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アカスジカスミカメの分布拡大メカニズム

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2019/3/5北陸病虫害研究会の発表スライドです

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アカスジカスミカメの分布拡大メカニズム

  1. 1. Presentton Subtitle アカスジカスミカメの 分布拡大メカニズム レガシーデータを活用し、 広域的に評価する 首都大学東京 都市環境科学研究科 大澤 剛士 <arosawa@tmu.ac.jp> 2019/3/5 北陸病虫害研究会
  2. 2. Presentton Subtitle今日紹介する研究の 基本的な考え方 基本的な考え方
  3. 3. Presentton Subtitle 基本的な考え方 生態学的プロセスは実測が困難な場合が多い ダ鳥獣ギ画 典型例:分布拡大 個体レベルの観測(飛翔とか)はできても 個体群レベルでそれを観測するのは困難
  4. 4. Presentton Subtitle t-2 t-1 t (現在) 多くの場合、時系列データで推定する 基本的な考え方
  5. 5. Presentton Subtitle Nodata area t-2 t-1 t (現在) 現実的には穴あきになる場合が多い 基本的な考え方
  6. 6. Presentton SubtitleVirtual Ecology (バーチャルエコロジー) 基本的な考え方
  7. 7. Presentton Subtitle t-2 t-1 t (現在) 生態特性を利用した理論モデルで 興味あるプロセスをシミュレーション よし、次はこのシナリ オで、その次はこの シナリオで・・・ 基本的な考え方
  8. 8. Presentton Subtitle 不完全なデータでも有効に使える 実際の分布データ理論的な分布データ ダ鳥獣ギ画 シミュレーション結果を実データで答え合わせ 基本的な考え方
  9. 9. Presentton Subtitle アレチウリ Sicyos angulatus カワヒバリガイ Limnoperna fortunei Osawa and Ito (2015) Pop. Ecol. 57: 529-539 Osawa et al.(2016) AMBIO 45: 895-903 Occurrences わりとうまくいっています
  10. 10. Presentton Subtitle この考え方を アカスジカスミカメに 適用しました
  11. 11. Presentton Subtitle ・斑点米カメムシ ・米の等級を著しく低下させる ・過去に何度か大発生 ・東北、北陸を中心に分布拡大中 アカスジカスミカメ Stenotus rubrovittatus 千葉県農林総合研究センター
  12. 12. Presentton Subtitle ① 調査データを5kmメッシュに溶かす (調査地点数は考慮しない) ② 調査期間内で継続して掬い取りが 実施されているメッシュに注目 在/不在データを作成 合計49メッシュ データ概観
  13. 13. Presentton Subtitle データ概観 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2008 2010 2011 2012
  14. 14. Presentton Subtitleこの”粗い”が”広域”データを 利用して研究を進めました
  15. 15. Presentton Subtitle 研究1 Osawa et al. (2018) Basic and Applied Ecology 30: 41-51 Climate-mediated population dynamics enhance distribution range expansion in a rice pest insect 生育パラメータ(発育ゼロ点と積算温度)と 日別気象データベースを利用し、気象要因と 分布拡大の関係を理論的に検討
  16. 16. Presentton Subtitle 前説 ・年世代数が増加 ・第一世代の孵化タイミングが同調 ・ここ10年で上記が発生し、分布拡大 →気候変動によって分布域が 拡大している可能性が示唆 ざっくり言うと Osawa et al. (2018) Basic and Applied Ecology 30: 41-51
  17. 17. Presentton Subtitle 多くの昆虫はテキトーな生き物 発育ゼロ点T0と有効積算温度K 昆虫は変温動物であるため、発育は外気温によって変化する 桐谷(2012)農環研報告31 D (t – T0) = K D: 温度tにおける発育日数 T0: この温度以下だと発育が停止する Kに達したとき、その発育ステージを完了する
  18. 18. Presentton Subtitle 多くの昆虫はテキトーな生き物 発育ゼロ点T0と有効積算温度K 例:発育ゼロ点が5℃、有効積算温度が20のとき 9/18 平均気温12℃=積算温度は(12-5=7℃) 9/19 平均気温11℃=積算温度は(11-5=6℃) 9/20 平均気温13℃=積算温度は(13-5=8℃) 7 + 6 + 8 = 21 9/20に20を超える =そのステージを終了する
  19. 19. Presentton Subtitle 生育パラメータと 気象データがあれば 発生消長が予測できる!
  20. 20. Presentton Subtitle 研究1 重久 (2004) 横田、鈴木 (2008) 岩手県の個体群で実績あり (秋田、山形とも一致してる) 成長段階 発育ゼロ点 有効積算温度 孵化 12.1 105.7 幼虫 11.9 182.1 性成熟 15.1 59.5
  21. 21. Presentton Subtitle 研究1 アメダス、気象官署データを 空間補完した1kmメッシュ日別気象 データ(1980年~2015年)
  22. 22. Presentton Subtitle 研究1 日別気象値DBを使って 各メッシュの理論的な世代数を計算 (孵化~性成熟(産卵)までを1サイクル) ※産卵まで達しなかったら切り捨て 孵化―成虫発生―性成熟(産卵) 孵化―成虫発生―性成熟(産卵) 孵化―成虫発生―性成熟(産卵) 1km単位での(理論的な)世代数、 各ステージに達する日を取得
  23. 23. Presentton Subtitle 研究1 日別気象値DBを使って 調査メッシュの理論的な世代数を推定 (5kmメッシュ1つに25の値) 2世代 2世代 2世代 2世代 2世代 3世代 3世代 3世代 3世代 3世代 2世代 3世代 4世代 3世代 3世代 2世代 3世代 3世代 3世代 3世代 2世代 3世代 3世代 3世代 3世代
  24. 24. Presentton Subtitle 研究1 日別気象値DBを使って 調査メッシュの第一世代発生日を 推定、全調査メッシュのCVを計算 (5kmメッシュ1つに25の値ができて、 それを全部プールしてCV:変動係数を計算) 低いとばらつき小さい=同調性高い 6/1 6/2 6/1 6/1 6/2 6/2 6/2 6/2 6/1 6/2 6/1 6/1 6/2 6/2 6/1 6/1 6/2 6/2 6/1 6/2 6/1 6/2 6/1 6/2 6/2 5/26 6/2 6/10 5/25 6/1 6/2 5/29 5/23 6/5 5/29 5/30 6/1 6/12 5/30 6/14 6/1 6/4 5/23 6/1 6/7 6/10 5/30 6/7 6/2 5/29 CV低い=同調性高い CV高い=同調性低い
  25. 25. Presentton Subtitle 研究1 予測: ・世代数が増加すると、分布域が拡大する ・発生が同調すると、分布域が拡大する
  26. 26. Presentton Subtitle 研究1 解析1:在メッシュ数解析(2県全域の広域プロセス解析) ※平均世代数は調査地全域の当該年の平均値 ※前年データを説明変数に入れているので、解析対象は2004-2012年 (2003年は前年データがない) GLM(ポアソン分布を仮定)+Wald検定 在メッシュ数(カウント) ~ 前年の在メッシュ数 + 前年の平均世代数 + 当年の越冬世代発生CV平均 + 当年の第一世代発生CV平均 全プール
  27. 27. Presentton Subtitle 研究1 解析1:在メッシュ数解析(2県全域の広域プロセス解析) GLM(ポアソン分布を仮定)+Wald検定 在メッシュ数(カウント) ~ 前年の在メッシュ数 + 前年の平均世代数 + 当年の越冬世代発生CV平均 + 当年の第一世代発生CV平均 Coefficients: Estimate Std. Error z value Pr(>|z|) (Intercept) 8.034e-01 2.126e+00 0.378 0.705581 pre_mesh 3.870e-02 6.382e-03 6.064 1.32e-09 *** pre_sedai 8.208e-01 3.339e-01 2.458 0.013966 * fuka1cv 5.568e+01 2.978e+01 1.870 0.061508 . fuka2cv -1.380e+02 3.622e+01 -3.810 0.000139 *** 正の影響 負の影響 世代数が増加すると分布域拡大、 同調性が高いと分布域拡大
  28. 28. Presentton Subtitle 研究1 解析2:5kmメッシュ単位(メッシュ内の局所プロセス解析) GLM(二項分布を仮定)+Wald検定 メッシュの在不在(0/1) ~ 当該メッシュの前年の在/不在 +当該メッシュの前年世代数 + 当年の越冬世代発生CV + 当年の第一世代発生CV ※前年世代数は当該メッシュ内の当該年の平均値 ※前年データを説明変数に入れているので、解析対象は2004-2012年 (2003年は前年データがない) 5kmメッシュが単位
  29. 29. Presentton Subtitle 研究1 解析2:5kmメッシュ単位(メッシュ内の局所プロセス解析) GLM(二項分布を仮定)+Wald検定 メッシュの在不在(0/1) ~ 当該メッシュの前年の在/不在 +当該メッシュの前年世代数 + 当年の越冬世代発生CV + 当年の第一世代発生CV Coefficients: Estimate Std. Error z value Pr(>|z|) (Intercept) -4.4285 0.7713 -5.742 9.37e-09 *** flag 2.1980 0.2050 10.723 < 2e-16 *** zennen 0.8735 0.2110 4.140 3.48e-05 *** fuka1cv 37.2713 25.4451 1.465 0.143 fuka2cv -31.0695 30.2281 -1.028 0.304 正の影響 前年の世代数が増加すると 在になりやすくなる=密度が増加?
  30. 30. Presentton Subtitle 研究1 ・世代数の増加は広域的、局所的に 分布拡大に寄与 ・発生の同調は広域的に 分布拡大に寄与 秋田・山形におけるアカスジの分布拡大に 近年の気候変動が寄与している可能性が示唆 シミュレーション結果と実データを 組み合わせて新しい知見が得られた
  31. 31. Presentton Subtitle 研究2 Osawa et al. (2018) AMBIO 47: 806-815. Detecting crucial dispersal pathways using a virtual ecology approach: A case study of the mirid bug Stenotus rubrovittatus 餌の選好性(イネ、カヤツリグサ)と、それを指標できる 土地利用パタンを利用し、分布拡大シミュレーションを実施 実データで答え合わせを行って分布拡大経路を明らかに
  32. 32. Presentton Subtitle 前説 ・道路法面、放棄地が分布拡大の主要経路 ・水田の畦も経路だが、選好性は低い →近年の土地利用変化が分布拡大に 寄与している可能性が示唆 ざっくり言うと Osawa et al. (2018) AMBIO 47: 806-815.
  33. 33. Presentton Subtitle 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2008 2010 2011 2012 研究2 Q. 分布拡大の経路は何だろう?
  34. 34. Presentton Subtitle 研究2 →それが多い土地利用には移動しやすい? Nagasawa and Higuchi (2012) Nagasawa et al. (2012) 既往研究により、対象種の成長は イネ科、カヤツリグサ科に依存
  35. 35. Presentton Subtitle 研究2 0.7 0.4 0.1 0.1 隣接するメッシュにイネ科、カヤツリグサ科が 多ければ侵入成功しやすく、少なければ成功 しにくい(分布拡大しない) シンプルな分布拡大モデルの構築
  36. 36. Presentton Subtitle 研究2 秋田を対象にシミュレーション 隣接県がすべて東北 (データがある※) ※山形県は新潟(データなし)に隣接してしまう 青森 岩手 山形 宮城 イネ科、カヤツリグサ科が多そうな土地利用: 河川敷、道路法面、 水田畦、放棄地 ※現地での観察、データの利用可能性を考慮して決定
  37. 37. Presentton Subtitle 研究2 全メッシュに1回侵入させて999ステップ実施 結果を足し合わせる(初期分布を想定しない): →いろんな場所から入り込める場所は値が高くなる =侵入確率が高いと判断できる(既往論文と同じ手法) 秋田の最新分布データ※イメージ。絵は宮城県 すべて足し合わせる 999ステップ
  38. 38. Presentton Subtitle 研究2 見た目で河川は駄目っぽい。 ほかはいけてそう 河川 道路 水田 放棄地 ※色が濃いほど侵入確率が高い 秋田の最新分布データ
  39. 39. Presentton Subtitle 研究2 2013年時点で在になっていたメッシュのシミュレーション値と 全域のシミュレーション値の平均値を比較 (ノンパラU-test) 予測: 在(侵入した場所)のメッシュのシミュレーション値は 全域の値よりゆーいに高い →そのパスウェイを使って入り込みやすい場所には 実際に入り込んでいる
  40. 40. Presentton Subtitle 研究2 河川以外はランダムよりうまく予測 これらは拡大経路になっている可能性大 (統計はU-test) 箱ひげの左が県の全メッシュ 右が2013年の在メッシュ 値はシミュレーション結果 (高いほど侵入しやすい) 河川 道路 水田 全放棄地 <P < 0.001
  41. 41. Presentton Subtitle 研究2 最初に”在”になった年 シミュレーション結果 (理論的な侵入回数) 最終年に在であるセルの侵入年(最初に在になった年)を 従属変数に、シミュレーション結果を説明変数にして線形回帰
  42. 42. Presentton Subtitle 研究2 最終年に在であるセルの侵入年(最初に在になった年)を 従属変数に、シミュレーション結果を説明変数にして線形回帰 予測1: シミュレーション値が高い(侵入しやすい)場所には ランクが低い(早い年代)に侵入する =負の相関が検出? 予測2: パスウェイとしての影響が弱いものは シミュレーション値が高くても ランクが高い(遅い年代)にならないと侵入しない =正の相関が検出?
  43. 43. Presentton Subtitle 研究2 水田がパスウェイになるのは後半 (見易さのために図はx軸を年にしている) 河川 道路 水田 放棄地 ゆーいな正の相関 n.s. n.s. n.s. n.s.侵入年代 ~ シミュレーション (相関解析)
  44. 44. Presentton Subtitle 研究1 ・分布拡大の経路として道路、 水田、放棄地が有効 (意外と河川敷は拡大に寄与しない) ・水田自体の選好性は低い (水田と放棄地は分離不可だが、放棄地は重要かも?) 秋田における主要な分布拡大経路は 道路法面、放棄地である可能性が高い シミュレーション結果と実データを 組み合わせて新しい知見が得られた
  45. 45. Presentton Subtitle 広域から現地レベルの研究まで まとめて聞くチャンスです! W08:斑点米カメムシ類の分布拡大機構の解明: 個体群生態学から景観、マクロ生態学へ 世話人:高田まゆら、吉岡明良 応動昆 小集会3/26(火) 18:00 ~ 19:30 W081◯高田 まゆら・吉岡 明良 趣旨説明 W082田渕 研 土地利用に基づいた斑点米被害予測とハザードマップによる広域管理への応用 W083◯渡邊 照之・八尾 充睦・藪 哲男・植松 繁 地理情報を利用した斑点米カメムシ類の発生リスクマップの作成とそれに伴う防除方法の検討 W084◯山崎 和久・田淵 研・高橋 明彦・大澤 剛士・吉岡 明良・高田 まゆら 斑点米カメムシ 2 種における生活史形質の地理的変異パターンの解明 W085◯大澤 剛士・山崎 和久・田淵 研・吉岡 明良・須藤 重人・石郷岡 康史・高田 まゆら レガシーデータを再利用してアカスジカスミカメの分布拡大メカニズムに迫る
  46. 46. Presentton Subtitle おわりに
  47. 47. Presentton Subtitle 生物多様性に関わるデータベースを 創って フィールドワーク、インターネット調査、博物館調査 使って 魅せる ビッグデータ解析、シミュレーション、データの加工・視覚化 見やすい形で広く公開 生物多様性情報学
  48. 48. Presentton Subtitle Sleeping Dataの掘り起こし 解析 (シミュレーション) 今回の研究アプローチ データクリーニング (データベース化)
  49. 49. Presentton Subtitle 今回用いたデータ:委託プロジェクトの成果 ・膨大なお金と人を投入 ・多数の被害県で強烈な調査 ・それなりに研究成果も (生態特性、化数等が明らかに) 他にも様々な 巨大時系列データが存在 使われるのを待っている!
  50. 50. Presentton Subtitle 東北農研を中心に基礎整理が実施済み http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/la boratory/tarc/2015/tarc15_s14.html
  51. 51. Presentton Subtitle オープンデータになっていれば 利活用の可能性が広がる さらに一歩進めるために
  52. 52. Presentton Subtitle 研究データのオープン化推進 前職での私の最後の仕事でした http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_r eport/publication/laboratory/niaes/ma nual/083173.html
  53. 53. Presentton Subtitle オープンデータを進め 研究を進めましょう! 首都大学東京 大澤 剛士 <arosawa@tmu.ac.jp>

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