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美少女ゲームの現在地

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黒瀬陽平×坂上秋成×東浩紀「美少女ゲームとはなんだったのか ——『AIR』発売から15年、萌えと批評を総括する徹底討議」 http://peatix.com/event/102289 用の坂上秋成氏制作のppt。

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美少女ゲームの現在地

  1. 1. 美少女ゲームの「現在地」 坂上秋成
  2. 2. 『TO HEART』以降としての美少女ゲーム  『To Heart』は『雫』『痕』を出していたLeafが「ビジュアル ノベル」第三弾として発売したソフト。  『弟切草』のようなサウンドノベルと『ときめきメモリアル』 のような恋愛シミュレーションの流れを汲んでいる。  ヒロインたちとのコミュニケーションそれ自体がゲームの 目的となっていたことが重要。  このフォーマットをベースとして、「キャラクター(=単な る攻略対象ではないひとつの個性)としてのヒロイン」、 「主人公に対するユーザーの感情移入」、「物語性の重 視」、「ヒロインとの日常的コミュニケーションの重要性の 高まり」といった要素が備わっていく
  3. 3. システム面による美少女ゲームの時代 区分 ①マルチエンディングの時代 ②ループものの時代 ③アンチ・エロゲーの時代
  4. 4. マルチエンディングの時代 ・複数のヒロインに対して個別のエンディングを用意。 =ポリガミー(=一夫多妻制)の形式をとって、フィクション の中で複数の女性を欲望する構造。 ・それによって、複数の可能世界を産み出し、「全てが本 当の結末であると同時に全てが偽物の結末である」とい う未観測の状態を宙づりのものとして成立させる。 ・しかしそれは多くの場合、特定のヒロインと結ばれた場合、 選ばれなかった他のヒロインが不幸なままになるという 倫理的課題を残す(=Kanon問題)。
  5. 5. ループものの時代 ・美少女ゲームの場合、世界がループしてしまう現象自体 は「過去をやり直せる」といったポジティヴなものにはな りにくく、脱出するべきディストピアとして描かれるケース が多い(=「終わりなき日常」を望むものではない) ・2002年の『Ever17』、『腐り姫』、『ひぐらしのなく頃に』 (完結は2006年)、2003年の『CROSS†CHANNEL』、 2005年の『Fate/hollow ataraxia』2006年の『マブラヴ オルタネイティヴ』など現在でも名作の誉れが高い作品 の多くがループものであったことを考えると、2002年以 降をビジュアルノベルにおけるループものの時代として 設定できる。
  6. 6. ループものの構造的問題 ・ループの果てに救われるヒロインと、当初のヒロインとの 存在論的位相のズレが問題。 ・ループの試行回数の応じて、救われなかった可能世界 のヒロインが生まれてしまう(ヒロインA、ヒロインA’、ヒロイ ンA’’・・・) ・ループの果てに救済されるのは、固有名だけを共有する 別人なのではないかという倫理的課題。 ・また、もっと単純にループという手法がアニメや映画でも 一般化しすぎ、マンネリになっているという問題もある。 『まどマギ』におけるループは美少女ゲーム的ループの 総決算。
  7. 7. アンチ・エロゲーの時代(1) ・『To Heart』が作った「ヘテロセクシュアルな恋愛の理想 形」の脱構築。これまでイメージされてきた「エロゲー」を 解体していく時代。 ・①恋愛の重要性の低下②マチズモの後退③オタクの成 熟という三点がポイントとなる。 ・①に関しては『キラ☆キラ』がメインヒロインが死んだ後の 主人公の人生をメインに据えたこと、『リトルバスター ズ!』において男性キャラが優位になっての疑似家族ド ラマが展開されたことに見て取れる。
  8. 8. アンチ・エロゲーの時代(2) ・②のマチズモの後退に関しては『真剣で私に恋しなさ い!』などにおける、女性主体の強化が分かりやすい。 ・また、主人公から男性性が剥ぎ取られる作品も目立ち始 める。2005年の『処女はお姉さまに恋してる』、2008年 の『るいは智を呼ぶ』、2011年の『天使の羽根を踏まな いでっ』、2012年の『月に寄りそう乙女の作法』は、すべ て女装した男性を主人公としている。 ・とりわけ、『月に寄りそう乙女の作法』の場合、主人公がメ イドとして主人たるヒロインに仕えるという明確な主従関 係が存在する。 ・それは安直なマチズモの反転ではなく、愛の形式の多 様性と結びつく(それは極めてエロゲー的である)。
  9. 9. アンチ・エロゲーの時代(3) ・成熟の問題。駄目な主人公、壊れている主人公といった オタクや引きこもり的要素が後退し、「真っ当」な主人公 が存在感を発揮する。 ・これは2005年以降(『車輪の国、向日葵の少女』など)か らタカヒロ、丸戸文明、るーすぼーいなどの作品に見ら れた傾向だが、私見では『WHITE ALBUM2』で頂点 に達する。 ・同作では、「真面目」であることが「優秀」であることに繋 がっており、そうした成熟さがヒロインたちを救う構造に なっている。奇跡も何もなく、実直さが勝つ。
  10. 10. 我々は成熟するべきなのか? ・男の子の屈折した内面、オタク・引きこもりへの共感性は 美少女ゲームにおいて重要だった(雫の時代)。 ・そして2015年、すでに述べたように「成熟」後も傑作は生 まれ続けている。 ・しかし、そこに美少女ゲームの固有性はあるか? ・未成熟な子どもたちが子どものまま振る舞うことを許容で きるような文化(阿部和重的に言えば「幼少の帝国」)で しか回収できないものがあるのではないか。
  11. 11. 美少女ゲームの未来 ・市場の確保。売り上げは全盛期の約半分、ユーザーの9 割が違法プレイ、10万本のヒットは3年間出ていない。 ・多くのシナリオライターがライトノベルやアニメの脚本へと 流れている現状。 ・現実的に、スマホアプリやソーシャルゲームの存在を考 えると、美少女ゲーム業界が再起動するとは考えにくい。 ・しかし、そうした市場の規模とは別に、新たなキャラク ター倫理の志向(『君と彼女と彼女の恋。』に見られたよ うなアンチ・ポリガミー)や、セクシャリティやジェンダーの 問題系に関しては明確な進化が見られる。 ⇒何かしらの形で、その進化を維持することが最優先に思 われる。

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