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離婚後の子どもの“荒れ”への保育
<あいまいな喪失>の一事例
加藤恵美 いとうたけひこ 井上孝代
(静岡県立大学短期大学部) (和光大学) (明治学院大学)
日本カウンセリング学会第51回大会 ポスター発表p-A11
2018年9月16日(日)...
【問題】①あいまいな喪失
• 病気や事故で親を失い、自死や離婚など
“あいまいな喪失”(Boss 1999)を体験し、
トラウマを抱える子どもも少なくない。
• 愛着の対象であり、生活基盤を支える親
を失うことは、子どもの発達上の危機とい
える...
【問題】②子どものあいまいな喪失体験
• 子どもにとって親との離別は、愛着
の対象を失う悲嘆の体験であり、発
達の危機といえる。
• 平木(2012)は、親との離別のうち、
離婚も子どもにとっては、<あいま
いな喪失>体験であると指摘する。
•...
【目的】子どもの喪失体験と保育対応の
実態と課題の解明
• 本研究では、親との離別体験をした子どもへの
保育士による支援法の開発を目指し、保育士へ
の聞き取りをもとに、
• 保育現場における喪失体験をした子どもの実態
と、
• 保育士が、そのよ...
【方法】園長・主任の面接調査における事例研究
• 研究会所属の保育園を中心とした6園の園長と
主任計11名を対象に半構造化面接を行った。
• 事前・調査時に趣旨説明と協力依頼を口頭と
文書で行い、承諾を得られた対象者にText
Mining S...
【結果】①保育士A氏の事例
• 離婚後1年経過した単親世帯の母親が、保育
園へ電話を寄越した。
• 親子でつかみ合いをした末、女児B(5歳)が部
屋に灯油をまいたとのことであった。
• 園長と担任A氏が自宅に駆けつけた。
• 膝を抱えて黙る女児...
図1 保育士A氏の単語出現頻度(上位20語)
7
【結果】②動詞「思う」
• A氏の単語出現頻度(図1)のうち、59回の動詞「思う」を
原文参照すると、
• 「今思えば…」と振り返り、
• 「あの時のB(女児)の気持ちに触れた人は…一人も、今
思えば、いなくて、唯一できた私も、この問題は…ナー...
【結果】③動詞「わからない」
• 21回の動詞「分からない」を原文参照すると、
• 「結局自分が何をしていいのか分からなくて、家に出向いたり、話を聞いたりし
て…」
• と不安を感じつつの保育について述べていた。
• 「その時(灯油をまいた直後...
【結果】④名詞「言葉」
• 12回出現の名詞「言葉」を原文参照すると、
• 「5歳児の言葉で、どんなにつたなくても、言葉が、丁
寧な説明ができなくても…」、
• 「うまく言葉にはきっと出来ないから、嫌いとか、そう
いう単純な言葉でしかきっと言え...
【考察】①保育士の戸惑いと困り感
• 保育士の「戸惑い」が顕著であった。
• それは、本ケースの理解の枠組みが無いため、
自分の力量への不安感と考えられる。
• 「気になる子」への保育士の「困り感」に関しては
実践と研究があるが、そこに子どもの...
【考察】②保育士からの支援・援助
• 女児の“荒れた”状態への一定の関わりは
行ったが、女児の言葉や気持ちを十分にわ
かることができなかったので、今後の勉強が
必要と述べている。
• 保育士は、従来の保育内容に加えて、子ども
の<あいまいな喪失...
【考察】③保育士への支援・教育
• 事例から、加藤・いとう・井上(2018)と共通し
て、
• 保育士が子どもの喪失体験とグリーフに対処
する際の今後の課題として、
• 保護者支援および親との離別体験をした子
どものトラウマケアとその予防に関す...
保育所保育指針 平成29年度告示
• 3 環境及び衛生管理並びに安全管理
• (2) 事故防止及び安全対策
• ウ 保育中の事故の発生に備え、施設内外
の危険箇所の点検や訓練を実施するととも
に、外部からの不審者等の侵入防止のため
の措置や訓練...
保育所保育指針解説書(平成30年3月)
• 子どもたちが緊急事態を目前に体験した場合
には、強い恐怖感、不安感により、情緒的に
不安定になる場合もある(心的外傷後ストレス
障害:PTSD)。
• このような場合には、小児精神科医や臨床心
理士等...
【文献】
• Boss, P. (2006) Loss, trauma, and resilience: Therapeutic
work with ambiguous loss. Norton.(中島聡美・石井千賀
子監訳 2015 あいまい...
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G296加藤恵美・井上孝代・いとうたけひこ(2018, 9月)離婚後の子どもの“荒れ”への保育:<あいまいな喪失>の一事例 日本カウンセリング学会第51回大会 9/16-17 松本大学

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抄録
問題と目的
 子どもにとって親との離別は、愛着の対象を失う悲嘆の体験であり、発達の危機といえる。平木(2012)は、親との離別のうち、離婚も子どもにとっては、<あいまいな喪失>体験であると指摘する。今日、子どもの悲嘆やトラウマへの支援が急務だが、保育現場では殆どその対策が講じられていない。そこで本研究では、保育士による支援法の開発を目指し、保育士への聞き取りをもとに、保育現場における子どもの喪失体験への対応の実態を明らかにすることを目的とする。
方法
研究会所属の6保育園の園長と主任計11名を対象に半構造化面接を行った。事前・調査時に趣旨説明と協力依頼を口頭と文書で行い、承諾を得られた対象者にText Mining Studio Ver.6.1でテキストマイニング分析を行った。本稿は11名のうち、特に離婚後の子どもの対応の難しさを語ったA氏を分析対象とした。
結果
【A氏の事例】離婚後1年経過した単親世帯の母親が保育園へ電話を寄越し、親子でつかみ合いをした末、女児B(5歳)が部屋に灯油をまいたとのことで、園長と担任A氏が自宅に駆けつけた。膝を抱えて黙る女児にA氏が対応した。以後、女児と母親とも本件について話し合うことなくX+9年が経過した。
 A氏の単語出現頻度(図1)のうち、59回の動詞「思う」を原文参照すると、「今思えば…」と振り返り、「あの時のB(女児)の気持ちに触れた人は…一人も、今思えば、いなくて、唯一できた私も、この問題は…ナーバスだからやめとこって…」と女児と向き合うことへの戸惑いを述べていた。また、「(親子)二人だけの空間というのは、息詰まるものがもしかしてあって…だからってその環境を私たちが変えられる訳ではないので、今も何が支援できるのかなあって、ちょっと勉強したいなあとは思うんですけど…」と女児の環境の理解とその支援を学びたいという意欲を語っていた。
 21回の動詞「分かる+ない」を原文参照すると、「結局自分が何をしていいのか分からなくて、家に出向いたり、話を聞いたりして…」と不安を感じつつの保育について述べていた。「その時(灯油をまいた直後、保育士に)、Bちゃんが言ったのは、なんかなくなればいいみたいな、家がってみたいなことを言っていたので、そういう発想をしているっていう、ことすらも、分からなかったので」、「保育園での中で楽しいことをすればいいなっていう風に思ってたので、その話はしたことなく、子どもとはしたことはないので、直接の気持ちはわからないんですけど」と子どもの気持ちがわからなかったことを語っていた。しかし、「いろんなお子さんと接した時に、なんか自分自身ももうちょっと、もうちょっと踏み込んでみようとか、それがいいかは分からないんですけど…」と経験を踏まえた今後の取り組みへの意欲と戸惑いについて述べていた。
 12回出現の名詞「言葉」を原文参照すると、「5歳児の言葉で、どんなにつたなくても、言葉が、丁寧な説明ができなくても…」、「うまく言葉にはきっと出来ないから、嫌いとか、そういう単純な言葉でしかきっと言えないと思うんですけど、その単純な言葉の裏にあるいろんな気持ち…(中略)聞いてあげれば、なんか聞いてあげたかったなあって今…」と、女児の言葉での感情表出を促し、保障する必要性があったのではないかと後悔を述べていた。
図1 A氏の単語出現頻度
考察
 保育士の「戸惑い」が顕著であった。それは、本ケースの理解の枠組みが無いため、自分の力量への不安感と考えられる。「気になる子」への保育士の「困り感」に関しては実践と研究があるが、そこに子どもの喪失体験は含まれず、戸惑うのは当然であろう。また、女児の“荒れた”状態への一定の関わりは行ったが、女児の言葉や気持ちを十分にわかることができなかったので、今後の勉強が必要と述べている。保育士は、従来の保育内容に加えて、<あいまいな喪失>を含めた親との離別体験に伴う悲嘆やトラウマへのケアに関する知識とスキルを身につける必要があると考える。
引用文献
平木典子,2012,離婚・関係の解消による喪失,精神療法,38(4), 47-51.
キーワード:,あいまいな喪失,トラウマケア,保育
本研究はJSPS科研費17K04297の助成のもと行った。

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G296加藤恵美・井上孝代・いとうたけひこ(2018, 9月)離婚後の子どもの“荒れ”への保育:<あいまいな喪失>の一事例 日本カウンセリング学会第51回大会 9/16-17 松本大学

  1. 1. 離婚後の子どもの“荒れ”への保育 <あいまいな喪失>の一事例 加藤恵美 いとうたけひこ 井上孝代 (静岡県立大学短期大学部) (和光大学) (明治学院大学) 日本カウンセリング学会第51回大会 ポスター発表p-A11 2018年9月16日(日)10:00~12:00 会場511 松本大学 加藤恵美 itoemi@u-shizuoka-ken.ac.jp 1
  2. 2. 【問題】①あいまいな喪失 • 病気や事故で親を失い、自死や離婚など “あいまいな喪失”(Boss 1999)を体験し、 トラウマを抱える子どもも少なくない。 • 愛着の対象であり、生活基盤を支える親 を失うことは、子どもの発達上の危機とい える。 • しかし、保育士養成課程および保育所保 育指針において、親との離別という“喪失 体験”をした子どもの理解とケアは扱われ ていない。 2
  3. 3. 【問題】②子どものあいまいな喪失体験 • 子どもにとって親との離別は、愛着 の対象を失う悲嘆の体験であり、発 達の危機といえる。 • 平木(2012)は、親との離別のうち、 離婚も子どもにとっては、<あいま いな喪失>体験であると指摘する。 • 今日、子どもの悲嘆やトラウマへの 支援が急務だが、保育現場では殆 どその対策が講じられていない。 3
  4. 4. 【目的】子どもの喪失体験と保育対応の 実態と課題の解明 • 本研究では、親との離別体験をした子どもへの 保育士による支援法の開発を目指し、保育士へ の聞き取りをもとに、 • 保育現場における喪失体験をした子どもの実態 と、 • 保育士が、そのような子どもへどのような保育を 行っているのかその実態と課題を明らかにする ことを目的とする。 4
  5. 5. 【方法】園長・主任の面接調査における事例研究 • 研究会所属の保育園を中心とした6園の園長と 主任計11名を対象に半構造化面接を行った。 • 事前・調査時に趣旨説明と協力依頼を口頭と 文書で行い、承諾を得られた対象者にText Mining Studio Ver.6.1でテキストマイニング分析 を行った。 • 11名のうち、保育士として、離婚後の子どもへ の対応の難しさを、後悔を伴う体験として語り、 未だ終結していないとの想いを抱えているA氏 を語りを分析対象とした。 5
  6. 6. 【結果】①保育士A氏の事例 • 離婚後1年経過した単親世帯の母親が、保育 園へ電話を寄越した。 • 親子でつかみ合いをした末、女児B(5歳)が部 屋に灯油をまいたとのことであった。 • 園長と担任A氏が自宅に駆けつけた。 • 膝を抱えて黙る女児にA氏が対応した。 • 以後、A氏は、女児と母親とも本件について話 し合うことなくX+9年が経過した。 6
  7. 7. 図1 保育士A氏の単語出現頻度(上位20語) 7
  8. 8. 【結果】②動詞「思う」 • A氏の単語出現頻度(図1)のうち、59回の動詞「思う」を 原文参照すると、 • 「今思えば…」と振り返り、 • 「あの時のB(女児)の気持ちに触れた人は…一人も、今 思えば、いなくて、唯一できた私も、この問題は…ナーバ スだからやめとこって…」 • と女児と向き合うことへの戸惑いを感じていたことを述べ ていた。 • 「(親子)二人だけの空間というのは、息詰まるものがもし かしてあって…だからってその環境を私たちが変えられる 訳ではないので、今も何が支援できるのかなあって、 ちょっと勉強したいなあとは思うんですけど…」 • と女児の環境の理解とその支援を学びたいという意欲を 語っていた。 8
  9. 9. 【結果】③動詞「わからない」 • 21回の動詞「分からない」を原文参照すると、 • 「結局自分が何をしていいのか分からなくて、家に出向いたり、話を聞いたりし て…」 • と不安を感じつつの保育について述べていた。 • 「その時(灯油をまいた直後、保育士に)、Bちゃんが言ったのは、なんかなくな ればいいみたいな、家がってみたいなことを言っていたので、そういう発想をし ているっていう、ことすらも、分からなかったので」、 • 「保育園での中で楽しいことをすればいいなっていう風に思ってたので、その 話はしたことなく、子どもとはしたことはないので、直接の気持ちはわからない んですけど」 • と子どもの気持ちがわからなかったことを語っていた。 • 「いろんなお子さんと接した時に、なんか自分自身ももうちょっと、もうちょっと 踏み込んでみようとか、それがいいかは分からないんですけど…」 • と経験を踏まえた今後の取り組みへの意欲と戸惑いについて述べていた。 9
  10. 10. 【結果】④名詞「言葉」 • 12回出現の名詞「言葉」を原文参照すると、 • 「5歳児の言葉で、どんなにつたなくても、言葉が、丁 寧な説明ができなくても…」、 • 「うまく言葉にはきっと出来ないから、嫌いとか、そう いう単純な言葉でしかきっと言えないと思うんですけ ど、その単純な言葉の裏にあるいろんな気持ち… (中略)聞いてあげれば、なんか聞いてあげたかっ たなあって今…」 • と、女児の言葉での感情表出を促し、保障する必要 性があったのではないかと後悔を述べていた。 10
  11. 11. 【考察】①保育士の戸惑いと困り感 • 保育士の「戸惑い」が顕著であった。 • それは、本ケースの理解の枠組みが無いため、 自分の力量への不安感と考えられる。 • 「気になる子」への保育士の「困り感」に関しては 実践と研究があるが、そこに子どもの喪失体験 は含まれず、戸惑うのは当然であろう。 • また、女児の“荒れた”状態への一定の関わりは 行ったが、女児の言葉や気持ちを十分にわかる ことができなかったので、今後の勉強が必要と 述べている。 11
  12. 12. 【考察】②保育士からの支援・援助 • 女児の“荒れた”状態への一定の関わりは 行ったが、女児の言葉や気持ちを十分にわ かることができなかったので、今後の勉強が 必要と述べている。 • 保育士は、従来の保育内容に加えて、子ども の<あいまいな喪失>を含めた親との離別 体験に伴う悲嘆や、トラウマへのケアに関す る知識とスキルを身につける必要があると考 える。 12
  13. 13. 【考察】③保育士への支援・教育 • 事例から、加藤・いとう・井上(2018)と共通し て、 • 保育士が子どもの喪失体験とグリーフに対処 する際の今後の課題として、 • 保護者支援および親との離別体験をした子 どものトラウマケアとその予防に関する「気づ き」、「知識」、「スキル」を身につける必要が ある。 • そのための保育士への教育的体制の整備が 焦眉の急として求められる。 13
  14. 14. 保育所保育指針 平成29年度告示 • 3 環境及び衛生管理並びに安全管理 • (2) 事故防止及び安全対策 • ウ 保育中の事故の発生に備え、施設内外 の危険箇所の点検や訓練を実施するととも に、外部からの不審者等の侵入防止のため の措置や訓練など不測の事態に備えて必要 な対応を行うこと。また、子どもの精神保健面 における対応に留意すること。 14
  15. 15. 保育所保育指針解説書(平成30年3月) • 子どもたちが緊急事態を目前に体験した場合 には、強い恐怖感、不安感により、情緒的に 不安定になる場合もある(心的外傷後ストレス 障害:PTSD)。 • このような場合には、小児精神科医や臨床心 理士等による援助を受けて、子どもと保護者 の心身の健康面に配慮することも必要となる。 15
  16. 16. 【文献】 • Boss, P. (2006) Loss, trauma, and resilience: Therapeutic work with ambiguous loss. Norton.(中島聡美・石井千賀 子監訳 2015 あいまいな喪失とトラウマからの回復: 家族とコミュニティのレジリエンス 誠信書房) • 平木典子,2012,離婚・関係の解消による喪失,精神療 法,38(4), 47-51. • 加藤恵美・いとうたけひこ・井上孝代,2018,親を喪失した 子どもへの保育における支援の実態と課題:保育所保 育士の語りのテキストマイニング分析,日本応用心理 学会第85回大会 大阪大学 吹田キャンパス 8月25 日14:45-16:45 ポスター発表A-19 • JSPS科研費17K04297の助成を受けた。 • ※加藤恵美 itoemi@u-shizuoka-ken.ac.jp 16

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