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自死遺児の語りにおける
自己開示・発見・リカバリー
~テキストマイニングによる手記『自殺って
言えなかった。』の混合研究法的分析~
加藤恵美 いとうたけひこ 井上孝代
(静岡県立大学短期大学部) (和光大学) (明治学院大学)
日本心理臨床学会...
【問題】①自殺対策における遺族支援
• 2001年12月3日、10人の自死遺児(以下遺児)たち
が首相官邸を訪れ、「自殺防止の提言」を陳情した。
その日、7人の遺児が実名を公表、顔も隠さずに記
者発表に臨んだ(自死遺児編集委員会・あしなが
育英...
【問題】②自死遺児の現状と支援の課題
• 西田(2012)「自殺対策基本法では遺族への支援が明記されて
以後、『大人の分かち合いの場』は全国各地に増えていったが、
子どものグリーフサポートを提供する場は増えなかった」
• 自死遺児への支援が急が...
【問題】③自死遺児の自助グループにお
ける自己開示の契機
• 遺児がトラウマ体験を抱えている可能性や、周囲の大人から
付与される社会的スティグマ、そして、出来事の原因が自分に
あるなどの誤解を解く機会が得られにくいことや、そもそも自殺
であるこ...
【目的】自死遺児の自己開示の契機を解明
• 自死遺児の作文より
• (1)自死遺児の語りの特徴と、
• (2)どのようにして自己開示に至ったか、
• (3)その契機について明らかにする。
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【方法】
• 分析対象は、あしなが育英会
が発行した遺児(遺族含む)の
手記『自殺って言えなかっ
た。』の文庫本(2005)であり、
全31編のうち「子ども」の手記
18編である。
• 18編の手記をタブ区切りにし、
テキストデータを作成した。...
【結果】①親を自殺で亡くした子どもの複
雑な思い
• 遺児の手記における単語出現頻度(図1)のうち、名詞で最も多いのは
481回出現の「父」であった。
• 遺児の手記18編すべて死別したのは「父」であった。原文参照すると、
• 「自殺が減ってほ...
図1 単語出現頻度(上位20語)
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【結果】②親の自死への社会的スティ
グマと子どもに与える影響
• 191回出現の名詞「自殺」を原文参照すると、
• 「『どうしてお父さんが死んだのかと人に聞かれた
ら、病気で死んだって言いなさい』と強く言われて、
自殺はいけないこと、人に知られ...
【結果】③多出しないが重要な単語
「見る」「聞く」「良い」「考える」
• 「見る」・「聞く」・「良い」 ・ 「考える」を原文参照すると、
• 「私と同じような体験をした自死遺児が泣きながら自分の体験を語る
姿を見て、彼らの話を自分の体験と重ね合...
【考察】①遺児の自己開示に至る契機と
自助グループの意味
• 遺児たちの自助グループ「つどい」は、「ピア」と
の出会いであり(小平・いとう,2018)、そこで自
己開示を強制されない安心感を持ちながら、仲
間が語る姿を見聞きする体験を通して、自...
【考察】②遺児の自己開示に至る契機と
自助グループの意味
• この過程に、信頼関係に支えられた場(Peer)
で自己開示(Uncovery)と発見(Discovery)と
回復(Recovery)の循環(小平・いとう,2018)が
行われたと言...
【本研究の元論文】
• 加藤恵美・いとうたけひこ・井上孝代,2018,自
死遺児の語りにおける自己開示・発見・リカバ
リーの過程:手記『自殺って言えなかった』の
テキストマイニング分析,マクロ・カウンセリン
グ研究,11,12-22.
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【文献】
• 伊藤恵美・いとうたけひこ・井上孝代,2013, 自死遺族の手記とその
分析方法に関する考察:心的外傷後成長(PTG)に焦点を当てて,
静岡県立大学短期大学部研究紀要,27-W 号,1-9.
• 自死遺児編集委員会・あしなが育英会編...
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G313 加藤恵美・いとうたけひこ・井上孝代 (2019, 6月). 自死遺児の語りにおける自己開示・発見・リカバリー:テキストマイニングによる手記『自殺って言えなかった。』の混合研究法的分析. 日本心理臨床学会第38回大会

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【問題と目的】 2006年に自殺対策基本法が施行されたが、自死遺児(以下遺児)への支援は十分でない。社会的スティグマや、親が自死であると知らされていない「情報や意思疎通のゆがみ」(大倉,2016)などの問題があり、そもそも遺児の存在が見えにくい。とりわけ、社会的スティグマの付与はセルフスティグマとなり、自尊心や自己効力感を低下させる要因となるため、子どもの発達上の危機と言え、支援が急がれる。水津(2011)は、遺児の手記『自殺って言えなかった。』(自死遺児編集委員会・あしなが育英会,2002)を対象に、「悲嘆(grief)」をめぐる遺児の「語り」の変容可能性について検討し、語りの特徴を見出すとともに、スティグマにより、封じられていた“語り”が可能になった理由が明らかにされていない点を問題にしている。困難がありながら、語れるようになった過程を明らかにすることは、遺児支援のための知見として有効と考え、自死遺児としての体験及び自助グループでの体験が綴られた同手記をテキストマイニング分析し、どのようにして自己開示に至ったか、その契機について検討することを目的とした。

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G313 加藤恵美・いとうたけひこ・井上孝代 (2019, 6月). 自死遺児の語りにおける自己開示・発見・リカバリー:テキストマイニングによる手記『自殺って言えなかった。』の混合研究法的分析. 日本心理臨床学会第38回大会

  1. 1. 自死遺児の語りにおける 自己開示・発見・リカバリー ~テキストマイニングによる手記『自殺って 言えなかった。』の混合研究法的分析~ 加藤恵美 いとうたけひこ 井上孝代 (静岡県立大学短期大学部) (和光大学) (明治学院大学) 日本心理臨床学会第38回大会 ポスター発表 PB5-19 2019年6月9日(日)10:00~12:00 パシフィコ横浜 加藤恵美:emi@kato.jp1
  2. 2. 【問題】①自殺対策における遺族支援 • 2001年12月3日、10人の自死遺児(以下遺児)たち が首相官邸を訪れ、「自殺防止の提言」を陳情した。 その日、7人の遺児が実名を公表、顔も隠さずに記 者発表に臨んだ(自死遺児編集委員会・あしなが 育英会,2005:264)。 • この後、2006年に自殺対策基本法が施行され、 2007年に策定された自殺総合対策大綱(内閣府, 2007)では、自死遺族支援が重点課題として明記 され、厚生労働省(2017)にも引き続いている重点 施策である。 • これらの施策は、自死が社会全体で解決すべき問 題であることを認識させる大きな推進力のひとつに なった。 2
  3. 3. 【問題】②自死遺児の現状と支援の課題 • 西田(2012)「自殺対策基本法では遺族への支援が明記されて 以後、『大人の分かち合いの場』は全国各地に増えていったが、 子どものグリーフサポートを提供する場は増えなかった」 • 自死遺児への支援が急がれている。 • あしなが育英会は、遺児の経済的支援と心のケアを目的とした 自助グループ「つどい」を開催している。 • 自らの体験を綴った文集『自殺って言えない』(2000)を発行、 • その後単行本『自殺って言えなかった。』(2005)を出版。 • 遺児が、公の場で、名前や顔を出し、自死遺児であることを表明 することは容易でない(2005:250)。 • 伊藤・いとう・井上(2013)は、2000年以前に発行されていない理 由を、自死への社会的スティグマと、遺族・遺児に内在化された セルフスティグマにあると考察している。 3
  4. 4. 【問題】③自死遺児の自助グループにお ける自己開示の契機 • 遺児がトラウマ体験を抱えている可能性や、周囲の大人から 付与される社会的スティグマ、そして、出来事の原因が自分に あるなどの誤解を解く機会が得られにくいことや、そもそも自殺 であることを知らされていないという「情報や意思疎通のゆが み」(大倉,2016)などの問題がある。 • 遺児の存在は可視化されにくく、その実態を知ることは難しい。 • 水津(2011)は、手記『自殺って言えなかった。』において、自死 遺児としてのスティグマがしみ込んだ自己物語の変容の可能 性が語られているが、なぜ強固なスティグマがしみ込み、封じ られていた語りが可能になったのかは手記だけでは追い切れ ていないと問題提起している。 • 遺児が抱える様々な困難がありながら、どのようにして語るこ とが可能となったのかを明らかにすることは、遺児支援のため の知見として有効と考える。 4
  5. 5. 【目的】自死遺児の自己開示の契機を解明 • 自死遺児の作文より • (1)自死遺児の語りの特徴と、 • (2)どのようにして自己開示に至ったか、 • (3)その契機について明らかにする。 5
  6. 6. 【方法】 • 分析対象は、あしなが育英会 が発行した遺児(遺族含む)の 手記『自殺って言えなかっ た。』の文庫本(2005)であり、 全31編のうち「子ども」の手記 18編である。 • 18編の手記をタブ区切りにし、 テキストデータを作成した。 • テキストデータは、Text Mining Studioによるテキストマイニン グ分析を行った。 6
  7. 7. 【結果】①親を自殺で亡くした子どもの複 雑な思い • 遺児の手記における単語出現頻度(図1)のうち、名詞で最も多いのは 481回出現の「父」であった。 • 遺児の手記18編すべて死別したのは「父」であった。原文参照すると、 • 「自殺が減ってほしい(中略)でも減ってほしいと訴えると、父の死を否 定しているような気がして‥」 • 次いで253回出現の動詞「思う」を原文参照すると、 • 「父親を自殺で亡くすという体験は、ほんとうに大変なこと、つらいこと であったと思います。」 • 「いまだに自信のもてない自分と向き合い(中略)夢に向かって、これ からも進んでいきたいと思っています。」 • 親の自死への両価的感情や自らの体験の重さを感じながらも、自分 の内面と人生に向き合おうとする遺児の複雑な思いが語られていた。 7
  8. 8. 図1 単語出現頻度(上位20語) 8
  9. 9. 【結果】②親の自死への社会的スティ グマと子どもに与える影響 • 191回出現の名詞「自殺」を原文参照すると、 • 「『どうしてお父さんが死んだのかと人に聞かれた ら、病気で死んだって言いなさい』と強く言われて、 自殺はいけないこと、人に知られちゃいけないこと なんだと思った。」 • 「自分も父のように自殺で死ぬんじゃないか」とい う恐怖」 • 周囲の大人の自死への認識が、子どもの受け止 め方に影響を与えていた。 9
  10. 10. 【結果】③多出しないが重要な単語 「見る」「聞く」「良い」「考える」 • 「見る」・「聞く」・「良い」 ・ 「考える」を原文参照すると、 • 「私と同じような体験をした自死遺児が泣きながら自分の体験を語る 姿を見て、彼らの話を自分の体験と重ね合わせて共感することがで きたのです。」 • 「他の人の話を聞きながら、初めて自分の気持ちに気づくこともたくさ んありました。」 • 「しゃべってもいいのだ、と思ったのです。」 • 「何とか話をすることができました。このとき初めて、父親の死につい て深く考え、向き合うことができた」 • 遺児は、自助グループにおいて体験の自己開示を聞いた際の衝撃と、 価値観の変化を語っていた。さらに、安全な環境でのその体験が自 己開示の契機となったこと、父の自死について自助グループの中で 考えることの重要性が語られていた。 10
  11. 11. 【考察】①遺児の自己開示に至る契機と 自助グループの意味 • 遺児たちの自助グループ「つどい」は、「ピア」と の出会いであり(小平・いとう,2018)、そこで自 己開示を強制されない安心感を持ちながら、仲 間が語る姿を見聞きする体験を通して、自分の 体験は語っても良いのだと気づくことが自己開 示の契機となった。 • 遺児たちは、複雑な思いを抱えながら、自助グ ループの仲間に支えられ、自分たちの体験の意 味を再構成してリカバリーに向かっていた。 11
  12. 12. 【考察】②遺児の自己開示に至る契機と 自助グループの意味 • この過程に、信頼関係に支えられた場(Peer) で自己開示(Uncovery)と発見(Discovery)と 回復(Recovery)の循環(小平・いとう,2018)が 行われたと言える。 • さまざまなきっかけにより、遺児が自助グルー プにアクセスができることが重要である。 12
  13. 13. 【本研究の元論文】 • 加藤恵美・いとうたけひこ・井上孝代,2018,自 死遺児の語りにおける自己開示・発見・リカバ リーの過程:手記『自殺って言えなかった』の テキストマイニング分析,マクロ・カウンセリン グ研究,11,12-22. 13
  14. 14. 【文献】 • 伊藤恵美・いとうたけひこ・井上孝代,2013, 自死遺族の手記とその 分析方法に関する考察:心的外傷後成長(PTG)に焦点を当てて, 静岡県立大学短期大学部研究紀要,27-W 号,1-9. • 自死遺児編集委員会・あしなが育英会編,2002/ 2005,自殺って言 えなかった,サンマーク出版. • 小平朋江・いとうたけひこ (2018, 6月). メンタルヘルスマガジン『こ ころの元気+』を研究する。 第5回こころのバリアフリー研究会総会 6月3日 NTT東日本関東病院、東京 • 水津嘉克,2011,自死遺児の語りにおける物語変容の可能性,東京 学芸大学紀要,62,157-165. • 西田正弘,2012,家族を亡くした子どもたちのためのグリーフサポー ト:当事者としての子どもに寄り添うために,世界の児童と母性, 73,29-36. • 大倉高志,2016,親が自殺で亡くなった事実を子どもにどう伝える か? ,東海学院大学紀要,10,70-95. 14

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