OpenJDKは使い物になるか？OpenJDKの実際と今後（NTTデータオープンソースDAY 2015 Autumn 講演資料）

2. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY 自己紹介 • 末永恭正（すえながやすまさ） • NTTコムウェア株式会社 • OpenJDK jdk9 committer • IcedTea committer • HeapStats作ってます http://icedtea.classpath.org/wiki/HeapStats/jp OracleとJavaは、Oracle Corporation及びその子会社、関連会社の米国及びその他の国における登録商標です。文中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標である場合があります。本資料に記載している情報は2015年10月13日現在のものです。今後変更となる可能性があります。

4. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY オープンソースのJava SE実装 • 2007年5月に初期バージョンリリース • 当時はまだSun Microsystems • Java SE仕様に準拠 • Java SE API仕様のレベルではOracleJDKと完全互換 http://www.oracle.com/technetwork/jp/java/javase/community/opensourcejdk-jsp-136417-ja.html

6. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY JDKの系譜 https://blogs.oracle.com/darcy/entry/openjdk_6_genealogy/ 8u1 ... OpenJDK9 • 最初にJDK 7がOSS化 • JDK 7の途中からOpenJDK6が派生 • JDK 8も元はOpenJDK7 • JDK 7からはコードベースが OpenJDK7に一本化 • OracleJDKもOpenJDKも元は一緒 • 現在開発中のOpenJDK9は OpenJDK8からの派生

10. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY Oracle (Sun) JDKとの違い http://ossipedia.ipa.go.jp/doc/208/ • 2010年に情報処理推進機構（IPA）から公開されたOpenJDKとSunJDKの比較資料 • SunJDK 6u17とRed Hat社提供の java-1.6.0-openjdk-1.6.0.0-1.7.b09を比較

11. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY IPA報告資料より • Javaクラスライブラリ実装のうち97%は問題なし • 残りの3%は差分があったものの、Javaとして仕様が定められていないもの • com.sunパッケージ • CORBAや画像処理などでJavaが内部的に使用するもの • 通常のJavaプログラミングには全く影響なし • 実機検証においても、物理環境・仮想環境に関係なく性能的な差異なし！

12. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY OracleJDK「だけ」にあるもの • Java Flight Recorder • -XX:FlightRecorder、-XX:StartFlightRecording • 商用環境への適用が可能な低オーバーヘッドプロファイラ • Application Class Data Sharing • -XX:UseAppCDS • マルチインスタンス構成時にアプリケーションクラス情報をプロセス間で共有 • Resource Management • -XX:MemoryRestriction、-XX:ResourceManagement、 -XX:ResourceManagementSampleInterval • G1GC選択時（-XX:+UseG1GC）に有効になる仮想メモリ使用量制御機能

13. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY OracleJDK「だけ」にあるもの • Error Report Transmission • -XX:TransmitErrorReport、-XX:ErrorReportServer • JVMクラッシュ時にエラーリポートを別サーバへ送信 • JavaFX • OracleJDK 7u2以降はSDKが付属 • OpenJDKではJavaFXのオープンソース実装であるOpenJFXが必要 • Java Plugin、Java Web Start

15. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY IcedTea • Red Hat主導のOpenJDKサポートプロジェクト • 元々はFOSSでOpenJDKのビルドを実現するためのプロジェクト • Java Plugin、Java Web Startを提供 • icedtea-web • 付加価値 • Zero VM • SystemTapサポート • 様々なJava関連OSSプロジェクトのホスティング • Thermostat • HeapStats

17. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY 例えばRed Hat Enterprise Linux • OpenJDKはRed Hat Enterprise Linux (RHEL) のコアコンポーネント • https://access.redhat.com/ja/articles/503403 • RHELのライフサイクルに依存 • Production 3（重大なセキュリティ、バグフィックスのみ提供）までGA後7年はサポート • https://access.redhat.com/support/policy/updates/errata/

18. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY OracleJDKのサポートポリシー • 無償アップデート期間 • GAから3年間 • 後続のメジャーリリースから1年間 • これを超えてもアップデートが欲しい場合は有償契約が必要 http://www.oracle.com/technetwork/jp/java/eol-135779-ja.html

21. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY 乗り換えるメリット 1. End Of Lifeまでの期間が長い！ 2. OracleJDKのEOL後もバグFix、セキュリティFixが提供される！ 3. アプリケーションがそのままでも性能が上がる可能性が！ 4. 様々なサポートベンダが検討可能！

22. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY 性能向上の一例 • 新しいCPU命令セットの積極的な活用 • クラスライブラリ実装の性能改善 • GC（Garbage Collection: 不要メモリ回収機能）の性能改善 • JIT（Just-In-Time）コンパイラの最適化精度向上

24. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY 他にもこんな性能向上が！ • JVM • Intel系SIMD命令を活用したメモリのバルク転送（6u14～） • SSE 4.2命令を活用した文字列処理性能の向上（6u18～） • クラスライブラリ • Arrays#sort(Object[]系)のアルゴリズムをTimSortに変更（7～） • その他 • JavaScript実行エンジンの性能向上（8～）

26. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY NTTコムウェアでも… Javaアプリケーションの潜在的なバグ、チューニングについてコンサルティングします！ Java診断サービス 1番多いメモリトラブルに対応！一部の性能問題にも対応可能 • サービス内容 • メモリ枯渇の危険性やメモリに関連するAPの潜在的なバグの有無を確認 • Garbage Collection(GC)をはじめとした、JVMのチューニング実施 • OSSのツールを活用し、突然のトラブルにも迅速に対応できる環境の実現に向けたコンサルティング • 対象プロダクト • Oracle JDK 1.5以上 • OpenJDK • JRockit R28以上 ※動作するミドル、ライブラリについては条件はありません。 NTTコムウェア品質生産性技術本部技術SE部 OSS・AP技術担当 ctpm-se-openjdk-all@srv.cc.nttcom.co.jp 043-211-2392

36. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY Oracle Contributor Agreement • OracleのOSSプロジェクトにパッチ等を寄贈（contribute）するための同意書 • OpenJDK、GlassFishなど • OCAが締結されていないとパッチを出しても受領してもらえない • 個人でも締結可能 • 企業の場合は雇用者がサインする必要あり http://www.oracle.com/technetwork/oca-405177.pdf

38. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY OpenJDKの前提知識 • コード管理 • Mercurial • 開発言語 • C、C++、アセンブラ（JVM） • Java、C（クラスライブラリ） • その他（Makefile、シェルスクリプトなど） • プラットフォーム • Windows • Linux • OS X など

40. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY Contributor • OCAが受理されれば誰でもContributor！ • パッチを出したらスポンサー探し • スポンサー：JIRAへの登録やパッチレビュー、コミットを手伝ってくれる人 • スポンサーは、そのパッチの対象となるプロジェクト／グループのコミッタ以上が担うことができる

42. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY Author • 名前付きChangesetが2つ以上でなることができる • 条件を満たしたらProject Leadに「Authorになりたい」と連絡するだけ • OpenJDKのJIRAへの書き込み権、Oracleのコードレビューサーバへのアクセス権をゲット！ • OpenJDK Censusにも名前が載ります • パッチ提供の一連の作業が格段にはかどります！ • 相変わらずスポンサーは必要

46. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY Committer • 名前付きChangesetが8つ以上でなることができる • Authorでなくてもこの条件を満たせばCommitterになれます • 現在Committerを務めている人からノミネートされ、投票を受ける必要がある • Authorの内容に加え、コミット権とスポンサー権をゲット！ • ただし、HotSpot VMの場合はOracleのテストサーバ（非公開）経由でのpushが必須となっているため、Oracle社員以外は直接pushすることができない • HotSpotに関しては相変わらずスポンサーが必要 • 他（クラスライブラリ、関連プロジェクト等）に関しては直接pushが可能

48. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY Reviewer • 現在Committerで、かつ名前付きChangesetが32個以上でなることができる • 現在Reviewerを務めている人からノミネートされ、投票を受ける必要がある • OpenJDKコミュニティで事実上最高ランク • Committerの内容に加え、レビュー権をゲット！

51. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY OpenJDKのML • コンポーネント別に分かれています • 基本的なクラスライブラリ：core-libs-dev • GC関連：hotspot-gc-dev • 出し先を間違えると反応してくれない可能性が高いです • OpenJDKのMLはファイル添付ができないので、パッチは本文記載やストレージサービス等で参照できる形にする • jdk9やjdk8u-devなど、JDKそのもののMLには出さない！ • 個々のバグフィックス、機能改善について議論する場ではありません • CommitterやReviewerの投票、JDKのリリーススケジュール、新機能の採否といった全体的な議論をする場です

52. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY 私の対応したバグFix・機能改善 • Linux版JDK付属ツールの不具合改善 • 最新GCCでのビルド不具合対処 • 脆弱性対処 • クラッシュするようなバグへの対処 • 外部からの強制的なGCログローテーション機能の実装など

54. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY JDK 9 • 2016/09/22リリース予定 • 数々の大幅な変更を含むリリース • HTTP/2への対応 • モジュラー化 • Javaランタイムのコンパクト化を実現 • JavaDocのHTML5化 • デフォルトのGCアルゴリズムをG1（Garbage First）GCへ変更など

58. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY JEP 143: Improve Contended Locking • http://openjdk.java.net/jeps/143 • Javaのsynchronizedステートメントによる排他制御の性能改善 • マルチスレッドプログラムの性能向上に期待大！ • Javaクラスライブラリ内でも多数使われています COMPLETED

59. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY JEP 165: Compiler Control • http://openjdk.java.net/jeps/165 • JVMのJITコンパイラを細かく制御する方法の実装 • 今までできた制御は、JITコンパイラ全体に対するコンパイル可否、インライン制御など • ループ展開のレベル設定や生成されたアセンブラコードのロギングなどマニアックなきめ細かな設定が可能 • 起動後のプロセスに対して、後から設定を行うことも可能！

60. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY JEP 254: Compact String • http://openjdk.java.net/jeps/254 • String内部表現をchar型配列（2バイト/字）からbyte型配列（1バイト/字）にしてメモリを効果的に使おう！という改善 • Javaで扱う文字列の大半は半角英数だから2バイトもいらないよね？が発端 • Javaの文字列内部表現がUTF-16からUTF-8に変わるわけではありません！ • メモリフットプリントの削減、GC発生頻度の低減が期待できる！ • 日本語バリバリの環境では …？

62. Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2015 NTT COMWARE CORPORATION CONFIDENTIAL PROPRIETARY Java SE roadmap JavaOne 2014で発表されたロードマップ 2014 2015 2016 … JDK 7 EOSL (End of Service Life) • OracleJDK無償版は2015/7保守停止 • RHEL上のOpenJDKは2020年まで継続 JDK 8 2014/3 リリース済 • ラムダ式の導入 • Stream API • Date and Time API JDK 9 2016年予定 • Jigsaw : モジュール化 • HTTP 2.0 API • 軽量なJSONパーサ • JVMの性能改善将来のJDK 時期未定 • Project Valhalla / Panama • Sumatra : GPGPU活用

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