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人間中心とは何なのか? 〜利他的UXから考える

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2017年5月26日 Xデザインフォーラム in 京都
(フォントを修正していますので、レイアウトが崩れいていますがご容赦ください)

Published in: Design
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人間中心とは何なのか? 〜利他的UXから考える

  1. 1. Copyright © Masaya Ando 安藤 昌也 masaya.ando@it-chiba.ac.jp 千葉工業大学 知能メディア工学科 Chiba Institute of Technology Department of Advanced Media 人間中心とは何なのか? 〜利他的UXから考える Xデザインフォーラム in 京都
  2. 2. 2 Copyright © Masaya Ando 安 藤 昌 也 千葉工業大学先進工学部知能メディア工学科 教授 早 稲 田 大 学 政 治 経 済 学 部 経 済 学 科 卒 業 。 NTTデータ通信(現、NTTデータ)、経営コンサルティン グ会社取締役、早稲田大学、国立情報学研究所、産業 技術大学院大学など経て、2011年千葉工業大学工学 部准教授、2015年より現職。 博士(学術)。 専門は、人間中心デザイン。UX(ユーザ体験)の研究 者。人間工学ISOの国内対策委員等を務める。 認定人間中心設計専門家/認定専門社会調査士
  3. 3. 3 Copyright © Masaya Ando 「人間-脱-中心設計」と ISO9241-210の人間中心設計 1
  4. 4. Copyright © Masaya Ando 4 『「闘争」としてのサービス』 (山内裕, 2015) n 人間-脱-中心設計(p.210) – ある個人をユーザという自明な実体として措定するのは誰 か? そのユーザを中心に据え、その要求を満たすのは誰 か? この枠組みでは、デザイナーはユーザに対して超越的 な立場にいることになる。デザイナーが超越的な立場から ユーザのためにデザインするということは、ユーザを抽象的 に外からしか捉えることができず、逆にユーザを神格化するこ とにつながる。神格化とは、ユーザという実体を絶対的な対 象として受け入れ、その要求を満たすことを目的とすることを 意味する。 – ここで人間を脱中心するという考え方が重要となる。つまり、 人間を十全の調和のとれた全体性ではなく、矛盾をはらんだ 存在として理解する必要がある。
  5. 5. Copyright © Masaya Ando 5 『「闘争」としてのサービス』 (山内裕, 2015) n 人間-脱-中心設計(p.210) – 人間脱中心のデザインは、Normanの言うエモーショナルデザ インのように、人間中心設計の「正反対」となる可能性がある。 人間中心設計では、サービスは理解しやすく、ストレスのない ものとし、顧客にとってはコントロールできるものである必要 がある。しかし、そのようなサービスは、顧客を人間として捉 えておらず、その人がどう言う人であるかは問題とならない。 その人がどう言う人かを問題とし、それを実践の中で交渉し ていくということは、逆にサービスの中に緊張感やストレスが 埋め込まれなければならない。そのためには、サービスはあ る程度わかりにくいこと、客にとってはコントロールできないこ とが重要となる。 – ・・・この意味で、ユーザをデザインの中心には据えない。むし ろ中心からずらしてユーザを布置することになる。
  6. 6. 6 Copyright © Masaya Ando “人間中心”と“脱中心”の志は 本当は同じであるはずだ そのためには「そもそも人間中心とは何だったのか」につ いて議論する必要がある ISO9241-210の国内委員でありJIS化委員長としては 山内先生の主張は、HCDの批判に見えるが
  7. 7. Copyright © Masaya Ando 7 “ポスト人間中心デザイン”論の誤解の構造 n 昨今、ポスト人間中心設計を主張するデザイン論も増え ている。しかし、そもそも人間中心とは何かについて誤 解がある。 人間中心設計 (ISO9241-210) 人間中心の哲学 業務用のインタラクション システムに限定した規格哲学を 応用して その他の 人間中心デザイン論 IT業界の 請負型開発の現場 「ユーザーが要求 するニーズに 応えることが 人間中心設計だ」 誤解 ほとんど知られていない
  8. 8. Copyright © Masaya Ando 8 9241-210による人間中心設計の6つの原則 1. 設計がユーザー、タスク、環境を明確に理解して設計する 2. 設計及び開発全体を通じてユーザーが参加する 3. ユーザー中心の評価に基づいて設計を方向づけて見直す 4. プロセスを繰返す 5. ユーザーエクスペリエンスの全体を考慮して設計する 6. 多くの専門分野の技能と視点を含む設計チームを構成する 人間中心設計の目的は設計プロセス全体を通じてUXを十分 考慮することにより良いUXの質を達成すること
  9. 9. Copyright © Masaya Ando 9 ISO9241-210が示すプロセスの相互依存関係 「ユーザーの要求事項」の理解が十分でないことが誤解の原因
  10. 10. Copyright © Masaya Ando 10 6.3 ユーザー要求事項の明示 n 6.3.1 一般 – ほとんどの設計プロジェクトにおいて、ユーザーのニーズの特定、製品又 はシステムに関する機能、及びその他の要求事項を明示することは主要 な活動である。人間中心設計では、この活動を拡大して、想定される利用 状況及びシステムのビジネス目標に関連してユーザー要求事項を明確に 記述しなければならない。 – システムの範囲によって、ユーザー要求事項は、組織の変更や勤務体系 の改訂に関する要求事項を含むことができ、製品及びサービスを統合する 機会を示唆できる。もし提案されたインタラクティブシステムが組織の慣習 に影響を及ぼす可能性がある場合には、組織及びシステムの両方を最適 化する目的から、組織のステークホルダーを設計プロセスに関与させるこ とが望ましい。 人間中心設計で最も重要で根幹をなす概念は“利用状況” 人の行動や感覚は状況次第であり利用状況が手掛かりとなる
  11. 11. Copyright © Masaya Ando 11 6.3 ユーザー要求事項の明示 n 6.3.2 ユーザー及び他のステークホルダーのニーズの特定 – ユーザー及び他のステークホルダーのニーズは、利用状況を考慮して特 定されることが望ましい。これらは、どのユーザーニーズを達成するべきか (それをどのように達成するかよりも)及び、利用状況により生じるあらゆる 制約を含めることが望ましい。 n 6.3.3 ユーザー要求事項の導出 – ユーザーの要求事項の仕様書は次を含まなければならない: a) 想定される利用状況 b) ユーザーのニーズ及び利用状況から導かれる要求事項 c) 関連する人間工学及びユーザーインタフェースに関する知識、規格及び 指針による要求事項 d) 特定の利用状況において測定可能なユーザビリティの性能及び満足度の 基準を含む、ユーザビリティの要求事項及び目的 e) ユーザーに直接影響する組織の要求事項から導かれる要求事項 ユーザー要求はユーザーが明示的に求めるものだけではない 利用状況やステークホルダーのニーズから総合的に設定する
  12. 12. Copyright © Masaya Ando 12 だから「お客さんが言ってるので作ります」ではダメ n ユーザー自身は必ずし も本質的な課題を理解 していないで、思いつき の意見を述べているだ け。洞察に基づく、アイ デアが必要。 n 洞察を得るためには、 調査が必要。
  13. 13. Copyright © Masaya Ando 13 ユーザーとの“闘争”は9241-210で設計できるか n 利用状況やステークホルダーの意図を考慮した総合的 なものが9241-210のユーザー要求であり、必ずしも ユーザを神格化する意図はない。 ・・・ユーザという実体を絶対的な対象として受け入れ、その 要求を満たすことを目的とすることを意味する。(山内, p.212) という指摘は、ISO9241-210の誤解であり、山内先生の言うようなサービス の状況を設計するために捉えることは可能だと考える。 だが確かに、9241-210は以下で指摘するような課題はある。 人間中心設計では、サービスは理解しやすく、ストレスのない ものとし、顧客にとってはコントロールできるものである必要 がある。しかし、そのようなサービスは、顧客を人間として捉 えておらず、その人がどう言う人であるかは問題とならない。 (山内, p.213) だが、9241-210は本来業務システムのためのものであり、対象の 目的の相違だと考えたい。
  14. 14. Copyright © Masaya Ando 14 対象の目的の違いを考える手掛かり n ユーザーの行動を考えるとき、どんな特性の行動である かはユーザー要求事項を考える時に重要な手掛かりで ある。 現在の 状態 現在の 状態 現在の 状態 目標 状態 目標 状態 プロセス プロセス 目標指向的行動 (GOB : Goal-OrientedBehavior) プロセス指向的行動 (POB : Process-Oriented Behavior) 状態指向的行動 (SOB : State-Oriented Behavior) (黒須, 2010) 9241-210は 主にこれ
  15. 15. 15 Copyright © Masaya Ando ISO以外のHCDを見てみる 2
  16. 16. Copyright © Masaya Ando 16 “ポスト人間中心デザイン”論の誤解の構造 n 昨今、ポスト人間中心設計を主張するデザイン論も増え ている。しかし、そもそも人間中心とは何かについて誤 解がある。 人間中心設計 (ISO9241-210) 人間中心の哲学 業務用のインタラクション システムに限定した規格哲学を 応用して その他の 人間中心デザイン論 IT業界の 請負型開発の現場 「ユーザーが要求 するニーズに 応えることが 人間中心設計だ」 誤解 ほとんど知られていない
  17. 17. Copyright © Masaya Ando 17 二次的理解に基づく人間中心デザイン n 誰かを理解することは、他者の理解を理解すること。つまり二次 的理解である。これはHCDやUXDの原理構造である。 (Krippendorff, 2006 ) 参加型デザイン designing with users 二次的理解に基づくデザイン designing for users
  18. 18. Copyright © Masaya Ando 18 二次的理解を持つ観察者 n HCDが二次的理解に基づくものであるためには、デザイナー自身 もユーザーと同様に体験して理解し、ユーザーと語りあいその理 解を確認できることが前提となる。 (Krippendorff, 2006 ) HCDの全体は本来ユーザーと同じ立場に立てる デザイナーであることが前提である
  19. 19. Copyright © Masaya Ando 19 ユーザーとその利用状況を理解できないと・・・ n ソニーのこの製品。アメリカでは時代に逆行したデザイ ンと酷評されたが、、、
  20. 20. Copyright © Masaya Ando 20 ユーザーとその利用状況を理解できないと・・・ n ソニーのこの製品。アメリカでは時代に逆行したデザイ ンと酷評されたが、、、 利用状況(シーン)の方に意味があることを理解した デザイナーでなければHCD・UXDは実践できない
  21. 21. Copyright © Masaya Ando 21 ノーマンの人間中心デザイン n 「対象とする人々のニーズと能力にデザインが合ってい ることを保証するプロセス」(Norman, 2013)
  22. 22. Copyright © Masaya Ando 22 ノーマンの人間中心デザイン 「モノの仕様を決定するのはデザインの中で最も難しい 部分なので、HCDの原則は、できるだけ長い間、問題 を特定することを避け、その代わりに暫定的なデザイン を繰り返していくことにある。これは、アイデアをすばや く試行し、一つひとつの試行の後に手段と問題提起を 修正していくことで実現される。結果として、人々の真 のニーズにきちんと合致する製品が得られる」 (Norman, 2013)
  23. 23. Copyright © Masaya Ando 23 「わたしの体験ワークショップ」2013/1/11 n 「デザインする人自身が“よい体験”を認識できなくて“よいサービ スデザイン”ができるはずない」として、自身のサービス体験を分 析するワークショップ。”まるで禅”との評価が。
  24. 24. 24 Copyright © Masaya Ando HCDは簡単・便利を目指すのか?
  25. 25. Copyright © Masaya Ando 25 “おもてなし”幻想
  26. 26. Copyright © Masaya Ando 26 “おもてなし”幻想
  27. 27. Copyright © Masaya Ando 27 不便の益 (川上, 2011)
  28. 28. Copyright © Masaya Ando 28 対象の目的の違いを考える手掛かり n ユーザーの行動を考えるとき、どんな特性の行動である かはユーザー要求事項を考える時に重要な手掛かりで ある。 現在の 状態 現在の 状態 現在の 状態 目標 状態 目標 状態 プロセス プロセス 目標指向的行動 (GOB : Goal-OrientedBehavior) プロセス指向的行動 (POB : Process-Oriented Behavior) 状態指向的行動 (SOB : State-Oriented Behavior) (黒須, 2010) 9241-210は 主にこれ
  29. 29. Copyright © Masaya Ando 29 わたしが授業で学生に伝えていること n 今問われているのは、どう言う「便利・簡単」なのかである。
  30. 30. Copyright © Masaya Ando 30 “人間脱中心”の主張の本質 n “人間脱中心”の主張は、本来HCDが目指していたいる ものと本質的に同じである。 人間脱中心の主張は、人間をないがしろにするという意味ではなく、 むしろ人間を本当の意味で中心に据えることを目指すことを意味す る(略)。レヴィナス風に言えば、人間中心設計は十分に人間中心的 だろうかという問題提起である(略) (山内, p.214)
  31. 31. 31 Copyright © Masaya Ando ニーズとしての利他的UX 3
  32. 32. Copyright © Masaya Ando 32 “誰かに助けてもらって使う”ハードディスクレコーダー n 自己効力感の低い人ほど、身近に手助けしてくれる人の存在が ある。 身近に機能や操作について手助けしてくれる存在の有無 (安藤, 2009) UXという観点で見た時、一人のユーザーの体験ではなく 周囲との社会性の中に製品がありそして体験がある
  33. 33. Copyright © Masaya Ando 33 身の回りにある助けてくれるサービス体験 n 日本はあまりに豊かで、サービス過剰なため、気づきに くいかもしれないが、優れたサービスにあふれている。 チェスターリーブスは、日本のサービスの 多重性や丁寧さについて絶賛している。 “助けてくれる”ことはたとえそれが事業者であっても嬉しい
  34. 34. Copyright © Masaya Ando 34 身の回りにある助けてあげるサービス体験 n SNSなどの発達によって、身近に助けてあげるサービスが充実し、 他者の役立つことをサービスとするものもある。 Time Ticket やってあげるユーザーが、援助行動を提 案する。援助を必要とするユーザーは、提 供された援助の一覧から選択し購入する ことができる ネット上での募金 ネット上で非常に簡単に寄付が行えるよう になった。また支援の結果報告も報告され るものが増えた
  35. 35. Copyright © Masaya Ando 35 “利他的UX”の時代 n UXデザインは新しい時代を迎えている。UXの知見を他者の援助 のために使う。それが利他的UXである。 2017年経済産業省「IoT Lab Selection」グランプリ受賞
  36. 36. 36 Copyright © Masaya Ando 誰かを助けたくなるデザイン 利他的UX 2013年から提唱・研究開始 科研費 基盤(B)「社会的資源の配分を巡る譲り合い行動を促す 利他的インタフェースの設計理論の確立」 JST RISTEX 公・私空間PJ企画調査 「地域住民が高齢者を見守る「新しい親密圏」に向けた情報基盤の検討」
  37. 37. 利他的UX宣言 「利他的UX」は、気持ち良く、うれしくなるような助けあう体 験のことです。 多くの人が楽しく助けあう社会は、きっと“いい社会”だと考 えています。 私たち安藤研究室では、この利他的UXを実現するための 研究とデザイン活動を進めていきます。 また、この取り組みを普及する努力をします。これにより、 少しでも多くの人が利他的にふるまえる社会を目指してい きます。 2016年7月13日 安藤昌也研究室
  38. 38. Copyright © Masaya Ando 38 タイミングに着目した利他的UXデザインの試行 n 杉本・安藤(2016)では、外に出かけるタイミングで傘の 無料レンタルを利用した人に、同じビルの人のちょっとし た援助依頼を提示するサービスを考案。 “人が援助してもいいかも”と思えるタイミングを作るのも 利他的UXデザインの一つのやり方 IoTで取れる文脈 利他的に振舞える タイミングのサービス
  39. 39. 39 Copyright © Masaya Ando 利他的UXの研究は 人が意外とやってくれない ことがわかる でも、ちょっとしたことで やってくれる可能性がある こともわかる
  40. 40. Copyright © Masaya Ando 40 外在的 内在的 自己志向 経済的価値 快楽的価値 他者指向 社会的価値 利他的価値 (Holbrook(2006) 消費価値の側面から考えるこれからのUXデザイン n これからのUXデザインの鍵は“役割のデザイン”である。 外在的 内在的 自己志向 経済的価値 快楽的価値 役割志向 共有する価値 参画する価値 他者指向 社会的価値 利他的価値 (Holbrook(2006)を基に安藤(2013)加筆) 現在のUXの方向性 社会的・利他的UXの方向性 ソ シ ャ ル シ フ ト
  41. 41. 41 Copyright © Masaya Ando まとめ
  42. 42. Copyright © Masaya Ando 42 まとめ HCDにおける“人間中心”について多面的に考えてきた
  43. 43. 43 Copyright © Masaya Ando もっと うれしい 体験を。

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