科学史学会 シンポジウム 「地方病 (日本住血吸虫症)」

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May 29, 2016 at Kogakuin University Shinjuku campus
日本科学史学会「ラウンドテーブル:ウィキペディアと科学史―知識とコミュニケーションを考える」

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科学史学会 シンポジウム 「地方病 (日本住血吸虫症)」

  1. 1. 地方病 (日本住血吸虫症) 編集執筆を通じて ウィキペディアと科学史 地域史と執筆活動と さかおり
  2. 2. 自己紹介 • Wikipedia日本語版の管理者。 • 初編集は2009年11月25日。2012年9月より管理者。 • 山梨県甲府市出身在住。 • 執筆分野は山梨県関連のものが中心。 • 本業は旅行業。国内および総合旅行業務取扱管理者。 • Wikipediaは趣味。 • 特定の分野の専門家、研究者ではありません。
  3. 3. 主な執筆記事 • 重要無形民俗文化財:無生野の大念仏、天津司舞、吉田の火祭 • 登録有形文化財:旧田中銀行、ルミエール旧地下発酵槽 • 地理:河畔砂丘、阿哲台、昭和硫黄島、標津湿原、横当島 • 天然記念物:西湖蝙蝠穴およびコウモリ、塩川 (沖縄県)、 美森の大ヤマツツジ、焼走り熔岩流、鳴沢熔岩樹形 • 指定解除された天然記念物:浄ノ池特有魚類生息地 • 名所旧跡等:青い池、宿根木、酒折宮、不老園、北村韓屋村 • 山梨近代史:信玄公旗掛松事件、地方病 (日本住血吸虫症) • その他:穴切遊郭、国玉の大橋、山梨学院小学校、東京ビートルズ 実体のない抽象的なテーマを執筆することは苦手。
  4. 4. 日本住血吸虫症 • 感染経路は淡水を介した経皮感染 である。終宿主は哺乳類全般。 • 成虫は雄雌の区分があり、終宿主 の静脈、主に肝門脈に寄生。終宿 主の赤血球を栄養源とし、血管内で 産卵。 • 赤血球不足による栄養障害。小児 の場合深刻な発育障害を起こす。 • 虫卵は各種器官を経由し排泄され るが、度重なる感染により虫卵が増 大すると、虫卵は各種器官に残留 結節化、あるいは血管を塞ぐ。 • 住血吸虫症で特に大きな問題にな るのは、この虫卵の蓄積によるもの が多い。 • 虫卵が引起こす作用は単一でなく、 血管塞栓による循環障害、各臓器 での炎症反応やアレルギー反応。 • ただしこれらの重篤な症状が現れる のは、長年にわたって繰り返し感染 することによるものがほとんど。 • 感染イコール死ではない。
  5. 5. Endemic いわゆる風土病と地域史 甲府盆地の日本住血吸虫症を例に考える • 特定かつ狭い地域特有の感染症 → 当地域以外では一般的に知られる機会が少ない。 • 特定地域へのネガティブイメージ → 当事者から積極的に語られることは少なかった。 • 寄生虫病に対する一般的なイメージ → 嫌悪感 → 興味の対象になり難い? • これらの理由から、本疾患は世間一般に広く認知されているとは言い難い印象がある。 • しかしながら、この感染症撲滅達成への経緯を紐解くと、単なる地域史にとどまらず、様々な分野 の研究者の『探求心』や『知識』の積み重ね、それに連携し付随した多くの一般の人々の努力に よって成し遂げられたと言え、近代日本の科学史の一端を示す好例ではないだろうか。 • 疾患を主題に考えると『医学』。しかし、本記事は疾患そのものを主題にしたものではない。 • 本事例を科学史の視点から考えると、大きな括りとしては『医史』であるが、その撲滅の過程には 様々な見地からのアプローチがある。 • 病原の解明に関しては、病原微生物の生態の解明、中間宿主の存在といった『生物学』。 • 駆虫薬開発、殺貝剤開発は『薬学』、感染予防対策関連は『衛生学』や『予防医学』である 。 • これらの『自然科学的』な観点とは別に、本事例には研究者や専門家以外の、一般住人側からの 視点を通じた『人文科学的』な観点もある。官選知事への嘆願、徴兵検査による問題の表面化、 GHQによる日米共同研究、高度経済成長期における社会環境の変化など、その時々の社会情 勢を反映した『社会科学的』な観点から考える必要もある。 • また、病気を恐れる内容の俗謡やことわざ、各地域に伝わる迷信やタブー等の民間伝承や口碑、 当時の人々の医療に対する考え方など、『民俗学的』な観点からの考察も興味深い。 • 病原寄生虫の発見(1904年)、感染経路の解明(1909年)、中間宿主の特定(1913年)など、病気 発生のメカニズムはおよそ100年前に解明された。 • 一方で、病気の撲滅にはおよそ100年を要している。
  6. 6. 地方病 (日本住血吸虫症)の文献・出典について • 日本国内における日本住血吸虫症流行地は、山梨以外にも広島片山地区、福岡佐賀の筑 後川流域などに散在していた。したがって文献の内容は日本各地の流行地を相対的にまと めたものが多い。しかし本記事は甲府盆地での流行防圧を主なテーマにしている。 • 上記の視点から、山梨県地方病協力会が編集した『地方病とのたたかい』(1977年)、『同・ 医療編』(1981年)をメイン文献とし、補足として『同・地方病流行終息への歩み』(2003年)を 使用した。以上の3点は山梨県が主体となって編集したもので、一般に販売はされておらず、 関係者以外には山梨県内各市町村の教育委員会および図書館に配布されたものである。 ただし、各図書館で貸し出し閲覧とも可能。 • その他の主な文献 • 宮入慶之助記念誌編纂委員会編『住血吸虫症と宮入慶之助-ミヤイリガイ発見から90年-』 (2005年)九州大学出版会 ISBN 4-87378-887-0 • 林正高『寄生虫との百年戦争-日本住血吸虫症・撲滅への道-』(2000年)毎日新聞社 ISBN 4-620-31422-6 • 小林照幸『死の貝』(1998年)文芸春秋 ISBN 4-16-354220-5 • 以上が主なものであるが、これ以外にも、複数の文献、適切なウェブサイト、山梨日日新聞 記事のバックナンバー、マイクロフィルム等を用いた。
  7. 7. 記事執筆について • 資料文献集め→山梨県立図書館、Amazonでの購入、山梨県立博物館、 風土伝承館杉浦医院および知人からの資料文献譲り受けなど。 • 現地調査の考え方→ウィキペディアン個人がフィールドワークによって得 られた成果等は、それが検証可能性を伴わないものであれば、記事内に 直接反映させてはならないと考えます。しかしながらフィールドワークは 執筆者にとって記事のテーマ全体を俯瞰する意味で重要であり、現場の 雰囲気を体感することで、記事構成や文章表現等の具体的なイメージを 膨らませるのに重要と考える。 • 読者がイメージを掴むという意味で写真や図表は重要。 • 本記事は医学というよりは歴史をテーマにしたものと考えています。もち ろん、病原の解明、治療といった医学的観点がありますが、その過程も 含め、全体として撲滅へ向かう一連の流れを、時系列に沿った構成で記 述することにより、読み手の興味を引きつつ、最後まで読めるように工夫 したつもりです。 • 記事の構成レイアウトは画一化されたものである必要は決してなく、記事 のテーマによって構成されるのが好ましいと思います。百科事典として読 み手がわかり易い記述構成を考える作業こそ、Wikipedia編集の醍醐味 だと私は感じています。
  8. 8. フィールドワークで撮影した写真の例
  9. 9. 専門家の方々と良好な関係構築の期待 • Wikipediaは執筆編集者個人(ウィキペディアン)の研究成果を発表する場所ではない。 • 複数の適切な文献や資料の内容を元に、テーマの全体像を分かりやすく総合的にまとめるこ とがWikipedia記事の理想ではないか。 • それに加え、補助的な説明や具体的数値や事例など、その他の情報を肉付けすることで、記 事の内容をより充実させることになる。 • そのためには市販の書籍、図書館で閲覧可能な文献や資料だけでなく、研究者や専門家の 皆さんの研究成果(論文等)が出典として有用に使用できないだろうか。 • 専門家・研究者の方々がまとめられた研究結果のなかで、画像に関してはWikipediaの姉妹 プロジェクトである、Wikimedia Commonsに画像がアップロードされている例がある。 地方病 (日本住血吸虫症)の記事内で使用しているミヤイリガイ画像はまさにこの例です。 Kameda Y. & Kato M. (2011). "Terrestrial invasion of pomatiopsid gastropods in the heavy-snow region of the Japanese Archipelago". BMC Evolutionary Biology 11: 118. doi:10.1186/1471-2148-11-118. Figure 2R. Caption letter retouched.
  10. 10. まとめ • 今日、調べ物をするツールとしてweb検索が一般的には主流。検索上位 にWikipedia記事が表示されることは、スマホ利用者を含めインターネッ ト利用者は実感されていると思う。 • 『知りたい』と思うことを誰でも手軽に得る手段としてwikipediaの役割は 今後もより大きくなっていくと予想されます。 『情報』や『知識』は多くの 人々の間でさらに共有化していくのではないか。 • 新規に作成される記事だけでなく既存の記事を更に発展させ、内容の充 実化が日々行われている。Wikipediaは常により良い方向へ上書きされ ていくものであり、永遠に完成することはない。 • ゆるやかなスピードであるかもしれないが、今後、出典の不備、貧弱な内 容の発展が進んでいくのと同時に、専門家の方々のWikipediaに対する 信憑性への懸念が徐々に改善され、執筆だけでなく、出典のご提供、情 報のご提供等、何らかの形でWikipediaにご参加いただける方向へ向か うことを期待しています。

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