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Marketing 01 マーケティングは「販売を不要にする価値づくり」

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Marketing 01 マーケティングは「販売を不要にする価値づくり」

  1. 1. マーケティングは「販売を不要にする価値づくり」 埼⽟⼤学 経済経営系⼤学院 加藤拓⺒ マーケティング #01
  2. 2. 今回の位置付け 顧客管理と効果測定 戦略と実⾏ 価値づくりの考え⽅ 調査による客観的な状況把握 #01 マーケティング #02 ブランドマネジメント #04 市場調査 #08 ランダム化⽐較試験 #09 感性⼯学 #05 消費者⾏動 #06 回帰分析 #03 ロイヤルティとCRM #10 クチコミ #11 戦略と組織能⼒ 仮説⽴案 具現化 検証 #07 知覚品質 #12 まとめ
  3. 3. アジェンダ 1. 販売を不要にする価値づくり 2. 感性的価値の構成要素 3. コンセプトとは何か︖ 4. コンセプトとコピーの違い 5. まとめ
  4. 4. アジェンダ 1. 販売を不要にする価値づくり 2. 感性的価値の構成要素 3. コンセプトとは何か︖ 4. コンセプトとコピーの違い 5. まとめ
  5. 5. マーケティングとは何か︖
  6. 6. マーケティングとは the aim of marketing is to make selling superfluous1 マーケティングとは,販売を不要にする価値づくり Peter Drucker • 消費者がおのずと選択する価値をつくることがマーケティング • 消費者を理解し,消費者が価値と考えるものを創造する • マーケティングと販売は全く異なる,逆の考え⽅ 1: Drucker, P. (1993). Management: Tasks, Responsibilities, Practices. Harper Business. 販売や広告など「売る⾏為」ではなく,「消費者がおのずと購⼊する価値の創造」
  7. 7. 企業の存在意義 マーケティングは販売ではなく,イノベーションは技術開発ではない 顧客の創造 マーケティング 販売を不要にする価値づくり イノベーション 新しい満⾜の創出 Because the purpose of business is to create a customer, the business enterprise has only two basic functions: marketing and innovation.1 Peter Drucker 顧客の潜在的な困りごとを解決する顧客におのずと選ばれる価値づくり 1: Drucker, P. (1993). Management: Tasks, Responsibilities, Practices. Harper Business.
  8. 8. 価値とは何か︖
  9. 9. どちらの価値が⾼いか︖ 600 Yen 100 Yen
  10. 10. コストを下げるだけでなく,消費者の⽀払意思額を⾼めることが重要 価値とは コスト 販売価格 (付加)価値 価値とは「販売価格 ­ コスト」 • 価値とは「価格の⾼さ」ではない • 価値とは「機能の多さ」ではない • 価値とは「技術の新しさ」ではない
  11. 11. 600 Yen 100 Yen 「価値が⾼い≠価格が⾼い」であり,⾜せば⾜すほど良いわけでは断じてない < どちらの価値が⾼いか︖
  12. 12. 価値は問題解決から⽣まれる
  13. 13. 顧客はなぜその商品を買うのか︖ 「靴底をすり減らして頑張って売る」ことを美化せず,価値をつくることに集中すべき 顧客はなんらかのジョブを解決するために商品を買っている1 Clayton M. Christensen 1: Christensen, C. M., Cook, S., & Hall, T. (2005). Marketing malpractice. Harvard business review, 83(12), 74-83. 消費者⾃⾝も⾔われないと気づかない 潜在的な困りごと(実⽤⾯+⼼理⾯)を発⾒する 価値づくりに最も重要な仕事 この仕事をおろそかにすると,顧客にとってなんの役にも⽴たない商品を 頑張って売る仕事(≠マーケティング)に追われることになる
  14. 14. Nestleのマーケティングの定義 顧客が気づいていない問題を解決するため,現時点で不可能なことを可能にする仕事 マーケティングとは,顧客が抱える問題をいかに解決するか ⾼岡浩三. (2016). できない理由」に逃げていたら、真のイノベーションは⽣まれない. Diamond Harvard Business Review, 7/29, https://www.dhbr.net/articles/-/4396 Ø リノベーション︓顧客が既に認識している問題の解決 Ø イノベーション︓顧客がまだ認識していない問題の解決 扇⼦の時代における「部屋が暑い」という問題 • 扇⾵機の創造 (リノベーション) • エアコンの創造 (イノベーション)
  15. 15. 消費者の問題を解決する企業 流⾏を追っているのではなく,流⾏によらない消費者の問題を⾒続けて,解決し続ける Facebook 世界のつながりをより密にする2 誰もが話を共有する資格があるにもかかわらず, 世界が分断し,つながりを持てない問題を解決 1:Google. Googleについて. https://about.google/intl/ALL_jp/ (2020/4/1アクセス) 2: Facebook. Facebookのミッション. https://about.fb.com/ja/company-info/ (2020/4/1アクセス) Google 世界中の情報を整理し,世界中の⼈が アクセスできて使えるようにすること1 インターネットの普及に伴い,情報が氾濫し, アクセスすることが⼤変になる問題を解決
  16. 16. 顧客の困りごとを解決する価値の例 その困りごとの解決が,消費者の購⼊要因となり,⽀払意思額を⾼めるか︖ 困っている⼈ 価値 ⾚ちゃんの睡眠時間が不規則で 睡眠不⾜になっている⺟親 10時間吸収できるオムツで ⼀晩ぐっすり寝られる パンパース (P&G) 布団やソファー等が洗濯機では 洗えないがキレイにしたい⺟親 スプレーをかけるだけで 除菌・消臭ができる ファブリーズ (P&G) ⾃分をさらけ出してストレスを 発散できていない働く⼥性 思い切り叫んでストレスを 発散できる ハロウィン ホラーナイト (USJ) ⽇々の掃除が⾯倒な⼈ 「掃除」という作業を不要に ルンバ (iRobot)
  17. 17. 競争⼒のある製品 ≠ 儲かる製品
  18. 18. 消費者の⽀払意思額を⾼めると同時に,コストを下げる努⼒も重要 価値を⾼める2つの視点 コスト 販売価格 (付加)価値 価値とは「販売価格 ­ コスト」 • 消費者の⽀払意思額を⾼める(ブランドを⾼める) • コストを下げる (固定費をマネジメントする)
  19. 19. Steve Jobsのラインナップ改⾰ 消費者のことを考えず,安易に選択肢を増やすことは,価値づくりの怠慢である 1: 松井博. (2012).僕がアップルで学んだこと 環境を整えれば⼈が変わる、組織が変わる.アスキー・メディアワークス. Steve JobsはApple復帰後に,乱⽴していたPCのラインナップを 対象者×形状で4つに絞り,ブランドを⾼め,同時にコストを下げた1 iMac Power Mac iBook PowerBook DesktopLaptop ProfessionalConsumer Image from Apple
  20. 20. 製造業は「固定費回収モデル」 「価値を⾼める価値の具現化に必要な技術・設備」に投資した固定費で稼ぐ 北⼭⼀真. (2015). プロフィタブル・デザイン.⽇経BP. 定義 事業リスク 収益 ⽣産量に応じて増減 - 材料費 - ライン直接労務費 - 変動製造経費 - 物流費 変動費 リスク︓⼩ 計画より販売数が 少なくても損失は少 収益⼒︓⼩ 購⼊品のため ほとんどが外部⽀払 ⽣産量に関係なく⼀定 - 技術獲得費⽤ - 設備費 - ⼈件費 - ⼟地・建物 固定費 リスク︓⼤ 計画より販売数が 少ないと設備がムダ 収益⼒︓⼤ 設備等の稼働率向上 で投資を回収
  21. 21. 固定費マネジメントによる儲かるものづくり 顧客を置き去りにしたデータ収集・パーソナライズはCRMではない スマートフォンの画⾯サイズ数 Appleの思想 切削加⼯機に⼤規模投資しているからこそ 安易な設計変更をせずに価値向上に努める ⽇系メーカーの思想 個別機種ごとのコスト管理のため 調達部⾨がその時の最安値で⼊⼿ 北⼭⼀真. (2015). プロフィタブル・デザイン.⽇経BP.
  22. 22. Appleのものづくり技術への投資 Appleは⼯場を持たないファブレスだが,価値を⽣み出す固定費に投資して回収 1: 延岡健太郎. (2016). 製造業における 「サービス価値」 の創出. サービソロジー, 3(3), 4-11. 2: 北⼭⼀真. (2015). プロフィタブル・デザイン.⽇経BP. 3: Ugrind Productions. (2010). UNIBODY MACBOOK PRO DESIGN VIDEO. Youtube, https://www.youtube.com/watch?v=2-BwO_jBKxk Image from Ugrind Productions3 • 常識では考えられない莫⼤なコストがかかる1枚のアルミ板を削り出す unibodyによって,競合とは⼀線を画すデザイン・質感を実現1 • ⽣産技術はAppleが開発し,製造委託先に貸与している2
  23. 23. 「垂直統合は儲からない」のウソ 垂直統合だからこそ「固定費で稼ぐ」ことができ,競合他社が模倣できない強みとなる 北⼭⼀真. (2015). プロフィタブル・デザイン.⽇経BP. Apple ⽇系メーカー OS 商品 製造 パッケージング 販売店 サービス基盤 パッケージ特許 切削加⼯技術 OS 商品 製造 パッケージング 販売店 サービス基盤 他社まかせ 領域 Image from Apple
  24. 24. Appleの強さ 「顧客が喜び,他社が嫌がり,会社が儲かる」の実現による圧倒的な業績 感性的価値による 商品競争⼒ 垂直統合による 模倣しにくさ 固定費マネジメントによる 儲かる設計 OS 商品 製造 パッケージング 販売店 サービス基盤 Image from Apple
  25. 25. 価値づくりの基盤
  26. 26. 散⾒される第⼀声 どの部⾨であっても,メンバーの視点が価値づくりに揃うか否かで⼤きな差が⽣まれる • それって部⾨⽅針に沿ってるの︖(プロジェクトリーダー) • それって儲かるの︖(営業) • それって競合他社に勝ってるの︖(R&D) • それってクラウド使ってるの︖(IT) • それってどこが⽬新しいの︖(広報) • それって顧客は困っているの︖ • それって解決したら,顧客は喜んでお⾦を払うの︖
  27. 27. 価値づくりの基盤 思想・制度・⽂化なきまま,システム導⼊や⼈材獲得しても,猫に⼩判である 個⼈の あり⽅ 理論に基づき,ひたすらに考え・⼿を動かしてつくり, 顧客の知覚による検証を⾏い,それをもとに説得する 組織の あり⽅ どんな事情であれ,顧客に価値がないものは切り捨て, 科学的な検証結果に基づき,オープンに意思決定を⾏う ⼈事の あり⽅ 最重要リソースである「価値づくりをしている⼈」に 適切な環境・権限・報酬を⽀払う⼈事制度を整備する 価値の 考え⽅ 顧客の ”潜在的な” 困りごとを解決するコンセプトを ⾼い知覚品質(デザイン・UX)で,⼀貫して具現化する
  28. 28. マーケティングのプロセス コンセプト 検証 ラインナップ戦略 コンセプト 策定 知覚品質検証 価値づくり 市場反応 想定される社会変化・消費者の⽣活変化 を踏まえ,解決すべき問題は何か︖ どんな困っている⼈(実⽤+⼼理)に どんな価値を提供するのか︖ そのコンセプトは 購⼊意向・⽀払意思額 を⾼めるか︖ コンセプトを⼀貫して, かつ⾼い知覚品質で具現化できているか︖ 消費者はコンセプトを感じ取り, 購⼊⾏動を起こしているか︖ ブランド評価 消費者のロイヤルティ は⾼まっているか︖ 実⽤的+⼼理的な問題解決を⾼い知覚品質で具現化し,ロイヤルティを⾼める
  29. 29. (参考) 課題は解決するものではない 問題を解決するために⾏うべきタスクが課題であり,「問題は解決」・「課題は遂⾏」 あるべき姿 現状 乖離 問題 (problem, issue) 課題1 (task) ・・・ 課題N 「問題を解決する」 「課題を遂⾏する」
  30. 30. アジェンダ 1. 販売を不要にする価値づくり 2. 感性的価値の構成要素 3. コンセプトとは何か︖ 4. コンセプトとコピーの違い 5. まとめ
  31. 31. 実⽤的問題の解決 < ⼼理的問題の解決
  32. 32. モノがない時代 消費者の⼿の届く価格での提供が求められる モノが普及する時代 性能や品質の⾼さが求められる (機能的価値) モノが満遍なく普及した時代 ⾃分らしさの表現や⼼地よさが求められる (感性的価値) 消費者ニーズの変遷 多くの商品・サービスは段階的にニーズが変化し,最終的には感性的価値が求められる
  33. 33. モノがない時代 とにもかくにもマスク モノが普及する時代 ウイルスを⾼い性能で 除去してくれるマスク モノが満遍なく普及した時代⼩顔に⾒えるマスク 肌荒れしにくいマスク ⻑時間つけても疲れないマスク マスクの例だと モノの普及のフェーズによって,求める価値が機能から感性に移⾏していく
  34. 34. 価値の源泉の変化 競争領域は,⽇本の製造業が得意としていた「性能」の世界から,「感性」の世界へ 客観的な性能の世界 画素数 持続時間 燃費 主観的な感性の世界 ブランド デザイン ⼼地よさ
  35. 35. 時代は「価格競争」or「感性的価値競争」へ 1: 延岡健太郎. (2006). 意味的価値の創造: コモディティ化を回避するものづくり. 國⺠經濟雜誌, 194(6), 1-14. 技術発展のSカーブと競争領域1 多くの業界において,価格競争 or 感性的価値競争の選択が迫られている 時間 顧客ニーズ 性能 技術 技術競争 価格競争 感性的価値競争へ移⾏
  36. 36. なんとなくいいのはどっちだ︖ ボタン(機能)を増やし続けても,価値は⾼まらず,コストばかり⾼まる懸念 Image from Apple Remote
  37. 37. あるべき視座 競合他社よりも,技術を新しく,機能を多く,ボタンを多く,...では価格競争へ突⼊ 美しい⼥性を⼝説こうと思った時, ライバルの男がバラの花を10本贈ったら,君は15本贈るかい︖ そう思った時点で君の負けだ. ライバルが何をしようと関係ない. その⼥性が何を本当に望んでいるのかを,⾒極めることが重要なんだ. Steve Jobs Image from Wikipedia (Matthew Yohe)
  38. 38. 本⽥宗⼀郎が考える価値づくり 実⽤的(機能的)価値に加え,芸術的(感性的)価値を具備した「商品」で喜びを実現 事業の根本は,まず時代の⼤衆の要求を知ることである. 経営者として最も⼤切なことは,時代の騰勢を⾒通して会社の進路を定めること であるが,この判断の根底に,時代の要求を⾒抜く識⾒を必要とする. 製品に時代の要求が加味されて初めて商品となるのである. しかも,商品として現代の⼤衆に喜び迎えられるためには,実⽤的価値に加えて, 美的要求を具備しなければならない. 実⽤価値を卒業して美しさにまで到達したときに商品と⾔われるのである. 科学と芸術が調和した製品であって,初めて⼤衆に喜び迎えられる商品となる. 本⽥宗⼀郎. (2005). やりたいことをやれ. PHP研究所.
  39. 39. 商品・サービスの価値づくり 機能的価値を極めるだけではなく, ⼼理的価値に昇華させる必要がある 価値 = 機能的価値 (⼟台) 感性的価値 (差別化) • 耐久性や安全性等の基本的 要素を確実に保証する • これなしに,⼼理的価値 などありえない • コンセプト,デザイン,経験 など主観的な魅⼒を創造する • これなしに価格競争を脱する ことは難しい
  40. 40. 機能的価値と⼼理的価値 機能的価値を極めるだけではなく, ⼼理的価値に昇華させる必要がある 機能的価値 客観的 モノ 現状の改善 個別機能の積み上げ 専⾨家の評価 物理指標 感性的価値 主観的 モノ+コト 新しい満⾜ 総合体 消費者の評価 消費者の知覚
  41. 41. 感性的価値の源泉 コンセプトに基づいたデザインとUXの⼀貫した具現化が感性的価値を創造 Design User eXperience (UX) Concept 本質的な価値 (どんな困っている⼈に 何を提供するか︖) 機能の数百倍⾼い 価値を有する要素 消費者が最も接し 競争⼒に直結する要素
  42. 42. 機能的価値から感性的価値へ 消費者を置き去りにした多機能競争ではなく,消費者の感情に訴えかける競争 Apple・Dysonに代表されるように,機能の追及から脱して, 感情に訴える価値を重点を置くことは,強⼒なブランドロイヤリティを構築する1 コンセプト デザイン UX Third place 落ち着ける場所 温かみのある インテリア 穏やかなBGM ⾳のしない⾷器 1: Noble, C. H., Kumar, M. (2008). Using product design strategically to create deeper consumer connections. Business Horizons, 51(5), 441-450. Starbucks
  43. 43. 感性的価値の例 お客様の⾃⼰表現やこだわりによって"主観的"に意味付けることから⽣まれる価値 スターバックス 「第三の場所」で安らぎを Apple ⾰新的でクリエイティブに 情緒的価値 (使っていて⼼地よくいられる) ⾃⼰表現価値 (⾃分を良く⾒せられる) 外部貢献価値 (世の中に貢献できる) Coca-Cola いろはす おいしく環境に貢献
  44. 44. アジェンダ 1. 販売を不要にする価値づくり 2. 感性的価値の構成要素 3. コンセプトとは何か︖ 4. コンセプトとコピーの違い 5. まとめ
  45. 45. 実⽤的+⼼理的な問題を解決する,時代によらない価値の定義 コンセプトとは 顧客が「それなら喜んでお⾦を払いたいと感じる価値」を表し,意思決定の基準となる 流⾏ 性能・技術 デザイン・UX 本質的な 価値 Who What How どんな困っている⼈に? どんな価値を︖ どうやって提供するか︖ 狙いどころ
  46. 46. アップデート時のコンセプト策定プロセス 問題認識 時代洞察 今のお客様の 潜在的な問題 ⾼い確率で想定される 技術進化・社会変化が 新たに⽣み出す問題 Step1 Step2 本質的な価値の決定 Step3 コンセプト策定 Step4 input output 現在の潜在的問題と新たに想定される問題から,「守るべき」と「変えるべき」を決定 守るべき価値 + 変えるべき価値 誰に・何を・どのように
  47. 47. チームにおけるコンセプトの2つの役割 コンセプトは,あらゆるマーケティング活動の「発想の起点」+「評価の基準」となる 実現したい価値は何か︖ コンセプト どの案に決定すべきか︖ どうすれば具現化できるか︖ 評価基準
  48. 48. 「変わるもの」より「変わらないもの」 Amazonにとっては「価格・スピード・品揃え」が10年経っても変わらないもの 「10年後には何がどう変わっているか︖」ではなく, 「10年経っても変わらない価値は何か︖」の⽅が重要 Jeff Bezos 五味明⼦. (2012). 10年経っても変わらないもの,それがビジネスを⽀える戦略となる. 技術評論社. https://gihyo.jp/news/report/2012/12/0402
  49. 49. 解決したい問題があいまいなで, トレンドワードが並び, 忘れられた存在になっていないか︖ あるべきコンセプト 良いコンセプト 困っている消費者の顔が明確 チームが実現したい世界 時代に依存しない価値を⽬指す 誰にでもわかる⾔葉 チーム全員が常に意識 発想の起点となる 悪いコンセプト 誰が喜ぶのか不明 実現したい気持ちの⽋如 ひたすらトレンドの追従 伝わらない妙な英語 忘れられた存在 つまらない制約
  50. 50. 消費者が価値を判断する「真実の瞬間」 商品・広告・販売店を分断せず,コンセプトを⼀貫して具現化することが重要 Concept ZMOT (Zero Moment of Truth) Webサイトや⼝コミを⾒たとき FMOT (First Moment of Truth) 店頭で商品を⾒たとき SMOT (Second Moment of Truth) 商品・サービスを利⽤したとき Moment of Truth (真実の瞬間)
  51. 51. Starbucksのブランド(1/3) ­コンセプト イギリスのパブのような「くつろぐ場所」が希薄だったアメリカの困りごと解決 Third Place1 家庭や職場を離れ,くつろいだ雰囲気の中で気分転換する場所 • ゆったりとした机とイス • リラックスできる⾳楽 • おいしいコーヒー • 全席禁煙でコーヒーが⾹る空間 1: Schultz, H. (2012). Pour your heart into it: How Starbucks built a company one cup at a time. Hachette UK. Starbucks
  52. 52. 競争⼒は⾶び道具ではなく,「それならお⾦を払いたい」コンセプトと⼀貫した具現化 Third Place 家庭や職場を離れ,くつろいだ雰囲気の中で気分転換する場所 店舗の雰囲気 ・ゆったりしたイスとテーブル, 間接照明, 緩やかなBGM ・カチャカチャ鳴らさないため,紙コップの使⽤ ⽴地 ・店内に⼊るまでは,極⼒テンションが⾼い状況が好ましいため, オフィス街やショッピング街に出店 店舗運営 ・サービス⾯で細やかなコントロールが必要なため,直営店で運営 スタッフ ・訪れる顧客をほっとさせる振る舞いをする「バリスタ」の育成 メニュー ・第⼀の場所(家), 第⼆の場所(オフィス)では飲む機会が少ない, ラテやマキアートを⽤意 Starbucksのブランド(2/3) ­具現化 楠⽊建. (2010). ストーリーとしての競争戦略: 優れた戦略の条件. 東洋経済新報社.
  53. 53. ミッション・コンセプト・パーソナリティ・バリューが⼀貫して体現されている VALUE PERSONALITY CONCEPT MISSION ・最⾼のコーヒー体験 ・⼼⾝ともにリラックスできる空間 ・⾃分の居場所を感じられるコミュニティ 上質・洗練・誠実・フレンドリー サードプレイス 家でも職場でもない快適な空間 ⼈々の⼼を豊かで活⼒あるものにする Starbucksのブランド(3/3) ­ブランド構造
  54. 54. iPodのコンセプトと具現化 (2001年) 機能要件 ・5GBの超薄型ハードディスク ・最⾼1,000曲までのCD品質の⾳楽を保存 ・CD1枚の⾳楽を10秒以内でダウンロード デザイン要件 ・スクロールホイールにより素早く⽚⼿で操作 ・ほんの数秒で⽬的の曲を探せるUX ・ポケットに⼊るシンプルなデザイン Who What How 楽曲の⼊れ替えに不便を感じている⼀般消費者 全ての楽曲をポケットに⼊れて聴くことができる 1,000曲がCD品質で⼊るポケットサイズの記憶媒体 コンセプトの具現化に必要な機能要件・デザイン要件を導出し,⼀貫して具現化 Apple. (2001).アップル、iPodを発表. 10/24, https://www.apple.com/jp/newsroom/2001/10/23Apple-Presents-iPod/ (2020/4/1アクセス) ポケットに1,000曲を
  55. 55. ロングセラーのコンセプト Who What How 家族でやりたいのに1⼈でゲームしている⼈ お⺟さんに嫌われないで家族でできるゲーム お⺟さんでも⼿軽に使える新しいコントローラ 本質的な価値 鍋で⼀家団欒を楽しむのと 同じようにゲームをする Who What How 戦後復興さなかの⽇本の悪路を移動する⼈ そば屋の出前の⽅が⽚⼿で運転できる 裸のエンジンからの熱さを守るレッグシールド 本質的な価値 ⾼性能でありながら誰でも 簡単に運転ができるバイク 1: ⽟樹真⼀郎. (2012). コンセプトのつくりかた. ダイヤモンド社 2: 本⽥技研⼯業. スーパーカブはいかにして誕⽣したか︖. https://www.honda.co.jp/supercub-anniv/story/ 1958年 Honda スーパーカブ2 2006年 Nintendo Wii1 Image from Nintendo Image from Honda
  56. 56. 1,200デニールのタイツ ⽇⽤品でも顧客の困りごとはあり, それを⼀貫して具現化することで価値に Bobon21. (2017). 新作暖か〜いタイツ. https://bobon21.jp/shopdetail/000000000473/ 1,200デニールの着圧タイツ ⼀⾒すると, うっすら肌が透けて⾒えるが, その実態は驚愕の厚さ 冬でも, 透け感のあるタイツを穿きたい けど, 寒くて耐えられず, 真っ⿊に. • 表側は⿊だが, 裏⽣地が肌⾊で, それが透けて⾒える • 普通の⿊タイツが60-80デニールに対して, 1,200デニール • 分厚いけれどしっかり着圧効果があるので, ⾜をほっそり⾒せられる
  57. 57. コンセプトの策定・具現化プロセス 客観的な 状況の把握 仮説づくり 価値づくり 仮説⽴証客観的な 状況の把握 主観的な 仮説⽴案 仮説の 具現化 科学的な 仮説検証 • 認知 • 購⼊意向 • ⽀払意思額 • 推奨意向 • ブランドイメージ • 困りごとの発⾒ • コンセプト策定 - 何に困っている⼈に - 何を - どのように • コンセプト具現化 • ⾼い知覚品質 • プロトタイピング による繰り返し • 科学的根拠に 基づく意思決定 お⾦を払ってでも解決して欲しい困りごとは,消費者に聞くものではなく, データと理論をもとに考え抜いた仮説を何度も検証しながら創造する 仮説検証の繰り返しから,顧客に「それなら⾼いお⾦を払っても欲しい」と⾔われる価値
  58. 58. 困りごとを探す切り⼝ 着⽬点 潜在的な欲求 無消費 間にあわせの 対処策 客観的な消費者の知覚・⾏動を観察し,理論を照らし合わせ,ひたすら考える Christensen, C., et al. (2016). Know Your Customersʼ “Jobs to Be Done”. Harvard Business Review, September 2016 極⼒避けたい こと 意外な 使われ⽅ 内容 ⾔われない/出くわさないと気づかない, まだ解決されていないこと 困りごとを満たす解決策を⾒つけられず 放置されていること 現在の解決策に満⾜していないが, 仕⽅ なく⾃分で⼯夫して対処していること 進んでやりたいことと同じくらいの数が 存在する, 極⼒やりたくないこと 企業の想定と異なる商品の使われ⽅で 解決されている困りごと 例 SONY WALKMAN 外出先でモチベーションを上げる ために⾳楽を直前まで聞きたい クラーク社 成⼈⽤オムツ 恥ずかしさから, 成⼈⽤オムツを お店に買いに⾏けない INGダイレクト 1ドル⼝座 貯蓄する⼤切さを⼦どもに教える ためにタンス預⾦で実践する⽗ CVS ミニッツクリニック ⼦供の⾵邪でわざわざ病院に⾏き たくないが, 処⽅箋は必要な⺟親 P&G ナイキル, ズーキル ⾵邪薬のナイキルが不要な成分の ない睡眠剤として使われていた
  59. 59. アジェンダ 1. 販売を不要にする価値づくり 2. 感性的価値の構成要素 3. コンセプトとは何か︖ 4. コンセプトとコピーの違い 5. まとめ
  60. 60. コンセプトとコピー コピーはコンセプトを簡潔に伝えるものだが,順番としてはコンセプト・具現化が先 コンセプトは「価値の定義(Who/What/How)」であり, コピーは「コンセプトを簡潔に伝えるメッセージ」 コピー コンセプトを簡潔に伝え, 消費者の⼼を捉えるメッセージ “1,000曲をポケットに” (iPod) 商品・サービスコンセプト 実⽤的+⼼理的な問題を解決する 時代によらない価値の定義 Who What How 楽曲の⼊れ替えに不便を感じている⼈ 全ての楽曲をポケットに⼊れて聴くことができる ポケットサイズで1,000曲⼊る記憶媒体
  61. 61. 散⾒される悪い例 あいまいな コンセプト 解決したい問題が定まっておらず,困っている消費者の顔がなく, 機能を詰め込んだ商品・サービス • いい感じの⾔葉による”お化粧”のコピー ü 表⾯だけ取り繕って聞き⼼地の良い⾔葉を並べる (例︓洗練, 厳選, 究極, プレミアム, ⾰新, 変化, DNA) ü 内容がないまま,コピーやクリエイティブに頼ろうとする • 搭載した機能をひたすら列挙したコピー ü 機能的価値から脱却できぬまま,機能を羅列 ü 「技術の新しさ」や「機能の多さ」を訴求 巧みにうまい⾔葉で騙せたとしても,再購⼊に繋がらず,ロイヤルティも⾼まらない
  62. 62. 「コンセプトに基づく訴求」と「詰め合わせの訴求」 世界を変えるプロのための究極の仕事道具 • 最もカラフルなディスプレイ • 進化が⼤きく聴こえるスピーカー • さらにきびきびと反応するキーボード • ワイヤレスな世界のための完全装備 Apple MacBook1 ⽇系メーカーZ社 スーパーセールキャンペーン • 液晶13.0型Full HD • 光学式ドライブ内蔵で約1.15kg • 65cm落下 & 180kgf加圧振動試験 • 第7世代プロセッサ コンセプトと具現化した要素を訴求する企業と,搭載した機能リストを訴求する企業 1: Apple MacBook 公式Webサイト. 2016/11/09, https://www.apple.com/jp/mac/
  63. 63. 価値を伝えるコピー
  64. 64. “ あなたもナチュラルビッグアイ ” MAYBELLINE NY 「⾃然に⽬を⼤きくする」という価値をストレートに訴求 Image from: MAYBELLINE NEW YORK
  65. 65. RIZAP 3⽇坊主という問題に対し「必ず痩せる」価値をBefore/Afterの実例と共に伝える “ 結果にコミットする ” Image from: RIZAP
  66. 66. MacBook Pro 価値を創造するプロフェッショナルが最⾼のパフォーマンスを出すための仕事道具 Image from: Apple MacBook Pro “ あらゆるプロのための究極の仕事道具 ”
  67. 67. アジェンダ 1. 販売を不要にする価値づくり 2. 感性的価値の構成要素 3. コンセプトとは何か︖ 4. コンセプトとコピーの違い 5. まとめ
  68. 68. まとめ • 学問としての経営学・マーケティングが提供する理論・概念は, 「複雑な事象をある⾓度で切り取ってシンプルに捉える思考の軸」 • マーケティングとは,販売を不要にする価値づくりであり,消費者が おのずと選択する価値をつくることが最も重要である • 価値は問題解決から⽣まれるため,潜在的な困りごと(実⽤+⼼理)を 理解することが第⼀歩となる • 近年は,消費者が主観的に感じる感性的価値の⽅が重視される傾向 • コンセプトは「誰に(どんな困っている⼈に)・何を・どのように」を 定義した,時代や⽂化に依存しない本質的な価値
  69. 69. END https://researchmap.jp/hm_tk

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