子どもを尊重したかかわりを求めて(2)   ~抱っこ採血における安らぎホルモンを調査して

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子どもを尊重したかかわりを求めて(2)
~抱っこ採血における安らぎホルモンを調査して
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渡部 恵子 曽我部 一穂 泉谷 妙子
甲斐 千鶴 西辻 佳代 金﨑 光治
抱っこ採血法とネット採血法を比較して
1.採血所要時間は抱っこ採血の方が短縮できた
2.溶血率・穿刺回数ともに抱っこ採血のほうが低かった
3.抱っこ採血を経験した保護者からのアンケート調査からも
肯定的な意見が大半であった
4.看護者にも心境の変化があった
ドッグセラピーの実験
人が動物の体を優しく撫でる
体内でオキシトシンが上昇、ストレスを緩衝し、孤
独感を癒してくれる
こどもが苦痛を伴う採血・点滴では
1歳:女児 4歳:女児
抱っこ採血の方が疼痛緩和されて、安心を得られるの
では
6か月:男児
オキシトシン・・・下垂体後葉から分泌される。出産時に子宮収縮作用や、
乳汁分泌作用がある。親子や仲間と信頼関係を構築する
ときや抱擁によって多く分泌される。
基準値:非妊婦 5以下 妊婦3~200u/ml
セロトニン・・・・神経伝達物質のひとつで、心身の安定や 心の安らぎにも
関与しており、オキシトシンとともに セロトニンも安ら
ぎホルモンと言われている。
基準値:53~200ng/ml
コルチゾール・・・副腎皮質から分泌されるホルモンで、ストレスに関与し
過度なストレスを受けると分泌量が増加し、ストレスホ
ルモンとも呼ばれている。
基準値:4.5~21.1μg/dl
調査したホルモン
目的✐
抱っこ採血とネット採血のオキシトシン値と、他の2つのホルモン値との比較を
行い、抱っこ採血の有用性を検討するため
方法✐
①抱っこ採血は保護者に抱っこされた状態で採血を実施する
②ネット採血は児を保護者から預かり、別室でネットに固定し採血を実施する
③抱っこ採血、ネット採血とも、発達段階に合わせたディストラクションと、3歳以
上は採血前にプレパレーションツールを用いてプレパレーションを実施する
④記録:看護師は処置中の児の様子、採血所要時間、穿刺回数、泣き始め、泣き止ん
だタイミングについて記録する
目的と方法
氏名 年齢 性別 目的 栄養 所要時間 穿刺回数 溶血 採血方法 オキシトシン コルチゾール
HN 2 F アレルギー 母乳 5分 1 - 前向き 3未満 2.7
KH 3 F 抗体検査 母乳 8分 1 - コアラ 15.5 4.8
IA 3 F 発熱 母乳 7分 1 - 前向き 5.86 11.6
RM 1 F アレルギー 人口 5分 1 - コアラ 34.9 1.3
YT 2 F アレルギー 混合 7分 1 - 前向き 10.3 15.1
SH 1 M アレルギー 母乳 5分 1 - コアラ 26.1 5.6
CK 10M F アレルギー 母乳 5分 1 + コアラ 30.2 16.5
SK 1 F 研究 母乳 15分 3 - コアラ 4.94 7
TN 6M M アレルギー 母乳 5分 1 - コアラ 36.7 6.7
YM 3 M アレルギー 母乳 15分 3 - 前向き 16.3 6
SH 1 M 貧血検査 母乳 5分 1 - コアラ 19.5 11.5
SH 3 M アレルギー 母乳 5分 1 - コアラ 3未満 1
KN 6M M アレルギー 母乳 28分 4 - コアラ 3未満 28.1
KH 1 M 発熱 母乳 7分 1 - 前向き 3未満 4.6
SW 3 M 研究 母乳 5分 1 - コアラ 3未満 12.2
HO 2 F アレルギー 人口 5分 1 + 前向き 4.59 8.4
HY 7M M 肝機能検査 母乳 5分 1 - コアラ 30 4
YG 2 M アレルギー 母乳 5分 1 - 前向き 56.7 5.9
IY 3 F アレルギー 母乳 5分 1 - コアラ 10.4 19.8
RK 1 F アレルギー 混合 15分 3 - コアラ 10.1 18.2
YN 3 F 発熱 母乳 5分 1 - コアラ 3未満 10.5
RS 3 M 発熱 母乳 6分 1 - 前向き 6.31 39.2
KN 6 F 紫斑病疑い 人口 5分 1 - コアラ 9.29 4
YH 1 M 喘鳴 母乳 7分 1 - 前向き 20.5 15.5
YO 4 F 遷延性咳嗽 母乳 7分 2 - コアラ 10 7.6
オキシトシン・コルチゾールの測定者一覧(抱っこn=25)
オキシトシン値の2群間の年齢、性別および検査目的の
比較
0
1
2
3
4
5
0歳 1歳 2歳 3歳 4歳 6歳
1
2 2
3
3
5
2
5
1 1
年齢
オキシトシン上昇
オキシトシン非上昇
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
男児 女児
4 4
8
9
性別
各項目別のオキシトシン値上昇者数・非上昇者数の比較(抱っこ採血)
0
2
4
6
8
10
12
アレルギー検査 発熱その他
3 3
11
8
検査目的
0
5
10
15
母乳栄養 人工栄養 混合栄養
7
1
12
2 2
栄養
各項目別のオキシトシン値上昇者数・非上昇者数の比較(抱っこ採血)
19.8
19.3
コアラ抱っこ
前向き抱っこ
抱っこの向きによる
オキシトシンの平均値
(P=0.91
4)
n=16
n=9
8%
92%
溶血の有無
なし
あり
各項目別のオキシトシン値上昇者数・非上昇者数の比較(抱っこ採血)
氏名 年齢 性別 目的 栄養 所要時間 穿刺回数 溶血 オキシトシン コルチゾール
SY 3 M アレルギー 人工 5分 1 - 3未満 3.5
TY 3 F 研究 人工 3分 1 - 9.09 5.2
SK 1 F 研究 母乳 3分 1 - 3未満 14
SW 3 M 研究 母乳 3分 1 - 3未満 1.5
YS 4 F 研究 混合 3分 1 - 3未満 10.6
AT 1 F 発熱 混合 5分 1 - 3未満 5.6
TK 3 M 研究 混合 5分 1 + 3未満 13.3
SW 3 M 研究 母乳 5分 3 - 3未満 7.6
RS 3 F アレルギー 人工 5分 1 - 3未満 11.9
YN 2 M 研究 母乳 5分 3 - 3未満 5.1
オキシトシン・コルチゾール測定者一覧(ネット採血n=10)
氏名 年齢 性別 目的 所要時間 栄養 穿刺回数 溶血 前向き/コアラ オキシトシン コルチゾール セロトニン
HO 2 F アレルギー 5分 人工 1 - 前向き 4.59 8.4 392
HY 7M M 肝機能検査 5分 母乳 1 - コアラ 30 4.0 405
YG 2 M アレルギー 5分 母乳 1 - 前向き 56.7 5.9 248
IY 3 F アレルギー 5分 母乳 1 - コアラ 10.4 19.8 146
RK 1 F アレルギー 15分 混合 1 - 前向き 10.1 18.2 250
YN 3 F 発熱 5分 母乳 1 - コアラ 3未満 10.5 206
RS 3 M 発熱 6分 混合 1 + コアラ 6.31 39.2 340
KN 6 F 紫斑病疑い 5分 人工 3 - コアラ 9.29 4.0 622
YH 1 M 喘鳴 7分 母乳 1 - コアラ 20.5 15.5 115
オキシトシン・コルチゾール・セロトニン測定者一覧(抱っこ採血n=9)
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
抱
っ
こ
ネ
ッ
ト
n=23
n=2
n=8
n=2
P=0.313
0
100
200
300
400
500
600
700
抱
っ
こ
n=7
n=2
基準値:非妊婦 5以下 基準値:53~200ng/ml基準値:4.5~21.1μg/dl
5
抱
っ
こ
ネ
ッ
ト
0
10
20
30
40
50
60
5
n=17 n=1
n=9n=8
*P=0.0019
抱
っ
こ
ネ
ッ
ト
オキシトシン値 コルチゾール値 セロトニン値
*
まとめ①
抱っこ採血とネット採血のホルモン値を比較して・・・
②コルチゾール値は、ほとんどの子どもで基準値以下であった。疼痛を伴う処置
において、ネット採血所要時間は平均4分、抱っこ採血は平均7.68分であった。
実はこの時間差こそがギュッと抱きしめられることで安心し、安らぎのホルモ
ン、すなわちオキシトシン値を上昇させ、コルチゾール値は抑制することを示
唆する。
①オキシトシン値は、抱っこ採血児では68%に上昇を認めたが、ネット採血
児では90%が基準値であった。上昇因子として、年齢・性別・採血目的・
乳児期の栄養方法・採血所要時間・穿刺回数・抱っこの向きについて調査
したが要因とはなりえなかった。
③検体数は少ないが抱っこ採血児でセロトニンも同様に上昇が認められた。
まとめ②
抱っこ採血を実施することで・・・
①安心ホルモンが上昇することを証明できた。
・保護者と子どもとの愛着形成・信頼関係の構築を促す
②子どもの成長を促すかかわりができる
・発達課題の獲得
・保護者だけでなく医療従事者も行える
・子ども・保護者と医療従事者間での信頼関係の構築を促す
・採血などの苦痛を伴う処置であっても、抱っこされる
ことでオキシトシンは上昇する
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