housewives, and People Like You Are Taking Back an Art Form, New York: Seven Stories Press.  東園子,2010,「妄想の共同体――『やおい』コミュニティにおける恋愛コード の機能」東浩紀・北田暁大編『思想地図vol.5 特集・社会の批評』日本放送 出版協会.  出口弘・田中秀幸・小山友介編,2009,『コンテンツ産業論――混淆と伝播の 日本型モデル』東京大学出版会.  Jenkins, Henry, 1992, Textual Poachers: Television Fans & Participatory Culture, New York: Routledge.  永井純一,2002,「オタクカルチャーにみるオーディエンスの能動性――メ ディアのオルタナティブな『読み』」『ソシオロジ』143,109-25.  Toynbee, Jason, 2000, Making Popular Music: Musicians, Creativity and Institution, London: Arnold.  Westecott, Emma, 2013, Independent Game Development as Craft, Loading… The Journal of the Canadian Game Studies Association, 7(11): 78-91.

×