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ネオ・サイバネティクス略史

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サイバネティクスからネオ・サイバネティクスへと至る過程を概説しています。

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ネオ・サイバネティクス略史

  1. 1. ネオ・サイバネティクス略史 ネオ・サイバネティクス研究会 2017-06-03 西田洋平 (東京薬科大学ほか非常勤講師)
  2. 2. 概略 1. サイバネティクス :精神の機械化,生命の機械化 2. 胚胎された岐路 :ウィーナー,ベイトソン,フェルスター 3. セカンド・オーダーへの転回 :サイバネティクスのサイバネティクスへ 2
  3. 3. 1. サイバネティクス 精神の機械化,生命の機械化 3
  4. 4. サイバネティクスとは ■ Norbert Wiener,1948,Cybernetics: or control and communication in the animal and the machine,John Wiley(池原止戈夫他訳,1956,『サイバネティクス:動物と機械に おける制御と通信』,岩波書店) ■ Cybernetics(ギリシア語) = 船の舵をとる人,操舵手 ■ 対空高射砲を命中させる,飛んでいる虫を捕らえる,床に落ちた鉛筆を拾う ■ 「われわれの状況に関する二つの変量があるものとして,その一方はわれわれには 制御できないもの,他の一方はわれわれには調節できるものであるとしましょう。 そのとき制御できない変量の過去から現在にいたるまでの値にもとづいて,調節で きる変量の値を適当に定め,われわれに最もつごうのよい状況をもたらせたいとい う望みがもたれます。それを達成する方法がCyberneticsにほかならないのです。」 (日本語版のまえがき 1956 = 2011: 5) ■ 「情報は情報であって,物質でもなければエネルギーでもない。これを認めないよ うな物質主義は現在の世の中で存在を続けるわけにはいかないのである。」(1948 =2011: 254) ■ Cyberspace,Cyberpunk,Cyborg… 4
  5. 5. 2つの論文 ■ Rosenblueth, A., Wiener, N. and Begelow, J., 1943, “Behavior, purpose, and teleology” (行動,目的,目的論), Philosophy of Science, 10, 1:18-24. – ローゼンブリュート:医学博士,ハーバード大,メキシコ国立心臓医学研究所 – ビゲロウ:技術者,ウィーナーとともに高射砲の開発 – 動物と機械の振る舞いをフィードバックモデルで統一的に説明しようとする学 際的試み – 目的論的機械論「すべての目的的行動は,ネガティブ・フィードバックを必要 とすると考えられるかもしれない」(p.19) ■ McCulloch, W. S. and Pitts, W., 1943, “A logical calculus of the ideas immanent in nervous activity”(神経活動に内在する観念の論理的計算法), Bulletin of Mathematical Biophysics, 5:115-133. – マカロック:神経生理学者,のちにメイシー会議の議長を務める – ピッツ:若き論理学者・数学者 – ニューラルネットワーク=論理回路,神経生理学=形式論理学 5
  6. 6. (通称)メイシー会議 ■ The Feedback Mechanisms and Circular Causal Systems in Biology and the Social Sciences Meeting(生物学と社会科学におけるフィードバック機構と循環的因果 律システムに関する会議) ■ 1946-1953(全10回),ジョサイア・メイシー二世財団の後援 ■ 参加者(一部) – 【数学・論理学】ノーバート・ウィーナー,ジョン・フォン・ノイマン,ウォ ルター・ピッツ – 【技術・工学】ジュリアン・ビゲロー,クロード・シャノン – 【医学・生物学】ラファエル・ロレンテ・デ・ノ,アルトゥーロ・ローゼンブ リュート,ローレンス・キュビー,ウォレン・マカラック(議長) – 【心理学】クルト・レヴィン,ヴォルフガング・ケーラー – 【社会学・人類学】ローレンス・K・フランク,ポール・ラザーズフェルド, マーガレット・ミード,クレゴリー・ベイトソン 参考:Heims, S.J., 1991, Constructing a social science for postwar America: the cybernetics group, 1946-1953, MIT Press(忠平美幸訳,2001,『サイバネティクス学者たち:アメリカ戦後科学の出発』,朝日新聞社) 6
  7. 7. 精神の機械化,生命の機械化 ■ コンピュータとしての精神 – 1950s 認知革命,認知科学の誕生(認知=情報処理) – 1956 ダートマス会議(ジョン・マッカーシー,マービン・ミンスキー) 人工知能(AI:Artificial Intelligence) ■ 分子機械としての生命 – 1940s 分子生物学の発展(ファージ・グループ:マックス・デルブリュック) – 1953 DNAの二重らせん構造(ジェームズ・ワトソン,フランシス・クリック) – 1961 タンパク質合成の制御機構(オペロン説)の提唱(フランソワ・ジャコブ, ジャック・モノー),微視的サイバネティクス 7
  8. 8. 2. 胚胎された岐路 ウィーナー,ベイトソン,フェルスター 8
  9. 9. ウィーナーの憂慮 ■ 「このようにして新しい科学,サイバネティクスに貢献したわれわれは,控え 目にいっても道徳的にはあまり愉快でない立場にある」(Wiener 1948 = 2011: 76) ■ 「私は本書を,人間のこのような非人間的な利用に対する抗議に捧げたいので ある。なぜなら私は,人間に対しその全資質より少ないものを需め,実際の資 質より少ないものしかもっていないものとして人間を扱うような人間の利用は, いかなるものでも,一つの冒瀆であり一つの浪費であると信ずるからである。 (中略)権力欲にとるつかれたやからにとっては,人間の機械化は彼らの野望 を実現する一つのかんたんな道である。」(Wiener 1954 = 2014: 23-24) 9
  10. 10. グレゴリー・ベイトソン ■ バートランド・ラッセルの論理階型(logical types) :ヒエラルキーを定める,パラドックスの回避,分離,制御 クレタ人「すべてのクレタ人は嘘つきだ」 ↓ ■ 再帰性(recursiveness) :循環的システム,パラドックスの容認,包含,反制御 – ダブルバインド – 家族療法 – ユーモアの理論 – 学習理論 – イルカのコミュニケーション – プレローマ(物理的世界)とクレアトゥーラ(生物的世界) – 情報 = 差異をつくる差異(A difference which makes a difference) 10
  11. 11. ハインツ・フォン・フェルスター ■ 1948 エビングハウスの忘却曲線の数学的説明 – 再学習というフィードバックを考慮することで成功 ■ 第6回からメイシー会議に参加,議事録編集に携わる ■ 1958 イリノイ大学に「生物コンピュータ研究所(BCL:Biological Computer Laboratory)」を設立(1976年閉鎖) – マカロック,アシュビー,パスク,マトゥラーナ,ヴァレラ,グレイザーズフェル ドなどを招聘 – サイバネティクス研究の拠点に 参考:橋本渉. 2010, 「ハインツ・フォン・ フェルスターと思想とその周辺:ネオ・サイバネティクスの 黎明期を中心に」, 『思想』岩波書店, 7:98-114. 11
  12. 12. トリビアル/ノントリビアル・マシン ■ Foerster 1970 = 2003: 140 ■ トリビアル・マシン=単純な入出力マシン ■ ノントリビアル・マシン=内部状態をもつマシン – 駆動関数 y = fy(x, z) 状態関数 z’= fz(x, z) 12 x y z’ 0 0 I 1 1 I 2 1 II 3 0 II x y z’ 0 1 I 1 0 II 2 0 I 3 1 II 内部状態I 内部状態II
  13. 13. ノントリビアル・マシン ■ 2値の出力1つと2値の入力1〜4つ(n)をもつ機械(Foerster 1970 = 2003: 143) – 有効な内部状態の数Z – 可能な駆動関数の数nD – 有効な状態関数の数nS 13 ← 1664 すでに計算の限界を超えている
  14. 14. 有限状態機械から有限関数機械へ ■ 「有機体をトリビアル・マシンにする環境内のメカニズムを探求するのではな く,有機体が環境をトリビアル・マシンにすることを可能にする,有機体内の メカニズムを発見しなければならない」(Foerster 1970 = 2003: 152) ■ 「ここでの問題は,状態よりもむしろ関数を計算する方法,あるいは,数値的 結果よりもプログラムを計算する機械のつくり方である」(Foerster 1970 = 2003: 152) ■ ノントリビアル・マシンといえど,関数自体は変化しない ■ 関数形そのものを変化させる関数(=汎関数)が問題 14
  15. 15. 3. セカンド・オーダーへの転回 サイバネティクスのサイバネティクスへ 15
  16. 16. 二重の閉鎖性(double closure) ■ Foerster 1973 = 2003: 224-225 ■ 感覚運動的閉鎖系とシナプス-内分泌的閉鎖系の複合 ■ プログラム自体をプログラムする → 自己の制御を制御する=自律性 16
  17. 17. 盲点 ■ Foerster 1973 = 2003: 212 ■ 左目を閉じ,星印を見つめて紙を前後させると,黒丸が見えなくなる位置がある ■ 問題は,見えないということではなく,見えないということが見えないということ 17
  18. 18. セカンド・オーダー・サイバネティ クス ■ 「脳は脳の理論を書くために必要とされる。このことから,完全であろうとす る脳の理論は,この理論を書くことを説明しなければならないことになる。そ してさらに魅惑的なことに,この理論の書き手は,自分自身を説明しなければ ならない。サイバネティクスの領域に翻訳すれば,サイバネティシャンは,自 分自身の領域に参入することによって,自分自身の活動を説明しなければなら ないということである。そのときサイバネティクスは,サイバネティクスのサ イバネティクス,すなわち,セカンド・オーダー・サイバネティクスとなるの である」(Foerster 1991 = 2003: 289) 18
  19. 19. 現実構成 ■ 「われわれが自身の環境を知覚するとき,それを発明したのは 私たちである」(1973 = 2003: 211) ■ 山高帽をかぶったビジネスマン(Foerster 1960, 1973 = 2003: 5) – 自分以外のすべてを想像上のものと考えるなら,自分もまた, 他人にとって想像上のものとなる – 環境という現実を設定すれば解決する ■ 実在は少なくとも二人の観察者にとっては両立する準拠枠組み として現れる ■ reality = community(Foerster 1973 = 2003: 227) ■ Maturana「語られることはすべて観察者によって語られる」 ■ Foerster「語られることはすべて観察者に対して語られる」 19
  20. 20. 参考文献(1) ■ Wiener, N., 1948, Cybernetics: or control and communication in the animal and the machine,John Wiley(池原止戈夫他訳,1956,『サイバネティクス:動物と機械における制御と通信』,岩 波書店(2nd ed. 1961=2011(岩波文庫版)) ■ Rosenblueth, A., Wiener, N. and Begelow, J., 1943, “Behavior, purpose, and teleology”, Philosophy of Science, 10, 1:18-24. ■ McCulloch, W. S. and Pitts, W., 1943, “A logical calculus of the ideas immanent in nervous activity”, Bulletin of Mathematical Biophysics, 5:115-133. ■ Heims, S.J., 1991, Constructing a social science for postwar America: the cybernetics group, 1946-1953, MIT Press(忠平美幸訳,2001,『サイバネティクス学者たち:アメリカ戦後科学の出発』, 朝日新聞社) ■ Wiener, N., 1950, 1954: 2nd ed., The human use of human beings: cybernetics and society,Anchor Books(鎮目恭夫,池原止戈夫訳,2014,『人間機械論:人間の人間的な利用』第2版,みす ず書房) ■ Bateson, G., 1979, Mind and nature: a necessary unity, Dutton( 佐藤良明訳,2006,『精神と自 然:生きた世界の認識論』普及版,新思索社) ■ Bateson, G., 2000 (1972), Steps to an ecology of mind, University of Chicago Press(佐藤良明訳, 2000, 『精神の生態学』改訂第2版,新思索社) ■ 橋本渉. 2010, 「ハインツ・フォン・ フェルスターと思想とその周辺:ネオ・サイバネティク スの黎明期を中心に」, 『思想』岩波書店, 7:98-114. 20
  21. 21. 参考文献(2) ■ Foerster, H. v., 1960, “On self-organizing systems and their environments”, in Self-organizing systems: Proceedings of an interdisciplinary conference, M. C. Yovits and S. Cameron ed., Pergamon Press, 31-50 (2003, Understanding understanding: essays on cybernetics and cognition, Springer, 1-19) ■ Foerster, H. v., 1970, “Molecular ethology, an immodest proposal for semantic clarification”, in Molecular mechanisms in memory and learning, Georges Ungar ed., Plenum Press, 213-248(2003, Understanding understanding: essays on cybernetics and cognition, Springer, 133-167) ■ Foerster, H. v., 1973, “On constructing a reality”, in Environmental design research, Vol.2, F. E. Preiser ed., Dowden, Hutchinson & Ross, 35-46(2003, Understanding understanding: essays on cybernetics and cognition, Springer, 211-227) ■ Foerster, H. v., 1991, “Ethics and second-order cybernetics”, in Systèmes, Ethique, Perspectives en thérapie familiale, Y. Ray et B. Prieur ed., ESF editeur, 41-55(2003, Understanding understanding: essays on cybernetics and cognition, Springer, 287-304) ■ Maturana, H., 1970, Biology of Cognition(1980, Rpt. in Autopoiesis and Cognition: The Realization of the Living; D. Reidel)(河本英夫訳, 1991,『オートポイエーシス:生命システムとはなにか』, 国文社) ■ Maturana, H. and Varela, F., 1973, Autopoiesis: The Organization of the Living(1980, Rpt. in Autopoiesis and Cognition: The Realization of the Living; D. Reidel) 21

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