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エスノグラフィック・デザインアプローチ

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2013年5月18日 人間中心設計推進機構が主催した「サービスデザイン方法論」での講義資料。特別公開中です。

http://www.hcdnet.org/event/2013hcd-net6_1.php

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エスノグラフィック・デザインアプローチ

  1. 1. Copyright © Masaya Ando 千葉工業大学 デザイン科学科 Chiba Institute of Technology Department of Design 安藤 昌也 ando@sky.it-chiba.ac.jp 第1回 エスノグラフィ 2013年05月18日 2013年度HCD-Net教育セミナー「サービスデザイン方法論」 講義資料特別公開中
  2. 2. 1 Copyright © Masaya Ando エスノグラフィの概要 1
  3. 3. Copyright © Masaya Ando 2 本日のキーワード エスノグラフィ ethnography 民族・人種の意 記述したものの意 民族誌・民族誌学
  4. 4. Copyright © Masaya Ando 3  エスノグラフィとは、フィールドワークに基づいて人間社会 の現象の質的説明を表現する記述の一種。 “本来の”エスノグラフィ(民族誌学)とは  文化人類学、社会学の研究手法 • 外国や原始文化の人々の視点で、彼 らの文化を理解するための手法として 1800年代に開発。  参与観察を行い、研究者が自ら対 象の社会を体験する点が特徴  エスノグラフィとは元々、研究者が 対象社会を記述したもののこと フィールドワークに基づいて人々の生活世界の 体系的記述がなされたもの 方法論ではない
  5. 5. Copyright © Masaya Ando 4  デザイン分野では応用として、フィールドワークによりユー ザの体験を把握する方法に注目が集まっている。 応用としてのエスノグラフィ  ビジネス分野で応用が進展 • 需要創造型の製品開発の手法として 米国の成功事例を背景に、国内でも 徐々に採用企業が増加。  イノベーションの技法として • デザイン思考の技法の一つとしてとら えられ、イノベーションにつながる方 法の一つとして期待されている。 不確実性の高いビジネス環境において 機会探索・仮説発見型のアプローチとして期待高
  6. 6. Copyright © Masaya Ando 5 人間中心デザインプロセスーISO9241-210  エスノグラフィはHCDでは主に「調べる」と「確かめる」の フェーズとして適用。 調べる 企画する 設計する つくる 確かめる
  7. 7. Copyright © Masaya Ando 6 エスノグラフィの全体像 (河﨑ら, 2011を基に作成) エスノグラフィ(フィールドワーク)の実施 現場の状況を観察 行為の背景の インタビュー 事実に基づく分析 エスノグラフィで明らかになる事情 人々の行為の全体像 (コンテキスト) 潜在的なニーズ (暗黙のうちの) 価値観 ソリューション・提案へ
  8. 8. Copyright © Masaya Ando 7 応用エスノグラフィの主な適用目的  応用エスノグラフィがよく適用される目的は2つある。目 的が違うと調査の観点が異なってくる点に注意。 主に改善や最適化が目的 • 現場の作法や方法論に製品を適合させる • 作業方法などを最適化・効率化したものに 改善する 主に新しいコンセプトの開発が目的 • 生活の中でどんなニーズがあるのか。 • 普段の生活でどんなことを行っているのか。 どんな商品なら受け入れられそうか。 フ ィ ー ル ド ワ ー ク 主に行為を通した生活価値観に着目 主に現場での行為に着目 (行動観察)
  9. 9. 8 Copyright © Masaya Ando コンセプト開発に期待される エスノグラフィの役割 2
  10. 10. Copyright © Masaya Ando 9 エスノグラフィをやって 商品の何が変わるの?
  11. 11. Copyright © Masaya Ando 10 エスノグラフィによるユーザーインサイトの発見  コンセプト開発では、個別の差異よりも対象の人々に共 通する生活価値やニーズの分析・理解が目的となる。 共通する価値・ニーズのイメージ 多くのユーザーの “最大公約数”としての 生活価値・ニーズの発見
  12. 12. Copyright © Masaya Ando 11 従来型のマーケティング・リサーチとの違い  反応の代表性や量を測るのではなく、生活者全体に共 通する普遍的な心理や行為、環境の構造を取りだすこ とがエスノグラフィのアプローチである。 マーケティング・リサーチ エスノグラフィ調査 垂直型顧客理解 平均的な顧客像をあぶり 出そうとするアプローチ 水平型顧客理解 幅広い顧客に共通する環 境・心理・行為をあぶり出 そうとするアプローチ
  13. 13. Copyright © Masaya Ando 12 生活の中で意味を持たない モノや行為は存在しえない 生活や状況の中に 意味が埋め込まれている
  14. 14. 13 Copyright © Masaya Ando エスノグラフィの実践で 重要な理解とポイント 3
  15. 15. Copyright © Masaya Ando 14 1. 生活や状況の中に “埋め込まれた意味”を探る
  16. 16. Copyright © Masaya Ando 15
  17. 17. Copyright © Masaya Ando 16 人々は思い込みの世界に生きている Reality Remade 社会構築主義 エスノグラフィでは 人々の生活の中に埋め込まれた モノや行為の意味を 解釈する
  18. 18. Copyright © Masaya Ando 17 2. 対象者やデータの比較により 価値観をより際立たせる
  19. 19. Copyright © Masaya Ando 18 秘密のケンミンSHOW  エスノグラフィは、異なる群との比較により、違いや共通 項を際立たせていくアプローチ。異なるデータを得ること でより理解を深められる。 読売テレビ 「秘密のケンミンSHOW」 (2007年~)
  20. 20. Copyright © Masaya Ando 19 対象者の選択  平均像のユーザだけでなく、エクストリームユーザを対 象にするとヒントを得やすい。 想定されるユーザ分布 一般的な(想定内の) 使い方をする人 すごくニッチな 使い方をする人 (持ってても)全く 使っていない人 異なる群のユーザの比較により、製品の意味・価値を 深く理解することで、新価値の発見のヒントが得られる
  21. 21. Copyright © Masaya Ando 20 異なるタイプのエクストリームユーザー  調査の目的に応じて、どのようなタイプのエクストリーム ユーザーを調査すればよいか検討する。 IDEOの“Radical Co-creation Process”での エクストリームユーザーの設定例 (Pichyangkul et al., 2012) タイプ 例 エクストリームなニーズ カーナビ開発のために、パイロットを対象に調査 エクストリームな使い方 歯磨き粉の開発のために、歯磨き粉なしで磨いて いる人を対象に調査 エクストリームな環境 BOPマーケットのために、不利な環境に住む人を 対象に調査
  22. 22. Copyright © Masaya Ando 21 実際調査での調査計画の例 (安藤ら, 2012) 実施期間: 2011年4月13、14日 実施地域: 愛知県三河地方 人 数 : 5名 条 件 : (以下の枠に当てはまる) 実施期間: 2011年8月1日~20日 実施地域: 東京都2名,横浜市2名 人 数 : 4名 条 件 :(以下のいずれかに当てはまる) ナ ビ ・ A V 操 作 の 得 意 度 ナビ・AVの興味度 2名 (男・女) 2名 (男・女) - 1名 (女) 高 低 高低 • 車内のAV機器等をカスタマイズし ている人 • 運転時に音楽や映像等を見るこ とが多い人 • インパネ類の表示にこだわりを 持っている人 1回目:一般ドライバー調査 2回目:リードユーザー調査  自動車のインパネのUIデザインコンセプトを策定するた めに実施したエスノグラフィ調査での構成例。
  23. 23. Copyright © Masaya Ando 22 3. 行為の観察だけでなく その背景や考えも把握する
  24. 24. Copyright © Masaya Ando 23 実は初めて、神社の役員として行った旅行 周りの人もほとんどが初めて会う人という状況・・・ “集合写真を撮る”という行為の中にも 意味や価値観が反映されていることがわかる
  25. 25. Copyright © Masaya Ando 24 「観察」と「インタビュー」の相補関係  観察とインタビューは相補の関係にある。繰り返し行うこ とでより深い理解につながる。 観るための技法 その意味の行為を探す 見えたものの意味を確かめる 意味がわかる 見えてくる “見れば見るほど見えてくる ~ to see more to see” ・観察法 ・キャプション法 等 外から観る ・インタビュー ・フォトエッセイ ・脳内マップ 等 内から観る
  26. 26. Copyright © Masaya Ando 25 4. 現場を観る際は “問い”を立てて観る
  27. 27. Copyright © Masaya Ando 26 デザイナーとしてはこういう環境を なんとかしてあげないといけない という思いに駆られる・・・ 自分はユーザーの代表だと 思っていたがそうではない ことが分かった・・・ “なぜこの人はこういう風にしているんだろう?” “問い”を立てて観る
  28. 28. Copyright © Masaya Ando 27 観察の心構え  多様なユーザの行動を観察するには、基礎知識の理解 とそれなりの練習が必要。 よくある戸惑いや誤り  どこを見たらいいかわからない  どれくらい詳細に見たらいいかわ からない  自分が考えた仮説を検証しようと 見てしまう  知っている技術や製品が適応で きるかどうか考えてしまう  今起こっていることの意味をその 場で解釈しようとしてしまう 観察の4つのおきて “問い”を立て、観察の焦点化を行う。 観察を重ねるごとに、焦点の精緻化 を行う 予め“仮説”や“予見”、“思い込み” をもってフィールドに臨まない ユーザを観る。ユーザ中心に観る フィールドでは、記録に徹する。 解釈は帰ってから行うつもりで観る
  29. 29. Copyright © Masaya Ando 28 5. 調査で得られた情報は 分析して“モデリング”する
  30. 30. Copyright © Masaya Ando 29 ユーザモデリングの3階層 (安藤, 2010)  どのようなユーザ調査も、デザインを生み出すには、以 下の3つの階層で、ユーザをモデリングする必要がある。 新しい行為 =デザイン 着目する価値 =本質的ニーズ コンテキスト
  31. 31. Copyright © Masaya Ando 30 ユーザ調査の各手法と分析との関係 デザインのための ユーザモデリグの三階層 エスノグラフィ/観察法 コンテキストインタビュー フォトエッセイ デプスインタビュー アンケート ユーザ調査の代表的な手法 ■価値観・インサイトの理解 ■行為や文脈の理解 ■属性・セグメンテーション
  32. 32. 31 Copyright © Masaya Ando ワークショップ 4 今日のワークショップは いろいろと厳しいです!
  33. 33. Copyright © Masaya Ando 32 本日のワークショップ ① フィールドワークの調査計画 11:30~12:00 – どういう人を対象に、どんな方法で観察するか決める • グループ内で2チームに分かれて行動する ② フィールドワークによるデータ収集 12:00~14:30 – 調査計画に基づいてデータを集める • 写真を撮る、スケッチを書く など ③ 集めたデータの分析とモデリング 14:30~17:00 – 撮った写真を印刷し、写真を使ってデータ分析(解釈)し、モデ リングを行う • 「KA法(定性情報分析法)」による生活価値の抽出 • KJ法で価値マップを作成する
  34. 34. Copyright © Masaya Ando 33 対象行為・テーマ 「いいもの探し」 ~ショッピング体験~  目的: – 全く新しい提供価値を持った、ショッピングサービスの企画立 案のために実施する調査 渋谷は様々なタイプ人・様々なタイプのショッピング体験が観られる
  35. 35. Copyright © Masaya Ando 34  約2時間のフィールドワークの実施方法を検討する。 観察の焦点と対象を決める – 「いいもの探し」という中でも、どんなことに焦点を当てるか – 比較を意識し、できれば同じ観点で2つのタイプの対象を観察する • 環境のタイプの例: デパチカ と 家電量販店 • 対象者のタイプの例: 年配者 と ギャル 観察の方法を決める – すべて観察だけでもいいが、より深い理解ができるような方法を考える • 例:観察の他に、自分たちを対象者にして“シャドーウィング”を加 える。自分たちの“簡易フォトエッセイ写真”を加える。 実施体制・役割等を決める – 限られた時間に、食事と調査を実施する。多様な情報を得るために2 チーム体制がよい。ただし、それぞれが2タイプを観ること。 ① フィールドワークの調査計画 (30分間)
  36. 36. Copyright © Masaya Ando 35 撮影してきた写真のイメージ 観 察 写 真 写真は一人最大6枚まで (スケッチの場合は、その限りではありません)
  37. 37. Copyright © Masaya Ando 36 お願い  第三者にカメラを向ける際は、注意して行ってください。  ほとんどの店舗内では写真撮影が原則禁止されていま すので、くれぐれもご注意ください。  14時30分には次のレクチャーを始めますので、必ず食 事を取り、席までお戻りください。  早めに写真撮影が終わった方は、印刷が込み合う前に 印刷してしまいますので、早めにお戻りください。  撮り終わった写真のうち、フォトエッセイなど自分自身の 情報が入っている場合は区別がつくようにお願いします。  印刷は、サポートスタッフがお手伝いしますので、お声 掛けください。
  38. 38. 37 Copyright © Masaya Ando フィールドデータの分析法 5 定性情報分析法ーKA法 14:00~
  39. 39. Copyright © Masaya Ando 38 KA法 (浅田和実, 2006)  KA法は、調査結果それぞれの事実の背後にある“ユー ザーにとっての価値”を抽出。 出来事 (ID: 004-26) エコ走行のインジケータが付いてて、今ま での運転がすごいガソリン使ってたなと 思った。今はエコのラインを超えないよう に運転するのが楽しい。 心の声 価値 エコな運転って 楽しいわ エコな運転を 楽しむ価値 調査 結果 KAカード “動詞+価値”で表現することで体験の価値を導出 どんな小さな行為にも背景には価値は存在する 出来事 (ID: 004-26) エコ走行のインジケータが付いてて、今ま での運転がすごいガソリン使ってたなと 思った。今はエコのラインを超えないよう に運転するのが楽しい。 心の声 価値 エコな運転って 楽しいわ エコな運転を 楽しむ価値
  40. 40. Copyright © Masaya Ando 39 一枚のカード 写真を使ったKA法の成果イメージ~価値マップ  本日のワークショップでは、写真から行為の価値を導出 する。その結果をKJ法で整理し、価値マップを作成する。 価値マップ 写真の下に「出来事」と「心の声」がある
  41. 41. Copyright © Masaya Ando 40 KA法の分析手順 1. カードの作成 – フォトエッセイやユーザ調査データなどから、ユーザ行動部分 を抽出し、カード化の「出来事」欄に書く。 • 今回は、観察した行為をなるべく詳しく、コンテキストを活かすように 書いてください。 2. 体験価値の抽出 – カードに記入された「出来事」に注目し、ユーザになりきって 「ユーザの心の声」を書く。「出来事」と「ユーザの心の声」を参 考に、生活価値抽出する。 3. 価値マップの作成 – 各カードの価値に着目してKJ法により構造化する。抽出された 価値を用いて行為の背景にある価値の全体像を表現する。
  42. 42. Copyright © Masaya Ando 41 手順① カードの作成  観察した行動や状況を、短いセン テンスで書く。  写真はカードに合うようにカットし、 一番上の部分をテープで止める。  「心の声」は、ユーザーの本質に 迫る努力を。一人で考えずグルー プで議論。  価値はユーザーの感じる価値にな るように。  なるべく“ベタな表現”にする方が よい。 テープで上をとめる 14:30~
  43. 43. Copyright © Masaya Ando 42 出来事を書く際の注意点  出来事は、「状況・動機」「行動」「結果」の2つ以上の要 素を組み合わせる。多少想像で補ってもよい。 状 況 (~だったとき) (~だったので) 動 機 (~と思ったので) (~と考えて) 行 動 (~した) 結 果 (~となった/だった) (~と感じた/思った) 動機 + 行動 行動 + 動機 + 結果
  44. 44. Copyright © Masaya Ando 43 手順③ 価値マップの作成  抽出した価値だけに着目して、似たカード同士をグルー ピングする。グループ名も「~する価値」にすること。 15:30~ 中身が安くても安っ ぽさを感じさせない 価値 出来事: ユーザーの心の声: ( Name:H.Y.No.: B ) 価値: 他人の目から恥ずかしさを 感じなくてすむ価値 A3用紙にグループごとに貼り、グループができたら枠線を書いて丸く切り離す これのまとまりを 「中分類の価値」 と呼びます。
  45. 45. Copyright © Masaya Ando 44 価値マップの作成のコツ  中分類の価値同士の関係性を考える際、循環構造やプ ロセスを仮定して構造化するとよい。 価値の状態が シフトする条件 などを書く 価値マップの タイトルを書く
  46. 46. Copyright © Masaya Ando 45 発 表 1グループ5分
  47. 47. 46 Copyright © Masaya Ando 振り返り と まとめ 6
  48. 48. Copyright © Masaya Ando 47 ワークショップの振り返り  フィールドからユーザーの情報を得るエスノグラフィの意 義について理解できただろうか?  ユーザの生活に潜む価値に、否定せず素直に向き合え ただろうか?  ユーザの価値の導出作業を通して、あなたはユーザに 近づき、共感できただろうか?  写真を撮りに出た時と、今では、観えるものが変わって いるだろうか? 観えるものが増えているだろうか?  エスノグラフィの分析法としてのKA法のやり方を、感覚 的でも理解できただろうか?
  49. 49. Copyright © Masaya Ando 48 本日のまとめ 1. エスノグラフィは、ユーザの生活に埋め込まれた意味 を見出し、解釈するための作業。 2. 「観察」と「インタビュー」を組み合わせた調査と分析を 繰り返すことで、ユーザの生活世界がどんどん観えて くる。 3. エスノグラフィは、調査しっぱなしが一番だめ。KA法な どを活用し、価値マップや体験マップとしてまとめること。 4. 大事なことは、この作業を通してユーザの生活世界に 共感すること。そしてそこからデザインを生み出すこと。 HCDのユーザー調査フェーズにおけるエスノグラフィの考 え方と写真を使った具体的な分析法を学んだ

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