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最新のITトレンドとビジネス戦略
ITの歴史と最新のトレンド 編
2020年11月版
ご案内
2
知識の定着は、ネットを眺め、資料を読むだけでは不十分です。実際に第三者
を相手に自分の言葉で説明してみるのが最も効果的です。
また、本プレゼンテーションは、ロイヤリティ・フリーです。ご自身の資料と
して、加工編集して頂いても構いません。
知識の確かな定着と仕事の生産性向上のために、ご活用下さい。
ネットコマース株式会社
斎藤昌義
http://libra.netcommerce.co.jp/
最新のアップデートは、「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」にて随時更新しております。
トレンドの構造
関係
歴史的必然から
理由を知る
相互の関係から
役割を知る
トレンドとは
「関係」が変化する「歴史」
コンピューターとは何か
4
抽象的な「数」を物理的な動きを使って演算する道具
Calculator
Computer
演算するための道具
Calculate
演算する
Compute
複数の演算を組み合わせ
何らかの結果を導く
複数演算の組み合わせを
実行する道具
複数演算の組み合わせを
実行するヒト(計算者)
蒸気機関や電気の動力 電子の動きモノの動き
コンピューターとは何か
抽象的な”数”を物理的な動きを使って演算する道具
蒸気機関や電気の動力 電子の動きモノの動き
データ量と計算需要
の爆発的増大
ムーアの法則
の限界
量子力学によって明らかにされた
量子の動き/現象を利用して演算
微細な世界
の物理現象
量子
コンピュータ
コンピュータ誕生の歴史
6
バベッジの解析機関(未完成)
 蒸気機関で駆動
 プログラム可能な最初のコンピュータ
 パンチカードでプログラムとデータを入力
 出力装置(プロッタ・プリンタ)も設計
論文「計算可能数について」
 コンピュータの原理を数学的に定式化
 コンピュータの動作原理モデルを設計
(チューリング・マシン)
ENIAC
 エッカートともモークリーにより開発
 真空管による電子式コンピュータ
 プログラムは大変面倒なパッチパネルで設定
 弾道計算を高速で行うため
EDVAC
 エッカートともモークリーにより開発
 プログラム内蔵式の最初の機械
 現在のコンピュータの基本原理を実装した最初
の機械(ノイマン型コンピュータ)
 磁気テープ読取/書込装置を装備/1953年・パン
チカード装置、1954年・磁気ドラムメモリ、
1958年・浮動小数点演算装置を追加
ENIACの課題と改善方法を報告
 電子回路でチューリング・マシンが実現できる
ことを数学的に証明
 どのように作ればいいかの原理を設計
(ノイマン型コンピュータ)
1836年に最初の論文
1946年
1936年 1945年
1949年(〜1961年まで稼働)1822年
バベッジの階差機械
 蒸気機関で駆動
 歴史上最初の機械式用途固定計算機(カリ
キュレータ)
 汎用性(多項式の数表を作成するよう設計、
対数も三角関数も多項式にて近似)
 プリンターにて数表を印字
ノイマン型コンピュータ 5大機能
制御装置
プログラムの読み込みや
データの読み書きを制御
演算装置
数値演算、論理演算
を実行
記憶装置
プログラムやデータ
を格納
入力装置
プログラムやデータ
人間からの指示を入力
出力装置
演算結果を外部へ出力
ノイマン型 (プログラム内蔵方式/ストアードプログラム方式) のデジタル・コンピュータでは
プログラムやデータを記憶装置に格納して順次読み込みながら演算処理を行う
CPU
中央演算処理装置
入力命令 出力命令
演算命令
データの流れ
制御の流れ
プログラムを入れ替えることで
任意の計算を実行できる機械
プログラム内蔵方式
補助記憶装置
(ストレージ)
近代コンピュータ発展の歴史
8
コンピュータの原理を数学的に
定式化し動作原理モデルを設計
電子回路でチューリング・マシ
ンを作るための原理を設計
ノイマン型コンピュータチューリング・マシン
量子コンピュータ
Quantum Computer
量子ゲート方式
量子アニーリング方式
メインフレーム
ミニコンピュータ
パーソナルピュータ
スマートフォン
IoT/エッジ
デバイス
ニューロ・モーフィック
コンピュータ
1950年代〜
1970年代前半〜
1970年代後半〜
2007年〜
2000年〜
2010年〜
1936年 1945年
スーパー・コンピュータ
1976年〜
歴史から見たITトレンド
9
紀元前150〜100年頃
アンティキティラ島の機械
1670年代
ライプニッツの計算機
1645年代
パスカルの計算機
1946年
ENIAC
1951年
UNIVAC1
1981年
1995年
1964年
IBM System/360
MS Internet Explorer 1.0
2007年
iPhone
2004年 2006年
2011年
量子コンピュータ
202X年
ニューロ・モーフィング
コンピュータ
古代の計算機械
Calculator
現代の計算機械
Computer
未来の計算機械
AI
19世紀半(未完成)
バベッジの解析機関
IBM PC 5150
1990年〜
Internet
1980〜 (1981 IBM Personal Computer 5150)
PCの登場によるクライアントサーバーの普及・分散処理
適用業務領域と利用者の拡大
1960〜 (1964 IBM System/360)
メインフレームの登場と集中処理
業務効率や生産性の向上
1990〜 (1993 インターネット商用利用・1995年 Windows95+Internet Explorer)
インターネットの登場による接続の広がりと拡大
企業や地域を越えた業務の連携や調整の実現
ITのカンブリア大爆発
テクノロジーのアンビエント化・日常への浸透
2007〜 モバイル(iPhone)
ソーシャル(Facebook、Twitter)
2000〜 クラウド(Salesforce.com)
人工知能IoT ロボット
歴史から振り返るITのトレンド
時代の節目を俯瞰する
IBM
1964:System/360
Intel
1981:i8088
Microsoft
1981:MS-DOS
Apple
1984:Macintosh
Oracle
1979:Oracle 2
1960年代〜 1980年代〜 1995年代〜
メインフレーム
ビジネスでコンピュータを使う
オープンシステム
誰もがコンピュータを使う
インターネット
どこてででもITサービスが使える
メイン・プレーヤーが入れ替わるスピードが速くなった
2015年代〜
新しいプレーヤー
が台頭する
?
2020年代〜
AIとプラットフォーム
人間とITの役割分担が変わる
Amazon
1994:創業
Google
1998:創業
Facebook
2004:創業
Bidu
2000:創業
Alibaba
1999:創業
Tencent
1998:創業
20年 15年 10年 5年
前提となるITビジネスの環境変化(〜5年)
IaaS
運用
保守
開発
仮想化
ウオーターフォール+運用・保守
半年〜1年/工数積算
専用線
IP-VPN
4G
LPWA など
階層型
アーキテクチャ
情報システム部門
アプリケーション
実行環境
システム開発
運用・保守
ネットワーク
アーキテクチャ
主な顧客
PaaS
コンテナ/サーバーレス
アジャイル+DevOps
1ヶ月〜3ヶ月/成果連動
マイクロサービス
アーキテクチャ
事業部門・経営者
第5世代
通信システム
スピード
×
アジリティ
×
スケール
スマートフォンとは何か?
2007年
Human+への進化
コンピュータ
インターネット
人工知能(AI)
ロボット
ブロックチェーン
量子コンピュータ
5G+(高速移動体通信網)
計算力
コミュニケーション力
知的労働力
肉体的労働力
自律分散力
AR/VR(拡張現実/仮想現実)時空間超越力
デジタル化の歴史
15
1960年代
メインフレームの登場
1970年代
事務処理・工場生産の自動化
1980年代
小型コンピュータ・PCの登場
1990年代
クライアント・サーバの普及
2000年代
ソーシャル、モバイルの登場
201X年〜
IoT・アナリティクスの進化
カリキュレーション
大規模計算
ルーチンワーク
大量・繰り返しの自動化
ワークフロー
業務の流れを電子化
コラボレーション
協働作業
アクティビティ
日常生活や社会活動
エンゲージメント
ヒトとヒトのつながり
PC誕生の歴史
1974 Intel 8080
1975 MOS 6502
(Motorola MC6800をモデルに設計)
1976 Zilog Z80
1979 NEC PC8001
1975 MITS Altair
1976 Apple I 1977 Apple II
1977 RadioShack TRS-80
1977 Commodore
PET 2001
μPD780C-1
(Z80-A互換)
黎明期 / ホビー 8ビット・マイクロプロセッサー 発展期 / ビジネス 16ビット・マイクロプロセッサー
16
1984 Apple Macintosh
1981 IBM PC-5150
1982 NEC PC9801
1983
IBM PC/XT
1984
IBM PC/AT
IBM PC
互換機
1995
IBM PC
互換機
1989 NeXT the Cube
日本語性能を追求した
独自仕様製品
1990 DOS/Vマシン
IBM PC互換
日本語対応
Mac OS X
(NeXTSTEP→OPENSTEPを吸収)
MS-DOS(PC-DOS)
1990 Windows 3.0
MS-DOSの機能
として日本語対応
IBM D0SバージョンJ4.0/V より
漢字Talk/Mac OS 1996 Appleが
NeXT Software買収
バイナリレベルで互換
確定申告が必要だった米国において、
表計算ソフトVisiCalcが家庭やビジネス
で使われるようになり、それが動く
AppleⅡの販売を後押しした。
第3次AIブームの背景とこれから
17
1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020 2030
第1次AIブーム
推論・探査など
ゲームや迷路などに
用途は限られ実用性は
無かった
第2次AIブーム
ルールベースなど
エキスバーとシステムと
して実用化されたが汎用
性が無かった
第3次AIブーム
機械学習(統計確率論や深層学習など)
汎用性、実用性が高まり、様々な分野の適用
が期待されている
大型コンピューター
メインフレーム
パーソナル・コンピューター
スマート
フォン
IoT
ビッグデータ時代の到来
ARPAnet 米国・インターネット
商用利用開始
日本・インターネット
商用利用開始(IIJ)
World Wide Web
が開発され公開
画像が扱えるWWWブラウザー
Mozaicが開発され公開
Windows95発売
IEが付属し、ブラウザーでの
インターネット利用者が拡大
ISLVRCにて
ディープラーニング圧勝
1969 1990 1993
1995
2012
Googleによる
猫認識
2011
Jeopardyにて
IBM Watson勝利
電脳将棋
竜王戦 開始
1997
チェス・チャンピオンに勝利
IBM Deep Blue
2007
iPhone
発売
1981
IBM PC 5150
発売
汎用人工知能
Artificial General Intelligence
登場の可能性
ムーアの法則/コンピュータ性能の加速度的向上1965〜
ムーアの法則の限界/新たな選択肢の登場
GPGPU、ニューロモーフィング・チップ
量子コンピュータ等
IBM S/360
メインフレーム
1964
ニューラル
ネットワーク
考案
Intel 404
マイクロプロセッサ
1971
データ流通量
1957
1956
ダートマス
会議
1982
第5世代
コンピュータ
プロジェクト
人類の進化と知識
18
情
報
量
言語
文字
紙
活版印刷
WWW
Internet
コンピュータ
基本的な知識伝達
非同期コミュニケーション
知識の移動
知識の拡散
機械で知識処理
機械間コミュニケーション
サイバー空間の出現
対話・発話
文字による伝達
紙による伝達
本・文献
データ流通
データ
人類の進化は
知識処理+知識共有
方法の進化
1万年前 紀元前3千500年 105年 1454年 1946年 1989年
自然科学発展の歴史
19
経験科学
理論科学
実験科学
計算科学
データ中心
科学
数千年前
数百年前
数百年前
数十年前
十数年前
自然現象
の観察
実験装置
数学
IT
最初からデータを分析することで問題を解決
データサイエンス
モデルを構築し、計算機を駆使して問題を解決
計算機シミュレーションなと
多数の実験結果から問題を解決
自然科学、心理学など
理論、モデル、数式をもとに問題を解決
シュレディンガー方程式、ニュートン方程式、
マックスウェル方程式など
経験的事実、現象を対象として実証的に問題を解決
自然現象解明など
インターネットに接続されるデバイス数の推移
億人
億台
台/人
2003年 2010年 2015年 2020年
世界人口
インターネット
接続デバイス数
一人当りの
デバイス数
63 68 72 76
5 125 250 500
0.08 1.84 3.47 6.50
コレ一枚でわかる最新のITトレンド(1)
21
サービス サービス サービス
住宅・建物
家電・設備
スマートフォン
ウェアラブル
タブレット・PC
気象・環境
観測機器
交通設備
公共設備
自動走行車
ドローン
介護用ロボット
産業用ロボット
生活支援
ロボット
建設ロボット
社会行動データ
Social Sensing
現実世界/Physical World
IoT(Internet of Things) ロボット
物理計測データ
Physical Sensing
情報
Informationインターネット
サイバー世界/Cyber World
Cyber Physical System/現実世界とサイバー世界が緊密に結合されたシステム
人工知能
近接通信
モバイル通信
制御
Actuation
非構造化データ
NoSQL
構造化
データ
SQL
人と人の
繋がり 行動 文章
左脳型
思考・論理
統計的アプローチ
右脳型
知覚・感性
ニューラル・ネット
アナリティクス
人工知能
ビッグ・データソーシャル・メディア
音声 動画 写真
サービスサービス サービス
クラウド・コンピューティング
コレ一枚でわかる最新のITトレンド(2)
22
データ収集
モニタリング
データ解析
原因解明・発見/洞察
計画の最適化
データ活用
業務処理・情報提供
機器制御
ヒト・モノ・コト
クラウド・コンピューティング
日常生活・社会活動 環境変化・産業活動
現実世界/Physical World
サイバー世界/Cyber World
Cyber Physical System/現実世界とサイバー世界が緊密に結合されたシステム
【図解】コレ1枚でわかる最新のITトレンド
2
Digital Disruption デジタル・ディスラプション
人間前提のビジネス・プロセスから機械前提のビジネス・プロセスへの転換
Digital Transformation デジタル・トランスフォーメーション
既存常識や既得権益の破壊・新たな価値観や秩序の創造
 「数割」から「数倍・数十倍」へ
 デジタル・データ/プロセスによる
エコシステムの創出
 人間と機械の役割についての再定義
デジタル・ツインの構築
現実世界のデジタル・データ化
IoT(モノのインターネット) ソーシャル
最適解の発見
 ヒトに寄り添う
 自律化・自動化
 未来の予測
変化への即応
ビジネス・スピードの加速
に対応したサービスの提供
DevOps人工知能(機械学習)
ヒト・モノ
クラウド・コンピューティング
現実世界/Physical World
サイバー世界/Cyber World
Cyber Physical System サイバー・フィジカル・システム
現実世界をデータで捉え、現実世界とITが一体となった社会変革を実現する取り組み
ビッグデータ
Big Data
ソフトウエア化する世界
現実世界/Physical World
自社専用データセンター 自社専用倉庫 自分のための使用
ソフトウェアによる仮想化・個別化
個別最適/プライベート
クラウド・コンピューティング 3PL(third-party logistics) シェアリング・エコノミー
データセンター
計算能力・記憶容量
データ処理機能など
共同倉庫
貨物保管・管理・物流など
荷台の
空きスペース
自家用車
と運転手
宿泊スペース
個人資産
全体最適/シェア
サイバー世界/Cyber World
ソフトウェア化するモノ
25
物理的・物質的なモノでしか実現できない部分
プログラムで制御または実現できる機能・性能
 レンズ
 シャッター
 ボディなど
 タイヤ
 エンジン
 車体など
 機体・翼
 ジェット・エンジン
 燃料タンクなど
 シャッタースピード
 発色・感度
 フォーカスなど
 ブレーキ・タイミング
 エンジン制御
 機器のオンオフなど
 姿勢や方向の制御
 エンジンの制御
 機内環境の制御など
ソ
フ
ト
ウ
ェ
ア
ハ
ー
ド
ウ
ェ
ア
 製造コストの低減
 故障要因の低減
 保守容易性の実現
できるだけ
シンプルに
 開発コストの低減
 高機能化のしやすさ
 保守容易性の実現
できるだけ
多機能に
IoT化
通信機能を組み込み
インターネットにつ
なげることでモノを
サービス化する
モジュール化
機能を標準化・部品
化することで、生産
コストの低減と保守
性を向上させる
依存集中型から自律分散型へ
26
これからのオフィス・インフラ
27
自宅 カフェ オフィス
仮想
データセンター
(NPOやコミュニ
ティ)
従来のオフィス・インフラ 新しいオフィス・インフラ
外出先
5Gネットワーク
仮想
データセンター
(所属する企業)
SaaS/PaaSなど
パーソナル・デスクトップ パーソナル
ストレージ
コーポレイト
ストレージ
クラウド・コンピューティングクラウド・コンピューティング
SaaS
コミュニケーション
コラボレーション
SaaS/PaaSなど コーポレイト
ストレージ
ネットワーク
機器
LAN
インターネット/専用線
プログラム
プログラム
プログラム
オフィス
通信速度:10Gbps
遅延時間:5ms
信頼性:99.999%
ITビジネスが直面する課題と対応
28
ITインフラの構築と運用は、クラウドや自動化ツールに代替されてゆく
 クラウド・サービスによるインフラの代替
 自動化ツールの普及
 人工知能の活用
ビジネスは競争力の強化のために、テクノロジーへの依存を高めてゆく
 効率化やコスト削減のためのITから、ビジネスを差別化するためのITへと役割が拡大
 人工知能やIoTなど、先端テクノロジーをサービスとして利用する動きが加速
 機能や性能から、それらを含むサービスやビジネスモデルにビジネス価値の重心が移動
アプリケーションの開発と運用は、ビジネス・スピードとの同期化を求める
 ビジネスとITとの一体化
 環境の変化にビジネスは即応しなければならず、ITにもまた同じスピードが必要
 SaaSやPaaS、FaaSの適用拡大、DevOpsへの対応が急務
ITビジネスの収益は、工数提供の対価から
ビジネス価値の対価へとシフトする
(ビジネス価値=スピード・変革・差別化)
新しい組合せを創る
・・・モバイルクラウドウェアラブル
オープンソーシャルビッグデータ
ITビジネスはどこへ向かうのか
29
ビジネス価値を生みだす!
ロボットIoT
人工知能
innovation
30
ネットコマース株式会社
180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-4-17
エスト・グランデール・カーロ 1201
http://www.netcommerce.co.jp/

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LiBRA 11.2020 / ITの歴史とトレンド

Editor's Notes

  1. 1960年代〜 メインフレームの登場と集中処理/業務効率や生産性の向上 1980年代〜 PCの登場によるクライアントサーバーの普及・分散処理/適用業務領域と利用者の拡大 1990年代〜 インターネットの登場による接続の広がりと拡大/企業や地域を越えた業務の連携や調整の実現 2000年代〜 ITのカンブリア大爆発・モバイル、IoT、ビッグデータ、人工知能、ロボットなどの登場と普及/テクノロジーのアンビエント化、日常への浸透   コンピューターがビジネスの現場に登場するのは、1950年代です。1964年のIBM System/360、今で言うメインフレームの登場で、コンピューターは、多くの企業で使われるようになりました。1980年代に入り、PCの登場やオフコン・ミニコンといった小型コンピューターの台頭で業務への適用領域と利用者が一気に拡大します。その後、1990年代、インターネットの登場は、システムが低コストで相互に接続する世界を作り上げてゆきます。その結果、企業や地域を越えた大規模な業務の統合や調整が実現するようになったのです。そして、21世紀を迎え、クラウドの時代へとつながってゆきます。   この辺りから、時代は、大きな転換点を迎えはじめました。インターネットの普及とクラウドの登場は、どこにいてもネットに接続さえすれば、様々なサービスを享受できる世界を実現しました。その結果、コンピューターの利用者は、これまでとは桁違いに拡大し、コンピューターの処理能力もこれまでとは桁違いの加速度で拡大するようになったのです。これをWebスケールといいます。また、2007年のiPhoneの登場と期を同じくして登場するTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアは、このWebスケールの拡大をさらに加速し、膨大なデータを生みだしました。ビッグデータ時代の到来です。   Webスケールなインターネットとクラウド、そこから生みだされたビッグデータは、IoTの普及と共にさらに拡大する勢いです。このような基盤を支えに人工知能やロボットが、私たちの日常を大きく変えようとしているのです。   今の時代を何十年か先に振り返ると、ITの「カンブリア大爆発」があったと評されているかも知れません。「カンブリア大爆発」とは、およそ5億5000万年前に、それまで数十数種しかなかった生物が突如1万種にも爆発的に増加した出来事です。様々な形態を持った生物が生まれ、食うか食われるかの競争と淘汰を繰り返しながら生物の多様性が育まれ、生態系築かれてゆきました。今の時代は、そんな時代の延長線上にあると言われています。   ITの「カンブリア大爆発」は、スマートマシーンの進化が引き金となるでしょう。そこには、これまでのテクノロジーの脈略からは、大きく逸脱した新しい常識が生まれつつあります。そして、このテクノロジーの延長線上に、これまでとは明らかに異なるIT活用の新たな可能性がどんどんと生まれてくるでしょう。そして、競争と淘汰を繰り返し、ITの新たなエコシステム=生態系を形成してゆくことになるのだろうと思っています。   私たちは、このような歴史の脈絡の中に生きているのです。ITが、未来にこれまでにも増して、大きな影響を持つ世の中になること。そして、その中で、未来を作る大きな役割を担おうとしていることに誇りを持って下さい。
  2. デジタル11950年代、コンピュータがビジネスで使われるようになりました。1964年、いまで言うメインフレームの前身であるIBM システム/360が登場し、ビジネス・コンピューターの需要が一気に拡大します。そして、大規模な計算業務のデジタル化が始まりました。 1970年代、コンピュータの用途はさらに広がります。伝票の発行や経理処理、生産現場での繰り返し作業など、定型化された繰り返し業務(ルーチンワーク)がコンピュータによって処理される時代になったのです。 1980年代、小型コンピュータやPCの登場により、コンピュータは多くの企業に広く行き渡ります。また、企業内にネットワークが引かれ、個人や部門を越えた伝票業務の流れ(ワークフロー)がコンピュータに取り込まれデジタル化されるようになりました。 1990年代に入り、PCは一人一台の時代を迎えます。そして、電子メールが使われるようになり、文書や帳票の作成をPCでこなし、それらを共有する需要も生まれました。そんな時代を背景にグループウェアが登場し、共同作業(コラボレーション)のデジタル化がすすんでゆきました。インターネットも登場し、コラボレーションはさらに広がりを見せ始めます。 2000年代に入り、FacebookやTwitterといったソーシャルメディアが登場します。また、2007年のiPhoneの登場により、誰もが常時ネットにつながる時代を迎え、ヒトとヒトのつながり(エンゲージメント)が、デジタル化される時代を迎えます。 そして、いまIoTの時代を迎えようとしています。モノが直接ネットにつながり、モノやヒトの状態や活動がデータとして集められ、ネットに送り出される仕組みが出来上がりつつあります。私たちの日常生活や社会活動に伴う全てのアクティビティがデジタル化されようとしているのです。
  3. 1970年代、コンピューターは企業や研究室の一室を占有するほど巨大で、大変高価なものであり、それを個人が所有し占有して使用することは困難な時代でした。このような時代の1974年、Intelの8ビットマイコンIntel8080が登場、1975年、これを搭載して個人向けに販売されたコンピューターが、Altair8800です。ただ、Altair8800は、CRTモニタやキーボードは使えず、パネルについているスイッチをON/OFFして二進数でメモリを操作し、結果をLEDに表示させるといった単純な計算しかできない原始的なコンピューターでした。 1976年、AppleⅠが発売されます。この製品は、購入者が組立てる必要はありましたが、Altair8800とは異なり、キーボードやCRTモニタ、記憶用のカセットテープ・ドライブも別途購入し追加すれば、様々な操作やプログラミングを楽しめるものでした。 AppleⅠは一定の成功を収め、翌年の1977年、世界で初めてキーボードや周辺機器も含め個人向けの完成品として作られたのがApple Ⅱです。現在の「パーソナル・コンピューター(PC :Personal Computer)」の直接の先祖と言えるこのコンピューターは、ホビー用途だけではなく、確定申告が必要だった米国において、表計算ソフトVisiCalcが使えることから、家庭やビジネスでも使われるようになり、AppleⅡの販売を後押しし大きな成功につながりました。 同年、CommodoreのPET2001、RadioShackのTRS-80といった製品も登場しています。我が国では、1979年、NECがPC-8001の販売をはじめています。 1981年、IBM Personal Computer 5150、略称「IBM PC」が登場します。それまで主流であった8ビット・マイクロプロセッサーよりも高性能な16ビットのIntel 8088を、さらにマイクロソフトのOSであるMS-DOSを社外から調達することで開発期間を短縮し市場参入を早めました。 IBMはビジネス用途の大型コンピューターでは圧倒的なシェアを持っていたことから、ビジネス分野に広く受け入れられることとなり、大成功を収めました。しかし、その後、IBM PC同様、IntelのマイクロプロセッサーとMS-DOSを採用した「IBM PC互換機」が登場し、その価格の安さもあってシェアを拡大、利益を確保できないIBMは2005年にPC事業をレノボに売却しています。 IBM PCおよびその互換機は、日本語対応という点においては課題も多く、NECが独自に日本語機能を強化したPC-9801を1982年に発売しました。マイクロソフトのMicrosoft BASICをベースにした時代の終盤から、MS-DOS時代を経て、Microsoft Windowsの本格的な普及期まで約15年間、PC-98シリーズは販売が続けられ、全盛期には日本国内シェア90%以上を獲得するほどの大成功を収めました。しかし、日本語に対応したIBM PCおよび互換機のためのMS-DOSとその製品仕様「DOS/V」が登場し、PC-98シリーズの差別化は難しくなり、NECもそちらに移行してゆきます。 AppleはAppleⅡ以降、大きな成功を収めるには至らなかったのですが、1984年に発売したMacintoshが成功しました。その後、Appleから離れたジョブスが立ち上げたNeXT社(後にNext Software社)を1996年に買収、そのOSであるNeXTSTEP(後に、OPENSTEP)をMac OS に統合し機能を強化したMac OS Xをベースに品揃えを拡大、利用者を増やしてゆくことになります。
  4. 「我々は、1956年の夏の2ヶ月間、10人の人工知能研究者がニューハンプシャー州ハノーバーのダートマス大学に集まることを提案する。そこで、学習のあらゆる観点や知能の他の機能を正確に説明することで機械がそれらをシミュレートできるようにするための基本的研究を進める。機械が言語を使うことができるようにする方法の探究、機械上での抽象化と概念の形成、今は人間にしか解けない問題を機械で解くこと、機械が自分自身を改善する方法などの探究の試みがなされるだろう。我々は、注意深く選ばれた科学者のグループがひと夏集まれば、それらの問題のうちいくつかで大きな進展が得られると考えている。(McCarthy et al 1955)」 1956年7月から8月にかけて、人工知能という学術研究分野を確立したダートマス会議が開催され、その開催提案書の序文に書かれていた言葉です。この提案書で、人類史上初めて「人工知能(Artificial Intelligence)」という用語が使われたとされています。 それからおよそ60年の歳月を経て、機械学習の進展やディープラーニングの登場と共に、人工知能の実用化が急速に進み、いま「第3次AIブーム」が到来しています。 振り返れば、1956年のダートマス会議をきっかけとして、「第1次AIブーム」が到来し、「人間の知能を機械でシミュレーションできる」ようにするための様々な研究が行われました。1957年には、いま話題のディープラーニングの原型とも言われるユーラル・ネットワークが考案され、翌1958年にはそれを機械に実装したパーセプトロンが登場しています。しかし、単純なゲームや迷路の探索程度以上の成果をあげることができず、このブームは終焉を迎えます。 その後、コンピュータは急速な発展を遂げます。ビジネス分野では、1951年、米・Remington Rand社がビジネス・コンピュータの先駆けとなるUNIVAC-Iの販売をきっかけとして、1964年、米・IBM社がビジネス・コンピュータの普及の原動力となったSystem/360を発表しました。同年、米・DEC社は商業的にはじめて成功したといわれるミニコンピューターPDP-8を発売しています。 1981年、米・IBM社が、当時需要を拡大していたパーソナル・コンピュータ分野にPersonal Computer 5150を投入、ビジネス分野での圧倒的地位を確立することになります。 コンピュータ性能の向上とその普及を背景に、人工知能研究に新たなブームが登場します。「第2次AIブーム」と呼ばれるこの時代、知識をルールや辞書として人間が記述し、それに基づいて知的処理と同等の結果を得ようという取り組みです。「ルールベース」と言われるこのやり方は、やがて特定分野の専門家の知識を記述する「エキスパートシステム」として成果をあげることになります。しかし、ルールを記述するのは人間であり、世の中のあらゆる事象を記述することはできず、汎用性を持たせることはできないままにブームの終焉を迎えます。 その後、コンピュータ性能は「ムーアの法則」に従うように急激な向上を果たします。また、1990年代に始まるインターネットや2007年のiPhoneの登場をきっかけとしたスマートフォンの普及により、データの流通量が爆発的に増大、これらを背景に「機械学習」の時代を迎えます。 2011年、米国の人気クイズ番組JeopardyにてIBM のWatsonがクイズ・チャンピオンに勝利し、画像認識のコンテストでカナダ・トロント大学のチームがディープランニングで圧倒的な勝利を収めるなどの出来事が注目され、その後、実用面での応用が急速に拡大、いまの「第3次AIブーム」に至っています。 今後、IoTの普及によるデータ流通量のさらなる増大、「ムーアの法則」に支えられたコンピュータに変わる新たなテクノロジーの登場により、人工知能の新たな発展の可能性が模索されています。その鍵を握るのが、量子コンピュータやニューロモーフィング・チップです。さらには、人間の脳の機能を全てシュミレーションできる汎用人工知能の研究も進んでいます。 1956年から61年目を迎えたいま、ダートマス会議の理想が完全に実現されたとは言えません。しかし、その実現に向けての取り組みは、冬の時代を乗り越えて確実にその成果をあげつつあると言えるでしょう。
  5. 【図解】コレ1枚でわかる最新ITトレンド 「トレンド(Trend)」という言葉を辞書で調べると「流行」、「傾向」、「動向」と説明されています。古典英語では、「回転する」、あるいは「向く」といった説明もありました。こんな説明を頼りに考えてみると、「過去から現在を通り越して未来に向かう流れ」すなわち「時流」という解釈もできそうです。 そう考えれば、「トレンドを知る」とは、ネットや雑誌、書籍に散在する最新のキーワードを脳みそにコピペして並べることではなさそうです。それらのキーワードの意味を理解し、お互いの関係や、それらが未来にどのようにつながってゆくのかを知ることと理解した方がいいかもしれません。 改めて整理してみると、トレンドを知るとは、つぎの言葉に置き換えることができます。 お互いの関係や構造を知ること 注目されるようになった理由を知ること そのキーワードが生みだされたメカニズムや法則を知ること これが理解できれば、テクノロジーの価値が理解できるばかりでなく、将来どのようなキーワードが注目され、定着してゆくかを読み取ることができます。 「トレンドを知る」ために、もうひとつ押さえておきたいことがあります。それは、あるテクノロジーがトレンドの中に浮かび上がってくるようになるには、そこに需要や要求、あるいは社会的要請があることです。 例えば「クラウド」も、始めに「クラウド」というテクノロジーがあったから、世の中が注目したのではありません。まずは、クラウドを求める理由が世の中にあったのです。 社会的な要請に応えようと様々なテクノロジーが生みだされ、その要請にかなうものが、生き残ってゆきます。生き残ったテクノロジーは、世の中の要請にさらに応えようとして、その完成度を高めてゆきます。そして、やがては新しいテクノロジーと融合することや、置き換えられることで、その役目を終えてゆくのです。 ですから、「トレンドを知る」とは、そのテクノロジーの背後にある社会的な要請もあわせて理解しなければなりません。単なる言葉の解釈だけでは、本当の意味も価値も理解することはできません。では、いまITはどのようなトレンドはどこに向かっているのでしょうか。 いま私たちはこれまでにないパラダイムの転換に直面しています。クラウド、人工知能、モバイル、ソーシャルといった、これまでの常識を上書きするような大きな変化が折り重なり、お互いに影響を及ぼし合っています。かつて、メインフレームがオフコンやミニコン、PCにダウンサイジングしたような、あるいは、集中処理から分散処理やクライアントサーバーに移行してきたような、インフラやプラットフォームの構成やトポロジーが変わるといった、分かりやすいものではありません。そのことが、ITトレンドの先読みを難しくしているのです。ただ、それは無秩序なものではありません。キーとなるテクノロジーは、お互いに役割を分かちながら連鎖しています。 この「ITトレンド」を1枚のチャートにまとめてみました。解説と共にご覧頂ければ、ITトレンドの全体像を俯瞰していだくことができるはずです。   感覚器としてのIoTとソーシャル・メディア 私たちの日常は、様々なモノに囲まれ、それらモノとの係わりを通して、活動しています。それらのモノにセンサーと通信機能を組み込みデータとして捉える仕組みがIoTです。 スマートフォンには、位置情報を取得するGPSや身体の動きや動作を取得する様々なセンサーが組み込まれています。私たちが、それを持ち歩き、使用することで、日常の生活や活動がデータ化されます。ウェアラブルは身体に密着し、脈拍や発汗、体温などの身体状態がデータ化されます。 自動車には既に100を越えるセンサーが組み込まれています。住宅や家電製品、空調設備や照明器具などの「モノ」にもセンサーが組み込まれ、様々な行動がデータ化される時代を迎えようとしています。 それらがインターネットにつながり、取得した様々なデータを送り出す仕組みが作られつつあります。このような仕組みが、IoT(Internet of Things)です。 IoT機能を持ったデバイスであるスマートフォンやタブレットで、私たちはFacebookやLINEなどのソーシャル・メディアを使い、写真や動画、自分の居場所の情報と共に、流行や話題、製品やサービスの評判について会話を交わしています。また「友達になる」や「フォローする」ことで、人と人とのつながり(ソーシャル・グラフ)についての情報をつくり、インターネットに送り出しています。 これらソーシャル・メディアは、スマートフォンやタブレットだけではなく、自動車や住宅、家電製品とも繋がり、持ち主に必要な情報を送り出し、また、それらを遠隔から操作できるようにもなりました。また、自動車会社や様々なサービス提供会社とも繋がり、自動車の点検や整備に関するお知らせを受け取ったり、お勧めのレストランに案内したりするなどの便宜をもたらしてくれます。 また、自動車や家電製品、工場の設備などの動作や使用状況は、IoT機能によってデータとしてメーカーに送られると、それらを分析して、保守点検のタイミングを知らせ、製品開発にも活かされます。また、機器類の多くはそこに組み込まれたソフトウエアによって制御されています。そのソフトウエアを遠隔から入れ替えることで、性能を向上させたり、機能を追加したりすることができるようになります。その一方で、そこでやり取りされるデータは、マーケティングのためにも利用されることになります。 インターネットにつながっているデバイスは、2009年に25億個だったものが2020年には300〜500億個へと急増するとされています。このように見てゆくとIoTとスマート・メディアは、「現実世界をデータ化」する巨大なプラットフォームになろうとしているのです。   神経としての「インターネット」 モノに組み込まれたセンサーは、位置や方角、気圧の変化や活動量などの物理的なデータを計測します(Physical Sensing)。また、ソーシャル・メディアでのやり取りや何処へ行ったかなどの社会的行動もデータとして取得されます(Social Sensing)。これらデータは、インターネットを介して、クラウドに送られます。クラウドには、送られてきたデータを蓄積・分析・活用するためのサービスが備わっています。そのサービスで処理された結果は、インターネットを介して、再び現実世界にフィードバックされます。 インターネットは、身近なモノ同士やモノとスマートフォンをつなぐBluetoothやNFC(Near Field Communication)などの近接通信技術、携帯電話に使われるLTE(Long Term Evolution)などのモバイル通信技術に支えられ、常時どこからでも通信できる環境が整いつつあります。そうなるとインターネットは意識されることはなく、空気のような存在となり、同時に不可欠な要素として日常の中に定着してゆきます。 2020年頃には、5G(第5世代)モバイル通信が、普及していることでしょう。その通信速度は、10GBですから、現行LTEの最高速度15oMBの約70倍になります。IoT機能によって通信できる様々なモノが、お互いに大量にデータをやり取りできるコネクテッド(つながっている)社会が実現することになるでしょう。   大脳としての「クラウド」 IoTから生みだされるデータは、インターネットを介して、クラウドに送られます。インターネットにつながるデバイスの数が劇的な拡大を続ける中、そのデータ量は、急速な勢いで増え続けています。このようなデータを「ビック・データ」と呼びます。 ビッグ・データは、日常のオフィス業務で使う表形式で整理できるようなデータは少なく、その大半は、センサー、会話の音声、文書、画像や動画などです。前者は、データをある決まり事に従って整理できるデータという意味で「構造化データ」と呼ばれています。後者は、そういう整理が難しい様々な形式を持つデータで、「非構造化データ」と呼ばれています。 ビッグ・データとして集まった現実世界のデータは、分析(アナリティクス)されなければ、活かされることはありません。しかし、そのデータの内容や形式は多種多様であり、しかも膨大です。そのため、単純な統計解析だけでは、その価値を引き出すことはできません。そこで、「人工知能(AI : Artificial Intelligence)」に注目が集まっています。 例えば、日本語の文書や音声でのやり取りなら、言葉の意味や文脈を理解しなければなりません。また、写真や動画であれば、そこにどのような情景が写っているか、誰が写っているかを取り出さなければ役に立ちません。さらには、誰と誰がどの程度親しいのか、商品やサービスについて、どのような話題が交わされ、それは何らかの対処が必要なのかというような意味を読み取らなければなりません。このようなことに「人工知能」が活躍するのです。 「人工知能」は、かつては、人間の作った規則に基づいて処理されるものが主流でした。しかし、昨今は、ビッグ・データを解析することでコンピューターが自らルールや判断基準を作り出す機械学習方式が主流になりつつあります。その背景には、コンピューターやストレージなどのハードウェアの劇的なコスト低下と高性能化があります。加えて、大規模なデータを効率よく処理するためのソフトウエア技術も開発されたことがあります。これにより、コンピューターが自身でビッグ・データを学習し、そこに内在するノウハウ、知見を見つけ出し、整理すると共に、推論や判断のルールを自分で作り出し最適化してゆき、自律的に性能を高めてゆくことが可能になりました。 例えば、チェスや将棋のチャンピオンと勝負して彼らを破ったり、米国の人気クイズ番組でチャンピオンになったりと、コンピューターが、高度な人間の知的な活動や判断に近づきつつあるのも、この機械学習の成果です。 このような人間の左脳の働きにあたる思考や論理だけではなく、右脳の働きに当たる人間の知覚や感性をコンピューターで再現できるようにもなりつつあります。このような働きを実現するために人間の脳の神経活動を模倣したアルゴリズム「ニューラル・ネット」が使われています。この技術が、ここ数年急速な進歩を遂げ、人間の能力に近づきつつある分野も生まれつつあります。 人工知能で処理された結果は、機器の制御や運転、交通管制やエネルギー需給の調整などの産業活動の制御や、ユーザーへの健康アドバイス、商品やサービスの推奨として、スマートフォンやウェアラブルを使用する一般利用者にもフィードバックされるようになるでしょう。またその人の趣味嗜好に合わせた最適な広告・宣伝にも使われるでしょう。また、手足となる「ロボット」の知識や能力の向上にも使われるようになります。 ビッグ・データや人工知能、その他の様々なサービスを提供するアプリケーションはクラウド上で動かされ、お互いに連携し、多様な組合せを生みだします。そこに新たな価値やサービスが生みだされてゆきます。   手足としての「ロボット」 自動走行車、産業用ロボット、建設ロボット、介護ロボット、生活支援ロボット、輸送ロボットなど、様々なロボットが私たちの日常で使われるようになるでしょう。また、インターネットを介して様々な知識や制御をうけ、自らの行動を状況に応じて最適化してゆきます。また、ロボットに組み込まれたセンサーによって、自分自身で情報を収集し、インターネットに送り出しています。その意味では、ロボットもまた「IoTデバイス」といえるでしょう。 ロボットは、周囲の人の動きや周辺環境をデータとして取得し、自身に組み込まれた人工知能によって、人間の操作を受けることなく自律的に制御する仕組みも備えています。 これまでのITは、情報を処理し、その結果を人や機械に伝えるしくみでした。しかし、ロボットは自らが、情報収集、処理、判断して行動します。さらに、インターネットを介してクラウドとつながり、一体となって強力な情報処理あるいは知的能力を持つことになります。 人工知能が人間の知的活動を補い、拡張してくれるように、ロボットが、人間の身体能力を補い、拡張しようとしています。一方で、これまで人間にしかできなかった労働を奪うのではないかと懸念する声も出始めています。 現実世界とサイバー世界が緊密に結合された「Cyber Physical System」 IoTやソーシャル・メディアによって、現実世界はデジタル・データ化され、インターネットによって、クラウドすなわちサイバー(電脳)世界に送りだされています。つまり、サイバー世界には、現実世界のデジタル・コピーが作られてゆくのです。このような現実世界とサイバー世界が緊密に結合された仕組みが「Cyber Physical System(CPS)」です。 このデジタル・コピーされたデータを分析し、様々な予測やシミュレーションを行えば、そのデータをもたらした個人の趣味嗜好、行動特性、あるいは行動を予測することができます。さらに、膨大な人数の人間行動や社会での出来事を調べ上げ、未来を予測することもできるようになるかもしれません。また、運送業務であれば、無駄のない最適な流通経路や配車計画を策定することができます。工場であれば、もの作りの手順や使う設備の最適な組合せをつくることができるでしょう。 つまり、現実世界では決してできない様々な実験を、「現実世界のデジタル・コピー」を使って、何度も繰り返しシミュレーションし、最適解を見つけ出そうということが可能になるのです。 IoTデバイスの台数は今後さらに増加し、ソーシャル・メディアでのやり取りも盛んになるでしょう。そうなれば、現実世界のデータは益々増大し、その粒度もきめ細かくなってゆきます。これによって、より精緻な現実世界のデジタル・コピーがサイバー世界に構築され、より緻密な予測や最適化、アドバイスができるようになります。そして、その結果の行動を再びIoTによって取得し、サイバー世界にフィードバックされることで、さらに予測や最適化の精度は高まります。 このような現実世界とサイバー世界が一体となった仕組みが、Cyber Physical Systemなのです。   ITトレンドとITビジネス このチャートでもおわかりの通り、様々なテクノロジーは、それ自身が独立して存在しているわけではありません。それぞれに連携しながら役割を果たしています。私たちは、この一連のつながりを理解して、始めてテクノロジーの価値を理解することができます。 ここに紹介したことは、必ずしも全てが現時点で実現しているわけではありません。しかし、「トレンド=過去から現在を通り越して未来に向かう流れ」からみれば、近い将来必ず実現するものです。 ITビジネスはこのようなトレンドの中にあります。冒頭でも説明したように、これまでの常識を大きく塗り替えるテクノロジーが重なり合い、影響を及ぼしあっています。この様相は、かつてとは明らかに異質な状況なのです。 また、ITとビジネスが、これまでに無く深く結びついていることもかつてとは大きく異なることです。 これまでITは、既存業務の生産性や効率を高める手段として、主に使われてきました。しかし、いま、「ITを前提に新たなビジネスを創る」時代へと、ITの役割は拡がりつつあります。これまでも銀行システムや航空券発券予約システムなど、ITを前提としたビジネスはありましたが、その多くが既存業務の効率化や機能の拡張でした。そうではない、まったく新しいビジネスや生活のあり方が、ITによって生みだされつつあるのです。 ITの適用範囲が、いま大きく拡がりつつあます。ITと日常はこれまでに無く密接に関わり、活用の選択肢を拡げつつあります。ITの民主化といっても良いのかもしれません。ここにも、これまでとはことなるITビジネスとしての可能性が広がっています。 「トレンドは時流である」 この流れに乗るか、押し流されるか、ITビジネスは、いま、そんな選択を迫られているのかもしれません。
  6. ■トレンドを知るとはどういうことか? 「トレンド(Trend)」という言葉を辞書で調べると「流行」、「傾向」、「動向」と説明されています。古典英語では、「回転する」、あるいは「向く」といった説明もありました。こんな説明を頼りに考えてみると、「過去から現在を通り越して未来に向かう流れ」すなわち「時流」という解釈もできそうです。 そう考えれば、「トレンドを知る」とは、ネットや雑誌、書籍に散在する最新のキーワードを脳みそにコピペして並べることでもなければ、その説明を辞書のように暗記することでもなさそうです。ならば、つぎのように整理してみてはどうでしょう。 過去を知る:歴史的背景や当時のニーズを知ること 現在を知る:お互いの役割や関係、構造を知ること 未来を知る:これから起こる変化や影響を知ること 特に「ニーズ」を知ることは、とても大切なことです。例えば「クラウド」は、始めに「クラウド」というテクノロジーがあったから世の中が注目したのではありません。まずはクラウドを求める理由が世の中にあったのです。そして、「クラウド」は世の中に受け入れられ生き残ってきました。そして世の中のニーズにさらに応えようとして完成度を高め、ますます注目を集めるようになったのです。やがては新しいテクノロジーと融合することや置き換えられることで、その役目を終えてゆくのです。 ニーズを知れば、その価値が分かります。ニーズの変化を知れば、やがて私たちの社会やビジネスが、どのようになってゆくかを予測することができます。そんな時間の流れを、ひとつの物語として捉えることが「トレンドを知る」ということなのです。 ■ITは、いまどこに向かっているのでしょうか? いま私たちはこれまでにないパラダイムの転換に直面しています。1990年代の前半に登場したインターネットが、ITと私たちの関係を大きく変えることとになりました。それを土台に、クラウド、人工知能、IoT(モノのインターネット)など、これまでの常識を上書きするようなテクノロジーの登場が折り重なり、お互いに影響を及ぼし合っています。 かつて大型コンピューターであるメインフレームが、小型のオフコンやミニコン、PCに置き換わったような、あるいは集中処理から分散処理やクライアントサーバーに移行してきたような、「機能や役割はそのままに、その繋がり方や役割分担が変わった」といった分かりやすいものではありません。そのことがITトレンドの理解を難しくしているのです。ただ、それは無秩序なものではありません。キーとなるテクノロジーは、お互いに役割を分かちながら大きな仕組みとして機能しています。 そんな「ITトレンド」を1枚のチャートにまとめてみました。解説と共にご覧頂ければ、その全体像を大きく見渡していだくことができるはずです。   ■現実世界をデジタル・データ化するIoTとソーシャル・メディア 私たちの住む「現実世界(Physical World)」は、様々なモノと多くのヒトで満ちあふれています。それらが、お互いに関係を持ち、影響を及ぼし合いながら社会や経済を動かしています。そんな現実世界はアナログで、連続的で途切れることのない時間と物質によって満たされています。地理的な距離はモノやヒトを隔てる絶対的な壁であり、時間は不可逆的で巻き戻すことはできません。 そんなアナログな現実世界をモノに組み込まれたセンサーによってデジタル・データとして捉えようという仕組みがIoT(モノのインターネット/Internet of Things)です。 IoTにより、「現実世界のデジタル・コピーが作られてゆく」と解釈することもできます。そんな時々刻々の状態を写し撮ったデジタル・コピーが、インターネットの向こうにあるクラウド・コンピューティングの世界、すなわち「サイバー世界(Cyber World)」に送られ、積み上げられてゆきます。 このデジタル・コピーは、「現実世界とうりふたつのデジタルな双子の兄弟」という意味で「デジタル・ツイン(Digital Twin)」とも呼ばれています。 そんなデジタル・ツインはサイバー世界のデータですから、地理的距離を一瞬にして行きでき、時間を自由に遡ることができます。それにより、 これまでには考えられなかった新しいヒトやモノ、あるいはプロセスの組合せを生みだす。 過去のデジタル・ツインに埋め込まれている事実から、ものごとの因果関係や原因を見つけ出す。 いまどうなっているかをリアルタイムに教えてくれる。 データに刻み込まれた規則性を見つけ出し、そこから未来を予見できる。 具体的には、スマートフォンには、位置情報を取得するGPSや身体の動きや動作を取得する様々なセンサーが組み込まれています。私たちが、それを持ち歩き使用することで、日常の生活や活動がデータ化されます。ウェアラブルは身体に密着し、脈拍や発汗、体温などの身体状態がデータ化されます。 自動車には既に100ほどのセンサーが組み込まれています。住宅や家電製品、空調設備や照明器具などの「モノ」にもセンサーが組み込まれ、様々な出来事がデータ化されようとしています。それらがインターネットにつながり、取得したデータを送り出す仕組みが作られつつあります。 デジタル・ツインを築く役割を担うもうひとつの仕組みが「ソーシャル・メディア」です。例えば、私たちはスマートフォンやタブレットを使い、FacebookやLINEなどで、写真や動画、自分の居場所の情報をデジタル・データにしてネットに送り出しています。また、流行や話題、製品やサービスの評判について、地域や時間を越えて様々な人たちと意見を交換しています。また「友達になる」や「フォローする」ことで、ヒトとヒトとのつながり(ソーシャル・グラフ)についての情報を生みだし、インターネットに送り出しています。 これらソーシャル・メディアはスマートフォンやタブレットだけではなく、IoTと融合して自動車や住宅、家電製品とも繋がり、持ち主に必要な情報を送り出します。また、それらを遠隔から操作できるようにもなります。さらに、自動車会社や様々なサービス提供会社とも繋がり、自動車の点検や整備に関するお知らせを受け取ったり、お勧めのレストランに案内したりするなどの便宜をもたらしてくれます。 また、自動車や家電製品、工場の設備などの動作や使用状況は、IoT機能によってデータとしてメーカーに送られると、それらを分析して保守点検のタイミングを知らせ、製品開発にも活かされます。また家庭の電球に組み込まれたセンサーがインターネットにつながれば、そろそろ電球が切れることをスマートフォンに知らせ代替製品の注文までしてくれるかもしれません。 モノは、そこに組み込まれたソフトウェアによって制御されています。そのソフトウェアを遠隔から入れ替えることで性能を向上させたり、機能を追加したりすることができるようになります。その一方で、そこでやり取りされるデータは、個々人の行動や趣味嗜好を捉え、マーケティングのためにも利用されることになります。 インターネットにつながっているモノやスマートフォン、タブレットは、2009年に25億個だったものが2020年には300〜500億個へと急増するとされています。このように見てゆくとIoTとスマート・メディアは、「現実世界をデジタル・データ化」する巨大な仕組みになろうとしているのです。   ■最適解を見つけ出す人工知能 IoTやソーシャル・メディアから生みだされるデータは、インターネットを介して、クラウドに送られます。インターネットにつながるデバイスの数が劇的な拡大を続ける中、そのデータ量は、急速な勢いで増え続けています。このようなデータを「ビック・データ」と呼びます。 ビッグ・データとして集まった現実世界のデータは、分析(アナリティクス)されなければ、活かされることはありません。しかし、そのデータの内容や形式は多種多様であり、しかも膨大です。そのため、単純な統計解析だけでは、そこにどのような意味や規則性があるのか分からず、価値ある情報を引き出せないのです。この課題を解決する手段として、「人工知能(AI : Artificial Intelligence)」や、その技術のひとつである「機械学習(ML:Machine Learning)」に注目が集まっています。 例えば、日本語の文書や音声でのやり取りなら、言葉の意味や文脈を理解しなければなりません。また、写真や動画であれば、そこにどのような情景が写っているか、誰が写っているかを解釈できなければ役に立ちません。さらには、誰と誰がどの程度親しいのか、商品やサービスについてどのような話題が交わされたのかといった意味を読み取り、それには何らかの対処が必要なのかといった解釈や判断を行わなくてはなりません。このようなことに「人工知能」が活躍するのです。 「人工知能」は、かつて人間の経験や知見を整理したルールや判断基準を登録し、それに基づいて知的(に見える)作業をこなすやり方が主流でした。しかし、昨今はビッグ・データを解析し、知的作業をおこなうためのルールや判断基準を作り出す「機械学習」という人工知能の技術を使ったやり方が主流となっています。その背景には、「機械学習」に必要なコンピューターやストレージなどのハードウェアの劇的なコスト低下と高性能化、大規模なデータから効率よく規則性や特徴を見つけ出す「人間の脳活動を参考にした」計算方式(アルゴリズム)である「深層学習(Deep Learning)」が開発されたことがあります。そのおかげで、画像認識や音声認識、翻訳などの分野では、十分に実用性を持つに至っています。 また、囲碁の世界チャンピオンに5番勝負を挑み打ち負かしたのも、そんなディープ・ラーニングの成果のひとつであり、特定の知的作業領域では人間の能力を超えるまでになっています。 そんな人工知能の技術を使い、全体としての効率を落とすことなく、個々人や個別の事情に「最適化された答え(最適解)」を見つけ出すことができるようになります。それにより、 「ヒトがITにあわせる」のではなく、「ITがヒトに合わせる」つまり、ヒトに寄り添うITが普及する。 自ら状況を学習し、判断・行動する自動化や自律化の仕組みが、人間にしかできなかったことを代わりにやってくれる。 膨大なデータから見つけ出した規則性や関係性から、未来に何が起こるかを高い精度で予見できる。   ■ビジネス環境の変化に即応するためのDevOps インターネットでつながる世の中では、どこかで起きた出来事が、直ちに世界の隅々に知れ渡り、人々の行動やビジネス判断に影響を与えます。IoTやソーシャル・メディアは、その影響力をさらに増幅しています。 人工知能が、そんなビジネス環境の変化を受け取り、ある程度の柔軟性は担保してくれるかもしれません。しかし、変化に対応して新たなビジネスの仕組みを作り出すほどの能力はなく、そこはヒトが役割を担うことになります。   ビジネス環境が変化すれば、その変化に対応して新たなビジネス・プロセスを作らなければなりません。その変化のスピードは加速しています。そのスピードに即応できることが、生き残りの条件となるでしょう。そうなれば、これまでのようにハードウェアを購入してインフラを構築し、業務要件を洗い出し、仕様書を固めてプログラムを書いているようでは対応できません。 変化に即応し、変更変化にも柔軟に対応できるアジャイル開発や、開発したアプリケーションを直ちに本番環境で実行するための開発と運用の新たな取り組みである「DevOps(DevelopmentとOperation)」は不可欠となります。そうなると開発や運用はインフラの存在を意識していては、とても迅速で柔軟な対応は実現できません。 そこで、クラウドが提供するアプリケーション・サービス(SaaS:Software as a Service)やアプリケーションに必要となる機能モジュールや開発、実行環境を提供してくれるPaaS(Platform as a Service)といった、インフラを意識せず、その運用も必要としないサービスや、開発や運用の自動化を支援してくれるソフトウェアが、DevOpsの実現を支えてくれるようになります。   ■サイバー・フィジカル・システム IoTやソーシャル・メディアによって、現実世界の出来事はデジタル・データに変換されインターネットを介してクラウドに送り出されます。このデジタル・データを受け取り処理するクラウドやそこにつながる一連の仕組みは「サイバー世界と呼ばれ、現実世界の出来事や状態のデジタル・コピー、すなわち「デジタル・ツイン」が築かれてゆきます。 このように、アナログな現実世界をデジタル・データで捉え、現実世界とITが一体となった社会変革を実現する仕組みを「サイバー・フィジカル・システム(Cyber-Physical System)」と呼んでいます。 インターネットにつながるモノの数は増加し、ソーシャル・メディアでのやり取りもますます盛んになってゆきます。そうなれば、データはさらに増え、きめ細かくなってゆき、より精度の高い現実世界のデジタル・ツインがサイバー世界に築かれてゆきます。それを使って、さらに正確な予測や最適な計画、アドバイスができるようになります。その情報を利用して現実世界が動けば、その変化は再びIoTやソーシャル・メディアによって取得されサイバー世界に送られます。いま、そんな仕組みが作られ、私たちの社会や生活の基盤になろうとしているのです。   ■ヒトを前提としないビジネス・プロセスへの転換を模索するデジタル・トランスフォーメーション サイバー・フィジカル・システムが、これまでの仕事のやり方や人と人のつながりを大きく変えようとしています。この変化を「デジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation)」と呼んでいます。トランスフォーメイションとは、形を変える、あるいは転換するという意味があります。では、いったい何をどのように転換するのでしょうか。 「人間が行うことを前提に最適化されたビジネス・プロセスから、機械が行うことを前提に最適化されたビジネス・プロセスへの転換」 ITの進化は、これまで「人間のできること」を機械に置き換え、効率化やコストの削減を実現してきました。さらに、インターネットやクラウド、IoTや人工知能の普及は、「人間にしかできなかったこと」や「人間にはできないこと」をどんどんできるようにしています。ならば、そんなITや機械の新しい常識を前提に、人間が行うのではなく、ITや機械が全てを行うことを前提に、それに最もふさわしい仕事の流れを実現してもいいはずです。どうしても「人間にしかできないこと」が残るとすれば、それは人間がやりましょうと、発想を逆転して考えてみると、これまでの常識では考えられなかったことが実現するかもしれません。これが、「デジタル・トランスフォーメーション」の目指しているところです。 この「デジタル・トランスフォーメーション」により仕事流れを変革し、「数割」ではなく「数倍/数十倍」もの変革を成し遂げようとしています。「デジタル・トランスフォーメーション」とは、こんな常識の大転換なのです。 一方で、「デジタル・トランスフォーメーション」は、これまで人間が関わることを前提にしていた仕事の流れを、人間を介さずITだけで完結する仕組みに置き換えることで、既存の業界秩序や既得権益を破壊してしまう「デジタル・ディスラプション(Digital Disruption)」を生みだすことでも覚悟しなければなりません。また、ヒトと機械の役割分担も変えてゆかなければなりません。   ■ITトレンドとこれからのビジネス 様々なテクノロジーは、それ自身が独立して存在しているわけではありません。それぞれに連携しながら、それぞれの役割を果たしています。私たちは、この一連のつながりを理解して、始めてテクノロジーがもたらす価値を理解することができるのです。 本書で紹介していることは、必ずしも全てが現時点で実現しているわけではありません。しかし、「トレンド=過去から現在を通り越して未来に向かう流れ」からみれば、近い将来必ず実現するものです。 ビジネスはこのようなITトレンドと切り離して考えることはできません。冒頭でも説明したように、これまでの常識を大きく塗り替えるテクノロジーが重なり合い、影響を及ぼしあっています。この様相は、かつてとは明らかに異質な状況です。また、ITとビジネスが、これまでに無く深く結びついていることもかつてとは大きく異なることです。 例えば、これまでITは業務の生産性や効率を高める手段として主に使われてきましたが、いまはそれだけではなく「ITを活かして新たなビジネスを創る」ことへと役割を拡げつつあります。そしてこれまでにないビジネスや生活のあり方、さらには新しい価値観や働き方が、生みだされつつあるのです。 そんな現実を過去から現在、そして未来につながる一連の物語として捉えることです。辞書の解説のように言葉の綴りを暗記しても、意味や価値は分かりません。ITトレンドを大きな物語として捉え、そこに自分たちのビジネスやテクノロジーのキーワードを当てはめて考えてみることが、ITトレンドを理解することであり、ビジネスに役に立てることができるのです。 「なるほどとは思うが、いまひとつよく分からないよ。」 そう思われていてもご心配には及びません。本書を読み進むうちに「なるほど!」とご理解いだけるはずです。 本書を読み終えた後、再び本章を読み返してください。いまは見えないITの未来と大きな可能性が見えてくるはずです。
  7. 【図解】コレ1枚で分かるソフトウェア化する世界 私たちはいま、ソフトウェアというフィルターを通して、世界を見ることが増えつつあります。 例えば、データセンターに設置されたサーバーやストレージ、ネットワーク機器などの様々なシステム資源は、Hyper-VやKVMなどの仮想化ソフトウェア、OpenStackやVMware vCloud、MesosなどのクラウドOSによって管理され、利用者は物理的な機器類を見ることも意識することもなく、必要なシステムの能力を利用できます。 このクラウド・コンピューティングという仕組みにより、物理的にはひとつの大きなシステム資源であるにもかかわらず、利用者にとっては個別の専用システムとして扱うことができます。そして、必要な時に必要なだけのシステム資源を即座に調達することができ、手間のかかる運用管理の大部分もソフトウェアに任せることができるようになりました。 このようなソフトウェアによってハードウェアや設備などの物理的実体を覆い隠し、利用者の利用目的や利用シーンに合わせて、わかりやすく見える化することで、利用者の利便性を高め、作業負担を減らし、しかも柔軟に構成や使い勝手をカスタマイズできる仕組みが、クラウド以外にも私たちの日常や社会に拡がりつつあります。 例えば、物流倉庫では、様々なお客様からの荷物を大量に預かっています。それらを予めお客様毎に物理的に区分けした場所に置くとなると、スペースに無駄が生じ、作業効率も低下します。そこで、倉庫として最も効率よく運用できるように荷物を配置し、それらをソフトウェアで管理することで、利用者にとっては、あたかも自分専用の倉庫を使っているように見える化し、運用や管理も利用者にとって、わかりやすいやり方で使ってもらうことができます。 また、個人が所有する様々な資産、例えば自家用車や自宅の空き部屋、トラックの荷台の空きスペースなどをスマートフォンから登録し、それらをクラウドで共有することで、使いたい人が、使いたいときに依頼すれば、容易に提供できる仕組みも登場しています。これなどもまた、物理的な実体をソフトウェアで管理し、利用者の便宜に応じて提供する仕組みです。 このような大きな仕組みばかりでなく、テレビや電子レンジ、カメラや時計などの家電製品や日用品も、その実体はハードウェアとソフトウェアの組合せによって実現しています。ハードウェアはソフトウェアによって、その取り扱いの難しさを覆い隠され、使いやすくわかりやすいように見える化され、操作も容易になるように工夫されています。 このように物理実体が高機能、高性能になり、その扱いが複雑で手間のかかるものになっても、ソフトウェア化されることで、使い勝手や利便性を高めつつ、その価値を最大限に引き出すことができるような仕組みが、拡がりつつあるのです。
  8. 【図解】コレ1枚で分かる未来のオフィス・インフラ   2020年、モバイル・ネットワークの通信速度は、最大で10Gb、通信環境が悪い場合でも100Mbを確保できる5G(第5世代)通信が実用化しているでしょう。セキュリティも強化され、応答時間に影響する遅延時間も大幅に短縮されます。現在の通信規格である4G(第4世代)の通信速度は、最大で100Mb、その100倍の通信速度が実現しています。企業内のネットワークと遜色のない使い勝手を手に入れることができます。 企業は、クラウド上に自社専用のサーバーや仮想データセンターを持ち、業務で使うアプリーションは、そこで稼働します。また、SaaSの利用が拡大し、ERPなどの基幹業務での利用も拡大しています。これにより、導入や運用管理に関わる負担を大幅に削減すると共に、常に新しいテクノロジーを使い、変化への即応力を高めてゆくことが可能となります。アプリケーション開発は、SaaSのAPI(アプリケーション・プログラムを他のプログラムから操作、利用する仕組み)とPaaS上の様々な機能モジュールを組み合わせて開発することが当たり前になっているかもしれません。 私たちは、クライアント・デバイスから、5Gネットワークを介して、クラウドにアクセスします。クラウドには、自分のパーソナル・デスクトップやデータ・スペースが置かれ、クライアント・デバイスは、それにアクセスするための通信機能と表示や入出力装置としての役割を果たします。ノートPC型やタブレット型、スマートフォン型など、使う場所や目的に応じて、使い分けることになるでしょう。そこにプログラムやデータを保管することはありません。クラウド上のパーソナル・デスクトップは、クラウド上の様々なサービスとシームレスに連動し、多様なサービスと膨大なデータを駆使した仕事の進め方が当たり前となっています。 クライアント・デバイスは、ペンやノートと同じように、自分の嗜好に合わせたものを個人で所有することが当たり前になるかもしれません。それは、ワークスタイルやライフスタイルの多様化がすすむためです。例えば、5G通信を介してやクラウド上のサービスを快適に使えるようになれば、自宅や外出先でもオフィスと遜色なく仕事ができるようになります。また、「Web会議」サービスを使えば、打ち合わせも可能です。さらに、非営利組織や地域コミュニティ、他の業務との副業も許容されるようになるでしょう。そうなれば、それぞれの組織の仮想データセンターやクラウド・サービスへのアクセスが必要となります。そうなると、特定の会社が支給するデバイスという考え方は、おかしな話になります。 つまり、「会社の仕事ではなく自分の仕事のひとつとして会社の仕事が存在する」と言った新しい労働についての考え方への転換が行われることを意味します。そのとき、クライアント・デバイスは、「自分の仕事の道具」として存在することになります。 こうなると、企業内のシステム・インフラは、必要ありません。社内のネットワーク、自社所有のサーバーやストレージは、資産を増やし運用管理負担をもたらすやっかいな存在となっているかもしれません。 インフラ構築の需要は、クラウド・サービスを提供する事業者からは継続するでしょう。しかし、ユーザー企業からの需要は、なくなってしまうかもしれません。一方で、このような新しい時代のインフラをどのように使いこなすか、そのためのビジネス・プロセスやワークスタイル、そして、システム環境の整備や設定といった上流のニーズは、ますます重要となります。インフラ・ビジネスは、そんな大きな転換を求められてゆくかもしれません。  
  9. ITの常識が変われば、そこに関わる私たちの仕事が変わるのは当然のことです。何がどのように変わるのでしょうか。そして営業の役割や仕事は、どのように変えてゆかなければならないのでしょうか。 ITインフラの構築と運用は、クラウドや自動化ツールに代替されてゆく クラウドの普及によりインフラ構築の物理的作業は不要となります。サーバーやネットワーク機器の販売は減少し、それらの構築作業や保守・サポートの業務が減少することは避けられません。 また、運用管理には自動化ツールの利用が拡大し、人工知能の技術を活用して、高度な業務にも人手がかからなくなります。 アプリケーションの開発と運用はビジネス・スピードとの同期化を求める ビジネス環境の不確実性はかつてないほどに高まり、変化が加速しています。ビジネスはその変化に即応できなければ、生き残ることはできません。一方で、ビジネスはITなしでは機能しなくなり、ビジネスとITの一体化は、これからもますます進んでゆきます。 ビジネス・ニーズが変われば、ビジネス・プロセスも変えなくてはなりません。そうなればITもまた変化のスピードに対応できなくてはなりません。これまで同様に要件を精査し仕様を固め、工数を積算して見積書を提出する。ユーザーがはじめて動くシステムを確認できるようになるのは半年後・・・。こんなことでは、お客様から切られてしまうのは必定です。 もちろんこれまでと同様の需要がなくなることはないにしても、仕事の量は増えず、利益を期待することはできません。「稼働率が上がっているのに利益率が下がっている」といった現実が、そのことを物語っています。 SaaSやPaaS、FaaS(Function as a Service/AWSのLambdaやMicrosoftのAzure Functionsなど)を積極的に利用し、ビジネス・スピードに同期化する取り組みがますます求められるようになります。それに伴い工数の需要は伸び悩み、利益はコストに近づいてゆきます。 また、開発と運用も「スピード」を担保できるやり方に変わらなくてはなりません。そのためには運用と開発の新しい仕事のやり方を実現する「DevOps」への取り組みは必至です。 ビジネスは競争力の強化のために、テクノロジーへの依存を高めてゆく UberやAirbnbなが、既存のタクシー業界やホテル事業を破壊するほどの影響力を持ち始めています。 これまでITの役割は、業務の効率化やコスト削減に重心が置かれてきました。しかし、ITがもたらす新しい常識が、新しいビジネス・モデルを実現し、既存常識を崩壊に追んでいます。ITの役割は、ビジネスの競争優位を生みだすための新たな思想や手段を提供しはじめているのです。 人工知能やIoTなどの先端テクノロジーは、それを実現する基盤となります。だからといって自らそれらを開発しなくても、サービスとして利用できる時代になりました。それがビジネスの変化を加速する武器となります。 ビジネスの価値は、その事業そのものの機能から、それらを含むサービスや他のプレイヤーを巻き込んだエコシステムへと、重心を移しはじめ、ITはその基盤として重要性を高めています。   「ITの価値や需要はこれまでになく高まる一方で、工数需要は減少する」 いままさにそんな変化が加速しながら進行しているのです。ならば、ITビジネスの収益は工数提供の対価から、ビジネス価値すなわち「スピード・変革・差別化」の対価へとシフトしてゆかなければなりません。 営業はこの変化に、どう対処すればいいのでしょう。 「ITやビジネスのトレンドを掴み、お客様の未来を提案できなくてはならない」 ITはビジネスに新しい常識をもたらします。それが、お客様のビジネスをどのように変え、どう向き合うべきかを提言できなくてはならないでしょう。このような仕事はコンサルタントの役割だと思っているなら、営業の仕事はなくなります。 銀行の窓口業務がATMに変わり、店舗での書籍や物品販売はAmazonや楽天にシフトしてしまいました。それでも、銀行の窓口や店舗に足を運ぶのは、「自分は、どうすればいいのか」を相談するためです。そこには、まだまだ人間の知識や創造性が求められています。それとても人工知能に置き換わってゆくとすれば、お客様の人生や生活に踏み込んだ未来へのアドバイスが人間の役割となるでしょう。 IT営業もまた同様の変化、つまりは、お客様の未来の相談相手になることが求められるでしょう。そのためには、次の3つの力を磨かなければなりません。 知識力:お客様のあらゆる質問に答えられる知識の引き出しを増やし、その鮮度を維持しつつけること。 対話力:お客様と対話でき、悩みを聞き出して整理し、何が最適なゴールなのかを見つけ出すこと。 共創力:知識力と対話力を駆使して、お客様と一緒になって解決策を見つけ出してゆけること。 カタログに書かれているような機能や性能の説明、システム構成の策定や見積金額の積算、情報の収集や整理などの「知的力仕事」は、人工知能が代わりにやってくれます。しかし、何をゴールにするのか、それを実現するためのビジネス・モデルやビジネス・プロセスはどうするかは、これからも人間の役割です。 テクノロジーの進化の流れに棹をさしても、流れる方向が変わることはなく、やがては自分たちが流されるだけです。ならば、その流れの方向を見据えて、自らの役割を変えてゆくしかありません。 「それは会社の役割で、自分は与えられた仕事をするだけのこと」 そんなあなたにお客様は大切な仕事を任せたいとは思わないでしょう。それは、自分の営業成績と直結しています。 もはや会社に自分の人生を預けても一生面倒をみてもらえる時代ではありません。会社は自分の保護者でもなく、財産でもありません。自分力という財産を持ち、会社ではなく社会での価値を高めてゆくしかないのです。営業力もまた、そんな自分の財産の一部であると心得ておくべきです。