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  1. 1. TPPを慎重に考える会4.13勉強会 文責TPPを慎重に考える国民会議事務局 郵政民営化見直し法案とTPPの行方(未定稿) 拓殖大学日本文化研究所客員教授 関 岡 英 之(山田会長) 昨日、郵政法案が通ったものの、米国政府は早速、郵政法案はTPPに逆行するものだから、16業界団体が郵政法案そのものに対して自由な競争を妨げるものとして、非常に懸念というか反対を表明している。そういう状況の中で、郵政法案は参議院でも可決されていくと思うが、その後、アメリカ側は郵政に対してどういうスタンスで臨んでくるのか、今日は郵政問題に大変詳しい関岡先生に郵政問題についてのこれからの方向と懸念される事項等々、そしてTPPはこれで本当にいいのかという問題まで含めて色々先生から教えて頂きたいと思っている。どうかよろしくお願いしたい。(関岡教授)1.小泉政権による郵政民営化の本質 改めて郵政民営化とはどういう事かを振り返ってみたい。 郵政民営化は、歴代自民党政権が推進してきた構造改革の本丸と最終的な目標だと位置づけられていたが、そもそも我が国が構造改革といったものをはじめた歴史を振り返ってみると、その発端のところからアメリカ政府が非常に深く関わっていたという事実がある。○「構造改革」20年→米国の要望に基づいていた 簡単な年表が書いてある。そもそものきっかけは平成元年、1989年、宇野総理と父親の方のブッシュ大統領で合意された日米構造協議がきっかけになっており、その後いろんな変遷を経て小泉、ブッシュ首脳会談における成長のための日米経済パートナーシップといった形で、一連の大きな流れがあって、その中で、例えば橋本政権による金融ビッグバンを中心とした6大改革とか、郵政民営化を中心とした小泉政権による痛みを伴う聖域無き構造改革とか、こういった一連の政策が発動される重要なタイミング、節目節目に日米首脳会談が行われてきている。 この構造改革の全てとはいわないが、かなりの部分が米国の要望に基づいていた。1994年11月、年次改革要望書の交渉が開始と書いてあるが、これがそういったメカニズムの象徴的な文書かと言えると思う。○「構造改革」の原点 日米構造協議(SIIとは) そもそもの原点である日米構造協議という言葉だけれども、アメリカ側はSIIと言っている。これは、Structural Impediments Initiative という頭文字をとっているけれども、Structuralという言葉が構造という言葉でこれが構造改革という言葉になっている。それからImpedimentsという言葉は障壁ということだが、これが現在TPPで問題になっている非関税障壁の事である。 このSIIというのは 、そもそもは構造改革によって非関税障壁を撤廃していくこと 。ところが元々アメリカ側が提案してきたものだから英語の訳だけれども、要するに日本側に存在する非関税障壁だ。つまりアメリカ側が財やサービスを日本に輸出するときに障壁となるバリアを撤廃することが構造改革だ、こういった形で始まってきた。 -1-
  2. 2. ちなみにこれは、Initiativeという言葉が入っているわけだが、これは日本語では協議、これがあたかも対等の立場で交渉する、話し合うというニュアンスに意図的に誤訳されているわけだけれども、ご案内の通り本来Initiativeという言葉には、協議とか交渉というニュアンスはない。あくまでもアメリカの主導権の下で構造改革により日本側の非関税障壁を撤廃していくという枠組みだった。その際には米国側が駆使したツールが構造改革を推進する上では年次改革要望書と、それから非関税障壁を撤廃するツールとしてTPPが位置づけられているという整理になる。○「年次改革要望書」とは? 年次改革要望書は、かつて製本されてアメリカ大使館などで無料で配布されていた。これは秘密文書でも何でもない、情報公開請求するまでもなく、誰でも簡単に入手することが出来る公開文書だった。これが10年前の2002年10月23日、当時のブッシュ政権、息子さんの方のブッシュ大統領が当時の小泉総理に提出された年次改革要望書で、これはあくまでも合衆国連邦政府の公式文献で、毎年定例的に提出されるものだっということが非常に重要なことだと思う。 主な内容だが、主として下半期に行われる日米首脳会談の際に提出されるもので、大きく個別産業分野と分野横断的テーマに分かれている。分野横断的という言葉が、現在TPPの24の作業部会の一つにも踏襲されている訳だが、この個別産業分野に関しては年ごとに変遷はあるが、これは最終版となった2008年のもので、当時は携帯電話ビジネス、インターネット関連ビジネス、医療機器、医薬品とか金融、流通、この金融の中の大きな分野を占めていたのが今日メインのテーマの保険ということになる。 それら分野横断的テーマというのは、個別の業界にとどまらない話で、例えば刑法、民法と並ぶ日本の基本法である商法とか、要するに立法・行政・司法の3権にも及ぶ幅広い内容を持った要望だった。この5番目に今日のテーマである民営化つまり郵政民営化ということも、米国政府の年次改革要望書の主要な項目の一つだったということ。○郵政民営化に関するアメリカの要望とは? 年次改革要望書は、1994年村山内閣の時に始まったが、早くもその翌年95年版に具体的記述がある。これは、アメリカ大使館が翻訳した日本語をそのまま引用しているけれども、郵政省のような政府機関が民間保険会社と直接競合する保険業務に携わる事を禁止する、つまり米国政府の関心事項は当初から保険に絞られていたということがこの文書から明らかだ 。その4年後になると 、これはもちろん毎年毎年記載があったが 、99年版にいたっては、英文の中にローマ字で簡保という言葉が出てきて、名指しで簡易保険を含む政府および準公共保険制度を拡大する考えを全て中止し、現存の制度を削減又は廃止するかどうか検討することを強く求める、より具体的な要望になっている。 なぜアメリカは、郵政民営化というそもそも我が国の内政問題、国内問題にそれほど深い関心を早い段階から抱いていたのかというと、実はこの前段があり、90年代の半ばぐらいに日米保険協議というものがあって、まず、民間の生命保険市場にアメリカが関心を抱いた訳だ。様々な日米間の交渉の結果、1995年に保険業界における基本法である保険業法というものが改正されたという動きあった。 その結果どうなったかというと、5年ほど後には、中堅・中小の生命保険会社9社が経営破綻し、その全てが外国資本において買収された。9社のうち4社はアメリカ資本に買収されて、そのうち2社が同じ企業AIGという当時世界最大の保険会社に買収された。○日米保険協議の仕掛け人「モーリス・グリンバーグ」 今、新聞紙上を騒がしているAIJとは全く関係なく、これはアメリカン・インターナショナル・グループというアメリカの保険会社であって、そこに38年間COとして -2-
  3. 3. 君臨したのが 、モーリス・グリンバーグという人だが 、日本経済新聞社の記事によると 、この方がジャパン・バッシングの急先鋒として日米保険協議を主導していた。この方が一連の動きの仕掛け人というか発起人だった訳で、中心人物となっている。○簡保120兆円はカナダのGDPに匹敵(2005年当時) モリス・グリーンバーグから見た簡保というのは、2005年当時の話であるが、小泉政権時代には郵貯・簡保あわせて350兆円、そのうち簡易保険が持っている資産が120兆円であった。当時1ドル120円だったので、これをドルに換算すると1兆ドルになる 。これは 、カナダのGDPに匹敵する大きな規模であり 、それが従来は郵政省 、総務省など政府直営であるために外国資本が買収することができなかったということである。郵政民営化の中では、当時郵貯が230兆円ということで簡保より倍の資産を持っていたが、アメリカは一貫して簡保、つまり保険分野に絞って様々な要求を出していた。○金融ビジネスとしての保険 なぜ、金額の大きい郵貯ではなくて、半分の規模にすぎない簡保にアメリカのイントラストが強いのかというと、金融ビジネスとしてみた場合、銀行と保険を比較してみると、銀行預金は比較的預金者が自由に預入れや引出しを行うことができ、扱う側の金融機関の側から言うと、非常に安定性の欠ける資金となるが、保険業界の場合は、一度契約を取ると毎月の保険料はコンスタントに入ってくる。引き出しを請求されるのは、例えば生命保険の場合は死亡時、ガン保険であればガンの診断が起きたときであり、20年30年は償還する必要がない資金である。 つまり、金融業界では、銀行資金は短期性資金であり、保険業界が持っている資金は長期性資金と位置づけている。アメリカの金融業界は保険会社を長期性資金の出金マシーンとして捉えている。これは、米国債とか様々なファンドとか現有の先物とか様々な運用資金の原資として深いイントラストを持っていたということになる。○具体的方法とは? 具体的に郵政民営化をどう進めるかについてであるが、2004年に至って年次改革要望書でアメリカの要望がかなり具体化してきている。 まず一項目目に上げられてきたのが金融事業、つまり簡保と郵貯、それと郵便事業である非金融事業の間の相互補助の可能性を排除する。 それから、郵便保険、アメリカ側が翻訳しているので郵便保険と書いているが簡易保険のことである。それと郵貯に民間企業と同様の法律、規制、納税義務、責任準備金、基準及び規制監督を適用する。3項目には、郵政事業に対しての独占禁止法の適用除外を解除するという三本柱となっていた。○米国が要望した「郵政民営化」 つまり、図式化するとアメリカが要請した郵政民営化というのは、3事業一体で運営されていた事業のうち、金融部門(簡保と郵貯)保険部門と銀行部門を証券取引所に上場する。民間会社へ移行させると同時に、金融庁の検査とか監査法人の監査、独禁法の適用除外を解除することから公正取引委員会の監視対象とする形で、更に同時に外国資本によるN&Aの対象にするということ。 奇しくも郵政民営化法案が成立した2005年には、通常国会で会社法も成立している。その中で外資による株式交換、いわいる三角合併といったものも解禁されている。株式交換は、元々我が国で禁止されていた手法であるが、まず日本の国内企業に解禁されて 、それを駆使して短期間にライブドア帝国を築き上げたのが堀江貴文さんだったが 、外資に対しても解禁するというのが、郵政民営化法案が成立した同じ年に成立した。こ -3-
  4. 4. のことは小林先生が当事者として詳しいと思う。 ところが皮肉なことに、2008年のリーマンショックによってAIGそのものが経営破綻してしまった。日本に対して民営化を迫ってきた張本人がブッシュ政権の末期に国有化され、現在もその状態が続いている。○郵政民営化見直しに対する米国の反応 鬼の居ぬ間に洗濯ではないが、郵政民営化を見直そうと昨日、衆議院を通ったわけだが、米国の反応をみると、郵政民営化法案に関して「現在TPPの司令塔となっているUSTRのカーク代表が開放を約束した市場の外に米国を閉め出す結果となる」と率直に発言しており、日付に注目して頂きたいが昨年5月の段階から言っていた。小泉政権による郵政民営化の本質というのは、我が国の保険分野の対米市場開放問題であるということは、アメリカの現職政府高官が認めているところではないかと思う。2.郵政民営化とTPPにおける共済問題の連動性○共済に関する米国の「要望」とは? TPPに関して次に問題となってくるのが共済である。共済に関してもアメリカ政府は既に具体的な要望を出している。これは昨年2月に行われた日米経済調和対話、EHIにおけるアメリカの関心事項の一つであるが、共済に関して健全で透明な規制環境を促進するため、共済と民間競合会社、つまり保険業界との間で規制面での統一の待遇と執行を含む対等な競争条件を確保するということが、アメリカ側の要求として既に出されている。○包括的経済連携に関する基本方針 話は飛ぶが、菅政権の時にTPPに関して、2010年10月1日の臨時国会冒頭における所信表明演説で、当時の菅総理がTPPの参加を検討すると表明したが、その1ヶ月後に包括的経済連携に関する基本方針が閣議決定されている。 その中でTPPに関しては 、「関係国との協議を開始すると同時に国内の環境整備を早急に進める」ことが閣議決定されている。規制・制度改革の推進体制 この推進体制が内閣府のもとにおかれている行政刷新会議であり、その下に規制改革に関する分科会、更にその下に3つのWGが設置されている。この中の農林・地域活性化作業部会、発足当時は農業作業部会と呼ばれていた。農業WG構成員 この構成員は政務官を別にすると全て民間企業、或いはアカデニイズム、弁護士、税理士といったような、国会議員1名を除くと全て民間人である。自民党政権時代から自民党の先生方にも申し上げてきたが、そもそも民間人の人選の基準や職務権限、責任、義務に関しての規定が非常に曖昧である。 本来は国会議員の先生が入るべき、少なくとも民間人を選ぶのであれば今日のように参考人として意見を聞けばいいのであって、規制改革案の作成そのものから民間人主導でというのは、議会制民主主義のもとでいかがなものかと申し上げてきたが、政権交代後も続いていることは残念に思う。 例えば、一番下にでているキャノングロバール研究所の研究主幹の方々は、TPP推進派の急先鋒として活動を展開している元官僚の方ですが、TPP慎重派の指揮者は一人も入っていないので、果たしてWGの人選、責任、規程はどうなっているのかと一度追及したほうがよいのではないかと考えている。 -4-
  5. 5. 共済「改革案」と郵政民営化の連動性 このメンバーが打ち出した2010年6月に第1次報告書を出しているが、その中で共済に関して 、「農協の信用(=銀行部門 )・共済(=保険)事業部門から営農指導部門から自立させなさい。農協に関する金融庁検査・公認会計士の監査を実施しなさい。独禁法の適用除外の見直しなさい 。」これは正に郵政に関して米国が要求していたことと表現は違うが、基本的には全く同じことを言っているので、金融部門を分離して、これを金融庁と分離して会計監査、公正取引委員会の監視対象とするということ。正に、郵政民営化と同じ図式がここで描かれている。○共済はどうなるのか? いろいろな団体が行っている。JA、生協、労組、中小企業など、いずれも営利事業ではない。日本的な組合員間の相互扶助としておこなわれているが、米国の資本の論理では、そうではなく保険ビジネスであって市場を開放せよと言うことである。 レジメには記載していないが、公務員の方々の公務員共済もやっている訳だから、政治的な重要性からすれば、私はむしろ郵政民営化よりも共済の方がいろいろな政治的な意味を持ってくるのではないかと考えている。3.TPPと混合診療問題 保険市場としての医療分野 官営の保険では我が国にはもう一つ、政府が行っている保険がある。先ほどの米国政府「年次改革要望書」の中には、準公的機関による保険を全て廃止ないしは削減することを強く求めるという表現がされているが、もうひとつの官製保険が健康保険、医療保険の分野である。TPP24作業部会 TPPの24のテーマの中の「サービス(金融 ) 」があり、そこで簡保と共済を取り上げると米国政府も文書の中で言っている。 医療保険については、政府資料「TPP協定交渉の分野別状況「金融サービス 」 」において 、左欄 、平成23年10月資料(前回)では 、 医療分野は協議の対象になっていない模様 」 「と当時は言われていた。ところが、右欄、平成24年3月改訂では、その間に一度改訂されており、内容は新聞でも報道されている。外務省が10月の説明を修正して 、 「混合診療が協議の対象となる可能性は排除できない」と新聞でも広く報道されていた。現在の資料は、また違った表現となっている。○混合診療解禁の動き なぜ、混合診療について可能性が排除できないかと言えば、自民党政権時代に混合診療が解禁されるに当たって、アメリカとさまざまな経緯があったからである。 小泉政権時代の2004年3月には 、米国ラーソン国務次官が混合診療の解禁を求めた( 日本経済新聞報道 )。不思議なことに米国には、厚生労働省のカウンターパートである、保険福祉省があるが、なぜ外交担当の次官が混合診療の解禁を求めるのか、私には理由がわからない。 その3ヶ月後の6月の日米投資イニシアチブ報告書では、米国政府が医療サービスの一環として、保険診療及び保険外診療の明確化及び混合診療の解禁について要請した。これは外交上の公式文書で正式に要請があった。その3ヶ月後、小泉総理が混合診療について年内に解禁の方向で結論を出すことを担当相に指示をした。9月の時点で年内と言えば、残り3ヶ月しかないがこれが実現した。12月には、当時の尾辻厚生労働大臣と村上規制改革担当大臣との間で「混合診療問題に係る基本的合意」がされた。 -5-
  6. 6. この動きをまとめると、2004年3月のラーソン国務次官発言から9ヶ月後に、混合診療の部分解禁が実施されているので、米国の外圧恐るべしと言うことである。 この時、厚生労働省と日本医師会が強く抵抗したこともあり、部分解禁に終わっている 。今後 、米国が全面解禁を要求してくる可能性は非常に高いということは 、内閣官房 、外務省も認めている。○混合診療とは何か 混合診療という言葉は、一般の国民には馴染みがない言葉である。どういう時に関わってくるかといえば、例えばガンは日本人の国民病になっている。ガンの3大療法のうち、手術、放射線に関しては局所療法になる。進行ガンの場合には抗ガン剤しかないので、抗ガン剤には薬剤耐性が発生する決定的な弱点がある。よって保険で認められた薬を使い果たすと、ガン難民にならざるを得ないと、こういった時に混合診療の問題と直面をする。 これは、ある卵巣ガンの患者が実際に支払ったものである。抗ガン剤の点滴治療のために2泊3日入院した際の費用は、入院費自己負担3割で6万円、PETーCTによる画像審査費が3万円、抗ガン剤(タキソール、カルボプラチン)2剤併用の場合で9万円、合計18万円となるが、保険の高額療養費制度で上限が決まっているため、通常の所得の方の場合は月額8万円で済んでいる。 問題は、抗ガン剤で承認薬を全て使い果たした場合、未承認薬でも試したくなるがこれは保険が適用されない。現在、基本的に混合診療が原則禁止となる状況では、入院費や検査費にも保険が適用されないということで 、自己負担が一気に60万円に跳ね上がる 。この場合承認薬、未承認薬、別の薬であるが値段は同じ前提として、ひとつのモデルとしてご容赦願いたい。 もし、混合診療が全面的に解禁されると、未承認薬には保険は適用されないが、入院費や検査費には保険が適用されるので、月額負担は40万円に下がり20万円負担が軽減されるとして、混合診療解禁推進派の方はここを患者さんのメリットと強調している。 しかし現実問題としては、一番費用が掛かるのは入院費や検査費ではなく、薬剤費そのものである 。その負担が月額40万円と 、しかも抗ガン剤は1回打って終わりではなく 、標準的には6クール(半年 )、場合によっては12クール(1年)と継続することが前提となっている。果たしてこれを負担できる国民は何割位いるのか。 混合診療が解禁されても、恩恵を受けられる患者さんは非常に限られている。しかもこれは、標準治療1回の点滴30万円は標準治療である。最近の最新の治療では、分子標的薬などでは、1回の点滴に100万円と、これは抗ガン剤との3剤併用の場合であるが、6クールで600万円が現実に存在する。○混合診療の何が問題か? 具体的には、ベバシズマブがあるが、現在我が国では、再発大腸ガンや再発乳ガンでは保険適用がされているので、高額療養費制度の上限によって月額8万円で適用することができる。 一昨年のアメリカ臨床治療学会で、卵巣ガンにも非常に有効であると研究発表がされていた。我が国の卵巣ガンの患者の中でも、この薬を使いたいと高まっているが、残念ながら現在は保険の適用外であるため使用することができない。極論すれば4人部屋の病棟で、今の患者さんはこの薬を使っているが、隣に寝ている卵巣ガンの患者さんは使えない状況になっている。 もし混合診療が解禁されれば、個人輸入によって使うことは可能になるが、薬剤費は月々100万円の自己負担になり、プラスアルファーが入院費や検査費であるが、ここの部分にだけは保険が利くということである。混合診療が解禁されたとしてもできる方は限られ、なかなか簡単にはできない。 -6-
  7. 7. 私が知る限り、現在ガンの患者団体で混合診療の解禁を求めて活動している団体は一つも無いと思う。実は私自身がガン患者の家族という立場であるが、混合診療を解禁しても、べバシズマブを享受すること難しい状況にある。多くのガン患者あるいはその家族が求めているのは、1日も早い保険収載である。○混合診療 推進はの論理 このように混合診療は、患者や家族の立場からは事実上メリットがない。では、どのような方々が推進しているかといえば、国内の推進派の理論的支柱である八代尚弘先生がいる。小泉政権時代は規制改革会議の委員をされ、安部政権時代には、政権交代後廃止されたが経済財政諮問会議の民間議員などを歴任された方である。 この方は2003年に刊行された著書『 規制改革 』の中で 、次のように正直に書いている 。「患者の自己負担率が高まれば、公的保険でカバーされる範囲が事実上、縮小することとなる。そうなれば、自己負担分をカバーするための民間保険が登場する 。 」これを図式化するとこのようになる。○日本の医療保険制度 現在の我が国の医療保険制度は、縦軸に年収、横軸に年齢をとってみると実は全て一律平等の給付内容となっている。どんなに所得が高い方でも、一般の方と同じ現物給付となっており、これは国民皆保険の優れたところであり、公平性・平等性が担保されている。 混合診療が解禁されると、例えば未承認薬の海外の高い薬などを併用する。保険外診療と保険診療を併用する形となってくる。しかし、先ほど説明したが、1回の点滴で100万円という事例も普通にあるため、どんな富裕層であっても自己負担は決して軽いものではない。このため、保険外診療をカバーする民間保険があれば、あらかじめ入っておこうというニーズが発生する。これが「民間保険が登場する」となるわけである。○アメリカ政府とのTPP事前協議(2012年2月7日局長級) 先ほど政府側から配られた分野別交渉状況の16ページをもう一度ご覧いただきたい。現在の説明はこうであるということが、平成24年3月改定の1.の(4)の※印のところに記載されている。この言葉は、実は今年の2月7日にワシントンで行われたアメリカとの局長レベルの事前協議の後に、内閣官房が発表したものであるが 、「公的医療保険制度を廃止し、私的な医療保険制度に移行する必要があるとの情報が流れているが、アメリカが他のTPP交渉参加国にそのようなことを要求することはない」ことが、今日配布された冊子にも反映されている。○TPPに参加しても公的保険の「廃止」はあり得ない →縮小を迫られる可能性が大 この説明は、廃止」という言葉が使われている。TPPに仮に参加したとしても、公的保険の廃止はあり得ないと私は考えている。 可能性としてあるのは 、先ほど八代先生の言葉にあったように「 縮小 」である 。現在 、我が国の医療保険制度は公的保険一本になっているが、アメリカの保険業界が望んでいるのは、ここに民間医療保険の領域をつくる。 言ってみれば、公的保険と民間保険が併存する形がアメリカにとって最も望ましいわけである。今はエコノミークラスしかないため、どんな大富豪であってもエコノミークラスに座らなければならないため、そこにファーストクラスをつくろうというわけである。このような形が、アメリカにとって最も望ましい医療保険のあり方である。公的保険が廃止されることもないし、何らかの保険によってカバーされるという意味では、国民皆保険も維持されるわけである。 TPP反対派の一部には 、「公的保険が廃止される 」「国民皆保険が崩壊する」と言わ -7-
  8. 8. れている方がいるが、私はそれは間違いであると思っている。言葉の要点を正確にしなければ、推進派に揚げ足をとられかねないので、私はあくまで正確な事実関係を説明したい。○金融ビジネスとしての保険 なぜ、アメリカの保険業界にとってこれが最も望ましい形か。高齢者と貧困層に関しては、むしろ取りに行きたくないターゲットである。先ほどの図式で説明すると、高齢者が加入するとすぐに病気になって保険金を請求するし、貧困層はそもそも月々の保険料を負担する能力がないので、高齢者と貧困層はお呼びでないということで、むしろ公的保険で面倒を見てもらいたいというのが金融資本の論理である。○アメリカの医療保険制度 実はアメリカの保険医療制度は、まさにそのような制度設計となっている。65歳以上の高齢者に関してはメディケア、貧困層に関してはメディケイドがあり、アメリカが提供している公的医療保険制度はこれが全てなわけである。それ以外の4分の3のアメリカ国民は民間医療保険によってカバーされている。しかし、それではカバーしきれない部分がどうしても発生するため、東京都の人口の3倍以上の方々は無保険状態になっている。 これがアメリカの医療保険の現状であるが、実は民間の保険会社にとっては、これが最も居心地が良い場所である。年齢が若くて年収が高い、例えば大企業の新入社員のようなところが、民間保険会社からすれば一番取りたいマーケットとなる。○アメリカ医療の実態を描いたドキュメンタリー映画 米国医療の実態を描いた有名なドキュメンタリー映画で、数年前に日本でも公開されたが、時々誤解されている方がいる。この映画はアメリカの4,600万人の無保険者の悲劇を描いた映画であるとするのは誤解であり、この映画が描いているのは民間保険の加入者の悲劇である。○民間医療保険は社会保障ではない どうしてそのようなことがおきるかというと、実は我が国の民間医療保険もガン保険に代表されるように既に上陸しているが、新聞広告等でその内容を見ると月々1万4,000円程度の保険料を支払っている方に対しては大変手厚い給付になっているが、そんなに負担できない方にはスカスカの保険となっており、元々裕福な方が益々手厚い給付を受けられ、元々貧しい方は少ない給付しか受けられず、格差を拡大する商品設計となっている 。負担に応じたリターンという純然たる市場原理が貫徹された金融商品であるため 、民間医療保険はどんなに効能があろうとも決して社会保障の代替にはなり得ない。○民間医療保険 日米の違い 民間医療保険の日米における位置付けも大きく違っている。まず、我が国に関しては通常窓口負担3割で、残りは全て公的保険でカバーされるので、本来ここで完結しているのである。そうすると先ほど新聞広告で出していたガン保険や医療保険の役割が何かというと、あくまで付随的に現金給付を行うとの位置づけとなっている。 しかし、アメリカにおいては、日本の公的保険が果たしている役割が、高齢者と貧困層しか享受できないわけであり、大多数のアメリカの一般国民はこのような形におかれるわけである。患者が一部自己負担して、残りは保険金が給付されるとの構図は同じであるが、公的保険と違って民間保険の場合には、営利企業であるため株主に配当しなければならない。このため、保険金は出来る限り抑制したいとのモチベーションを持っている。 -8-
  9. 9. そのためにどういう行動がおきてくるかというと、我が国はもちろんフリーアクセスであるが、保険会社が患者に対してアクセス制限をかけてくる。我が国に関して原則的には出来高払いとなっているが、アメリカにおいては保険会社が医療機関に対して診療制限をかける。これをマネジドケアと称しているが、要するに民間の保険会社が患者や医療従事者を統制する、現物給付そのものを統制するという我が国の公的保険すら持っていない強大な権限を持っているのである。○保険とは? 本来、保険は、社会保障(公助)としての側面、相互扶助(共助)としての側面、また金融商品(自助)としての側面など、様々な面がある。私は金融商品としての民間保険が全ていけない、存在を許さないと言っているわけではなく、3つの要素がバランス良く併存することによって社会が安定するのではないかと考えている。 しかし、アメリカの金融資本の論理からすると、これは全て保険ビジネスとして市場開放を迫ってくるのは、日本の国益上受け入れがたいことではないか。4.民営化関連のISDS事案 最後に、TPPの中で大きな問題点となっているISDSと郵政民営化の関係であるが、実は諸外国では民営化関連の訴訟が数多く提起されているので、その話をして今日は終わらせていただきたい。○ISDSとは? ISDS条項は 、投資という作業分野 、正確に言えば対外 、対内直接投資の分野だが 、要するに外資規制の分野だが、具体的な事例について説明したい。○センチュリオンヘルス事件(NAFUTA) これは、カナダでおきたセンチュリオンヘルスという事件だが、カナダは日本と同じように国民皆保険制度をとっている。それに対してアメリカのメルビン・ハワードという投資家がセンチュリオンヘルスという医療保険会社に投資している方だが、カナダ政府が運営している公的医療保険制度そのものが市場参入障壁、非関税障壁だという訴訟を国際仲裁所に提訴して1億6千万ドルの損害保障を請求した。 これは無理筋の訴訟だったためにアメリカ側が敗訴している。よく仲間のTPP反対派の中には ISDSではアメリカが全部勝っているということを書いている者もいるが、それはちょっと不正確でアメリカが敗訴している例もある。 もしこの訴訟でアメリカが勝っていたなら大変なことになっていたと思うが、世界中の公的医療保険がメルビン・ハワードさんに訴えられ 日本も含めて巨額の損害賠償を払わなければならなくなった。この訴訟はちょっと無理筋 でして、そもそもメルビン・ハワード さんに原告的確性があったのかという疑義があり敗訴となったが、仮にアメリカの保険会社がより周到な訴訟戦略を打ち出してくれば、今後は勝訴する可能性は十分残っていると思う。ちなみに国際仲裁では、判例に拘束されないので過去の判例と矛盾する判断がくだされるということがしばしばあると伝えられている。○ユーレコ事件(二国間FTA) それからヨーロッパではという事件がおきているか。スロバキアは、市場経済に移行する際に公的医療保険を1度民営化した。ところがその後、総選挙で政権交代が起きて民営化を見直した際に、オランダの保険会社のユーレコという会社が1度民営化したもの見直すというものは協定違反だと、1億ユーロの損害補償を請求する訴訟を起こしている 。日本も昨日通過した郵政民営化も 、いずれはこうした形で訴訟対象になるのかな 、 -9-
  10. 10. と懸念される。この訴訟に関しては現在も継争中である。伝えられるところによると、スロバキア政府の方が若干不利な情勢と聞いている。○アズリックス事件(二国間FTA) 医療と少し離れるが、これも民営化絡みの案件と言うことで紹介したいが、アズリックス事件だが、アルゼンチンが水道事業を民営化して 外資の参入も認めた。 昔アメリカにエンロンというエネルギー関連企業があったが、エンロンのアズリクスという関連会社がブエノスアイレス州の水道事業を買収して事業認可後すぐに水道料金の値上げを直ちに発表した。もし値上げ後の料金を払えなければ、水道の供給をストップすると言ってきた。さすがに見かねてアルゼンチン政府が介入して水道料金の値上げを認めなかった。 そうしたら協定違反だ、民にできることは民にやらせろ、料金の設定は民間企業の自由ではないか、これはコンセンション方式によって行われた民営化だったわけだが、協定違反と言うことで1億6千5百万ドルの損害保障が請求されて、このケースではアルゼンチン政府が敗訴して損害賠償が支払わされた。アメリカとアルゼンチン2国間の2国間FTAの協定上の義務ということで、判例には拘束力があったということ。○コチャバンバ事件 全く同じような事案がボリビアでもあって、アメリカの軍事産業であるベクテルが水道事業に参入して料金を値上げした。ボリビアの当時の政権が介入しなかったために水道料金未払い地区の水道を本当にストップした。その結果、有名なコチャバンバ水戦争が起きて流血の惨事になった。 数年後には、ボリビアの大統領選挙では反米政権が誕生してしまって民営化そのものを見直しすると、アメリカのベクテル社は証拠にもなくまだボリビアとオランダに国交があったものだから、オランダの子会社の名義であくまでも損害補償を請求する、国際仲裁所に損害賠償を提訴した。今度はボリビアの新政府が国際仲裁所条約そのものから脱退するということになって、めちゃくちゃな状況になっている。 ボリビアが反米化してしまったわけだから、アメリカ自体の国益にも反しているが、アメリカの企業のなかには、自国の国益を毀損しても自社の利益のためには暴走して止まらないという企業もあると感じる。そのことは2008年に起きたサブプライムローン問題とかリーマンショックでも明らかだ。アメリカ経済は大きなダメージを受けたがアメリカ金融業界は反省の兆しがない。○混合診療解禁の動き 日本がTPPにもし参加してアメリカとの間でISDS条項を認めると、現在部分解禁に終わっている混合診療禁止という日本の政策自体がアメリカ保険会社から訴訟を提起されるケースが出てくる。○主要国の先発薬薬科水準(2003年) 薬科に関して、アメリカは予てから日本の薬価制度に関して不満を持っており、これは2004年当時アメリカの商務省自身が発表した統計だが、米国の薬科を1とした場合は日本の薬科はその1/3くらいということ。○日米の薬科制度 アメリカでは、完全に製薬企業に自由な薬科を認めているので、だいたい特許が有効な期間独占販売できるとして薬科は高めを維持していてジェネリックが投入されると自然に下がっていくが、日本の薬価制度においては、特許期間、有効期間中も2年ごとに薬科改訂によって強制的に引き下げられる制度になっている。アメリカ製の薬剤につい - 10 -
  11. 11. て薬科差がアメリカの製薬業界にとって逸失利益ということで日本の薬価制度に関して大きな不満をもっている。○日本の薬価制度に関する意見書(2005年) たとえば2005年には、米国研究製薬工業協会(ファーマ)が日本の薬価制度に関してもさまざまな意見書を出しているので、日本の薬価制度そのものが 米国の製薬業界から提訴される可能性もでてくると思うわれる。 一方、米韓FTAのなかで薬科の問題が非常に大きな問題になっているので、そのことは政府も認めているが、政府が用意している資料の22ページだが、18番目の制度的事項のなかに「また医薬品及び医療機器の償還(保険払戻)制度の透明性等を担保する制度を整備し・・ 」ということが議論の対象になっている分野別交渉状況の中でも触れられている。○多国間協定における投資ルール普遍化の試み(アメリカ) こういったISDS条項を中心とした投資ルールを、何とか多国間協定において普遍化したいという試みをアメリカは展開してきて、当初NAFUTAでそれが成功した。一気にWTOの世界共通ルールにしようとアメリカは図ったわけだが、WTOではティララエムという投資協定もあるが、その時にはインドを中心とした発展途上国が強行にISDS条項に反対したために見送られた。 発展途上国は大変うるさいということで、アメリカは今度はOECDにMAIという多国間投資協定というものを持ち込んで先進国の共通ルールにしようとしたが、今度は同盟国フランスが反対したために 実現することがなかった。 次に アメリカは自分の裏庭と思っていた南米に着目して北米と南米を統合する形でFTA、先ほどアルゼンチンとかボリビアの例を紹介したが、あくまで2国間の投資協定であり、ここで言ってるのは多国間のマルチの話だが、ブッシュ大統領の時FTAという構想を掲げて推進したが、ブラジルやベネズエラが反対して結局FTAがダメになった。 昨年末にアメリカを排除する形で中南米海共同体(CELA)が発足した。アメリカは中南米から追い出されてしまった形になる。そこで行き場がアジア太平洋ということになる。 アメリカがこれまでなかなか多国間協定に盛り込むことができなかった投資ルールというものを、世界第3位の経済大国である日本がアジア太平洋の共通ルールとして受け入れるかどうかということは、インドやフランス、ブラジルだけでなく世界中が注目している。日本の決断は世界的に大きな影響を持っている。(斎藤議員) 郵政について、TPPを受けいれた場合、日本の郵政はほぼ骨抜きになって、郵便のユニバーサルサービスは維持できなくなるということでよろしいか。(関岡教授) 個人的な意見を言わして貰えればそのとおりだと思う。(山田議員) 医薬品の透明性について説明願いたい。(関岡教授) アメリカの薬価制度では 、基本的に製薬企業の自由薬価ということになっているので 、特許の有効期間、これは国際的なルールが20年間、最長5年間の延長が可能だが、その - 11 -
  12. 12. 間は独占販売でき高値を維持していくわけだ。 ところが日本では、薬価制度があるので、先ほどの薬価の国際比較では、アメリカを1とすると、米英仏独、日本が半分以下かという水準。 米国が突出して薬価が高い訳だが、これに関して当時FDA、これは食品医薬品局の長官であったマーク・マクレランという方が 、「米国と他の先進国との薬価の解決には、アメリカの薬価を引き下げるのではなく、他の先進国の薬価を引き上げる必要がある」ということを表明されている。 それが米韓FTAにどのように反映されたかということだが、米韓FTAは先月15日に発効したけれども、第5章が薬品と医療機器を扱っているが、その中の第2条に 、 「薬価や医療機器の価格は競争市場価格をベースとするか、さもなくば特許上の価値を反映させる、製薬企業に値上げ申請を認める」という情報が入っている。 さらに第7条に、MMDC(医薬品・医薬機器委員会)というものだが、こういった協定の遵守をモニターする組織を作りなさい。その構成メンバーは、米韓両国政府の医薬だけでなくて通商担当、要するに貿易自由化を担当する官庁の担当官も共同議長とする、という規定がある。さらにサイドレターとして、IRBという独立検証機関の設置というものが韓国側だけに義務付けられており、韓国側は薬価における異議申し立てを受け付ける独立機関を設置する、その機関というのは韓国政府の人事権から完全に独立したものでなくてはならない、つまり韓国の国内で、韓国政府と対等の強大な権限をもった米国製薬企業にとってのエージェント、代理人を設置しなさい、と言うことまで韓国政府は米韓FTAにおいて呑まされている。 もし薬価にアメリカ的な市場原理が導入されたら、当然ただでさえ逼迫している財政がますます逼迫するし 、そうなれば医療現場の疲弊 、患者の自己負担の増大という形で 、日本の国益に取っては大変大きな影響が出てくるのではないかと考えている。 - 12 -

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