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柿崎さんスライド

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柿崎さんスライド

  1. 1. 大人の学びは「社会的知性」を高めること M1 柿崎大司
  2. 2. 崩壊しはじめた「安心社会」のなかで、 次の社会をどう作るか 心のあり方が健全であるあるかぎり、人間より穏やかなものがどこにあろう。 だが、怒りより過酷なものがどこにあろう。人間以上に他者を愛するものがどこにあろう。 怒り以上に憎むものがどこにあろう。人間は相互の助け合いのために生まれた。 怒りは破滅のために生まれた。 セネカ 紀元前1年∼65年 社会的知性の大切さ  「安心社会」の崩壊が日本で急速に広がってきてい る。全国の有名ホテルや百貨店のレストランの食材偽 装表示だけではなく、JR北海道のレール数値改ざんな どが相次ぎ、利用者の安心感をあっという間に引き下 げた。政治や社会の在り方に対する不信感が、漫然 とではなく目に見えて拡大しつつある。  今まではたとえ政治や社会が少しおかしくなっても、 日常生活に関係するサービスは安心できると誰もが 思っていた。だが、国民のこの感情を完全に悪用され たかたちだ。グローバルな国力の競争にさらされて社 会が劣化しつつある日本で、安心して暮らしていくこ とは、もはや幻想に過ぎないのかもしれない。  これまでの「安心社会」が崩壊し、急速に社会的 な不確実性が高まるなかで、「信頼社会」をどう作る かが私たちの大きな課題になっている。ここでいう「信 頼」は、山岸俊男が『安心社会から信頼社会へ』の なかで定義している「相手の行動いかんによっては自 分がひどい目にあってしまう状況で、相手がひどいこ とをしないだろうと期待すること」を指す。つまり能力 に対する期待ではなく、意図に対する期待としての信 頼である。  例えば、担保もない友人が起業するにあたって50 00万円の借金を申し込んできたときに、友人の返済 する能力ではなく、意図に期待して5000万円を貸す ことが、ここでいう信頼だ。ただし、意図に対する期 待として信頼するには高い社会的な知性が必要とな る。 集団主義や人間関係による相互監視 安心社会 相互監視がない ところから崩壊
  3. 3. 大人の思考や行動を束縛している 狭いパースペクティブを変える 集団主義や人間関係による相互監視には限界があります。それが機能しな い部分から「安心社会」は崩壊し始めています。大人が「安心社会」の 前提条件を見直し、パースペクティブを変容させる必要があります。 社会を変える前に個人の変容を  「信頼社会」をつくるためには、集団主義や人間関 係による相互監視により、内側での行動をコントロー ルする今の日本の「安心社会」から、よりジェンダー・ 年齢・宗教・国籍などの多様性を受け入れ、信頼に より人々が結びつく社会に変化していくことが必要で ある。  そのためには、対人関係のなかで適切なコミュニ ケーションを行い、相手をよく理解し、適切な行動を とれる「社会的知性」というスキルを獲得できるよう、 大人から学び直す必要が出てくる。まず社会を変える 前に、個人としての大人が、思考や行動の仕方を束 縛している狭い解釈や認識によるパースペクティブを 変えなければならない。なぜならば社会変化と個人の 認識変容の結びつきが弱いままでは、個人としての意 識改革も新しい社会への取り組みも決して大きな力に はならないからだ。  大人の学びは社会の現状維持を前提条件にするべ きではない。今の社会を肯定するのではなく、市民が 社会をより良く変えていくことに前提条件が置かれる べきであろう。 社会 信頼社会 個人の パースペクティブの 変容
  4. 4. 「社会的知性」が 「信頼社会」を作る基本スキル 最も大切な「社会的知性」  山岸によれば、ヒトの知能は単一のまとまりではなく、 質的に異なる複数の知能に分かれており、「多重知能」 という考え方が優勢だという。  多重知能の考え方を一般化したH・ガードナーは現 在得られている証拠をもとに、人の知能はお互いに独 立した7つの知能から出来ているという。言語的知能、 論理 / 数学的知能、音楽的知能、空間的知能、身体 運動的知能、そして自分と他人を理解する能力である 自省的知能と対人的知能の7つである。  自省的知能とは自分の内面、とりわけ感情や情動を 適切に把握し、意識をして、その結果を行動指針とし てうまく利用する能力である。もう一つの大切な知能 は、他の人を理解する能力で、対人的知能という。  感情的な知能の重要性を唱えるもう1人の心理学者 D.ゴールマンは、『EQ―心の知能指数』のなかで、 他人との人間関係をスムーズに築き、相手の気持ちを 敏感に読み取り、人間社会のコンフリクトを上手に処理 する「社会的知性」の基本は対人的能力だと主張する。    自己中心的な見方や衝動的な行為を、理性の下に おいて克服する自省的能力は、社会的な利益をもたら す。一方、他人に共感し、心から傾聴し、相手の立 場に立ってものを見る対人的能力は、「安心社会」が 崩壊する中で、互いが尊重しあい建設的な意思疎通 をするために重要となる。 自省的知能と対人的知能 を足し合わせた「社会的知性」は「信頼社会」を作 るための基本スキルではないだろうか。 多重知能説では、ヒトの知能は独立した7つの 知能で構成されるとする。とりわけ感情や情動 を適切に把握し、行動指針としてうまく利用す る自省的知能、他の人たちを理解する対人的知 能が社会的知性の要素である 多重知能 言語的知性 論理・数学的知能 音楽的知能 空間的知能 身体的知能 自己中心的見方や 情緒をコントロール 共感し、心から傾聴し 相手の立場に立つ 自制的知能 対人的知能 社会的知性
  5. 5. 感情のコントロールには 感情区分と感情知識が有効 怒りを区分する アンガーマネジメント ゴールドマンは、怒りの頂点にある人間を鎮めるのは 究極の「社会的知性」だという。怒りは進化の過程 で人間が生き残るために身につけてきた反応の仕組 みの1つで、狩猟採集の時代では野獣に襲われたり するなどの危険が多く、感情的に反応することは生存 に極めて有利だったと言われている。この感情は、 生得的なものだけに非常に鋭敏に反応し、コントロー ルが難しいため適切に処理するにはさまざまな方略 が必要になる。  その一つが「アンガーマネジメント」(怒りのコント ロール)と呼ばれる米国の手法だ。「キレれそう」になっ たとき「6秒」待つ。すると怒りの衝動が収まり、本 当に必要な怒りとそうでない怒りの線引きができる。  別の方略として、感情の理解と対処があるが、な かでも感情区分と感情知識の2つが有効ということ がわかってきた。  感情区分は経験したさまざまな感情を怒り、悲しみ、 情熱、幸せなどのカテゴリーに振り分けることをいう。 感情知識とは聞きなれない言葉だが、怒り、恐れや悲 しみなどの感情が生じる理由や身体反応や表現方法な どの「感情の理解」や、感情の強弱をコントロールす る手順である。 1 秒 2 秒 3秒 4秒 5秒 6秒
  6. 6. 人生を変えた「社会的知性」 自分の人生は、自省的知性と対人的知能のバランス状態の取り方で大きく 変化した   小中高は挫折感、大学は無力感   社会人になってからは営業の感情労働に失望感   しかし、「社会的知性」の重要性に気がついてからは、バランスが調   整できるようになり、家庭やキャリアは希望する方向に進み始めた。 人生を変えた「社会的知性」  自分の人生を振り返ると、父の事業の失敗による頻 繁な転校、挫折を続けた浪人時代、そして熾烈な競 争の医薬品市場で営業として働いた30代までは、常 に自己の自省的能力や対人的能力と向き合って生きて きたと思う。  級友や教師に向けた怒り、進路を押し付けた両親 への怒りや自らの能力不足への哀しさ、営業という感 情労働への失望など、感情のコントロールがうまくで きなくて自暴自棄になりかかった時も多かった。  しかし、その状況を切り抜けられたのは自省的知能 と対人的知能の大切さに気づいてからだ。  私は人事部に所属したとき、EQを用いた能力アセス メントを営業に導入した。なぜならば、自分の情動を 知り、きちんと区分し、感情をコントロールし、かつ 他人の感情を認識して人間関係をうまく処理できれ ば、さらに成長できる営業社員が実に多かったからで ある。
  7. 7. (「クーリエジャポン」2014 年 2 月号 「シリコンバレーの未来研究所が考える これから必要とされる「10 の能力」」) 「信頼社会」の構築のため、 市民の基本教育として 「社会的知性」に力をいれる 未来につながるスキルの1つ  月刊誌「クーリエ・ジャポン」2014 年2月号は米 パロアルトにある有名シンクタンクによる、これから必 要とされる「10の能力」のレポートを載せた。その 1 つが「社会的知性」である。このように「社会的知性」 には関心が高まっているようにみえるが、実際の教育 プログラムは非常に少ない。また、中高年には「社会 的知性」の存在自体も知られておらず、大人の学びと して認知されるには政府が研究や実践で支援する必 要がある。そして信頼社会の構築に真剣に向き合うた めに、市民としての基本教育の1つとして「社会的知 性」を「大人の学び」にすべきであろう。 将来的な成功に欠かせない10の能力 デザイン思考 分野横断的な知識 独創的思考 計算的思考 情報整理力 批判的思考 社会的知性 動画ツール活用力 異文化理解 バーチャル・コラボレーション力 参考文献 『怒りについて』 岩波文庫 セネカ (2012) 『認知と感情』 ナカニシヤ出版 北村英哉 (2009) 『安心社会から信頼社会へ』 中公新書 山岸俊男 (2009) 『EQ心の知能指数』 講談社 ダニエル・ゴールドマン (1996) 「カッとなっても 6 秒待って 体罰予防へ、教員が訓練」 朝日新聞 杉原里美 2013 年 12 月 18 日 『クーリエ・ジャポン』 講談社 「これから必要とされる「10の能力」」 2014年 2月号  

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