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ゲーミフィケーションをたよりにした保育行事デザインの可能性

阿部 学 [敬愛大学]
コンピュータ利用教育学会 2017 PCカンファレンス
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
2017年8月6日 分科会 口頭発表

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ゲーミフィケーションをたよりにした保育行事デザインの可能性

  1. 1. ゲーミフィケーションをたよりにした 保育行事デザインの可能性 コンピュータ利用教育学会 2017 PCカンファレンス 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス 2017年8月6日 分科会 口頭発表 阿部 学 [敬愛大学] m-abe@u-keiai.ac.jp
  2. 2. 1. はじめに
  3. 3. • 2010年代頃から,
 ゲーミフィケーション(Gamification)に注目が集まる。
     ▽
 コンピュータ・ゲームの中で特徴的に培われてきた
 ノウハウを現実の社会活動に応用する行為[井上2012] • 教育分野でのゲーミフィケーション研究動向は?
  ▷ 初等教育以降,様々な事例がある。
      e.g. デジタル教材の開発[藤川2016]
         教師とクリエイターの思考フレームの分析[阿部・塩田2013]
         大学のFD研修[ 2013]
         教師への意識調査[eラーニング戦略研究所2012] 1.1. ゲーミフィケーションと教育
  4. 4. • 他方,「保育実践×ゲーミフィケーション」はみられない。 • しかし,「遊び」を中心とする保育と
 ゲーミフィケーションの関連は深いのではないか?
        ※ 保育←カイヨワ→ゲーミフィケーション • そもそも,保育実践を捉える難しさがある中で……
  ▷形態が多様,言葉が多義的に解釈されがち[阿部2017] • これまで保育研究とは接点のなかったゲーミフィケーションと いう概念をたよりにすることで,保育実践の課題が見えやすく なったり,方法論が分かりやすくなったりしないだろうか? 1.2. ゲーミフィケーションと保育
  5. 5. 2. 保育行事への批判的まなざしと
 ゲーミフィケーション
  6. 6. • 今回は,「行事」に注目する。
       ▽
 保育者が予め活動(遊び)をデザインし,できるだけ強制感を感 じさせないよう工夫しながら,子どもを参加させていく(べき) • 保育者≒クリエイター,子ども≒プレイヤーとまなざし,
 考察することはできないか? • 行事がゲームとしてうまくデザインされていれば,子どもは楽し く遊びこめる。子どもに強制感が生じるなどしていれば,その行 事のデザインには改善の余地がある。
  ▷ゲームデザインのノウハウが役立つのでは? 2.1. 保育行事への注目
  7. 7. • そもそも,保育行事デザインの方法論が示されることは少 ない。
  幼児教育の方法についての教科書 ▷行事の記述少,あるとすれば雑誌
 「うまく保育として展開できるならば」意義はある[無藤2009]
  辞書▷「首かざりに入れてある大きなキラキラと光る珠のようなもの」[菅田2008] • 行事について考えづらい風潮も?
  「行事に合わせてカリキュラムを組むなんて,保育者として怠慢」
  「行事に振り回されてはいけない」[柴田2014] • ゲーミフィケーションという新たな言葉を用いることで, 適切なデザイン方法を探りやすくなるのでは? 2.2. 保育行事への批判的まなざし
  8. 8. 3. 研究の方法とA幼稚園
  9. 9. • A:うまくいっていない行事をゲーミフィケーションの観点か ら改善していく方法。
  ▷前述の背景もあり第一歩としてはハードル高…… • B:うまくいっている行事とゲーミフィケーションとの接点を 参与観察等によって探る。
  ▷今回はこちらを採用。ある園の保育行事を追う。 • 千葉県内にあるA幼稚園をフィールドとする。創設60年,アー トやデザインの発想に依拠した,創意工夫ある独自の保育実践 • 「お泊り保育」(後述)に注目。発表者は2008年∼関与。
 2016年∼本研究のための参与観察,記録(2017年現在継続) 3.1. 研究の方法
  10. 10. • 日常の保育については詳細な分析がある[新垣2006,阿部2017] • 非日常とも言える行事については手つかずである。が, 行事にも子どもが遊びこめるようデザインされている
 (ように見える) • 一方で,ノウハウ・ワザが明文化される機会に乏しく,
 若手への伝達が近年の課題にもなっている。 • 実践を語る「言葉」を探ることは,A幼稚園にとっても 意義があるのでは? 3.2. A幼稚園の保育
  11. 11. 写真
  12. 12. 1. ゲーミフィケーション を保育実践にも 2. 保育行事 に新しい光をあてる 3. A幼稚園
 の実践を語るために A幼稚園の「お泊り保育」 を参与観察し, ゲーミフィケーションと の関係を考察する
  13. 13. 4. A幼稚園の「お泊り保育」
  14. 14. 写真
  15. 15. 5.「お泊り保育」はゲームか?
  16. 16. • A幼稚園では,慣例として,この方法を続けてきている。
 しかし,「勘所はどこなのか?」「どういう意義があるの か?」という問いに明確に答えるのは難しい。 • 大まかには,ゲーム性があるように思える。
 「ゲームっぽければOK」というより細かく,
 ゲームとしてまなざすことは可能か? • ゲームおよびゲーミフィケーションの定義や説明は多様
  ▷ここでは,以下の論者の観点を取り上げる。
    マクゴニガル[2011] スーツ[2015]
    井上[2012] その他 5.1. 行事をゲームとしてまなざす
  17. 17. 1. ルール
 前)手紙のやりとりをしながら,ミッションに答えていく。
 後)限られた道具や範囲で,アイテムを探す。
 ▷明確。その範囲を逸脱しようとする子はいない。「しつけ」的ルールではない。 2. ゴール
 前)出会う。後)トラブルを解決しイベントを発生させる。
 ▷明確。「しつけ」的なゴールは伝えられない。
  この世界観の中で,クエストとしてのゴールが共有される。RPG的? 3. フィードバック・システム
 前)必ず手紙が帰ってくる。 後)森での活動に応じて細かな演出。
 ▷あてのない・行き当たりばったりの冒険や旅との違い。 4. 自発的な参加
 前)必ずしも全員で活動しなくてもよい。
 後)後半になるにつれ,基本的には全員が興味津々となっている 5.2. マクゴニガル[2011]の4つの特徴
  18. 18. •「ゲームプレイとは,
  不必要な障害物を自ら望んで克服しようとする試みである」 •ルールや設定を疑う子はほとんどいない。前半の参加は強制ではない。
 手間のかかる準備をしている(保)
 ▷他の方法が早い,正体をあばけば早い(子),
  しつけたり強制さたりすれば早い(保)とは考えない。
  不必要な障害物を好んで乗り越え(させ)ようとしている。 •疑う子も少人数いる。
 ▷「ふざけ屋」→いる。「いんちき屋」「荒らし屋」→いない。
  怪しくても楽しむ。設定にのってあげる。
  「遊びの中間形態」[加用1994]の具体的なデザイン方法か。 5.3. スーツ[2015]のゲーム定義
  19. 19. 1. ほどよい挑戦の感覚をつくる仕組み
 ▷アンロック…少しずつ主の正体や状況が分かってくる
 ▷レベルデザイン…簡単な手紙(記号)の解読から複雑な内容へ
 ▷難易度の自動調整…一般的な行事より長期のため,子どもの反応を見ながら修正可能 2. フィードバックをより強く演出する仕組み
 ▷短さ…基本的に短く頻繁だが,待ちの時間も重要
 ▷バッジ…ミッションを達成すると,何かしらのアイテムが付与
 ▷錯覚的演出…子どもだましでなく,つくりこむ。アイテムをデザインする。
        イベントを光や炎などで派手に演出。 3. フィードバックのバリエーション
 ▷緩急・イベント…他愛もない話題でのやりとりや安心の中で,次のイベントが発生 4. メカニクスの調整
 ▷ズルの応用と阻止…ズルを実際にしようとする子がいない。(夜の祭り,宿泊時) 5.4. 井上[2012]のゲームデザイン手法
  20. 20. •「世界観」「物語」「ストーリー」「クエスト」
 ▷アクション性やソーシャル性といった要素より,
  アドベンチャー,RPGの要素が強い行事(ゲーム)だと言える •「可視化」
 ▷アイテムの見せ方にこだわりがある。
 子どもだましではなく,しつけこむためのアイテムでもない。 •「ランキング」「リーダーズボード」
 「ポイント」「コレクション」「アバター」
 ▷ほとんど関連のない要素もあるため,応用の際には注意。
  あくまでこの「行事」なりのゲーム的特徴があるということ。 5.5. その他の観点
  21. 21. 6. 総合的考察
  22. 22. •一例ではあるものの,A幼稚園の「お泊り保育」とゲーミ フィケーションとの関連を見てきた。 •これまで,保育行事とゲーミフィケーションとの関連を考察 する研究はなかったが,いくつかの点において,ゲーム的な 特徴があると考察された。 •「なぜこういう行事をやってるのだろう?」
 「強制型の行事を見直したいけど,何から手をつければ…」
 ▷言語化しづらかった事柄を明るみにすること(に近づくこ と)ができたのでは。 6.1. 「お泊り保育」のゲーム性①
  23. 23. •「不必要な障害物」を設定すること
 ▷多くの園で,行事が効率化,短縮化,マニュアル化される傾向にあるるが, 一見,教育上は不真面目で無駄に思えるような細かい要素が,その行事によ い影響を与えているのでは。ゲームの言葉を用いることで,それらが明るみ になるのでは。 •ゲームシンキング,クリエイターの思考で[ワーバックら2013][阿部・塩田2013]
 ▷「じゃあ手紙を出せばいいのね」という単純な理解をするのではなく,ゲー ムクリエイターのような思考(問題解決,チームワーク,独創的な考えに報 いる,ミスをベースにしたデザイン…)をしながら,行事をデザインするこ とが重要であるはず。単におもしろそうな要素を足し算すればよいわけでは ない。保育者の思考フレームはいかなるものか。 •ゲーミフィケーションについて考えるということは,上記のような事柄につ いて再考を迫るということだろう。 6.1. 「お泊り保育」のゲーム性②
  24. 24. •今回の考察を基盤として,他の行事や,他のゲーム要素を 取り上げての考察を重ね,保育行事とゲーミフィケーショ ンとの関係を整理していく。 •「行事がうまくいっていない」場合に,ゲーミフィケーショ ンの観点から,問題点を洗い出し,改良するという実践的 研究を行う。eg. 有効なフィードバックを返せているか? •最終的には,安易なマニュアル化に注意しながら,ゲーミ フィケーションを援用した保育行事デザインの枠組みの構 築を目指す。 6.2. 今後へ向けて
  25. 25. 付記 •本研究は,公益財団法人科学技術融合振興財団の助成による。
  26. 26. •阿部学: 子どもの「遊びこむ」姿を求めて ,白桃書房(2017) •阿部学・塩田真吾: 授業へのゲーミフィケーション援用のための考察―教師とゲームクリエイターの授業改善の観点比較― ,日本教育 工学会第29回全国大会講演論文集,pp.781-782(2013) •井上明人: ゲーミフィケーション ,NHK出版(2012) •小田豊・青井倫子編: 幼児教育の方法 ,北大路書房(2009) •加用文男: 忍者にであった子どもたち―遊びの中間形態論― ミネルヴァ書房(1994) •岸本好弘: ゲームはこうしてできている ,SBクリエイティブ(2013) •ケビン・ワーバックほか: ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義 ,阪急コミュニケーションズ(2013) •ジェイン・マクゴニガル: 幸せな未来は「ゲーム」がつくる ,早川書房(2011) •柴田愛子: それって,保育の常識ですか? ,すずき出版(2014) •バーナード・スーツ: キリギリスの哲学 ,ナカニシヤ出版(2015) •深田浩嗣: ソーシャルゲームはなぜハマるのか ,ソフトバンククリエイティブ(2011) •藤川大祐: ゲーミフィケーションを活用した「学びこむ」授業の開発 ,千葉大学教育学部研究紀要,64,pp.143-149(2016) •無藤隆: 幼児教育の原則 ,ミネルヴァ書房(2009) •森上史朗・柏女霊峰編: 保育用語辞典(第4版) ,ミネルヴァ書房(2000) 参考文献

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