栄 養 学 雑 誌 Vol.66 No.1 25∼29(2008)
報 文
グァバ葉抽出茶の糖類分解酵素活性 阻害ならびに消化管輸送
およびグル コース吸収抑制 による血糖値上昇抑制作用
山 内 有 信*1,稲 井 玲 子*2,東 元 稔*2
...
26 栄 養 学 雑 誌
につ い て,三 雲 らに よ る ジ ア ス ター ゼ の 消 化 に よ る デ
ン プ ンの α化 度 の 測 定11)を 応 用 して,次 の よ う な 方 法
で 測 定 した 。
1)グ ァバ 葉 抽 出...
Vol.66 No.1 27
溶解 した液(以 後 「GLT」 とす る)を,試 料採取 に要
す る時 間を考慮 して,7匹 ずつ に30分 間隔 で経 口投与
した。 ラッ トはグル コース投与 の60分 後 にエーテ ル麻
酔 下 で開腹...
28 栄 養 学 雑 誌
また,摂 取 させ た グル コースの小腸 移行 量,小 腸 移
行 率,吸 収 量 な らび に吸収 率 につ い て比 較 した結 果
(図4),全 て につ いて対 照群 に対 してGLT群 では有意
な低値 を...
Vol.66 No.1 29
も抑制 され ていた。 これ らの結 果か ら,グ ァバ葉抽 出
茶 に よる血糖値 上昇 抑制効 果 は,糖 類 分解酵 素 の活 性
阻害 は もちろんの こ と,消 化 管 運動 な ど消化 管機 能の
抑制...
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  1. 1. 栄 養 学 雑 誌 Vol.66 No.1 25∼29(2008) 報 文 グァバ葉抽出茶の糖類分解酵素活性 阻害ならびに消化管輸送 およびグル コース吸収抑制 による血糖値上昇抑制作用 山 内 有 信*1,稲 井 玲 子*2,東 元 稔*2 *1鈴 峯女 子短期 大学専攻科栄養専攻 ,*2名 古屋経済大学人間生活科 学部 Suppressive Effect of Guava Leaf Tea on the Increase in Blood Sugar Levels by Its Inhibition of Saccharolytic Enzyme Activity, Gastrointestinal Transport and Glucose Absorption Arinobu Yamauchi *1, Reiko Inai *2and Minoru Higashimoto *2 *1Suzugamine Women's College , Graduate Program for a Major in Advanced Food and Nutrition ; *2Nagoya Keizai University , Faculty of Human Life and Sciences Guava (Psidium guajava L.) has traditionally been used as a remedy for diabetes mellitus among people in the tropical and subtropical regions. To investigate the preventive effect of guava leaf tea (GLT) on the increase in blood sugar level, several studies were performed both in vitro and in vivo. An in vitro study showed some inhibitory effects of GLT on the activity of a - amylase, a group of starch - hydrolyzing enzymes. It was found that GLT markedly restrained the gastrointestinal transport and absorption of glucose in the small intestine after an oral administration of 1 g of glucose to rats. GLT also suppressed the increase in blood sugar levels induced by the glucose administration. These results suggest that the inhibitory effect of GLT on the increase in blood sugar levels may be attributable to its inhibition of saccharolytic enzyme activity, as well as of the gastrointestinal transport and absorption of glucose in the small intestine. JPn. J. Nutr. Diet.,66(1)25∼29(2008) Key words : guava leaf tea, blood sugar level, ƒ¿ - amylase activity, gastrointestinal transport, glucose absorption 緒 言 日本人 で最 もよ く飲 まれる飲料 として茶が挙 げ られ, 実際 自動販売機 や 店舗 の飲 料 コーナ ーにおい て も種 々 の茶 が販売 され てい る。 また,近 年 は単 に茶 とい って も緑茶 だけ で はな く,紅 茶,烏 龍茶,麦 茶 をは じめ, い ろいろ な葉 か ら抽 出 した液 をブ レン ドした ものな ど 抽出原料 の種類 も豊富である。 この数 あ る抽 出原料 の一 つ で あ るグ ァバ(Psidium guajava L.)は 熱帯,亜 熱帯地方 に広 く自生 し,果 実や 根 とともに葉 も生薬 と して古 くか ら糖 尿病 の民 間療 法 として用い られ ている1)。そ して,こ の民 間療法の科学 的 な裏 づ け として,グ ァバ 葉抽 出液 にお け る血糖 上昇 抑制効 果2∼6)や,糖 類分解 酵素 の活性 阻害 乱7)につい て もすで に報 告 されて いる。消 化酵 素 阻害物 質 の利 用 と して α-ア ミラー ゼ阻害物質 や α-グ ル コシダーゼ阻 害薬 な ど種 々の物 質が考 え られ るが8∼10),デ ンプ ンの 消化 吸収 阻害 に よって血糖値 や イ ンス リ ンの上昇 を抑 制 させ るこ とか ら糖尿 病 の予 防や治療 に有用 で あ る と 報告 されてお り8),抗 肥満,抗 糖尿病へ の利用が試 み ら れ,日 本で は α-グ ルコシ ダーゼ 阻害 に加 えて α-ア ミ ラーゼ 阻害作用 も持つ アカル ボース(バ イエル薬 品(株), 大阪)や,2糖 類 分解酵 素阻害作用 のあるボ グリボース (武田薬 品工業(株),大阪)が 糖 類分解酵素 阻害剤 として, 糖 尿病 治療薬 として臨床で用い られている3)。 そ こで,グ ァバ葉抽 出液 の血糖 値上昇 抑制効 果 の追 試 として,invitmで のグ ァバ葉抽 出液 の α-ア ミラーゼ 活性 阻害作用 を調べ た。 さ らに,ラ ッ トによる グル コ ース の 胃か ら小 腸へ の移 行お よび小腸 か らの吸収 の状 況について も調べ た。 方 法 実験1.グ ァバ葉抽 出茶 に よる α-ア ミラーゼの活性 阻害(in vitro) グ ァバ 葉抽 出茶 によるデ ンプ ン消 化酵素 の活性 阻害 キ ー ワ ー ド:グ ァ バ 葉 茶,血 糖 値,α-ア ミ ラ ー ゼ 活 性,消 化 管 機 能,グ ル コ ー ス 吸 収 (連 絡 先:山 内 有 信 〒733-8623広 島 市 西 区 井 口4-6-18鈴 峯 女 子 短 期 大 学 電 話082-278-1103(代)082-278-1105(ex.323) FAX 082-277-0301 E-mail arinobu@suzugamine. ac.jp) (25)
  2. 2. 26 栄 養 学 雑 誌 につ い て,三 雲 らに よ る ジ ア ス ター ゼ の 消 化 に よ る デ ン プ ンの α化 度 の 測 定11)を 応 用 して,次 の よ う な 方 法 で 測 定 した 。 1)グ ァバ 葉 抽 出茶 グ ァバ 葉 抽 出 茶 と し て,厚 生 労 働 省 よ り特 定 保 健 用 食 品 の 認 可 を 受 け た市 販 グ ァバ 茶(蕃 爽 麗 茶:ヤ ク ル ト(株),東 京)を 使 用 した 。 2)試 薬 (1)基 質 液(8%可 溶 性 デ ン プ ン) 可 溶性 デ ン プ ン(片 山 化 学 工 業(株),大 阪)16gを 100m1程 度 の 蒸 留 水 に浮遊 させ,撹 拌 し な が ら透 明 に な る ま で 沸 騰 水 で 湯 煎 して徐 々 に 加 熱 し,冷 却 後 蒸 留水 を加 えて200mlに 定 容 して 作 成 。 (2)酵 素 液(5%α-ア ミラ ー ゼ液) 麦 芽 由来 と微 生 物 由 来 を配 合 した粉 末 α-ア ミラ ー ゼ(ジ ア ス ター ゼ:片 山化 学 工 業(株) ,大 阪)5g を蒸 留 水100mlに 溶 解 した もの(以 後 「対 照-E」 とす る)と,グ ァバ 葉 抽 出 茶100mlに 溶 解 し た も の(以 後 「GLT-E」 とす る)を 作 成 。 な お,α-ア ミ ラ ー ゼ(ジ ア ス タ ー ゼ)の 至 適 pHは5.0,安 定pHは5.0∼8.0で あ り,今 回 作 成 した 酵 素 液 のpHは,対 照-E=5.58,GLT-E= 5.50と 安 定pH範 囲 内 で あ っ た。ま た,0.1N塩 酸 あ る い は0.1N水 酸 化 ナ トリ ウ ム 溶 液 を 用 い て, pH5.0∼5.8で の酵 素 活 性(マ ル トー ス 生 成 量)を 調 べ た結 果,図1に 示 す よ うに,pH5.4∼5.8の 範 囲 で は,pH5.0と 比 較 して 活 性 が 低 い もの の,あ る 程 度 のpHの 範 囲で 安 定 した活 性 が 得 られ た こ とか ら,今 回 は,対 照-Eに0.1N塩 酸 を加 え る こ とで GLT-Eと 同 じpH5.50に 調 整 して使 用 した。 (3)1N塩 酸 市 販 の1N塩 酸(ナ カ ライ テ ス ク(株),京 都)を 使 用 。 (4)0.1N(0.05mol/l)ヨ ウ素 溶 液 市 販 の0.1Nヨ ウ素 溶 液(ナ カ ライ テ ス ク(株),京 都)を 使 用。 (5)0.1N水 酸 化 ナ トリウ ム溶 液 市 販 の0.1N水 酸 化 ナ ト リウ ム溶 液(ナ カ ラ イ テ ス ク(株),京 都)を 使 用 。 (6)0.1Nチ オ硫 酸 ナ トリウ ム溶 液 市 販 の0.1Nチ オ硫 酸 ナ トリウ ム溶 液(ナ カ ラ イ テ ス ク(株),京 都,factor=1.004)を 使 用 。 (7)10%硫 酸 液 50%硫 酸 液(ナ カ ラ イ テ ス ク(株),京 都)を5倍 希 釈 して作 成 。 3)手 順 (1)18個 の 三 角 フ ラス コ を3つ に分 類 し,50mlの 図1α-ア ミラ ー ゼ 液 のpHと デ ンプ ンの 消 化 (マ ル トー ス生 成 量) t検 定 基 質液 をそれ ぞれ に分 注 し(A:対 照用,B: GLT用,C:盲 検用),37℃ に設定 した恒 温槽 で温 め た。 また,酵 素 液 も基 質液 と同 じ温 度 に なる ように同様 に恒温槽 で保温 した。 (2)対 照 用 のA液 に対 照-E,試 験 用 のB液 に GLT-Eを そ れぞ れ5m1加 え,正 確 に5分 間 37℃ で軽 く撹拌 しなが ら温 め,5分 経 過後す ば や く2mlの1N塩 酸 を加 えて酵素 反応 を停止 さ せ た。盲検用 のC液 は,2mlのIN;塩 酸 を加 えて 撹拌後 に蒸留水ベースの酵素液5mlを 加 えた。 (3)A, B, C各 液 それぞ れ をメス フラス コに蒸 留水で洗い込み,100mlに 定容 した。 (4)A, B, C各 液それぞれの希釈液 を10mlず つ 6つ の三角 フラス コに分注 し,10mlの0.1Nヨ ウ 素溶液,18m1の0.1N水 酸化 ナ トリウ ム溶 液 を 加 え,正 確 に15分 間室温 に置 き,15分 経過 後 すばや く2m1の10%硫 酸 を加 えた。 (5)0.1Nチ オ硫 酸ナ トリウム溶液で滴 定 し,次 式 に よってマル トース量 を算出 した。 マル トース量(mmol)=チ オ硫酸 ナ トリウム溶 液 規定 度(1.004)×(盲 検 滴 定ml-試 料滴 定 ml)×0.5mmol 4)統 計学的分析 対照-EとGLT-Eに おけるマ ル トース量の母平均の 差 の検定 は,等 分 散の検定 を行 った上 で,対 応 の ないt 検定で行った。 実験2.糖 の 胃か ら小 腸移 行量 お よび小 腸 か らの吸 収量 の比較(ラ ッ ト) 1)方 法 8週 齢Wistar系 雄性 ラッ トに,グ ルコース1gを 蒸留 水5mlに 溶解 した液(以 後 「対照[と す る)ま た はグ ァバ葉抽 出茶(蕃 爽麗茶:ヤ クル ト(株),東京)5mlに (26)
  3. 3. Vol.66 No.1 27 溶解 した液(以 後 「GLT」 とす る)を,試 料採取 に要 す る時 間を考慮 して,7匹 ずつ に30分 間隔 で経 口投与 した。 ラッ トはグル コース投与 の60分 後 にエーテ ル麻 酔 下 で開腹 し,下 大 静脈 か ら採血 した後,直 ちに 胃幽 門部 を結紮 し,引 き続い て回腸終 点部 と十二指腸 側 を 結 紮,最 後 に 胃噴 門部 を結 紮 して,胃 と小 腸 に分 けて それぞれ摘 出 した。 胃残存 内容物 を採取 す るため,胃 の一部 をは さみ で 切 り,蒸 留水 で洗 いなが ら内容物 を採取 し,メ ス フラ ス コで100mlに 調整 した胃内容物試料原液1mlを 採取 し5倍 希 釈 して 胃内容物試料 液 とした。 また,小 腸 は 十二指腸 側か ら蒸留水 を注 入 しなが ら,回 腸末端 部か ら内容物 を採取 し,メ ス フラス コで100mlに 調 整 した 小腸 内容物試料 原液 をその まま試料液 とした。 そ れぞ れ の内容 物試 料 液 の糖 濃 度お よび血糖値 を, 市 販 の血糖 値測 定 キ ッ ト(グ ル コースCⅡ テス トワコ ー:和 光 純薬(株) ,東 京)を 用い て測 定 し,胃 か ら小腸 へ の移行 量(1g-胃 内残存糖 量),小 腸 か らの吸収量 (胃か ら小腸への移行量-小 腸内残存量)を 算出 した。 2)統 計学 的分析 小 腸移 行量,小 腸 移行率,吸 収 量,吸 収 率 な らび に 経 口糖 負荷60分 後血糖 値 につ いて,群 間の母平均 の差 の検 定は,等 分散の検定 を行 った上 で,対 応 のないt検 定 またはWelch検 定で行 った。 結 果 実験 真.グ ァバ葉抽 出茶 に よる α-ア ミラーゼの活性阻 害(in vitro) α-ア ミラーゼ を蒸 留水 に溶解 した酵素 液(対 照-E) とグ ァバ 葉抽 出茶 に溶解 した酵素 液(GLT-E)に よる デ ンプ ンの消化 に よる生成 マ ル トース量 を比較 した結 果,図2に 示 す ように対 照-Eの2.70±003mmolに 対 してGLT-Eで は2.14±0.02mmolと 有 意 な低 値 (ρ<0001)を 示 した。 実験2.糖 の 胃か ら小腸 移行 量 お よび小 腸 か らの 吸収 量の比較(ラ ッ ト) 蒸 留水 に溶解 した グル コース液(対 照)を 経 口投 与 した ラ ッ トとグ ァバ葉抽 出茶 に溶解 した グル コース液 (GLT)を 経 ロ投 与 した ラ ッ トの経 口糖 負荷60分 後の 血糖 値 を比 較 した結果(図3),対 照群 の237.0±26.7 mg/dlに 対 してGLT群 で は195.3±49.5mg/dlと 有意 な低値(p<005)を 示 した。 図3 ラ ッ トに お け る グ ル コース(19)経 口投 与 60分 後 の血 糖 値 平均値 ±標準偏差,Welch検 定,*p<005 図2 デ ン プ ンの 消 化(マ ル トー ス 生 成 量)の 比 較 平均値 ±標 準偏差,t検 定,***p<0001 図4 ラ ッ トにお け る グ ル コ ー ス(1g)経 口 投 与 60分 後 の小 腸 移 行 お よ び 吸収 の状 況 平均値 ±標準偏差 対照群(n=7),GLT群(n=7), t検 定(小 腸移行量お よび吸収 量)・Welch検 定(小 腸 移行率 お よび吸収率)*p<005,**p<001 (27)
  4. 4. 28 栄 養 学 雑 誌 また,摂 取 させ た グル コースの小腸 移行 量,小 腸 移 行 率,吸 収 量 な らび に吸収 率 につ い て比 較 した結 果 (図4),全 て につ いて対 照群 に対 してGLT群 では有意 な低値 を示 した。 考 察 現 在の わが国 は高齢社会 となっ た ことに加 えて,生 活 習慣病 の罹患者 や予備群 に位 置す る人 々が急増 して いる。 と くに生活 習慣病 に 関連 した問題 の中で,厚 生 労働 省 の患 者調査 デ ータか ら中村 らに よって解析 され た糖 尿病有 病率 の変化 と将来推 計 に よる と,全 年齢合 計 の有病率 は男女 ともに2008年 に は1993年 の2倍 に な ると報告 され てい る12)。この よ うに,急 速 な糖尿 病 罹 患者 あるい は罹 患 の疑 わ れる人 の増 加 は,今 のわが 国における深刻 な健康問題の一つで ある。 グ ァバ葉 抽 出液 は,ヒ トや動 物 の実験 に よって血糖 上昇 抑制効 果が報 告 されて いる2∼6)。 この血糖 値 の上 昇抑 制効 果の要 因と して,糖 類 分解酵素 の活性 阻害3,7) が 報告 されてお り,と くに 出口 らの実験3)で は,グ ァ バ葉抽 出液が唾液お よび膵液 の α-ア ミラーゼ活性 だけ でな く,小 腸粘膜 に存在 す る二糖類 水 解酵素 の活性 を 阻害す る ことに よ りデ ンプ ン,ス クロース,マ ル トー スか らブ ドウ糖へ の分解 を抑制 し,そ の結果腸 管 か ら のブ ドウ糖 の吸収 を遅延 あ るいは抑制 す る ことが考 え られ るこ とを報告 している。今 回の酵 素活性 阻害 の確 認 実験 の結果,グ ァバ葉抽 出茶 が α-ア ミラーゼの活性 を阻害す る こ とを確 認 で きた。 これ らの こ とか ら,糖 類1分解酵 素の活性 阻害 に よって血糖値 の上昇 を抑制す る可能性 が高 いこ とを再確 認 したが,興 味深 い ことに グ ァバ葉抽 出茶 の血 糖上昇 抑制効 果 は,糖 類分解 酵素 の活 性 阻害 の効果 だ けでは ない こと も見 出す ことが で きた。 当初,我 々 はグ ァバ葉抽 出茶 の血糖上 昇抑制効 果 は 糖類 分解酵 素 の活性 阻害 に よる もの であ り,胃 か ら小 腸へ の 内容 物 の物 理的 な移 行量 や小腸 か らのグル コー スの吸収 な ど消化 管機能 につ いて は とくに関与 して い ない もの と考 えてい た。 その確 認 を 目的 と して,消 化 の必要 の ない グル コース 液 を ラ ッ トに経 口投 与 して, 胃か ら小腸 へ の内容 物 の移 行量測 定,な らびに小腸 で の吸収量 の測定実験 を行 った。 その結果,も はや消化 す る必要 のない グル コースで あるに も関わ らず,グ ル コース液 の経 口投与60分 後の血糖値 は,グ ァバ葉抽出 茶 を摂取 させ た群 で有意 な低 値 を示 した。 さ らに,胃 か ら小 腸へ の 内容物(グ ル コース)移 行 お よび小腸 か らの グルコース吸収 量 も有 意 な低値 を示 した。 この こ とか ら,内 容物 の移 送や吸 収機能 な ど消化 管の機 能 を 抑制 す る作 用 も併せ 持 ち,そ の効 果 によって血糖値 の 上昇 抑制 に関与 して いる可能 が考 え られ た〇実 際,グ ァバ は糖尿 病 だけで な く生薬 と して下痢止 め に も用 い られ てい るとされてい る1,13,14)。この科 学的根 拠 として, Lozoyaら は,急 性 下痢 疾患 の患者 ヘ グ ァバ 葉抽出物 を 経 口投 与 した実験 に よって,グ ァバ葉 抽 出物が腸 の痙 攣 を抑制 し腹痛期 間を減少 させた ことを報告 している14)。 また,Almeidaら は,マ ウス を用 いた実、験で グ ァバ葉 等 の抽 出液 は,水 分 の吸収 を増 大 させ る結果,消 化 管 の推進 力(胃 腸の物 質輸送 機能)が 低下 す る ことで抗 下痢効果 の潜在性 を示唆 してい る13)。今 回の実験 で は, 消化管 の動 きその ものや,消 化管 内容物 の水 分量 を測 定 していないが,今 回認 め られたグル コース投与60分 後 の血糖 上昇抑 制効 果 に,胃 か ら小 腸へ の 内容 物移行 量 の減 少,す なわ ち消 化管 の動 きその もの に よる物理 的要 因 も関与 して いる可能性 が充 分 に考 え られた。 そ の一方 で,Abreuら は,グ ァバ葉抽 出物 水溶 液の摂取 が イオ ン輸送 に関係す る膜構 造 を変 化 させ るこ とを報 告 して い る15)。 この こ とか ら,グ ァバ 葉 抽 出 液 は, SGLT1に よるナ トリウム イオ ンとグル コースの共輸送 に よって吸収 され るグル コースの二 次性能動 輸送系 に 何 らかの影響 を及 ぼ している可能性 も予想 され る。 グル コース の 胃か ら小腸 へ の移行量 お よび小 腸 か ら の吸収 を調 べ るため に用 い た実 験手法 は,そ の過程 で 誤 差が生 じやす い こと もあ るが,ラ ッ トへ のグル コー スの経 口糖負荷 試験 において,投 与60分 後 の血糖値 の 上昇 が有意 に抑制 され た要因 として,と くに消化 管 の 推 進力 の低 下 に よる ものか,小 腸 にお ける吸収 能力 の 低 下 による もの か,あ るい はそ の両方が 関与 してい る のか につ いて詳細 を判断す るこ とがで きない。 この要 因につい て明 らか にす るため には,今 後 さらに,例 え ばX線 撮影 な どで リアル タイム に消化 管の動 きを確 認 す るな ど,異 な った様 々 な視 点か らの検討 が必要 であ る。 しか し,今 回の実験の結 果,少 な くともグ ァバ 葉 抽 出液 の血糖上 昇抑制 効果 は,消 化酵 素 の活 性 阻害 に よる効 果 だけで はな く,グ ァバ 葉抽 出液 に よる消化管 の運動 その ものの抑制作 用や小 腸 におけ るグル コース の吸収能力 の低下 も関与 してい ることが示 唆 された。 ま と め グ ァバ 葉抽 出茶 の血糖 上昇抑 制 な らび に糖類 分解酵 素の活性 阻害 について追試 した。その結果,in vitro試 験 で α-ア ミラーゼ によるデ ンプ ン分解 の阻害 も確認 さ れた。 さ らに,ラ ッ トを用 いた グル コースの経 口投 与 60分 後 の胃か ら小腸へ の移 行お よび小腸 か らの吸収 を 調 べた結果,消 化 の必要が ない グル コー ス を投与 した に も関わ らず60分 後 の血糖値 は有意 な低値 を示 し,グ ル コース の胃か ら小腸 へ の移 行お よび小 腸 か らの吸収 (28)
  5. 5. Vol.66 No.1 29 も抑制 され ていた。 これ らの結 果か ら,グ ァバ葉抽 出 茶 に よる血糖値 上昇 抑制効 果 は,糖 類 分解酵 素 の活 性 阻害 は もちろんの こ と,消 化 管 運動 な ど消化 管機 能の 抑制 も関与 している可 能性 が考 えられた。 文 献 1)円 山八 州彦,秋 田秀 秋,松 田玲 子,久 保 道徳, 波 田野力,奥 田拓男:グ アバ(Psidium guajava L.)の 研 究(第1報)グ アバ葉 の抗糖 尿病 薬理活性 とその 有効成分 の研 究(そ の1),生 薬学雑 誌,39,261-269 (1985) 2 ) Cheng, J. T. and Yang, R. S.: Hypoglycemic effect of guava juice in mice and human subjects, Am. J Chin. Med., 11, 74-76 (1983) 3)出 ロ ヨリ子,長 田邦 子,内 田和 美,木 村 広子, 芳川 雅樹,工 藤辰幸,保 井 久子,綿 貫 雅章:グ ァバ 葉 熱水抽 出物 のdb/dbマ ウス におけ る抗糖尿 病効果 お よ び ヒ ト飲用 試験 に よる食後 血糖値 上昇抑 制効 果,日 本 農芸化学会誌,72,923-931(1998) 4 ) Mukhtar, H. M., Ansari, S. H., Au, M., Naved, T. and Bhat, Z. A.: Effect of water extract of Psidium guaj ava leaves on alloxan -induced diabetic rats, Pharmazie, 59, 734- 735 (2004) 5 ) Oh, W. K., Lee, C. H., Lee, M. S., Bae, E. Y., Sohn, C. B., Oh, H., Kim, B. Y. and Ahn, J. S.: Antidiabetic effects of extracts from Psidium guajava, J. Ethnopharmacol., 96, 411- 415 (2005) 6 ) Mukhtar, H. M., Ansari, S. H., Bhat, Z. A., Naved, T. and Singh, P.: Antidiabetic activity of an ethanol extract obtained from the stem bark of Psidium guajava (Myrtaceae), Pharmazie, 61, 725- 727 (2006) 7)井 上 良 計,細 見 尚 美,辻 田 隆 広,奥 田 拓 道:グ ァ バ 葉 抽 出 エ キ ス の α-ア ミ ラ ー ゼ イ ン ヒ ビ タ ー の 作 用 に つ い て,New Food Industry,36,1-7(1994) 8)Puls, W. and Keup, U.: Influence of an amylase inhibitor (BAY d 7791) on blood glucose, serum insulin and NEFA in starch loading tests in rats, dogs and man, Diabetologia, 9, 97-101 (1973) 9 ) Walton, R. J., Sherif, I. T., Noy, G. A. and Alberti, K. G.: Improved metabolic profiles in insulin - treated diabetic patients given an alpha -glucosidehydrolase inhibitor, Br. Med.J., 1, 220-221 (1979) 10) Gerard, J., Luyckx, A. S. and Lefebvre, P. J. : Improvement of metabolic control in insulin depend- ent diabetics treated with the alpha - glucosidase inhibitor acarbose for two months, Diabetologia, 21, 446-451 (1981) 11)岩 尾 裕 之:デ ン プ ンの 定 量:改 訂 食 品分 析 ハ ン ドブ ッ ク/小 原 哲 次 郎,鈴 木 隆 雄,岩 尾 裕 之 監 修,林 淳 三,印 南 敏,菅 原 龍 幸 編,pp.227-229(1982)建 吊 社,東 京 12)中 村 好 一,大 木 い ず み,谷 原真 一:糖 尿 病 患 者 有 病 率 ・患 者 数 の将 来推 計,日 本 衛 生 学 雑 誌,52,654 -660(1998) 13) Almeida, C. E., Karnikowski, M. G., Foleto, R. and Baldisserotto, B.: Analysis of antidiarrhoeic effect of plants used in popular medicine, Rev. Saude. Publica., 29, 428-433 (1995) 14) Lozoya, X., Reyes - Morales, H., Chavez - Soto, M. A., Martinez - Garcia, M. C., Soto - Gonzalez, Y. and Doubova, S. V.: Intestinal anti - spasmodic effect of a phytodrug of Psidium guajava folia in the treatment of acute diarrheic disease, J. Ethnopharmacol., 83, 19- 24 (2002) 15) Abreu, P. R., Almeida, M. C., Bernardo, R. M., Bernardo, L. C., Brito, L. C., Garcia, E. A., Fonseca, A. S. and Bernardo - Filho, M.: Guava extract (Psidium guajava) alters the labelling of blood constituents with technetium - 99m, J. Zhejiang Univ.Sci. B., 7, 429 -435 (2006) (受付:平 成19年5月23日,受 理:平 成19年10月20日) (29)

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