Infecdatabook6. グラム陽性球菌
• Streptococcus: pyogenes(Group A) 溶血性連鎖球菌
agalactiae(Group B) B群β溶血性連鎖球菌
anginosa
pneumoniae 肺炎球菌
• Enterococcus: faecalis
faecium
• Staphylococcus: epidermidis 表皮ブドウ球菌
aureus 黄色ブドウ球菌
Chain
Cluster
9. グラム陽性桿菌
• Actinomyces spp.
• Nocardia asteroides
Bacillus spp. 炭疽菌、セレウス
• Lactobaccillus spp.
• Clostridium botulinum ボツリヌス
difficile クロストリジウム・デフィシル
perfringens ガス壊疽菌
tetani 破傷風菌
• Corynebacterium spp.
• Listeria monocytogenes リステリア
• Mycobacterium spp. 結核菌、抗酸菌
• Propiobacterium acnes
嫌気性菌
11. グラム陰性球菌
• Moraxella catarrhalis モラクセラ・カタラーリス
• Neisseria: elongata
gonorrhoeae 淋菌
meningitidis 髄膜炎菌
双球菌
モラクセラ・カタラーリス
Moraxella
catarrhalis
双球菌。
ソラ豆状と言われる。
莢膜は持つものと持
たないものがある。
肺炎球菌とは異なり、
長辺を接し横に並ぶ。
例外はあるものの、形態での鑑
別は難しく、検体で鑑別する。
喀痰 Moraxella catarrhalis
尿 Neisseria gonorrhoeae
髄液 Neisseria meningitidis
ただし、淋菌性の咽頭炎や髄膜
炎菌による尿道炎もあるため絶
対ではないことに注意する。
12. • Acinetobacter baumanii
• Pseudomonas aeruginosa 緑膿菌
• Stenotrophomonas maltophilia
• Citrobacter freudi
• Enterobacter :aerogenes
cloacae
• Serratia marcescens
• Escherichia coli 大腸菌
• Klebsiella pneumoniae 肺炎桿菌
• Morganella morganii
• Proteus mirabilis
• Salmonella spp.
• Shiggella spp
• Yersinia spp
グラム陰性桿菌
ブドウ糖非発酵菌
腸内細菌
13. グラム陰性桿菌
• Aeromonas hydrophilia
• Bacteroides fragilis バクテロイデス
• Prevotella spp.
• Fusobacteriumu nucleatum
• Bordetella pertussis 百日咳菌
• Campylobacter spp.
• Capnocytophaga spp.
• Gardnella spp.
• Haemophilus infuluenzae インフルエンザ桿菌
• Helicobacter pylori ピロリ菌
• Legionella pneumophila レジオネラ
• Pasturella multicoda
• Spilochaeta spp. スピロヘータ属
• Vibrio cholerae コレラ
• Vibrio vulnificus
嫌気性菌
18. • PCGに対するMICにより耐性の程度が分けられている。
※ PISP:PCG MIC=4μg/ml、PRSP:PCG MIC≧8μg/ml(CLSI M100-S22, 2012)
• 耐性肺炎球菌株の疫学調査*
PISP PCG300-400万単位 4時間毎(1800-2400万単位/日)
PRSP PCG320万単位 4時間毎(1920万単位/日) で治療可能
PCG MIC>8μg/mlの場合 CTRX/VCM/LVFX/LZDから選択する
* Clin Infect Dis. 2009;48:1596-1600 . J Infect Chemother. 2012;18:609-20.
肺炎球菌の耐性について
肺炎球菌
米国
(2006、n=2897)
日本
(2009、n=127)
PISP 6.3%
PRSP 0.1% 0%
24. コンタミネーション
• しやすい
• Propionibacterium spp. 100%
• Corynebacterium spp. 96%
• Bacillus spp. 92%
• CNS(S.epidermis etc) 82%
• Clostridium perfringers 77%
• しにくい
• Enterococcus spp. 16%
• Staphylococcus aureus 6%
• Streptococcus pneumoniae 以下0%
• Escherichia coli
• Klebsiella pneumoniae
• Bacteroides fragillis group
• Candida spp.
26. 抗菌薬スペクトラムの概要
GPC 嫌気性菌 GNR 非定型
MRSA MSSA Strep. Entero. Pepto. Bactero.f E.Coli Kleb.P BLNAS BLPAR BLNAR Seratia ESBLs Pseudo. Myco. P.Legi.
ABPC
PIPC
ABPC/SBT
PIPC/TAZ
CEZ
CTM
CTRX
FMOX
CAZ
CPZ/SBT
CFPM
MEPM
※ 各地域・施設のAntibiogramによって感受性は異なるため、スペクトラムはあくまでも参考とする
■表記について
:効果あり :一部にのみ効果あり GPC:グラム陽性球菌 GNR:グラム陰性桿菌
MRSA:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 MSSA:メチシリン感受性黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌 Strep.:肺炎球菌、連鎖球菌
Entero.:腸球菌(E.fecaelis) Pept.:ペプトストレプトコッカス、口腔内嫌気性菌 Bactero.f:バクテロイデス、腹腔内嫌気性菌
Kleb.P:クレブシエラ(肺炎桿菌) BLNAS-BLPAR:インフルエンザ桿菌 Seratia:セラチア、アシネトバクター、シトロバクター
ESBLs:ESBL産生腸内細菌 Pseudo:緑膿菌、Myco:マイコプラズマ、クラミドフィラ、P.Legi:レジオネラ
27. 抗菌薬スペクトラムの概要
GPC 嫌気性菌 GNR 非定型
MRSA MSSA Strep. Entero. Pepto. Bactero.f E.Coli Kleb.P BLNAS BLPAR BLNAR Seratia ESBLs Pseudo. Myco. P.Legi.
CPFX
LVFX
GM・AMK
CAM
AZM
MINO
VCM
ST
CLDM
MNZ
※ 各地域・施設のAntibiogramによって感受性は異なるため、スペクトラムはあくまでも参考とする
■表記について
:効果あり :一部にのみ効果あり GPC:グラム陽性球菌 GNR:グラム陰性桿菌
MRSA:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 MSSA:メチシリン感受性黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌 Strep.:肺炎球菌、連鎖球菌
Entero.:腸球菌(E.fecaelis) Pept.:ペプトストレプトコッカス、口腔内嫌気性菌 Bactero.f:バクテロイデス、腹腔内嫌気性菌
Kleb.P:クレブシエラ(肺炎桿菌) BLNAS-BLPAR:インフルエンザ桿菌 Seratia:セラチア、アシネトバクター、シトロバクター
ESBLs:ESBL産生腸内細菌 Pseudo:緑膿菌、Myco:マイコプラズマ、クラミドフィラ、P.Legi:レジオネラ
37. セフェム系の世代別分類
• 世代による分類=GNRスペクトラムに基づく
第1世代 CEZ(セファゾリン) PEK
第2世代 CTM(セフォチアム) HEM
CMZ(セフメタゾール) +
FMOX(フロモキセフ) PEK
第3世代 CTRX(セフトリアキソン) HEMPEK
以上
第4世代 CFPM(セフェピム) 第1世代+第3世代+緑膿菌
※ PEK(Proteus mirabisil,E.coli,Klebsiella spp.)
HEM(Haemophilus spp,Enterobacter spp,Moraxella)
髄
液
移
行
×
○GNR
GPC
59. アミノグリコシド系の使い方
• 投与量:体重と腎機能によって量を調整する。
肥満患者 理想体重からの補正体重を用いる
るい痩患者 実測体重を用いる
※アミノグリコシド系は脂肪組織へは少量しか分布しないため。
理想体重:Ideal Body Weight(IBW)
男性:IBW(kg)=50+0.9×(身長cm-152)
女性:IBW(kg)=45.5+0.9×(身長cm-152)
補正体重:Dosing Weight(DW)
補正体重=理想体重IBW+0.4×(実測体重ー理想体重IBW)
• 投与法:MDD/ODDで行い投与間隔は推定Ccrで決定する。
MDD:Multiple Daily Dosing 1日分割法
ODD:Once Daily Dosing 1日1回分割法
MDD、ODDでも腎機能に関わらず初回は通常初期投与量を投与する。
61. MDDでの投与量・間隔の調整*
腎機能障害 血液透析 腹膜透析
持続血液
濾過透析
>50-90 10-50 <10 HD CAPD CAVH
GM 60-90%
8-12時間毎
30-70%
12時間毎
20-30%
24-48時間毎
20-30%
1/2量を透析後に
毎回追加
3-4mg/L/日
透析液交換毎に
30-70%
12時間毎
AMK 60-90%
12時間毎
30-70%
12時間毎
20-30%
24-48時間毎
20-30%
1/2量を透析後に
毎回追加
15-20mg/L/日
透析液交換毎に
30-70%
12時間毎
* Gilbert DN, Leggett JE:Aminoglycoside. Mandell GL, et al(eds);
Principles and Practice of Infectious Diseases, 7th ed,
Elsevier, Churchill Livingstone, 2009
腎機能低下時のMDDでの投与量と投与間隔
62. ODDでの投与方法*
* Gilbert DN, Leggett JE:Aminoglycoside. Mandell GL, et al(eds);
Principles and Practice of Infectious Diseases, 7th ed,
Elsevier, Churchill Livingstone, 2009
Ccr
(mL/min)
投与量 投与間隔
(時間毎)GM AMK
≧80 5 (7.0) 15 24
70 4 (5.5) 12 24
60 4 (5.5) 7.5 24
50 3.5 (5.0) 7.5 24
40 2.5 (3.5) 4 24
30 2.5 (3.5) 7.5 24
20 4 (5.5) 7.5 48
10 3 (4.0) 4 48
<10 2 (4.0) 3 48
血液透析(HD) 2 (4.0) 3 48
※
括弧内は分布 容量が増
える場合の投与量
重症患者では
GM 7-9mg/kg
AMK 20-25mg/kg
を初回投与する。
目標血中濃度
トラフ値
GM :<1μg/ml
AMK:<1μg/ml
ピーク値
GM :16-24μg/ml
AMK:56-64μg/ml
76. ST| Sulfamethoxazole - Trimethoprim
特徴
広域抗菌薬。サルファメソキサゾールとトリメトプリムの合剤。
前立腺、骨、髄液への移行性が良く、前立腺炎や尿路感染症に。
ペニシリンアレルギーの場合の代替薬に使用できる。
カリニ肺炎、Stenotrophomonasの第1選択薬。
スペクトラム
緑膿菌、バクテロイデスなどを除くほとんどの菌
Pneumocystis jirovecci、感受性のあるMRSA
※ 皮疹、血球減少、薬物相互作用に注意。
商品名 バクタ、バクトラミン、ダイフェン
GPC 嫌気性菌 GNR 非定型
MRSA MSSA Strep. Entero. Pepto. Bactero.f E.Coli Kleb.P BLNAS BLPAR BLNAR Seratia ESBLs Pseudo. Myco. P.Legi
LVFX
82. 肺炎
肺炎の起炎菌の頻度
原因微生物 基幹病院 大学病院・関連病院
肺炎球菌 23.0% 24.6%
インフルエンザ菌 7.4% 18.5%
クレブシエラ 4.3% 1.3%
モラクセラ・カタラーリス 1.8% 2.2%
黄色ブドウ球菌 2.1% 3.4%
緑膿菌 2.5% 0.4%
マイコプラズマ 4.9% 5.2%
クラミドフィラ属 5.5% 8.7%
レジオネラ 0.6% 3.9%
結核菌 1.5% ---
83. • 鑑別に使用する項目|成人市中肺炎診療ガイドラインより
1. 年齢60歳未満
2. 基礎疾患がない、または、軽微
3. 頑固な咳がある
4. 胸部聴診上所見が乏しい
5. 痰がない、または、迅速診断法で原因菌不明
6. WBC<10,000/ul
○上記6項目を使用した場合
4項目以上合致 → 非定型肺炎疑い 3項目以下合致 → 細菌性肺炎疑い
この場合の非定型肺炎の感度:77.9% 特異度:93.0%
○上記1~5までの5項目を使用した場合
3項目以上合致 → 非定型肺炎疑い 2項目以下合致 → 細菌性肺炎疑い
この場合の非定型肺炎の感度:83.9% 特異度:87.0%
細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別
86. 市中肺炎の重症度評価
rATS; the revised American Thoracic Society score
■大項目(1項目以上でICU入院)
気管内挿管および人工呼吸器装着
昇圧剤を必要とするショック状態
■小項目(3項目以上該当でICU入院)
RR≧30/min
PaO2/FiO2<250
複数の肺葉の肺炎
意識障害
BUN≧20mg/dL
WBC<4000
Plt<1000000
低体温:深部体温<36℃
補液による救命を必要とする血圧低下状態
IDSA/ATSによる市中肺炎のICU入室基準
87. 院内肺炎の重症度評価
I-ROAD
Immunodeficiency 悪性腫瘍 または 免疫不全状態
Respiration SpO2 >90%の維持にFiO2 >35%
Orientation 意識障害
Age 男性70歳以上、女性75歳以上
Dehydration 乏尿 または 脱水
該当項目を3項目以上満たす → 重症群 (死亡率40.8%)
該当項目が2項目以下
次のどちらかを満たす → 中等症群 (死亡率24.9%)
次のどちらも満たさない → 軽症群 (死亡率12.1%)
① CRP≧20mg/dL ② 胸部X線陰影の広がりが一側肺の2/3以上
日本呼吸器学会による院内肺炎の重症度分類
90. 肺炎球菌肺炎
• 治療
ABPC 2g×4/day または
PCG 400万単位×6/day
グラム染色と尿中抗原検査を行うこと。
インフルエンザ桿菌、モラクセラを見落すと治療失敗する。
進行が速い肺炎球菌性肺炎に対しては、
抗菌活性が高いPCGやABPCによる治療が望ましい。
※ 肺炎球菌は培養で生えてこないことが多い。
肺炎球菌肺炎の喀痰培養は45-50%陰性になるとの報告も。*
* The nonvalue of sputum culture in the diagnosis of pneumococcal pneumonia.
Am Rev Respir Dis. 1971 Jun;103(6):845-8.
91. 参考:肺炎球菌尿中抗原
• 感度80% 特異度95% (LR+16、LR-0.21)*
• 尿中抗原を積極的に調べる場合
① 肺炎球菌肺炎の可能性が高い
② 良質な喀痰が得られない
③ 既に抗菌薬投与されている
※小児では偽陽性になることがある。
※既感染の場合、数週間~数カ月排泄され、陽性になるため注意が必要。
*Current and Potential Usefulness of Pneumococcal Urinary Antigen Detection in Hospitalized
Patients With Community-Acquired Pneumonia to Guide Antimicrobial Therapy
Arch Intern Med. Published online September 27, 2010.
93. 非定型肺炎
• 想定する起炎菌
マイコプラズマ、クラミドフィラ、百日咳
• 治療
AZM 2g 空腹時単回投与内服
AZM 500mg×1/day
CAM 400mg×2/day いずれか
レジオネラ症を除く非定型肺炎を全例考慮する必要はない。
市中肺炎に非定型肺炎をカバーしても死亡率に有意差はない。
AZM5日間投与で心血管系のリスクが上昇したとの報告もある。
※ マイコプラズマ:咽頭炎、耳痛、下痢、皮疹が特徴との報告あり
クラミドフィラ:咽頭炎、筋肉痛が特徴との報告あり
94. • 治療
LVFX 500mg×1/day または
AZM 500mg×1/day
※ レジオネラはグラム染色では良く染まらない。
確定診断は、身体所見に加えて次のいずれかを満たすこと。
①尿中抗原陽性 ②喀痰培養陽性 ③喀痰PCR陽性
レジオネラを疑う病歴
・還流型の温泉歴 ・最近、屋内の配管工事を行った
・肝不全・腎不全 ・糖尿病 ・悪性疾患 ・喫煙 ・免疫不全状態
※ 保険適応よりLVFX 500mg×1/dayとしているが、750mg×1/dayが望ましい。
レジオネラ肺炎
95. レジオネラ肺炎
予測因子*
・体温 > 39.4℃
・血清Na < 133mEq/L
・LDH > 255U/L
・CRP > 18.7mg/dl
・血小板数 < 17.1万
・痰がない
各1点として
0-1点 確率は3%
4点以上 確率は66%
※ エビデンスレベルは低く、
あくまでも参考とする指標とする。
臨床症状と特徴*
・下痢
・上気道症状なし
・混迷などの神経学的徴候
・体温>39℃
・比較的徐脈
・グラム染色で細菌が見えない
・横紋筋融解症
・顕微鏡的血尿、腎不全
・β-ラクタム抗菌薬無効
・アミノグリコシド系抗菌薬
・WBC上昇
・肝機能障害(正常の2-5倍程度)
・低Na血症
・低P血症
* Winthrop-University Hospital Criteriaより
96. 参考:レジオネラ尿中抗原
• 感度83% 特異度99%*
• 尿中抗原は基本的には1型を調べている。
※ 血清1型はレジオネラ全体の半数程度で、その診断率は感度95%以上と
されている。それ以外の血清型では約78.6%、L. pneumophila以外の
菌種では13.6%と低い。
※ その他検査・・・迅速LAMP法、喀痰培養、血清抗体検査、PCR検査
* 『レジオネラ肺炎診断法に関する検討』吉岡浩明ら, 日本臨床微生物学雑誌 Vol. 22 No. 1 2012.
98. 緑膿菌肺炎
• 想定する起炎菌
緑膿菌
• 治療
PIPC 4g×4/day
CPFX 400mg×3/day
MEPM 1g×3/day いずれか
PIPCの保険適応は8g/日までだが、抗緑膿菌作用に乏しい。
保険適応を考えるとPIPC/SBT4.5g×4/dayとなる。
CPFXは肺炎には良い適応だがやや広域過ぎる。MRSAには無効。
※ CPZ/SBT・CAZ・AMKは肺炎球菌に効果乏しく肺炎へは使いにくい。
併用薬または感受性判明後のde-escalationの1選択肢として考える。
99. MRSA肺炎
• 想定する起炎菌
黄色ブドウ球菌(MRSA)
• 治療
VCM 20mg/kg×2/day
グラム陽性球菌以外には基本的に無効。
MRSA肺炎の可能性が極めて高い場合に使用。グラム染色は必須。
必ずTDMを行う必要がある。
※ RedMAN症候群(VCM投与後の発赤・掻痒症)に注意。
1gを2時間以上かけて投与すること。
ヒドロキシジン(アタラックスP)の前投与が有効との報告も。
102. 尿路感染症
• 症状
実質臓器 腎臓
前立腺、精巣上体
管腔臓器 尿管、膀胱
• 尿路感染は基本的には除外診断。
→発熱+膿尿(尿WBC>10/HPF)は必ずしも尿路感染症ではない。
発熱+膿尿+他臓器に感染所見がないことが診断基準と考える。
• 治療期間の目安 ※単純性の場合
膀胱炎:3-7日間 腎盂腎炎:14日間
発熱・悪寒・背部痛
排尿時痛、頻尿、夜間尿
104. 単純性膀胱炎
• 治療
CCL(ケフラール) 3T3× 3-7day
ST(バクタ) 4T2× 3day
FOM(ホスミシン) 6T3× 3day
膀胱炎の治療期間は複雑性では7日間を目安とする。
薬剤により治療期間は異なる。症状に応じて治療期間検討する。
地域毎の大腸菌感受性に合わせて抗菌薬選択をする必要がある。
※ ST合剤は妊婦には禁忌。
ワーファリン、フェニトイン、ジゴキシン、ピルなどの薬剤との
相互作用があるため、処方には注意すること。
117. 皮膚・軟部組織感染症
• 治療
蜂窩織炎
CEZ1g×4/day
AMPC 3C3× + AMPC/CVA 3C3×/day
頭頚部の蜂窩織炎はABPC/SBT1.5g×4/dayでも。
患肢挙上を指示する。
壊死性筋膜炎
MEPM 1g×3/day + CLDM 600mg×3/day
壊死性筋膜炎の可能性があると判断した場合は、すぐに
外科的なコンサルトを行い手術の準備をする。
抗菌活性の高いPCGやABPCを併用することも検討する。
119. 壊死性筋膜炎の早期予測
LRINEC score| Laboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis
CRP ≧150 mg/L 4点
WBC 15000-25000/μL 1点
>25000/μL 2点
Hb 11.0 -13.5 g/dL 1点
≦11g/dL 2点
Na <135 mEq/L 2点
Cre >1.6 mg/dL 2点
Glu >180mg/dL 1点
※ 6点以上で壊死性筋膜炎の可能性が高くなる
ただしLRINECscoreの有用性はまだエビデンスに乏しい。
123. • リスク因子
抗菌薬投与、制酸薬使用、高齢、ICU入室、免疫抑制剤、
経鼻胃管、CDI患者と同室など
※ Clostridium difficileによる感染症:Clostridium difficile infection。
抗菌薬使用後多くは5-10日後(8週間以内)に発症すると言われている。
WBC>15000、Cre>ベースラインの1.5倍であれば重症CDIと判断
• 治療
軽症~中等症 MNZ 6T3×/day
重症・複雑性 VCM散0.5g4×/day 10-14日間
※ 治療は基本的にMNZ経口が第1選択。VCM使用は重症・中毒性巨大結腸症、MNZ
再々発例で検討する。絶食時のCDIではMNZ膣錠250mg×4/日で挿肛する。
CD関連腸炎
125. Oral switch :COMS
• C:clinical improvement observed
臨床的に改善
• O:oral route is not compromised
経口摂取可能(嘔吐・嚥下障害なし)
• M:Markers showing a trend towards normal
解熱して24h以上 かつ
血圧不安定、呼吸数異常、脈拍異常、
白血球異常(SIRS基準を参考)がどれも無い
• S:Specific indication / deep-seated infection
経口薬の適応にならない疾患ではない
127. PK/PD理論とMIC
• PK:Pharmacokinetics 薬物動態:どれだけ体内に存在するか
• PD:Pharmacodynamics 薬力学:どれだけその部位で作用するか
• MIC:最小発育阻止濃度
抗菌薬の血中濃度が高いほど、細菌に対する作用は強くなる。
この作用を測る指標としてMICが用いられる。
MICが低い=その菌に対する抗菌力が高い
ただし試験管内での結果(in vitro)に過ぎないため、体内動態により
人体での実際の結果(in vivo)では異なってくることに注意が必要。
抗菌薬投与は移行性やbioavailabilityを考慮して決定する。
128. PK/PD理論のパラメーター
• Cmax 薬剤投与後の最高血中濃度
• AUC 血中濃度曲線下面積。体内に取り込まれた薬剤の量の指標。
• MIC 最小発育阻止濃度。抗菌力の指標。
• Time above MIC 血中濃度がMICを超えている時間(時間依存性の効果指標)
• Cmax/MIC CmaxとMICの比(濃度依存性の効果指標)
• AUC/MIC AUCとMICの比(濃度依存性の場合の持続効果指標)
134. 参考資料
• 感染症レジデントマニュアル 青木 眞
• 絶対わかる抗菌薬はじめの一歩 矢野 晴美
• 抗菌薬の使い方、考え方ver3 岩田 健太郎
• StepUp式感染症診療のコツ 本郷 偉元
• がん患者の感染症診療マニュアル改訂2版 大曲 貴夫
• ICU/CCUの薬の考え方、使い方 大野博司
• 感度と特異度からひもとく感染症診療のDecision Making 細川直登
• 感染症ケースファイル 谷口智宏
• 日常診療に役立つ抗感染症薬のPK-PD 戸塚恭一
• 感染症診断に役立つグラム染色 永田邦昭
• Antibiotic Essentials 2013, 12th edition B.A.Cunha
• サンフォード感染症治療ガイド2012
• medicina vol.50 no.7 2013-7,医学書院
• 抗菌薬インターネットブック(http://www.antibiotic-books.jp/drugs)
• その他複数文献よりの引用あり
Editor's Notes PK-PD理論について Extended Spectrum beta(β) Lactamase(ESBL:基質特異性拡張型βラクタマーゼ)産生菌 新しいデータがあれば。 BLNAS:βラクタマーゼ非産生 アンピシリン感受性BLPAR:βラクタマーゼ産生 アンピシリン耐性BLNAR:βラクタマーゼ非産生 アンピシリン耐性
BLPACR:βラクタマーゼ産生 アモキシシリン・クラブラン酸耐性
要はβラクタマーゼを産生するかどうか、ということ、それからペニシリンに耐性があるかどうか、ということで分類しています。βラクタマーゼを産生せず、ペニシリン(アンピシリン)に感受性がある、素直な菌がBLNAS。ペ ニシリンGを改良したアンピシリン(ABPC)が、グラム陰性桿菌であるインフルエンザ菌(や大腸菌)にも有効となったわけですが、インフルエンザ菌はβ ラクタマーゼを産生する形質を獲得する(=BLPAR/BLPACR)ことでABPCの魔の手から逃れようとしました。それらの菌に対して人類は、βラクタマーゼ阻害薬+ペニシリンの合剤、あるいは第2世代のセフェム系薬で対応していました。ところが次に、インフルエンザ菌はβラクタマーゼ阻害薬に頼らずにABPCに耐性を持つメカニズムを開発しました。細胞壁合成酵素そのものが変化することで耐性を獲得したのです。それがBLNARであります。ちなみにこのBLNARの出現は、経口セフェムという、スペクトラムが広くて一見便利ではあるけれども、実際血中濃度、局所濃度が上がらない抗菌薬が頻用されたことによって加速した、といわれています。抗菌薬に充分量(MIC以上)接触すると菌は死滅していきますが、不充分な量であれば耐性を獲得させる手助けをすることになるのです…。BLNARの出現により、第2世代のセフェムが(すべてのインフルエンザ菌に対してではないのですが)使い物にならなくなり、特に肺炎業界の抗菌薬シェアがぐぐっ、と変わるという結果になったのです。 FMOXでいいと思うけど. 40ccよりもう少し少なくていいみたいやけど。
まぁ、難しい場合が多いみたいやけど。同じところからでもOKみたい
2セットで90%は原因菌がわかる
1セットだけなのは心電図でV1〜V3だけとってるのと同じ 腸球菌感染症に対してはGMと併用 ABPCに水酸基がついて吸収が良くなったものがAMPC。経口ABPC(ビクシリンカプセル)もあるが腸管吸収に劣るためAMPCの方が望ましい。 ABPC/SBTと同等の経口抗菌薬SBTPC:トシル酸スルタミシリン(ユナシン)もあるが、ABPCは腸管吸収が悪いためバイオアベイラビリティーがやや低い可能性がある。下痢がほぼ必発する。
抗結核菌作用はSBTによるとの報告。 ABPC/SBTとほぼ同じ。CVAは肝排泄。 一般的にはペニシリン系よりは半減期が長い(1.5hぐらいが多い)
ペニシリン系よりβ‐lactamaseに分解されにくい。
世代が上がるごとに陰性菌狙いとなる(よりβ‐lactamaseに分解されにくい)
保険適応5g/日まで 保険適応4g/日まで。海外では6g/日まで使用するとのこと。一例として、亀田総合病院では2g8時間おき(Ccr>50)で使用している。 CEZと同等のものはCEX(セファレキシン)。血清病様反応:Ⅲ型(免疫複合体型)アレルギー反応。症状は発熱、倦怠感、関節痛、関節炎、紅斑、膨疹、麻疹様発疹、リンパ節腫脹、腹痛、腎炎、神経炎、血管炎など。 保険適応4g/日まで。淋菌の第1選択薬でもある。CTRX1g筋注または静注(vs淋菌)+ジスロマックSR2g(vsクラミジア)で。脳外科術後髄膜炎、シャント関連髄膜炎の良い適応でもある。
CTX(セフォタキシム)はCTRXと同一のスペクトラムを有し、違いとしてはCTXは腎代謝である。CTRXについて、胆石症の副作用が報告されており、小児の場合や胆石・胆泥のある患者では使用は注意が必要。 バクテロイデスに無効と言われているのは膿瘍のデブリードメントの問題も。軽症~中等症の腹腔内感染症に使用するのが良いか。 MSSA,PRSPへの活性はデータが少ない。 疾患毎のセフェピムの推奨投与量(Drug Information Lexicomp. Cefepime http://www.uptodate.comより)
■脳膿瘍・脳外科術後の予防投与:2g/8h(+VCMと併用) ■好中球減少性発熱:2g/8h ■複雑性/重症腹腔内感染症:2g/12h(+MNZと併用) ■院内肺炎:1-2g/8-12h ■市中肺炎:1-2g/12h
■皮膚軟部組織感染症:2g/12h ■尿路感染症(軽症-中等症):0.5-1g/12h ■尿路感染症(重症):2g/12h MFLXはスペクトラムが広いが、耐性を作りにくいという特徴があり、オランダでは肺炎の推奨薬の一つとして挙げられている。保険適応は400mg/日までで、PK/PDによる効果が期待される量も400mg×1/dayである、点滴薬はない。
またMFLXは肝代謝であり腎機能による用量調整は不要。ただし尿路での濃縮に乏しいため尿路感染には使用しない。
ニューキノロン系は肺炎使用時には結核リスク評価を行う必要がある。
基本陰性菌狙い、基本嫌気性菌には効かない
緑膿菌にも効く
非定型肺炎もOK
緑膿菌に対しては400mg×3/day(内服の場合、500mg×2/day)が望ましい。保険適応は静注600mg/日まで。内服は800mg/日までと若干少ない。 PK/PDから効果が期待される量は750mg×1/day。保険適応は500mg/日まで。 第4世代セフェムやPIPC/TAZとの大きな違いはESBL・AmpCも含めてカバーしている点。腹腔内嫌気性へのカバーが良好である点である。
効かない→ Ccr>50:MEPM 1g×3/dayで。重症または中枢神経系感染症では2g×3/dayが望ましいが保険適応外。 アミノグリコシド系の保険適応量は80-120mg/日までと適切な投与量の半分程度しかないことに注意が必要。
→添付文書通りでは有効濃度に達しない。
GM・TOBを先に使う。AMKから先に使用しない!
GMに耐性ができてもAMKは有効。逆は無効。
国内での適応内容量は極端に少なく、効果は乏しい。国際的に使用されている用法・用量での使用が望ましい。
これまで歴史的にはMDDが行われてきた。現在のところODDがMDDより効果的である臨床的消化はない。
ただし、PK/PD理論からはODDの方が腎毒性、耳毒性を減少させる可能性があり、投与も簡便であるためODDの方が推奨されるようになってきている。 3回目の投与直前に採血→trough 呼吸筋麻痺がおこった場合はグルコン酸Caの投与を行う。 テオフィリンでは痙攣をおこすことがある。中毒域に達する可能性は低い? 空腹時または食後2時間経ってから内服すること。バートネラはネコ引っかき病の起炎菌。カンピロバクターの選択薬の一つ。 小児ではマクロライド耐性マイコプラズマ(MRMP)が問題となってきている。マイコプラズマであれば、マクロライド使用後2.5日程度で治療効果を認めるとの報告(*Gotoら)があり、3日経過しても改善見られない場合、MRMPを疑い、LVFXの使用を検討しても良い。 市中獲得型MRSA(CA-MRSA)には効果があるとされており、MRSAが懸念される皮膚軟部組織感染症では経口投与が可能な場合にVCMなどの代替薬として使用可能。
抗けいれん薬やワーファリン、ジゴキシン、経口避妊薬、ペニシリン系抗菌薬では併用に注意する。 レッドマン症候群は僕の認識ではヒスタミン放出によるもの。アレルギー反応ではない。点滴速度をゆるめるか、抗ヒスタミン剤を。 ワーファリン、メトトレキサート、フェニトイン、ジゴキシンの薬物濃度上昇。SU剤での低血糖。経口避妊薬の効果を薄める。SMX:TMP=5:1の比率で配合されている。
Burkholderia cepaciaでも第一選択薬となる(15mg/kg/dayを2-3回に分割して)。PCP(カリニ肺炎)の場合は50kgで9錠、60kgで12錠程度。予防は1日1錠または2錠を週3回。
STの代謝の際にTMPが尿細管でクレアチニンの排泄を阻害するため、Creの軽度上昇が見られるが、投与中止にて速やかに改善する。経過中の高K、低Naに注意は必要。 グラム陽性菌はマクロライドに耐性が誘導される。マクロライド耐性の場合にCLDMを使用する場合はDテストと呼ばれる確認検査(寒天培地にCLDM・CAMのディスクを載せて阻止炎の形成を確認する。D-test陽性=CLDM非推奨)が必要となる。
日本嫌気性菌感染症研究会の「嫌気性菌感染症の診断・治療ガイドライン」ではB.fragilisのCLDM感受性率は37.1%と報告されている、 PRSP(ペニシリン耐性肺炎球菌)の存在 → 髄膜炎の場合以外は問題視しなくてよい。高用量ペニシリンで治療可能となった。
PCG使用する際は高K血症に注意する。 小児は上咽頭のバリアが未熟、IgAが少ない、潜在的な中耳炎といった要素から偽陽性になりやすい。 標準的には15-20mg/kg×2/day CLDMではなくMNZの方がBacteroidesへの耐性がなく嫌気性菌カバーとしては望ましいか。 発赤部位をマーキングし1時間後の広がりを確認 肺炎球菌性髄膜炎に対して、抗菌薬投与前のステロイドの投与が優位にその後の神経学的予後を改善したとの報告があるが、手順は煩雑である。
診療開始から1時間以内に血液検査、血液培養、頭部CTおよびルンバール、抗菌薬投与が推奨されているため実際の実施はかなり難しい。 MNZと比較してVCMの治療成績が高いというわけではない。VCMの使用は基本的にはMNZで治療失敗した場合や再発の場合と考える。
ただし再発例に対するMNZの治療成績がVCMに必ずしも劣るわけではない。