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『ハーフリアル』第3章(Half Real, chapter 3)

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2017年7月31日にゲームスタディーズ読書会で発表した、『ハーフリアル』第3章(の前半の前半)のレジュメです。
http://socio-logic.jp/events/201706_Half-Real/

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『ハーフリアル』第3章(Half Real, chapter 3)

  1. 1. 1 17/07/31 ゲーム研究読書会 第 3 回 イェスパー・ユール『ハーフリアル』第 3 章(P.76-102) 担当:七邊信重 本レジュメは、第 3 章の前半の前半を整理し、担当箇所に関するコメントを提出する。 時間が限られているため、読書会の方針に基づき、参加者が本書を読了していることを前 提とし、細かい点は追いかけず担当箇所の骨格のみを抽出する。また、ユールの主張に対 する疑問点を提出する。 なお、レジュメ作成にあたっては、翻訳書と原書の双方を適宜利用する。また、本章の 骨格に関する部分に限定して、気になった翻訳箇所を指摘する。 ■目次(カッコ内は、翻訳書/原書の頁) 3 章 ルール(76/55) ルールとはなにか(79/57) 戦略と状態機械(81/59) アルゴリズム的なルール(85/61) ルール作りとルール変更(89/64) ルールについて話し合う楽しみ(90/65) ほかの種類のルール――ゲーム運用、スポーツマンシップ、重力(91/66) ルールの構造――創発型ゲームと進行型ゲーム(93/67) 進行型ゲーム(98/72) ■大まかな骨格(七邊作成) ゲーム 作成・変更・討論(89) ↓ ルール(79) → ゲーム=状態機械(81) → 状態A 創発(102) 挑戦課題 ゲームのルール(79) 状態B 進行(98) (制限/可能性) 社交 → 楽しさ(76) ゲームのルールの特別性(85) (アルゴリズム) 他のルール(91) (スポーツマンシップ、ゲーム運用、既存システム) プレイヤー 戦略(81) スキル(126)
  2. 2. 2 ■ルール(76) ◇ルールには逆説的な点がいくつかある(76/55) ・ルールと楽しみは異なったものに見える。しかし、ルールは楽しみの源泉になる。 ・ルールはプレイヤーがやりたいことを禁止する。しかし、われわれはルールに進んで 服従する。 ・ルールはプレイヤーが創意工夫しなくても機能するように設計される。しかし、創意 工夫が必要な挑戦課題(challenges)も提供する。 ・ゲームのルールには、個々のルールの総和以上のものが加わっている。 例:プレイ に必要な戦略はルールより複雑になる。 ◇ルールはいきなり降って湧いてくるわけではない(76/55) ・民間のゲーム…プレイヤーがルールを作る。 ・商業ゲーム…ゲームデザイナーが作る。 ・ゲームも、ゲームを作り上げるルールも、異なる媒体間を移動できる。 ・しかし、それではルールは何なのか(※)。また、ルールはどんな働きを持つのか? ※翻訳は、「ルールを構成するものが媒体ではないとすれば、それはいったいなんなの か?」。しかし原文は、「But then what are rules made of?」であり、「媒体」については触 れていない。それゆえ、ここは単に直前の英文(so can the rules that make up the game) を受けていると考え、「ルールはゲームを作る。ではルールは何で作られているのか」 (?→ルール→ゲーム)という意味で理解するので良いのでは? ◇ゲームはなぜ楽しいもの(enjoyable)であるのか?(76/55) ・挑戦課題を解決することで生まれる達成感 ・複数人参加型ゲームでは、課題解決以外の要素(他のプレイヤーとのやりとり、競争、 チームワーク) ・これらはゲームの楽しさとしてもっとも普遍的なものの一つ(※) ※翻訳では、「これらは…もっとも普遍的なもの」と訳されているが、「among the most universal ones」とあるので、「普遍的なものの一つ」ではないか? つまり、達成感や社会的要素以外にも、楽しさの普遍的源泉はあるということ。た とえば、後で出てくる「ルールについて話し合う楽しみ」など? なお、フィクションは(ゲームの楽しさの普遍的源泉ではないが)、近年のビデオゲー ムの楽しさの源泉の一つと論じられている(79)。 ◇ルールは以下のような順序で働く(77/55) 1.ルールは議論の余地(above discussion)がないように設計される。 具体的な個々のルールは、それをどう運用するかについて参加者が合意できる程度 に十分に明確でなければならない。 2.一つのゲームに含まれる諸々のルールは、一つの状態機械(state machine)を作り上
  3. 3. 3 げる。プレイヤーの行動に反応を返す機械。 3.ゲームの状態機械は可能性の地図、あるいはゲームツリーとして視覚化できる。 ゲームをプレイすることは、状態機械とやりとりしながら、そのゲームツリーを探 索していく(explore)ことである。 4.ポジティブな結果に向かって努力する限りで、プレイヤーは挑戦課題に直面する。 ※「縛りプレイ」のように、プレイヤーが「ポジティブな結果」を自分で定義して、 独自の挑戦課題に直面することをユールは想定しているのか? 5.プレイヤーは挑戦課題を乗り越えようとする。この時、そのゲームが実際にプレイ されるあり方が、当のゲームのゲームプレイである(※)。 ※挑戦課題を乗り越えようとしないプレイは、ユールの定義では、ゲームプレイで はないのか? 6.プレイヤーは、ゲームをするなかで自身のスキルを上達させる。 ※翻訳では、「どんな場面であれ、プレイヤーは……スキルと手法のレパートリーを その都度持っている」とあるが、原文は「will have」なので「持とうとする」では? 7.どのゲームも多かれ少なかれ挑戦しがいがあり、特定の種類の挑戦課題を強調し、 何かしらの社会的イベントの口実として役立つ。 ※翻訳では、「個々のゲームはいろいろだ。より挑戦しがいのあるゲームもあれば、 そうでないものもある」とある。原文は「Any specific game can be more or less challenging」。ゲーム間の差異でなく、共通性(程度に差はあれ、どのゲームに も挑戦要素がある)を指摘する個所では? ◇プレイヤーの挑戦課題を与える二つの方法(78/56) ・創発(emergence) ・ルールの組み合わせにより挑戦課題のバリエーションを生む。 ・歴史的に見て、ゲームの主要なありかた。 ・「把握は簡単、会得は困難」 逆説的な構造をもつ。 ・単純なルールから非常に複雑なゲームプレイが生まれる。 何百年もプレイし尽されていないゲームや、ゲームデザイナーが予測できないゲー ムプレイなど。 ・進行(progression) ・場面ごとに決まった特別なルールを適用することで挑戦課題を順次提示する。 ・ゲームがどう進む可能性があるかを、ゲームデザイナーが明確に決める。 ■ルールとはなにか(79/57) ◇制限(79/57) ・バーナード・スーツ: プレイヤーの選択肢を制限するもの ・ケイティ・サレン、エリック・ジマーマン: 「ルールは主に、プレイヤーの活動を 制限するという形で働く」
  4. 4. 4 ◇アフォーダンス(環境が動物に与える行為可能性)(80/58) ・潜在的な行為を作り上げるもの ・ゲームの内部では意味があるが、その外では意味がないような行為を作り出すもの ■戦略と状態機械(81/59) ◇ルールと戦略(81/59) ・ゲーム理論における定義 ・ルール…プレイヤーに対する絶対的な命令 ・戦略 …自身の行為を統制する一般原理。プレイヤーが自由に選択可能 ・完全戦略/不完全戦略…可能なゲーム状態に対しプレイヤーがどうすべきかを 明確に定めるか ・完全情報/不完全情報ゲーム…プレイヤーがゲーム状態に完全な知識を持つか ◇計算機科学の用語を借りれば、あるゲームのルールは、一つの状態機械(a state machine) を作る(83/60) ・状態機械…初期状態を持ち、特定の入力イベントを受け付け、状態遷移関数(規則) を使って入力に応じて状態を変化させ、出力関数を使って特定の出力を行う機械 ・ルールは状態機械を作る。 ・ゲームは状態機械である。 ルール→ゲーム=状態機械 ・ゲームの状態=ゲーム状態(game state) ・ゲーム状態は、ゲームにだけ関係し、プレイヤーの心には関係しない。プレイヤーの 心の中で起きることについては章の後半で論じる。 ◇状態機械としてのゲームは、ゲームツリーとして視覚化できる(83/60) ■アルゴリズム的なルール(Algorithmic Rules)(85/61) ◇ゲームのルールに何か特別なことはあるか?(85/61) ・ゲームのルールは、議論の余地のないものとして設計される。 ・「議論の余地がない」 ×どんなルールを採用するか ×ルールについて意見の不一致が見られることは決してない ○個々のルールを適用すること ◇ゲームのルール=アルゴリズム(85/61) ・コンピュータプログラムにどんな種類のルールを実装できるかは、「アルゴリズム」概 念により明らかにされている。 ・アルゴリズムの重要な 5 つの特徴…有限性、確定性、入力、出力、実効性 ・確定性…アルゴリズムのそれぞれのステップは、厳密に定義されていなければいけな い。そこで実行される動作もまた、場合ごとに厳密かつ明確に定められていなければ
  5. 5. 5 ならない。 ◇料理のレシピはアルゴリズムではない(86/62) ・有限性、入力、出力といった性質を持つが、「確定性」を欠く。 例:「塩を少々加えます」(どこに加えるべきか、てっぺんか側面か) 「混ぜた具材がぼそぼそになるまえに手早くひっくり返します」 ・アルゴリズムであるためには、指図がコンピュータでも従えるくらいに、十分に特定 化されている必要がある。 ◇アルゴリズムの条件(86/63) ・レシピは当の領域(料理など)の知識を前提にする。ゆえに、アルゴリズムではない。 ・アルゴリズムは、当の領域の知識がなくても使えるものでなければならない。 ・アルゴリズムが機能する条件 ‐当の領域についてのいかなる理解も必要としない。 ‐きわめて限定された事柄(#)にのみ応答する。 ○システムの状態、十分に定義された入力 ×天気、コンピュータの外装の色、コンピュータの使用者の性格、政治情勢 ◇無関連性のルール(87/63) ・あらゆるゲームルールは、当のゲームがプレイされる文脈のうちの選ばれた部分にだ け関係する。 ・「無関連性のルール」(ゴフマン)…ゲームの道具の美的価値や情緒的価値、金銭的価 値に対する関心を無視する。 ・状態機械モデルで言えば、この特徴が成り立つのは、ゲームがあらかじめ決められた 数の(a predefined number)入力イベントしか受け付けないから。 ・ゲーム状態は、空が曇ってきたとか、誰かがせきをしたという出来事によって変化す るものではない。 ◇関連性のルール(87/63) ・すべてのゲームには「関連性のルール」もある。 ・ルールには、当のゲームとその文脈のうちのどの部分がそのルールに関連あるもので あるかを特定する内容が含まれている。 ※「無関連性/関連性」は、程度の差はあれ、ルール全般の性質であり、「ゲームのルー ル」に固有のものではないのではないか? 例)就業規則は、労働者の就業上遵守すべき規律と労働条件を定めているが、天気や 誰かが咳をしたなどには影響されない。 ■ルール作りとルール変更(89/64) ◇ゲームのルールはどうやって決まるのか?(89/64)
  6. 6. 6 ・ビデオゲームの場合、ルールはゲーム開発者により明確にデザインされ、テストプレ イを通して改良される。 ・民間伝承のゲームの場合、ルールは何千何万というプレイヤーにより改良・伝達・変 更される。 ・ゲームは一般に、開始以前にそのルールについての合意が成立している必要がある(ピ アジェが挙げた子どもたちのゲームの事例) ■ルールについて話し合う楽しみ(90/65) ◇ルールについての意見の不一致は、ゲームをプレイする楽しみを邪魔するのか?(90) ・ルールについて話し合うことは、楽しいものになりうる。 ■ほかの種類のルール――ゲーム運用、スポーツマンシップ、重力(91/66) ◇明示的なルール以外の 3 つのルール(91/66) ・スポーツマンシップ、ゲーム運用(Gaming)、既存システム(preexisting systems) ◇スポーツマンシップ(91/66) ・大まかに定義された指針、解釈に委ねられるところが大きい。 ・主に 3 つ ①身体的な害を避ける ②力の差がある場合に公平性を維持する ③対戦(game)を面白いものとして維持する ・先の「ルール」の定義に従えば、その曖昧さによって、絶え間ない議論と社会的調整 に従うため、厳密な意味でのルールではない。 ※「先の『ルール』」とは、「ゲーム固有のルール(アルゴリズム)」のことか? ◇ゲーム運用(92/67) ・ゲーム運用(の規則) 個々のゲームセッションを始めたり終わらせたりする権限(competence)や、ゲームと それがプレイされる文脈の相互作用を管理する権限 ・ゲームのルールというより、「ルールのためのルール」 ◇既存システム(93/67) ・物理的ゲームの多くの側面は、物理法則のような既存システムにより規定されている。 ・既存システムは、オブジェトゥルヴェ(見出されたもの)として使われ、ゲームの目 的のために流用される。 ◇ゲームとその外側にあるものとの間には、不確定な関係がある(93/67) ・明示的なゲームルールは、ゲームに対してあるすべてのものではなく、ゲームは無か ら生まれるものでもない。 ・ゲームには、ルールの中では特定されていない事柄が数多く組み込まれている。
  7. 7. 7 例:スポーツマンシップ、ゲーム運用(ルールのためのルール)、既存システム ■ルールの構造――創発型ゲームと進行型ゲーム(93/67) ◇ゲームが、プレイヤーに挑戦課題を与える、最も重要な 2 つの方法(93/67) ・創発的ゲーム…挑戦課題を間接的に提供。諸々のルールが相互作用するので、挑戦課 題が生まれる。 ・進行的ゲーム…挑戦課題のそれぞれを直接的に提供。 ※プレイヤーに挑戦課題を与える、他の方法もあるか? ◇単純な卓球ゲーム『Pong』(1973)とアドベンチャーゲーム『The Hobbit』(1984)(93/67) ・『Pong』…毎度の対戦が唯一無二。非常にシンプルなルールがプレイの多様さと再プレ イの楽しさを作り出す。 ・『The Hobbit』…プレイヤーが行える行為の種類がかなり多いが、クリアまでの手順を 書き並べると、一枚の紙におさまる。 クリアすると、このゲームをもう一度プレイする理由はほとんどなく なり、ゲームの可能性がすべて出尽くしてしまう。 ◇ビデオゲームの二重の起源(97/71) ・ビデオゲームの歴史は、二種類の基本的なゲーム構造の所産として理解できる。 ・ゲームガイドによる進行型/創発型判別テスト ガイドが攻略手順 →進行型 ガイドが戦略の指針→創発型 ◇創発型・進行型・混合型(98/71) ・多くのゲームは、創発型と進行型の中間。 ・純粋な進行型…伝統的なアドベンチャーゲーム ・純粋な創発型…マルチプレイヤーのボードゲーム、カードゲーム、アクションゲーム、 ストラテジーゲーム ・創発要素を持つ進行型…シングルプレイヤーのアクションゲーム。 プレイヤーは複数エリアを順に踏破するが、各エリアの越え 方はいろいろ。 ・進行要素を持つ創発型…MMORPG。ゲームの全体的構造は創発型だが、小さい「クエ スト」がある。 個々のクエストをクリアするには、プレイヤーは一連のイベ ントを順々にこなしていく必要がある。 ■進行型ゲーム(98/72) ◇進行型の歴史(98/72) ・歴史的に見れば、相対的に新しい構造。
  8. 8. 8 ・ビデオゲームでは、アドベンチャーゲームとともに登場。 ・プレイヤーは決められた一連のイベントをこなす。 ・正しい道よりまちがった道の方が多い。 ・強力な権限をデザイナーに与える(出来事の順序を管理できる)ので、映画・ストー リーテリング指向のゲームが見られる。 ■コメント(再掲) ※赤字は読書会での議論 ・「縛りプレイ」のように、プレイヤーが「ポジティブな結果」を自分で定義して、独自の 挑戦課題に直面することをユールは想定しているのか? →おそらく想定している。この後の箇所にプレイヤーの話が出てくる。 また、ユールの二冊目の著作『Casual Revolution』では、プレイヤーが目的を自分で決 めたり、決められた目的を無視できるゲームについて説明している。 ・挑戦課題を乗り越えようとしないプレイは、ユールの定義では、「ゲームプレイ」ではな いのか? 例)移動しながら、ゲーム内の景色を楽しむ。 バカバカしいプレイをする。 ・「無関連性/関連性」は、程度の差はあれ、ルール全般の性質であり、「ゲームのルール」 に固有のものではないのではないか? →ルール全般の性質。アルゴリズム性は、ゲームのルールの必要条件でなく十分条件? ・スポーツマンシップが、「先の『ルール』」の定義に従えば、……厳密な意味でのルール ではない、というとき、「先の『ルール』」とは、「ゲームのルール(アルゴリズム)」の ことか? →おそらくアルゴリズムのこと ・プレイヤーに挑戦課題を与える、「創発」「進行」以外の方法もあるか? ■参考情報 ・アーネスト・アダムス他『ゲームメカニクス』(ソフトバンククリエイティブ)は、ユー ルの「創発/進行」という考え方を全面的に導入して、ビデオゲームで使われるルール (メカニクス)を分析している。

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