社会的決定とAHP

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社会的決定とAHP

  1. 1. 社会的決定とAHP 京都大学 工学研究科 尾上 洋介 2013年12月4日 STiPS阪大学生読書会
  2. 2. 概要 ✤ AHPとは! ✤ 公共事業の決め方と公共受容! ✤ AHPのモデル・計算法! ✤ 政策評価におけるAHPの適用事例! ✤ まとめ
  3. 3. AHPとは
  4. 4. AHPとは ✤ AHP(Analytic Hierarchy Process; 階層分析法)! ✤ 1970年代にThomas L. Saatyによって開発! ✤ オペレーションズリサーチ、経営科学分野で活用
  5. 5. 公共事業の決め方と公共受容
  6. 6. 社会的決定の種類 権力によるもの 中央決定方式 信頼によるもの 社会的決定 投票によるもの 民主的決定方式 議論によるもの
  7. 7. 民主的決定方式の問題点 ✤ 決定の質の観点から、民主的決定方式が、社会内の
 最も優秀な個人一人の決定を下回ることが多い(亀田1997)! ✤ 常に単一の決定をもたらす、投票選好集約による
 民主的決定方式はあり得ない(Sen1970、佐伯1980)! ✤ 議論の後の意見分布は、議論の前の意見分布における多数 派がより多数派となった分布になる傾向が強い(亀田1997)
  8. 8. 現実社会での社会的決定 ✤ 中央決定方式と民主的決定方式の一方が全面的に
 優れているわけではない! ✤ 現実には4種類の社会的決定法が複合されている
 (ex. 間接民主制)
  9. 9. 間接民主主義の要件 ✤ 国民の中には中央決定を行うに足る十分な資質を
 備えた人々が含まれていること! ✤ 資質を持ち得る人々を選出できる能力を持つこと! ✤ 中央決定をなす人々が適正に中央決定を行うこと! ✤ 下された中央決定に公共受容がなされること
  10. 10. 合意形成の問題 ✤ 適切な社会的決定でも受容されなければ無価値! ✤ 中央決定方式では決定者の権力と民衆の信頼が必要! ✤ 信頼の低下が合意形成の問題の大きな要因! ✤ いかにして公共受容をなすか?
  11. 11. 公共受容の要因 自由侵害感 分配的公正 公正感 手続き的公正 公共受容 ✤ 公正感 > 自由侵害感 (藤井2003)! ✤ 手続き的公正 > 分配的公正
 (Lind and Tyler1988、田中1997、Tyler et al. 1997)
  12. 12. 公正さの保証 ✤ 分配的公正は常にはなし得ない(ex. NIMBY問題)! ✤ 意思決定プロセスへの関与は、手続きの公正さを保証 する代表的な条件! ✤ ✤ Public Involvement、Public Participation! 中央決定方式における意思決定者に対する信頼
  13. 13. 受容意識を高めるために ✤ 公正感の向上! ✤ 手続き的な公正感の向上! ✤ 行政に対する信頼の回復(?)
  14. 14. 公共受容確保のための具体的対策 ✤ 実際に公共利益を大きく増進させる! ✤ 人々の行政に対する信頼を高揚させる! ✤ 人々の公共心を活性化する! ✤ 実際に手続きの公正さを保証する
  15. 15. 公正な決定法の条件 ✤ 代表制と判断の不偏向性! ✤ 手続きの一貫性! ✤ 正確さ! ✤ 修正可能性! ✤ 倫理性
  16. 16. AHP法的なプロセス ✤ それぞれの代替案がどのような帰結を
 もたらすのかを適切に分析する! ✤ その帰結がどの程度重要なのかを十分に検討する! ✤ 以上の分析と検討を経て最終的な意思決定を下す
  17. 17. AHPと社会的決定 ✤ AHP法的なプロセスを用いることで、利己心を抑制し 公的な論点を議論することができる! ✤ 公正さの増進にともなう、判断の不偏向性の軽減、
 一定の倫理性の確保ができる! ✤ 公共心の活性化、手続きの公正化の実現
  18. 18. 意思決定支援手法の限界 ✤ 技術は万能ではない! ✤ 責任を持った覚悟と決意の弱体化! ✤ 限界を踏まえた利用が必要
  19. 19. AHPのモデル・計算法
  20. 20. 階層構造 ✤ AHPは総合評価、評価要因、選択肢に階層化された
 モデルを対象とする 総合評価 評価要因1 選択肢1 評価要因2 選択肢2 選択肢3
  21. 21. AHPの手順 1. 評価要因、選択肢の洗い出しを行う! 2. 各評価要因の重要度係数を求める! 3. 各評価要因に関して選択肢の相対評点を求める! 4. 重要度係数と相対評点から総合評価を得る
  22. 22. AHPの数理モデル 評価要因の個数 n  選択肢の個数 m 評価要因の重要度係数 w = (w1 , w2 , · · · , wn ) j 選択肢 の相対評点 fj = (f1j , f2j , · · · , fnj ) n X wi = 1 i=1 j 選択肢 の総合評価 sj = n X i=1 m X fij = 1 j=1 wi fij j = 1, · · · , m
  23. 23. 重要度係数の求め方 ↵pq 評価要因  、 の一対比較係数 F p Fq 1/9 1/7 1/5 Fqの方が重要 1/3 1 3 ↵qp 5 重要度係数 wi = 0 wi Pn k=1 0 wk 7 9 Fpの方が重要 重要度に差がない (幾何平均法による)! 1 = ↵pq 0 wi = n Y ↵ij k=1 ※一対比較係数行列の固有値を用いる場合も多い 1 !n
  24. 24. 相対評点の求め方 同様に、 j qp j F Cp Cq pq 評価要因 jに対する選択肢  、 の一対比較係数 1/9 1/7 1/5 Cqの方が重要 1/3 1 3 5 7 相対評点 fij = 0 fij Pm 0 fkj k=1 j pq 9 Cpの方が重要 重要度に差がない (幾何平均法による)! = 1 0 fij = m Y k=1 j ik 1 !n
  25. 25. 整合度 ✤ 重要度係数にどれだけ矛盾がないかの指標! ✤ 0で完全整合、0.1~0.15以内が望ましい ¯ n C.I. = n 1 n X 1 X 1 ¯= ↵ij wj n i=1 wi j6=i
  26. 26. AHPの例 ✤ 自動車の購入 ✓ ◆ 1 3 A= 1/3 1 0 1 3 1 B1 = @1/3 1/3 1/3 0 1 5 1 B2 = @1/5 1/3 1/3 総合評価 デザイン 1 3 3A 1 1 3 3A 1 自動車1 大きさ 自動車2 自動車3 w = (0.75, 0.25) f1 = (0.58, 0.65) s1 = 0.60 f2 = (0.28, 0.22) s2 = 0.27 f3 = (0.14, 0.13) s3 = 0.13
  27. 27. 社会的決定におけるAHPの適用
  28. 28. ペルー日本大使人質事件 ✤ 1996年12月にペルーの日本大使館がテロリストに
 襲撃された事件! ✤ Saatyらによって(未解決の段階で)分析が行われ
 政府の行動指針を示した! ✤ 政府の目的、テロリストの目的を階層化しAHPで分析
  29. 29. ペルー日本大使人質事件のモデル テロリスト
 政府見通し 政府印象 建物強襲 テロ予防 無条件降伏 無事退去 見通し 人質生命 テロ釈放 同志釈放 無事退去 アピール 政府印象 建物強襲 無条件降伏 無事退去 テロ釈放
  30. 30. 総合計画等中長期計画 ✤ (主に地方公共団体における)総合計画の
 財源配分の効率化・合理化! ✤ ✤ 従来は前年を参考、他の自治体を参考! 政策 - 施策 - 事業
  31. 31. 総合計画等中長期計画のモデル 総合評価 必要性 効率性 達成度 妥当性 緊急度 公平性 地域福祉 高齢者福祉 児童福祉 障害者福祉 健康増進 生活保護
  32. 32. その他の適用事例 ✤ 観光遊歩道の安全確保策の決定! ✤ 地方国際空港の立地決定
  33. 33. まとめ
  34. 34. まとめ ✤ AHPは数理的な根拠に基づいた意思決定支援手法! ✤ AHPは公共受容性を高めるためにも有効! ✤ 簡単なモデリングと計算によって利用が可能! ✤ 公共政策においても実際の適用例が存在する
  35. 35. より詳細なトピック ✤ 幾何平均法・固有値法の解釈! ✤ 順位逆転現象! ✤ 複数意思決定者の選好問題! ✤ 評価基準の設定問題! ✤ ANP(Analytic Network Process)
  36. 36. 参考書籍 ✤ 「AHPとコンジョイント分析」
 木下栄蔵、大野栄治 現代数学社! ✤ 「公共政策のための政策評価手法」
 伊田波良雄 中央経済社! ✤ 「意思決定のための数理モデル入門」
 今野浩、後藤順哉 朝倉書店

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