洋上風力発電の促進に向けた政策基盤整備:
英国の取組と今後の課題
2013年9月3日
(一財)日本エネルギー経済研究所
新エネルギーグループ
主任研究員 伊藤 葉子
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本報告の骨子
1. 英国では、世界に先駆けて洋上風力発電の導入が進展
2. 洋上プロジェクトの実施にあたり、利害関係の調整等が困
難な課題となり得る
3. そうしたリスクを軽減しプロジェクト実施を円滑化するため
の政策基盤整備が進められたこ...
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本報告の背景
洋上風力発電プロジェクトの事
業着手にあたって求められる基
本的姿勢
①生物・生態系に対してマイナ
ス影響を与えないよう配慮
②漁業操業をしていない未利用
海域に優先的に立地
③計画立案プロセスの見える化
に努める
出所:社団...
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2000年の入札開始前後より作業
2009年:OFTOスキーム
2008年:気候変動法
2009年:EU再生可能エネルギー指令等
2004年:エネルギー法
2008年:計画法
2002年:再生可能エネルギー電
力の導入割当義務(RO)制度
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英国における洋上風力発電プロジェクトの動向
出所:UK Renewable Energy Roadmap Update 2012より作成
1990年代末に実証を開始、現在2.5GWが商業運転中。
直近(2010年)のリース合意により、さ...
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エネルギー・気候変動対策目標
(出所)NREAPより作成
気候変動法(Climate Change Act
2008)
 2050年までに温室効果ガス排出を
1990年比80%、2020年までに
34%削減
 法的拘束力のある目標と...
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管轄主体の特定
(出所)英国水路部(United Kingdom
Hydrographic Office)
 海洋・海底の土地や、資源の帰属や権限
 エネルギー法(2004年):
 洋上の再エネの生産・輸送に利用可能な海域と
して、...
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開発可能海域の特定 ①
 段階的な絞り込みによるサイト選定の円滑化と柔軟性の確保
1. 政府: 体系的な調査(例:戦略的環境アセスメントSEA)
2. TCE: 風況をはじめ様々な活動や制約状況をふまえた開発可能海
域あるいは候補地(開...
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開発可能海域の特定 ②
(出所)クラウン・エステート資料
英国の洋上の活動・利用状況 建設サイト・ゾーン
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大規模国家インフラプロジェクトの枠組み ①
背景・経緯
 2000年代初頭まで、地方自治体が開発計画を作成。拘束力のある上
位計画がなく、自治体の裁量が大きく、国家的観点からのインフラ整備
等の遅延も。
 労働党政権下、2004...
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大規模国家インフラプロジェクトの枠組み ②
概要
 エネルギー (50MW以上の陸上発電施設、100MW以上の洋上発電
施設、132kV以上の送電線) 、交通、水、廃棄物、廃水の5分野の大
規模インフラプロジェクトを対象に、上位の...
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大規模国家インフラプロジェクトの枠組み ③
 審査基準: 政策綱領(National Policy Statement, NPS)
 国家政策の実現に向けたインフラ建設の有用性と、許認可等の審査の原則を示
す。エネルギー関連では2...
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その他(経済的促進策・送電体制整備)
再生可能エネルギー導入割当(Renewable Obligation, RO)制度を
2002年に導入
 2007年「エネルギー白書」: 現時点ではコストが高いが、大規
模導入のポテンシャルを...
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今後の課題と取組 ①
より深く、遠く、大型なプロジェクト = 技術的課題や供給上のボトルネックで
コストは上昇傾向
コスト目標(再生可能エネルギーロードマップ、2011年)
 2020年までに£100/MWh(約14.8円/kW...
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今後の課題と取組 ②
コスト目標実現に向けた取組
 官民タスクフォースを設置し、課題を極め、行動計画を策定
①技術革新の加速
②サプライチェーンの構築(供給のボトルネック解消・競争促進)
 政府は合計£1億7,300万(約256...
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 洋上風力発電は、現時点では導入コストが高く、
技術的、経済的リスクも想定される
 導入拡大には、エネルギー政策全体における位
置づけを明確に示す長期的シグナルと促進策が
必要
 経済的インセンティブだけではなく、政策基盤が
整備さ...
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The Institute of Energy Economics, Japan on policy and regulatory framework for offshore wind turbines in UK

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Presentation delivered to a Global CCS Institute symposium on Policy and Regulatory Frameworks for CCS in Tokyo on 3 September 2013. Presentation by The Institute of Energy Economics, Japan.

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The Institute of Energy Economics, Japan on policy and regulatory framework for offshore wind turbines in UK

  1. 1. 洋上風力発電の促進に向けた政策基盤整備: 英国の取組と今後の課題 2013年9月3日 (一財)日本エネルギー経済研究所 新エネルギーグループ 主任研究員 伊藤 葉子
  2. 2. 2 本報告の骨子 1. 英国では、世界に先駆けて洋上風力発電の導入が進展 2. 洋上プロジェクトの実施にあたり、利害関係の調整等が困 難な課題となり得る 3. そうしたリスクを軽減しプロジェクト実施を円滑化するため の政策基盤整備が進められたことが重要 4. そうした取組を経て、残る課題への対処が進められている CO2海底貯留プロジェクト等への示唆?
  3. 3. 3 本報告の背景 洋上風力発電プロジェクトの事 業着手にあたって求められる基 本的姿勢 ①生物・生態系に対してマイナ ス影響を与えないよう配慮 ②漁業操業をしていない未利用 海域に優先的に立地 ③計画立案プロセスの見える化 に努める 出所:社団法人海洋産業研究会「洋上風力発電等における漁業協調の在り方に関する提言(中間とりまとめ)」平成24年3 月21 日 わが国における漁業協調型Offshore Wind Farmの検討 ⇒ わが国では洋上風力発電設備建設にあたり漁業と協調する ための配慮が必要とされている。英国でも政策基盤整備の一 環として、利害関係調整の枠組みが形成されている。
  4. 4. 4 2000年の入札開始前後より作業 2009年:OFTOスキーム 2008年:気候変動法 2009年:EU再生可能エネルギー指令等 2004年:エネルギー法 2008年:計画法 2002年:再生可能エネルギー電 力の導入割当義務(RO)制度 系統接続系統接続 法的枠組み の整備 法的枠組み の整備 開発可能海 域の特定 開発可能海 域の特定 促進策促進策 長期目標長期目標 洋上風力発電 の導入 洋上風力発電 の導入 利害関係調整 の枠組み 利害関係調整 の枠組み 総合的な政策基盤整備
  5. 5. 5 英国における洋上風力発電プロジェクトの動向 出所:UK Renewable Energy Roadmap Update 2012より作成 1990年代末に実証を開始、現在2.5GWが商業運転中。 直近(2010年)のリース合意により、さらに32GW(既存リースでの拡張とあわ せ48GW)がプロジェクト化する可能性 (2020年までの計画値:約13GW)。 0 10 20 30 40 50 運転中 建設中 建設前 申請段階 現在までの合計 2010年リース合意 合計 GW 【プロジェクト例】 Sheringham Shoalプロジェクト(運転中) 容量: 3.6MW×88基 離岸距離: 17km~ 水深: 12~24m
  6. 6. 66 エネルギー・気候変動対策目標 (出所)NREAPより作成 気候変動法(Climate Change Act 2008)  2050年までに温室効果ガス排出を 1990年比80%、2020年までに 34%削減  法的拘束力のある目標として策定 し、長期的に社会の低炭素化推進 EU再生可能エネルギー 指令(2009 年)  発電の再エネ割合を2020年までに 31% 洋上風力発電に特化した導入目標は ないが、気候・エネルギーの政策目標 に即し重要な位置づけ 設備容量 (MW) 発電量 (GWh) 設備容量 (MW) 発電量 (GWh) 水力 < 20 MW 640 1,970 1,060 3,230 > 20 MW 1,070 3,130 1,070 3,130 地熱 太陽光 PV 50 40 2,680 224 熱 0 0 0 0 海洋エネルギー 0 0 1,300 3,950 風力 陸上 4,040 9,520 14,890 34,150 洋上 1,390 4,630 12,990 44,120 バイオマス 固形バイオマス 580 5,500 3,140 20,590 バイオガス 1,340 6,830 1,100 5,570 バイオ燃料 0 0 9,110 31,630 38,210 116,970 発電に占める割合 31%9% 技術別 2010年 2020年 合計 再エネ導入計画
  7. 7. 77 管轄主体の特定 (出所)英国水路部(United Kingdom Hydrographic Office)  海洋・海底の土地や、資源の帰属や権限  エネルギー法(2004年):  洋上の再エネの生産・輸送に利用可能な海域と して、領海(12海里≒22km) を越えた排他的経 済水域を「再生可能エネルギー海域 (Renewable Energy Zone, REZ)」として指定  開発ライセンスを付与する機関として、クラウ ン・エステート(1961年設立)を指定  領海内・内水での建設手続き(クラウン・エス テートによるリース)に準じ、REZでの洋上風力 発電の許認可、建設、立入禁止区域の確保、 撤去を規定  クラウン・エステート: 発電量に応じ洋上風力発電 サイトのリース料・ライセンス料 ⇒ 経済的インセン ティブを有し調査や体制整備に大きく関与
  8. 8. 88 開発可能海域の特定 ①  段階的な絞り込みによるサイト選定の円滑化と柔軟性の確保 1. 政府: 体系的な調査(例:戦略的環境アセスメントSEA) 2. TCE: 風況をはじめ様々な活動や制約状況をふまえた開発可能海 域あるいは候補地(開発ゾーン)を絞り込み、開発可能海域マップを作 成 3. 事業者: より具体的な立地(サイト)の選定 ①国家レベルの段階 ②事業者レベルの段階 DECC クラウン・エステート 開発事業者 戦略的環境影響評価(SEA) 開発可能海域の特定 ・開発ゾーンの設定 入札(ラウンド3) 落札ゾーン内の詳細調査→ 最適なサイトの選定
  9. 9. 99 開発可能海域の特定 ② (出所)クラウン・エステート資料 英国の洋上の活動・利用状況 建設サイト・ゾーン
  10. 10. 1010 大規模国家インフラプロジェクトの枠組み ① 背景・経緯  2000年代初頭まで、地方自治体が開発計画を作成。拘束力のある上 位計画がなく、自治体の裁量が大きく、国家的観点からのインフラ整備 等の遅延も。  労働党政権下、2004年「計画・強制土地収用法」  2008年「計画法(The Planning Act, 2008)」  大規模国家インフラプロジェクト(Nationally Significant Infrastructure Projects, NSIP)の政策枠組みを導入  保守党政権下、2011年「地方自治法(Localism Act, 2011)」  中央政府は National Planning Policy Framework を策定し、地 方政府はこれに則りコミュニティ単位の土地利用政策を規定  重要インフラの建設は中央政府が主導するための手続きを規定
  11. 11. 1111 大規模国家インフラプロジェクトの枠組み ② 概要  エネルギー (50MW以上の陸上発電施設、100MW以上の洋上発電 施設、132kV以上の送電線) 、交通、水、廃棄物、廃水の5分野の大 規模インフラプロジェクトを対象に、上位の政策目標に則り、許認可 の審査基準(次頁)及び手続きを統一的に明文化  計画監督局(Planning Inspectorate, PI)が審査基準に基づき一元 的に許認可審査 ← 従前: ①「電気事業法」に基づく発電施設の建築許可 (license)、②洋上建造物の建築許可(marine license)、③(陸上 に変電所等を建設する場合)地方自治体の許可を個別に取得す る必要  手続き審査の迅速化(24ヶ月→15ヶ月)
  12. 12. 1212 大規模国家インフラプロジェクトの枠組み ③  審査基準: 政策綱領(National Policy Statement, NPS)  国家政策の実現に向けたインフラ建設の有用性と、許認可等の審査の原則を示 す。エネルギー関連では2011年に6件を策定(火力・CCS:EN-2、再エネ:EN-3 等)  具体的な数値基準等はなく、勘案すべき項目を挙げ、個別審査。  コンサルテーションにおいて、NPSに示される国家政策を問う見解等は有効な意 見とみなされず、個別案件の具体的問題点に論点が絞られる。  開発許可の申請・取得プロセス  申請→PIによる審査→所管省庁(DECC)大臣許可→法的審査等、各ステップの 要件、所要期間・期限を規定  地域住民とのコンサルテーションや関係機関等への諮問等、利害関係を調整す るための手順や期間を規定 = 合意形成プロセス  地方行政府は、法定諮問先のひとつとして、審査基準をふまえ地域への影響等 を勘案し意見を表明(決定権はない)
  13. 13. 1313 その他(経済的促進策・送電体制整備) 再生可能エネルギー導入割当(Renewable Obligation, RO)制度を 2002年に導入  2007年「エネルギー白書」: 現時点ではコストが高いが、大規 模導入のポテンシャルを有する再生可能エネルギー・技術の導 入を進める優遇措置(再生可能エネルギー証書のバンディン グ:2 ROCs/MWh) 洋上送電事業者(Offshore Transmission Operator, OFTO)を競争 入札により選定する制度を導入(2009年)  OFTOが海底送電線の建設・所有、運営・保守事業を一体的に 担う体制を整備し、洋上風力発電事業者のリスクを軽減
  14. 14. 1414 今後の課題と取組 ① より深く、遠く、大型なプロジェクト = 技術的課題や供給上のボトルネックで コストは上昇傾向 コスト目標(再生可能エネルギーロードマップ、2011年)  2020年までに£100/MWh(約14.8円/kWh)  実現できなければ導入量は13GWにとどめる 設置コスト(年平均Capex/MW)の推移 (出所)Great Expectations: The cost of offshore wind in UK waters – understanding the past and projecting the future September 2010, UKERC
  15. 15. 1515 今後の課題と取組 ② コスト目標実現に向けた取組  官民タスクフォースを設置し、課題を極め、行動計画を策定 ①技術革新の加速 ②サプライチェーンの構築(供給のボトルネック解消・競争促進)  政府は合計£1億7,300万(約256億円)の予算を計上、実証施設の建設 や、港湾設備や港湾に近接した製造拠点の造成等を支援  英国財務省(HM Treasury)による最新の「国家インフラ計画(2012年)」 でも、重要課題として位置づけ 新たな買取制度: Feed-in-Tariff with Contract for Difference(FiT CfD)を 導入、投資の安定性を確保(2014年£155/MWh(23.4円/kWh)から順次引 下げ2018年£135/MWh(20.1円/kWh)) 利害調整を進めるためのさらなる工夫
  16. 16. 16  洋上風力発電は、現時点では導入コストが高く、 技術的、経済的リスクも想定される  導入拡大には、エネルギー政策全体における位 置づけを明確に示す長期的シグナルと促進策が 必要  経済的インセンティブだけではなく、政策基盤が 整備されることでプロジェクト実施が可能になり、 効率的な投資環境が形成される まとめ

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