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SPC(20110120)

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SPC(20110120)

  1. 1. はじめに<br />熱気に包まれた2泊3日の共生プログラミング・キャンプから一ヶ月ほどが経ったいま、当時、その一瞬一瞬に感じたことを思い出しながら、同時にその際の経験に基づきつつ、その後に考えたことを含めて、「共生プログラミング」を冠した今回のワークショップを振り返ろう。<br />キャストとしての私の役割-ファシリテーターとして<br />今回の私の役割はキャストの一員であり、同時に吉川厚さん(教育測定研究所主研究員、東京工業大学連携教授)と共に担った3日間の進行役の一人でもあった。こういう役回りになったのは、「現場で課題に取り組むプロフェッショナル、ソフト開発に携わるエンジニア、サービスを利用するユーザーが一堂に会」するというワークショップの趣旨からすると、私の場合、現場で課題に取り組むプロフェッショナルとサービスを利用するユーザーの間くらいの立ち位置であることを自覚していたからだ。キャストの多くは、「ソフト開発に携わるエンジニア」であり、参加者の多くは「サービスを利用するユーザー」であった。この両者が自然に出会い、「プロトタイプのソフトを含む作品をつくり、相互に評価し、持ち帰る」ために、その媒介役に徹しようと考えたわけだ。<br />ファシリテーションチームの実際<br />とはいえ、このファシリテーションチームの結成は、実は1日目の開会前にキャストで昼食をとりながら行った打ち合わせで緩やかに合意されていたに過ぎない。3日間、その場の状況に応じて、キャストやスタッフの誰かが、臨機応変にファシリテーションにあたっていたというのが本当のところだろう。とはいえ、完全に流れに任せていたわけではない。3日間の間、その日のプログラムの開始前や終了後に、吉川さんと私、そして主宰者である会津泉さん(ハイパー研副所長)を中心に、ときに他のキャスト、たとえば、須子善彦さん(ユナイテッドピープル株式会社CTO)を交えながら、この後の進行をどうするか、意識的なファシリテーションが必要なチームはどこか、といった点を共有し、各自の役割を再確認していた。<br />ファシリテーションの実際-自己紹介を受けた課題の設定と仮チーム分け<br />さて、2泊3日の間は必ずしも、当初のプログラム通りに進行したわけではない。一連の流れの中で、ファシリテーター側が投げかけていった様々な進行上の仕掛けを順次述べていこう。まず、プログラム上、「自己紹介=他者理解 (アイスブレイクタイム)」とされたメニューでは、1名1分で自己紹介をしていただいた。この際、まず自己紹介の時間を1分と短くし、話せる内容を極限まで絞り込んだ。同時に、キャストにも参加者にも、自分を「エンジニア」と「ユーザー」のいずれであるか仮に決めてもらい、「エンジニア」には、「何ができるのか」、「ユーザー」には、「何をしたいのか」を話してもらうようにお願いした。つまり、肩書や職歴といったラベルではなく、いま自分がここで何ができるのか、何をしたいのかに集中して話してもらったのだ。この間、須子さんには、全員の自己紹介をマインドマップ風にホワイトボードに書きあげていってもらった。<br />プログラム上は、ここで課題発表となるのだが、キャストを含む運営サイドが上から与える課題では意味がない。そこで自己紹介に基づきつくられたマインドマップを元に、最も聞かれた「農業」、「地域振興」、「教育」、「IT」という4つのキーワードを課題候補として提示し、会場をテーマごとに4ヶ所に分けて、キャストと参加者にも、自分が扱いたいテーマのテーブルに分かれてもらった。<br />ファシリテーションの実際-最初のチーム内討論と全体発表<br />この時点では予定より10分早い14時50分。そこで前倒しして、ユニット1に入った。まずは15時10分まで、チーム内でのコミュニケーションを促進しつつ、各自がそのテーマに抱く思いを共有すべく20分ほど、短い討論をしてもらい、次いで20分かけて、その時点でのチーム内での議論を模造紙にまとめてもらった。<br />各チームでの議論が盛り上がったこともあり、この時点から進行に遅れが見られるようになったが、場の流れを尊重して15時40分まで10分間延長した。そして、休憩を挟んだ15時50分からは、各チームがまとめた模造紙をボードに貼りつけ、全員がその前に立って、各チームの発表を聞くことにした(1チーム発表時間5分)。このとき行った仕掛けが一つある。それは全員に付箋を4枚渡し、自分のチームも含め各チームの発表を聞いて感じたこと、特に提案できることを、そのチームの模造紙に張ってもらったのだ。発表が終わるごとに模造紙が色とりどりの付箋で埋め尽くされていく様は壮観であった。同時にキャストも、少なくともこの時点では、参加者も特定のテーマやチームだけに関心を向けるのではなく、ここに集結したすべての人、物、事に関心を向けるように誘導できたのではないかと思う。というのも、このワークショップでは、当初とは別の関心が生まれてきた場合は、テーマやチームの変更も自由と考えていたからだ。<br />ファシリテーションの実際-チーム選択から課題・解法の検討・発表へ<br /> 発表と付箋記入を終えた16時20頃に、この後、自分が属するテーマ、チームを選択してもらい、再度着席してもらった。もちろん、他のチームへの移動、あるいは新たなテーマを立てての分岐・独立も推奨した。結果的に大きな人の移動は見られなかったが、人数の多い「農業」チームは、「鹿害」と「農業」の2つに分かれた。ここから約1時間は各チームでの議論に集中してもらい、17時30分からその途中経過を発表してもらうことにした。この1時間の間は、ファシリテーターも各テーブルを回り、議論に聞き耳を立てていた。最終日の成果発表を踏まえた後知恵で言えば、この時間でどのような合意を仮決めできたかが、成果の成否を分けたように感じている。特にこれは「教育」チームに言えるが、教育というテーマは人によって抱くイメージが異なる上、教育そのものに対する体験や価値観が多種多様である。この時間帯で、ここで言う「教育」とは、仮に「○○○」とする、という仮設ができなかったことが、その後の進捗に大きく影響したのではないだろうか。<br /> さて、発表(1チーム5分間)では、最終日の表彰で高い評価を得た「農業」チームのプレゼンテーションが出色であったように思う。当初からこのテーマに強い関心を示していたキャストの洛西一周さん(Nota Inc CEO)が、チーム内での議論を踏まえて簡単な画面案を提示していた。言うなれば、「プロトタイプ」がすでにこの時点で示されていたわけで、このテーマを選択したチームとして仮に決定された進むべき方向性をよく伝えていたように思う。<br />ファシリテーションの実際-温泉と宴会の後のシャッフル<br /> ここで一度、水入りとし、20時30分まで、ホテルへのチェックインや温泉への入浴、そして宴会場で一堂に会しての夕食を含むフリータイムとなった。予定より30分遅れて21時に再開したユニット2では、各チームに半数のメンバーはそこに残り、作品制作を続け、残り半数のメンバーは他のチームに出かけるようお願いした。これは他のチームに参加し、そのチームに貢献しつつ、同時にそのチームのエッセンスを自分のチームに持ち帰ることをねらったものだった。しかし、これはファシリテーションとしては、いささか不明確なものであったかもしれない。ファシリテーター側の意図が十分に参加者には伝わりきっていないように感じられたことは事実であり、他のチームの討論やそこに参加するメンバーから、自分のチームに有益な何かを持ちかえるように、とより明確で具体的な役割を設定すべきであったように思っている。<br /> 各チームで1時間半の討論や作業が行われた後、22時30分から1日目のまとめを行った。ここでは各チームに5分間でこの1日、話してきた内容を踏まえ、明日1日、チームとして何をするのかを、何をつくるのかを発表してもらった。この際、代表者による発表以外にも、 個々のメンバーからのコメントもありとしたが、やはり一部のチームでは、チーム内での合意が、緩やかな仮設といったレベルでも形成されていないことがうかがえた。最後に吉川さんから、明日1日を丸々使える2日目は、つくる1日であること、だからこそ、明朝までには何をやるのかを決めておかなくてはならない、というファシリテーターとしての一種の警告を発しておいた。ただ、後でふれるように、このメッセージにも関わらず、2日目に入っても何をやるのかの仮決めができていないチームがあったのは、ファシリテーション側の課題だろう。開催の責任上、夜を徹してのプログラムを組むことは不可能であったわけだが、夜の間のコミュニケーションを促進するよう、ホテルの1室を借りて、自己責任の上で、夜を徹して語らえる場を設けておくべきであったという反省がある。<br />ファシリテーションの実際-1分間のシンキングタイムと宣言の作成<br /> 2日目は、先にふれたように、「つくる1日」である。ユニット3、ユニット4、ユニット5と続く1日を集中して使えるよう、最初に1分間のシンキングタイムを設けた。ここで、<br />1.昨日のチームに残る<br />2.昨日の別のチームに移る<br />3.新たにチームを興す<br />という決断をしてもらった結果、一部にメンバーの移動があり、新チームは生まれなかった。どうしても流れに身を任せてしまうことがあると思うと、このタイミングでシャッフルする機会を設けたことは良かっただろう。その後、30分をかけて、各チームに、<br />1.何のためにやるのか(ターゲット)<br />2.何をつくるのか(プロダクト)<br />3.何をする必要があるのか(リクワイアメント)<br />4.どう進めるのか(タイムテーブル)<br />5.誰が必要なのか(チーム)<br />という、いわば宣言を模造紙に書き出してもらった。前日同様、書き上げた模造紙は出入口付近の衝立に張り出し、各チーム5分の持ち時間で発表してもらった。ここで宣言を書きあげてもらったのは、特に、議論の比重が大きくなり制作に入れていないチームに、先ほどから繰り返している仮でもよいので、方向性を決めてもらうための仕掛けであった。<br />ファシリテーションの実際-作業への集中の中での役割の設定と刺激の注入<br /> 10時前には、ここまでの流れを終え、以降は夜まで各チームでの作業へと移っていった。以降は基本的に各チームでの作業に専念してもらい、ファシリテーターの側では積極的なアクションはとらなかった。ただ、作業しながら昼食をとって少し経った14時頃になると、メンバーの役割が明確になりつつあるチームがあること、具体的にはエンジニアは作業に没頭し、ユーザーサイドの立場の参加者が、やや手持無沙汰になる傾向が感じられた。また、同時に依然として制作が具体化せず、プロトタイプを制作できるかどうか、あやしくなってきたチームも見受けられた。<br />そこで、進捗のよさそうな「農業」チームと「地域振興」チームにインタビューを行った。インタビューに際しては、エンジニアほどには制作に従事しているわけではない参加者にマイクを向けて進捗をうかがうと共に、必要としている資源(人・物・事)の有無を尋ねてみた。これにより、制作に専念しているチーム内でユーザーの立場にいる参加者の役割を創り出すとともに、やや停滞・膠着感のある一部のチームに刺激を与えることを図ったのである。<br />以降はますます各チームが制作に没頭していき、18時から19時に設定して入浴のためのフリータイムの間も席を離れる参加者はほとんどいなかった。夕食も1時間で終え、すぐに作業へと戻る姿には、このような合宿形式の良さをあらためて実感したものだった。<br />ファシリテーションの実際-最終プレゼンテーションと審査・表彰<br /> さて、いよいよ最終日である。3日目のこの日は8時30分から12時までの最後のユニット6を作品やプレゼンテーションの最終チューニングにあててもらった。もう、この段階まで来ると、ファシリテーションの役割というのも特にはないというのが実情だが、せっかく2泊3日でつくった作品の発表の場である。会津さん、吉川さんと相談の結果、<br />1.インパクト<br />2.プレゼン<br />3.エレガンス<br />4.ハッとした<br />5.オモロイ!<br />6.使いたい<br />7.コラボレーション<br />という7つの指標を定め、11名のキャスト、参加者の方々に審査をお願いした。結果は、以下の通り。<br />1.インパクト:「農業」チーム<br />2.プレゼン:「鹿害」チーム<br />3.エレガンス:「鹿害」チーム<br />4.ハッとした:「農業」チーム、「鹿害」チーム(同点受賞)<br />5.オモロイ!:「農業」チーム、「鹿害」チーム(同点受賞)<br />6.使いたい:「農業」チーム<br />7.コラボレーション:「鹿害」チーム<br /> 結果を見ると、元は同じチームから分岐した「農業」チームと「鹿害」チームによる受賞独占となった。正直に言えば、この2チームは「プロトタイプのソフトを含む作品をつくり、相互に評価し、持ち帰る」という趣旨に沿った具体性のあるものつくりという点で抜きん出ていた。その意味で受賞独占は当然の結果とは思う。ただ、ファシリテーションの観点からは、他のチームにも何らかの受賞機会をつくるべきであったかもしれない。が、他方、2泊3日の間に感じたキャストや参加者の真剣さを思うと、中途半端な参加賞のような表彰は、かえってそのチームのメンバーを傷つけることになったのではないか、とも思うので、評価は難しい。<br />3日間のファシリテーションを振り返って-幾つかの反省点<br /> 以上のように、ファシリテーターとして幾つかの仕掛けを埋め込みながら参加した共生プログラミング・キャンプだが、初めての試みにしては、という留保をつけることもなく、非常に良い成果があがったように思う。課題としては、ここで挙がった問題意識と提示された解決策を、実際の問題解決につなげ、発展させていくことだろう。<br /> しかし、ファシリテーターとしての反省点はある。特に記録のためにあえて名指しをするが、結局、議論に時間を費やし過ぎた「教育」チームの存在を思うと、もう少し綿密な介入や前提の設定が必要だったと思っている。特に議論する際の決まりごととして、<br />・まずはすべての意見・提案を肯定し、<br />・しかし、優先度と費用対効果に照らして、<br />・ここではこれ以上、議論せず、先送りにする<br />という一種のブレインストーミングのルールを提示すべきだったのではないだろうか。<br /> また、今回のワークショップの根幹である「共生プログラミング」ということに関して言えば、ここで言う「共生」の理解を最初に徹底すべきであった。ワークショップ期間中、時折、こんな言葉を耳にした。「やりたいことを挙げれば、後はエンジニアの人がつくってくれる」。しかし、それでは従来からある発注者としてのユーザーと受注者としてのエンジニアという受発注関係になってしまう。それでは、「共生」ではなく「強制」だ。そうではなく、ユーザーの夢にエンジニアが大いに納得・賛同し、自らの創意を継ぎ穂し、ユーザーもまたフィードバックを返していく、そのようにして共につくりあげていく関係の構築を最初により明確な言葉で伝えるべきであった。この点の反省は大きいが、しかし、この反省を得られただけでも、今回のワークショップの意義は大きかったと言えるだろう。キャストやスタッフ、参加者の方々はもとより、主催・協賛・後援くださったすべての関係者に心から御礼を申し上げ、敬意を捧げたい。<br />

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