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無料追補版#5「リモートUXテスト」

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樽本徹也(著)「ユーザビリティエンジニアリング(第2版) ―ユーザエクスペリエンスのための調査、設計、評価手法」(オーム社、2014年)の無料追補版第5弾です。

※樽本徹也(著)「ユーザビリティエンジニアリング」は累計刷数1万部を超える、日本で最も読まれているUX/ユーザビリティ関連書籍の一つです。ユーザ中心設計(人間中心設計)のプロセスと手法をこれ1冊で学べます。「UX/ユーザビリティについて学びたいときに、最初に手に取るべき1冊」として、2005年の初版刊行以来、10年にわたって長く読み継がれています。

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無料追補版#5「リモートUXテスト」

  1. 1. 樽本徹也(著)『ユーザビリティエンジニアリング(第 2 版)』 無料追補版 #5 [2018.1.10 発行] - 1 - リモート UX テスト ※【図の出典】Nate Bolt(著)「Remote Research」 その昔、ユーザテスト(ユーザビリティテスト)は非常に高価で時間のかかるものでした。 そこで、1990 年代前半にヤコブ・ニールセンが「ディスカウント・ユーザビリティ工学」 を引っ提げ、颯爽と登場したのですが、その費用は$25,000~$45,000――。彼の言う「デ ィスカウント」とは、あくまで「アカデミック」と比較した場合の話でした。 ■激安ユーザテストの潮流 その後もユーザテストの「価格破壊」はあまり進みませんでした。米国の有名なユーザビ リティコンサルタントのスティーブ・クルーグは「ユーザテストが製品の品質を劇的に改 善することは以前からよく知られている。しかし、テストの度に専門のコンサルタントに 5,000 ドルから 10,000 ドルも支払うとすれば、おいそれと手を出せるものではない」と 2009 年頃に指摘しています。 価格破壊の手段の1つは「DIY」――。つまり、専門のコンサルタントに頼まず、自前でテ ストを実施することです。人脈を使って被検者を集め、社内の会議室に手作りのラボを設 え、関係者みんなで見学して、ランチを食べながらデブリーフィングする――スティーブ・ クルーグはそんな「DIY ユーザテスト」を提唱し、その伝道師として活躍しています。
  2. 2. 樽本徹也(著)『ユーザビリティエンジニアリング(第 2 版)』 無料追補版 #5 [2018.1.10 発行] - 2 - 価格破壊のもう1つの手段は「リモート」――。テストをオンライン化/自動化すれば、 時間と場所の制約がなくなり、実施コストも劇的に下がります。元々は多大な費用と時間 がかかる海外調査を効率化することを目的に行われていましたが、技術の進歩と低価格化 (小規模なテストならば数万円で実施可能)によって、従来のラボを使ったテストを”破壊” しつつあります。 ■モデレート型と非モデレート型 リモート UX テストは大きく2つに分類されます。「モデレート型」と「非モデレート型」 です。  モデレート型(moderated):ユーザテストの参加者はモデレータ(司会者)、被検者、 見学者で構成されますが、この三者が「時間的」には同席しても、「物理的」には同席 しないという形態です。例えば、モデレータがニューヨーク、被験者は東京、見学者 はロンドンにいてテストを実施・見学する――といった感じです。映像や音声がイン ターネット経由である以外はラボを使ったテストとほぼ同じ内容を実施できますが、 コストはそれほど下がりません。また、海外調査の場合は時差の問題が発生します。  非モデレート型(unmoderated):別名「非同期」とも言いますが、その名のとおり、 テストの参加者は「時間的」にも「物理的」にも同席しません(そもそもモデレータ は不要)。例えば、リクルート条件とタスクを登録しておけば、後は登録モニターが自 由な時間と場所でタスクを実行して、後日(数時間から数日後)その録画データが提 供される――といった感じです。これら全ての作業はオンラインで完結します。 現在のリモート UX テストサービスの主流は「非モデレート型」です。プロセスをほぼ自 動化できるので、ビジネスとしてスケールアップするからです。ただ、非モデレート型は 実施できるテストの内容に制約があります。「オープンなタスク」や「ローファイなプロト タイプ」を使ったテストはできません。また、テスト設計をより念入りに行う必要があり ます。テストの途中で被検者が立ち往生しても、横から助成することはできないからです。 ■リモート UX テストのサービス リモート UX テストサービスのスタンダード――オンラインで登録モニターにタスクを実 行してもらい、その様子を録画して音声入りの動画で提供する――を確立したのは 「UserTesting.com」です。2008 年の創業ですが、今でもリモート UX テストの代表的な 存在として知られています。 それと双璧を成すのが「UserZoom」です。最初はタスク達成時間測定などの定量評価的な 機能が中心でしたが、その後、UserTesting.com と同様の動画機能なども追加して、定量・
  3. 3. 樽本徹也(著)『ユーザビリティエンジニアリング(第 2 版)』 無料追補版 #5 [2018.1.10 発行] - 3 - 定性両方の幅広いデータを提供できるサービスに成長しています。かつて、ミツエーリン クス社が提供していた「UserWhiz」は、この UserZoom の OEM でした。 日本でもスタートアップが提供するリモート UX テストのサービスが登場しています。そ の代表がイノベータ社の「UIscope」と、ポップインサイト社の「Pop Insight」です。UIscope は当初からスマホに焦点を当てて、登録モニター全員に簡易型の書画カメラを配布してい るのが強みです。Pop Insight は標準的な内容のサービス以外に「ユーザテスト Express」 や「プロトタイプ・テスト Express」といったユニークなサービスを次々とリリースしてい ます。 (※情報開示:私(樽本)はイノベータ社と共同で「ユーザテスト Live!」を開催しています。) ■PC を抱きしめる 非モデレート型は、わざわざ自前で用意するよりも、前述のような既存サービスを利用す るほうが合理的です。一方、モデレート型は「DIY」に応用できます。PC アプリやウェブ サイトならば、Skype の画面共有機能を使えば手軽にリモートでテストできます。これは、 遠隔地のテストに限らず、手作りラボを使った社内テストにも有効です。長いケーブルを 購入しなくても、離れた 2 つの会議室をつなぐことができるからです。 スマホの場合も Skype を使ってテストできますが、画面共有機能ではなく、通常のウェブ カメラの映像を使います。ディスプレイ上部にカメラが内蔵されているノートパソコンを、 反対向けにして「抱きしめる」ようにします(下図左を参照)。カメラの前にちょうど画面 が来るようにスマホを持って操作すれば、Skype 経由で観察できます。もちろん、タブレ ットやスマホのカメラを使っても構いません。 (※スマホのテストでは「書画カメラ」を使ったほうが便利です。これは、あくまで「応急処置」です。)
  4. 4. 樽本徹也(著)『ユーザビリティエンジニアリング(第 2 版)』 無料追補版 #5 [2018.1.10 発行] - 4 - ■激安ユーザテストの教科書 数ある UX 手法の中でもユーザテストは最も重要な手法のひとつです。設計プロセスの中 で繰り返し利用するからです。ただ、繰り返し利用するからこそ「早く」「安く」する必要 があります。そのためにも「DIY」と「リモート」を上手く活用しましょう。 ◎スティーブ・クルーグ(著)「超明快 Web ユーザビリティ」、2016 年刊行 原書は UX 界のベストセラー「Don't Make Me Think」(第 3 版)。初版本が出たのは 2000 年。その第 9 章に「1 日 10 セントでできるユーザビリティテスト」が載っていて、これ が「激安ユーザテスト」の始まりと言われています。その後、クルーグは激安テストに 話題を絞った「Rocket Surgery Made Easy」を 2010 年に出しています。 ◎樽本徹也(著)「アジャイル・ユーザビリティ」、2012 年刊行 実は、その「Rocket Surgery Made Easy」に影響を受けて私(樽本)が書いたのが本書 です。取りあえずユーザテストだけ勉強したいのならば本書が一番手軽だと思います。 中古本で構わなければアマゾンで「100 円」で買えます。 ◎Nate Bolt(著)「Remote Research」、2010 年刊行 リモートテストの専門書はほとんどありません。本書も専門書というよりも、著者が運 営する「Ethnio」というリモートリサーチ・サービスの解説が中心です。 ■関連セミナーのご案内 ユーザテストの基礎理論と実務基本(リクルート、設計、観察/分析)を 1 日で学べるセ ミナーを開催いたします。「DIY」「リモート」の基礎となる内容です。 ◎利用品質を向上する「UX/ユーザテスト集中講座(冬期)」 http://ut0131.peatix.com  開催日時:2018 年 1 月 31 日(水) 10:00-18:00  開催場所:株式会社 Kaizen Platform(東京・白金高輪)  受講料:24,000 円(税込)
  5. 5. 樽本徹也(著)『ユーザビリティエンジニアリング(第 2 版)』 無料追補版 #5 [2018.1.10 発行] - 5 - 【参考資料】 ◎ヤコブ・ニールセン(著)「ユーザビリティエンジニアリング原論」、1999 年 ◎ヤコブ・ニールセン(著)「ウェブユーザビリティ」、2000 年 ◎Steve Krug(著)「Rocket Surgery Made Easy」、2010 年 ◎UserTesting.com https://www.usertesting.com/ ◎UserZoom https://www.userzoom.com/ ◎UIscope https://client.uiscope.com/ ◎ポップインサイト https://popinsight.jp/ ◎Remote Usability Testing on Mobile Devices https://blog.mailchimp.com/remote-usability-testing-on-mobile-devices/

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