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プール監視員な私と学習環境のデザイン

2021年3月22日の「中東・北アフリカ日本語教育シンポジウム」での角南北斗の発表スライドです。

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プール監視員な私と学習環境のデザイン

  1. 1. プール監視員な私と 学習環境のデザイン 中東・北アフリカ日本語教育シンポジウム(2021.03.22) 角南 北斗(SUNAMI Hokuto)
  2. 2. 本発表のテーマとなる問い 2020年度のフルリモートでの授業の体験は、
 特に学習者が「自分の学びに必要な学習環境」を
 しっかりと考える機会になったのではないか?
  3. 3. 最初におことわり 本発表は自身の授業実践を語るものですが、
 いわゆる「日本語の授業」の話ではありません。 結果的にZoomをまったく使わない授業でしたが、
 ツールや手法の評価が主題ではありません。
  4. 4. 発表者について
  5. 5. 発表者の経歴と仕事 教師から制作者へ軸足をシフト ✴ 大阪大学大学院での専門は日本語教育学 ✴ 日本語学校で非常勤講師 ✴ 国際交流基金関西国際センターで、教材制作などを担当 ✴ フリーランスとして、ウェブサイトやウェブ教材の制作を始める 日本語教師とチームを組んで制作 ✴ NIHONGO eな / 日本語でケアナビ / 経済のにほんご 他
  6. 6. 発表者の仕事(本発表の対象) 大学の非常勤講師 ✴ 担当は日本語の授業ではありません ✴ Office・情報処理・デザイン・プレゼン・知的財産などがテーマ ✴ 過去には調理師専門学校で経営なども教えてました ✴ 受講生における留学生は(授業にもよるが)多くて3割ほど
  7. 7. どんな授業の話?
  8. 8. 2020年度前期の担当授業 情報処理実習(主としてOffice入門) 情報検索&情報社会の理解 知的財産権(商標権や著作権など)
  9. 9. 2020年度前期の担当授業 情報処理実習(主としてOffice入門) 情報検索&情報社会の理解 知的財産権(商標権や著作権など) フルリモートで実施
  10. 10. 授業スタイルの概要(全授業共通) 授業で説明する内容は文書化して配布 ✴ Googleドキュメントにして、Google Classroom / Moodle に集約 受講生とのやりとりはグループチャットツールで ✴ Discordを使用(TwitterやLINEみたいなイメージでOK) Zoomなどのオンライン会議ツールは結局使わず
  11. 11. 授業の流れ 受講生は各自、文書を読みつつ指定のタスクを行う ✴ 一部のタスクは成果物を提出してもらう 質問があれば、Discordのタイムラインに投げる ✴ 授業時間中は即レス。ダイレクトメッセージにも対応する。 タスクをすべて終えたら後はご自由に ✴ 取り組むスピードは3倍くらい差があるようなので えられない
  12. 12. なぜ文書のみ? 動画は使わないの?
  13. 13. ビデオ会議ツールを使うのを避けた理由 受講生のPC&ネット環境が十分でない?との事前情報 ✴ 全部の授業でZoomを使うと通信量がヤバいんじゃない? ✴ 実際、1∼2割の受講生は環境トラブルで苦労していた様子 顔を見てやりとりする必要のない内容 ✴ 受講生個別のサポートはしたいが、常時顔出しじゃなくていい ✴ ずっとカメラで映されてるの、鬱陶しくありません?
  14. 14. 動画配信での説明を避けた理由 質の良い動画を作り続けるコストが高すぎ ✴ YouTuberでもない俺の動画を長時間見るのは俺だって無理 ✴ 短い動画にすれば頭出しもしやすいが、そもそも作るのが難しい 動画は文書に比べて改訂が難しい ✴ 資料の作成コストを考えると次年度も使いまわしたいが、
 ちょっとした文言でも変更が大変となると躊躇してしまう…
  15. 15. 文書作りで心がけたこと 教師の発話を文字化するような丁寧さで書く ✴ レジュメではなく、その内容の入門書を書くつもりで(超大変!) ✴ 内容説明だけでなく、進行やタスク指示の表現もとにかく明瞭に 受講生の7割は「質問なし」で終えられるように ✴ 質問環境は用意しているが、教師の遠隔ワンオペ対応では
 同時に多くの質問が飛ぶようだと進行に支障が出る
  16. 16. とはいえ、動画を使う心づもりも… 文書だけでは難しい場合の準備はしていた ✴ Discordは通話・画面共有・ライブ配信も可能なので採用した 実際は、動画もZoomも出番はなかった ✴ 授業時間外の個別サポートで、一度だけ通話&画面共有を使用 ✴ そもそも通話ができる学習環境でない、と言う受講生もいた
  17. 17. プール監視員な私と 学習環境のデザイン 中東・北アフリカ日本語教育シンポジウム(2021.03.22) hello@shokuto.com 角南 北斗(SUNAMI Hokuto)
  18. 18. 教師はプール監視員、とは 授業は文書の準備が99%。いざ授業が始まったら
 教師は質問待ち(Discord監視)しかできない。 ✴ 困っている(= れている)受講生を見つけてサポートするのが仕事 授業中の受講生全体への呼びかけも難しい ✴ 受講生は文書やタスクに集中(Discordを非表示に)していると、
 教師が授業中に何か伝えたくて投稿しても気づかない可能性がある。
  19. 19. 実際の授業はどうだったか?
  20. 20. 教師としては手応えあり 授業進行には大きな支障がなかった ✴ 質問や問い合わせも対応可能な範囲内に収まった 受講生の理解度は前年度と同等かそれ以上? ✴ 提出された課題の質が大きく低下した、という印象はなかった ✴ 不慣れな形式・環境でも受講生が粘り強く取り組んでくれているから、
 というのは当然あると思われる
  21. 21. 受講生の声(アンケートから) Zoomを使わないのが良かった ✴ リアルタイムの連続接続が難しい環境・機器の状態 ✴ 自分の顔を映さなくて済むので精神的に楽 周囲を気にせず自分のペースで取り組めた ✴ 前年度までも「各自の取り組みが大半」な授業スタイルなので、
 何と比較しての話なのかは確認できていない
  22. 22. 手法自体の評価は慎重に 動画で講義してくれた方が良かった、という声も ✴ 教師側の想定よりずっと少数だったが、こうした意見もあった 前年度までと状況が違いすぎて比較は困難 ✴ 困難な状況下で受講生側が頑張ったことも、その逆もあっただろう 授業内容によって手法の合う・合わないはある ✴ 本発表はツールや手法の評価を目的としたものではありません
  23. 23. プール監視員な私と 学習環境のデザイン 中東・北アフリカ日本語教育シンポジウム(2021.03.22) hello@shokuto.com 角南 北斗(SUNAMI Hokuto)
  24. 24. 2020年度後期、
 対面授業再開で行ったこと
  25. 25. 2020年度後期の担当授業 情報処理実習(Excel中級編) ✴ 前期のOffice入門と同じ受講生 言語データ処理(コーパスなど) ✴ 前期のOffice入門と同じ受講生 伝わりやすいプレゼン資料作成(PowerPoint) ✴ 発表者の授業はこれが初めてという受講生が大半
  26. 26. 対面形式に戻せと言われたけど… 教室での実施を要請されるケースが過半数 とはいえ、前年度までの形式は現実的に無理 ✴ 社会状況の変化による「明日からリモートにせよ」にも対応するしかない ✴ 何らかの理由で「教室に来ない受講生」のサポートもしてね、と言われる ✴ 受講生全員が「教室で受けたい」と思っている、とは限らない
  27. 27. 教室でやるけど、やり方は変えない フルリモートの時と同じく、説明は文書で提供 ✴ 前期に自宅でやっていたことを、後期は教室で行う格好 ✴ 教室実施なので、受講生は口頭で質問などができる。
 Discordは利用を継続し、主に授業時間外対応の手段として活用。 教師が授業中に話すのは、補足と個別対応のみ ✴ プール監視員というスタンスは教室でも変わらない
  28. 28. 学べているか?にフォーカスさせる 教室にいなくてもそれなりに学べるように、
 授業参加や課題提出のルールを可能な限り柔軟にした。 ✴ 大学側は「出席」や「教室に来させる」にこだわりがちなので、
 本授業的にも社会状況的にも相性は悪いのは否めない。 受講生には「学習内容を理解すること」が最優先だと
 繰り返し伝えて意識してもらった。 ✴ 学びの内容をきちんと求める、という点では(甘いように見えて)厳しい
  29. 29. やってみてどうだったか? 直接講義をしてほしい、という声は出なかった ✴ 教師は基本的に黙っていて、受講生が各自進めるのを見届ける毎日 教師への質問も(想像と違って)増えなかった ✴ 前期は「リモートだと質問しにくい」という意見があったのだが… ✴ 教室だと友達に聞きながらできるので良い、という声が多かった 口頭で即時対応ができるのは、教師としては楽
  30. 30. 学習環境のデザイン?
  31. 31. 学習環境のデザインの重要性を実感 授業にリモート(=非教室)要素が加わったことで、
 学習環境をデザインする自由度が上がった。 ✴ 教室や通学といった「当たり前」を見直す機会に ✴ 教師側はもちろん、学習者側もデザインの余地が格段に広がった 自由度が上がったぶん、うまくデザインできないと、
 学習環境は格段に悪くなりうる。 ✴ 特に「学習者が」自分でデザインすることを意識する必要がある
  32. 32. 教師側のデザイン要素 授業内容を伝達するためのツールは? ✴ Zoomか、動画配信か、資料配布か、それらの組み合わせか 学習者とのコミュニケーションの手段は? ✴ 映像か、音声のみか、文字のみか ✴ リアルタイムでやり取りするのか、後でまとめてなのか
  33. 33. 教師側のデザイン要素 教師と学習者はどこにいる(いてもよい)のか? ✴ 完全リモートか、教室実施のみなのか、教室で受けなくてもよいのか 授業時間外をどこまでサポートするのか? ✴ 教室とオンラインを同時にサポートするのか、しないのか ✴ 特にオンデマンド型の場合、教師の「時間外対応」が際限ない
  34. 34. 学習者側のデザイン要素 オンライン受講環境の整備 ✴ PCやネット環境を快適な状態に保てるか ✴ 集中できる&リラックスできる環境を作れるか 学習時間の管理 ✴ 特に授業時間外に取り組む際は、そもそも時間管理が大変 ✴ 多すぎる課題(これは教師側も重要な要因)に対する力の配分 ✴ そもそも「学校に行く」ことで得ていた生活リズムをどうするか
  35. 35. 学習者側のデザイン要素 友達と協力しやすい環境作り ✴ 教室に行くだけで実質的に可能だったことも、自前で用意する必要がある ✴ 教室外であっても友達と時間・場所を合わせて取り組む ✴ フルリモートの場合、通話しながら受講するためのITスキルも必要 学習をスムーズにするITスキルの習得 ✴ ある種の基礎学力的な要素なのに、支援する仕組みが十分でない ✴ 教師側のITスキルが足りないと、不合理なやり方を押し付けられがち
  36. 36. 学習における「学習者任せ」な要素 昨年度までは半ば前提として決まっていた要素を
 教師も学習者も意識的に選び、整える必要がある。 ✴ 授業をどう受けるか?なんて考えたことない学習者は多いはず リモート要素のある授業は(その手法にかかわらず)
 いわゆる「学習者に任せる」部分が多くなる。 ✴ 教室と違って、教師は学習者を直接「監視」も「支援」もしにくい ✴ この「学習者任せ」を、どうデザインするかが重要になる
  37. 37. 学習者任せ をうまく支援するには? どのような学習環境がその学習者にとって良いのかは
 学習者ごとに違うことを、みんなが意識する。 ✴ 学習スタイル、内容の理解度、その時の状況によっても異なる ✴ 受講生ごとに「授業の受け方」が違っていてもOKだと互いに受け入れる 教師はリモート要素を普通に取り入れた授業設計を ✴ より柔軟かつ本質的な学びの場の構築に、リモート要素は重要
  38. 38. まとめ:
 学習環境のデザインに必要なこと
  39. 39. 2020年度の実践で意識した要素 担当教師の考える「学び」について繰り返し説明した ✴ 学習者の持つ「学習観」や「教師観」との折り合いをつける 学習者側に「学び方の自由」をなるべく持たせた 教師をリソースの1つとして機能させようとした ✴ 授業を受けることが目的ではなく、学習内容の理解に必要なリソースとして、
 文書やネットや友達のほか、教師をうまく学習者に使ってもらおうとした。
  40. 40. 次年度以降の課題 教室とリモートの両方を活用する方法の洗練 ✴ 前年度の資産と経験を活用しつつ、方法にこだわりすぎずに変えていく 学習環境のデザインの支援 ✴ 授業内容そのものだけでなく、学習者が学習環境をより良くしていくために
 必要な知識や考え方を少しでも伝える・いっしょに考える。 現状の「学校的な仕組み」との折り合い
  41. 41. Freelance Designer
 Blog: withcomputer.jp Portfolio: sunamihokuto.com Twitter: @shokuto SUNAMI Hokuto

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