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書評:ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る

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自由学園最高学部 「グローバル化」講義 発表資料

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書評:ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る

  1. 1. ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る 2016.11.4 萩原 高行
  2. 2. 「ベネディクト・アンダーソン」とは 政治学と古典研究を修学して、ナショナリズム検 討時の必読本という評価を受けている 『想像の共同体(Imagined Communities)』 (1983年初版、1991年、2006年改版) を執筆した人 – ナショナリズム研究者と呼ばれて いる人(政治学者) 書誌情報 単行本: 400ページ 出版社: 書籍工房早山 ISBN-13: 978-4904701089 発売日: 2007/7/31 1
  3. 3. ベネディクト・アンダーソングローバリゼーションを語る 目次 • 第1部 ベネディクト・アンダーソン講義録  『想像の共同体』を振り返る さて、今日わたしが頼まれたのは『想像の共同体』という本について語る事です。  アジアの初期ナショナリズムのグローバルな基盤 さて本日、わたしがお話ししようと思うのは、アジアのナショナリズムがどのように グローバルなものであったのか、もしくは、そこにどのようなグローバルな基盤が あったのかという問題です。 • 第2部 アンダーソン事始  アンダーソン、アンダーソンについて語る  『想像の共同体』再説  グローバリズムの思想史にむけて • アンダーソンをめぐる14の対話 書誌情報 梅森直之編著 新書: 227ページ 出版社: 光文社 ISBN-13: 978-4334034016 発売日: 2007/5/17 2
  4. 4. グローバル化とナショナリズム • Academic literature commonly subdivides globalization into three major areas: economic globalization, cultural globalization, and political globalization. https://en.wikipedia.org/wiki/Globalization 学術書では、一般にグローバル化を以下3つの大分野に分割して論じる 1. 経済的グローバル化 2. 文化的グローバル化 3. 政治的グローバル化 • 政治的グローバル化は、国家間の問題を(2国間ではなく)地球規模でとらえて 起きる変化を引き起こす現象  国家とは何かを考えないとグローバル化は語れない 3
  5. 5. ナショナリズムへの見方 • 編著者の梅森直之(早稲田大学の政治学者): 「ナショナリズムの思想としての特性は、人々をときには死に至るまで駆り立てて ゆくその「力」にこそ求められるものだから」 P136※(第2部アンダーソン事始め・『想像の共同体』再説・ナショナリズムの認識 論) • ベネディクト・アンダーソン: 「政治的イデオロギー」ではなく、「文化現象」としてとらえようとした P41 (第1部ベネディクト・アンダーソン講義録・『想像の共同体』を振り返る) 「いまひそかにマルクス主義とマルクス主義運動の歴史に根底的変容が起こりつつあ る。そのもっとも明らかな徴候は、ヴェトナム、カンボジア、中国のあいだの最近の 戦争である。」『想像の共同体』P18(最初の文) マルクス主義という共通の政治的イデオロギーを持つのになぜ戦争が起きた? マルクス主義(イデオロギー) < ナショナリズム ※ページは『想像の共同体』等追記がない限り新書のもの 4
  6. 6. 3つのパラドックス 1. 歴史家の客観的な目にはNationが近代的現象とみえるのに、ナショナリスト の主観的な目にはそれが古い存在とみえるということである 2. 社会文化的概念としてのナショナリティ[国民的帰属]が形式的普遍性をもつの に対し、それが、具体的にはいつも、手の施しようのない固有さをもって現れ、 そのために、たとえば「ギリシア」というナショナリティは、それ独自の存在 となってしまうということである 3. ナショナリズムのもつあの「政治的」影響力の大きさに対し、それが哲学的に 貧困で支離滅裂だということである 『想像の共同体』P22(概念と定義)から一部修正して引用 5
  7. 7. 国民とは? 「国民(Nation)とはイメージとして心に描かれた想像の政治共同体である」 It is an imagined political community It is imagined because the members of even the smallest nation will never know most of their fellow-members, meet them, or even hear of them, yet in the minds of each lives the image of their communion いかに小さな国民であろうと、これを構成する人々は、その大多数の同胞を知ること も、会うことも、あるいはかれらについて聞くこともなく、それでいてなお、ひとり ひとりの心の中には、共同の聖餐(communion)のイメージが生きているからである。 『想像の共同体』P24 法的には日本のパスポートを取得できる人が日本国民≒日本人? ノーベル賞受賞者の中村修二氏(米国籍)は日本国民ではない? 帰化した人は日本国民≒日本人?、併合中の台湾の人は日本人だった? 血縁は分かりやすいが… 6
  8. 8. ナショナリズムの定義 パラドックス1:歴史家の客観的な目にはNationが近代的現象とみえるのに、ナショ ナリストの主観的な目にはそれが古い存在とみえるということである ゲルナー: ナショナリズムは国民の自意識の覚醒ではない。ナショナリズムは、もともと存在し ていないところに国民を発明することだ。 ベネディクト・アンダーセン: 国民とはイメージとして心に描かれた想像の政治共同体(imagined political community) である 本来的に限定され、かつ主権的なもの[最高の意思決定主体]として想像される トム・ネアン: 『ナショナリズム』は、個人における「神経症」と同様、近代発展史の不可避の病理 であり、神経症と同じように本質的にあいまいでやがては痴呆症へと陥っていくもの であって、広く世界に蔓延した無力感のジレンマに巣くった(社会小児病とでもいう べき)ほとんど不治の病いである。 7
  9. 9. 出版物の力 – 出版資本主義 • [贖罪状頒布に反対する九十五か条の]堤題を打ち付けたとき、この堤題のドイツ語訳 はただちに印刷されて「一五日以内に国内いたるところで目にとまるようになっ た。」 『想像の共同体』P78 -ルターの宗教改革は1517年 • 話し言葉は消えるが、文書は消えない 出版は正確なコピーを大量に生成できる 出版「事業」は、より多くの顧客を獲得しようと努力する (ラテン語ではなく)話し言葉と類似の日常性のある「共通語/出版語」の創出 • 言葉が「想像の共同体」を生む  本質主義と構築主義  もともと共同体は存在していたが気がついていなかった  言語の標準化が共同体の構成を担った • もう一つの言葉:地図 – メルカトル図法は1569年  共同体ができれば境界が必要になる 8 https://en.wikipedia.org/wiki/Ninety-five_Theses
  10. 10. 公定(Official)ナショナリズム • 1780年代初頭にヨーゼフ二世が国家語をラテン語からドイツ語に変更 • 一八世紀がナショナリズムの時代の夜明けであるばかりか、宗教的思考様式の 黄昏でもあった 」 『想像の共同体』P34 教会の神聖性の崩壊 – 情報公開の力 王権神授説の崩壊 (植民地生まれの欧州人の差別と現地化) • 日本の遅れてきた公定ナショナリズム 明治維新(1868年)からプロシア・ドイツをモデルとして導入  欧州ではナショナリティの意識の勃興は初めから国際社会の意識によって裏付け  日本は対等性の意識がなく、階層的支配の目で国際関係を見る 『想像の共同体』P160(丸山真男『現代政治の思想と行動』引用) 9
  11. 11. 文化 • パラドックス2:社会文化的概念としてのナショナリティ[国民的帰属]が形式的 普遍性をもつのに対し、それが、具体的にはいつも、手の施しようのない固有 さをもって現れ、そのために、たとえば「ギリシア」というナショナリティは、 それ独自の存在となってしまうということである • パラドックス3:ナショナリズムのもつあの「政治的」影響力の大きさに対し、 それが哲学的に貧困で支離滅裂だということである • 文化とは人間の行動を支配する制御装置 by Clifford Geertz/梅森直之  日本人なら礼節を重んじなければならない  女は男に従わなければならない – 既に否定された(されかけている)常識  天皇神授説  自由学園の生徒なら…  日本神道は、階層的支配幻想に基づく、公定ナショナリズムそのものか? 10
  12. 12. ナショナリズムとは ベネディクト・アンダーセン: 国民とはイメージとして心に描かれた想像の政治共同体である 本来的に限定され、かつ主権的なもの[最高の意思決定主体]として想像される 萩原: ナショナリズムは現時点で最強の統治技法である 例:Brexit – 理性を超える 11
  13. 13. 「国民」にとってのグローバル化とは ベネディクト・アンダーセン: グローバリゼーションのはじまり(中略)それは、瞬時に情報を伝えることがで きる世界初のグローバルコミュニケーション手段である電信によって可能になっ た世界でした。(中略)そんな1870年から1900年の世界に焦点を当てたものを書 いています。P61 出版資本主義(オフラインコミュニケーション) →電信・通信(オンラインコミュニケーション)←グローバル化のはじまり (通信社・新聞) (→インターネットとマーケティング技術)←新しいグローバル化 コミュニケーション技術進化とグローバル化は不可分な関係と考えているように 見える 情報パーソナライズはナショナリズムを超える(恐ろしい)力がある? 12
  14. 14. 所感:日本のナショナリズム - 人々をときに は死に至るまで駆り立ててゆくその「力」 • 何を守ろうとしているのか?  「想像の共同体」間の競争、序列付け(帝国主義)?  為政者は力を求めて公定ナショナリズムを強化する  守っているのは権力であることを理解した上で、 最強の統治技法に抗うことはできるのか? • ナショナリズムを超える力は何か、それを行使する主体は誰か?  ISは恐らくあだ花だが、新たな時代の先駆けと考える必要がある 13
  15. 15. おまけ – 触れなかったこと • 時間とディアスポラ  革命家は自国だけを見ているわけではない  「公的ナショナリズム」と「民衆ナショナリズム」  植民地からの独立、帝国主義 • アナーキズムとナショナリズム • おまけのおまけ  「想像の共同体」と国際経済の政治的トリレンマ 1. 『グローバル化(国際経済統合)』 対等な関係を(止むを得ない)価値観として受容すると 2. 『国家主権(国家の自立)』 国家主権を選択すればナショナリズムを経由して帝国主義に至る 3. 『民主主義(個人の自由)』 民主主義を選択すれば人権運動を経由してアナーキズムに向かう 14
  16. 16. 再掲:目次とお奨めの読み方 • 第1部 ベネディクト・アンダーソン講義録  『想像の共同体』を振り返る まず読んでください。  アジアの初期ナショナリズムのグローバルな基盤 初回は飛ばしても可。 • 第2部 アンダーソン事始  アンダーソン、アンダーソンについて語る 必ず読んでください。  『想像の共同体』再説  グローバリズムの思想史にむけて • アンダーソンをめぐる14の対話 15
  17. 17. 参考:アンダーソンをめぐる14の対話 1. 東アジアのナショナリズム 2. ナショナリズム研究の現在 3. 今後の研究プロジェクトについて 4. テロリズムのネットワーク アナーキストを心配するブッシュ P201 5. グローバル化の将来 6. 右派のネットワーク 7. 「アジア」とは何か? ロシアはアジアか? P205 8. 共同体とは何か? コミュニティーという言葉は、多くの言語で 訳しにくいもののようです P208 9. 初期グローバル化の時代 10. グローバル化のイロニー 新聞 vs インターネット&マーケティング技術 11. ナショナリズムの未来 12. 映像と活字 13. 東アジア共同体の可能性 14. ネットワークの評価 ネットワークには持続性がない P221 16

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