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Einstein 方程式の数値計算法
—その手法と数値安定性について —
土屋拓也1
1 早稲田大学理工学術院数学科
2015 年 3 月 30 日
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 1 / 34
Table of Contents
1 数値相対論の概要
2 Einstein 方程式の時空分解
3 拘束伝播方程式
4 振幅拡大ファクター
5 補正システム
6 C2-adjusted System
7 数値計算
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 2 / 34
1 数値相対論の概要
2 Einstein 方程式の時空分解
3 拘束伝播方程式
4 振幅拡大ファクター
5 補正システム
6 C2-adjusted System
7 数値計算
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 3 / 34
数値相対論とは
一般相対論における方程式に対して数値計算によって解析を行う分野
▶ 広義には
一般相対論における方程式全般, 測地線方程式や Einstein 方程式な
どに対して数値計算を用いて解析を行う, もしくは, そのための準備の
計算を行うこと.
▶ 狭義には
Einstein 方程式の (時間) 発展計算の解析を行うこと (初期値構成は
含まない).
ここでは, Einstein 方程式の数値計算 (初期値構成と発展計算) を数値相
対論と呼ぶことにする.
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 4 / 34
Einstein 方程式
Einstein 方程式は
(時空の曲がり具合) = (物質の配置)
というつりあい式を表している.
時空の曲がり具合は 4 次元 Riemann テンソル (4)Rλ
µων により知ることが
できる ((µ, ν, · · · ) は (0, 1, 2, 3) を表す). 4 次元計量 gµν を用いて表せば
(4)
Rλ
µων = ∂ω
(4)
Γλ
µν − ∂ν
(4)
Γλ
µω + (4)
Γλ
σω
(4)
Γσ
µν − (4)
Γλ
σν
(4)
Γσ
µω,
(4)
Γλ
µν ≡
1
2
gλω
(∂µgων + ∂νgων − ∂ωgµν),
となる. ただし, 上下の添え字が一致した場合は和をとる規則 (Einstein の
規約) を用いている. 以下も同様.
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 5 / 34
Einstein 方程式と数値計算
Einstein 方程式
Gµν + Λgµν = 8πTµν, Gµν ≡ (4)
Rµν −
1
2
(4)
Rgµν. (1)
ここで, (4)Rµν ≡ (4)Rλ
µλν は 4 次元 Ricci テンソル, (4)R ≡ (4)Rµ
µ は 4 次
元スカラー曲率, gµν は 4 次元計量, Λ は宇宙定数, Tµν はエネルギー運動
量テンソルを表す.
▶ (1) を解くことで様々な宇宙的な現象を知ることができる.
▶ しかし, (1)は非線形連立 2 階偏微分方程式なので, 一般解を得ること
は非常に困難. ⇒ 数値計算による Dynamical な計算.
▶ 目的の 1 つは重力波の数値計算. 現在, 重力波の直接観測のための
大型低温重力波望遠鏡 (KAGRA) の建設が進行中. 観測したデータ
の解析には, 長時間の高精度な数値計算によって作られるテンプレー
トが必要.
▶ (1) は時間と空間の入り混じった4 次元共変的な形式となっている. ⇒
数値計算を行うには, 時間 1 次元と空間 3 次元に分解 (3+1 分解) を
行うのが一般的.
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 6 / 34
時空の分解の必要性とその流れ
▶ Einstein 方程式(1)のまま数値計算はできないのか?
▶ 数値計算による時間発展を行うには時間軸が固定されねばならない.
⇐ 4 次元共変のままでは不可能.
▶ 時間軸を取り出す必要がある.
▶ Einstein 方程式から時間軸を最初にうまく取り出したのは, Arnowitt,
Deser, Misner による Einstein 方程式の正準形式 (本来は量子重力理
論のため).
⇒ この時空分解をADM Formulation とよぶ.
▶ 正準形式では幾何構造が良くわからない.
⇒ 後に York, Smarr らが, 4 次元 Riemann 多様体 M4 を時間一定面
の 3 次元 Riemann 多様体 M3 の連続体であると捉え直して時空分解
を行った (現在ではこちらを普通 ADM Formulation とよぶ).
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 7 / 34
時空の分解
Figure: 時空分解の概念図.M4
を時間
一定面の M3
で構築する.
gµν =
(
−α2 + βℓβℓ βj
βi γij
)
,
gµν
=
(
−1/α2 βj/α2
βi/α2 γij − βiβj/α2
)
(i, j, · · · ) は空間成分 (1, 2, 3) を表
す. α はラプス関数と呼ばれ, 時間の
間隔を表す. βi, はシフトベクトルと
呼ばれ, 空間座標のねじれを表す (α,
βi はゲージ変数). γij は M3 上の3
次元計量を表す.
また, M3 上の法線ベクトル nµ を用いて 外部曲率を以下で定義:
Kij ≡ −Ln(γij)/2. (2)
Lv(Vij) は任意のテンソル Vij に対して, vi 方向に沿った Lie 微分を表す.
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 8 / 34
1 数値相対論の概要
2 Einstein 方程式の時空分解
3 拘束伝播方程式
4 振幅拡大ファクター
5 補正システム
6 C2-adjusted System
7 数値計算
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 9 / 34
法線ベクトルと射影テンソル
接平面 Tp(M3) の法線ベクトル nµ と nµ に直交する射影テンソル
Pµν ≡ gµν + nµnν (3)
を用いると, 任意の 2 階のテンソル Vµν は
nµ
nν
Vµν, nµ
Pν
iVµν, Pµ
iPν
jVµν
の 3 つの成分に分解できる.
⇒ Einstein 方程式 (1) (Gµν + Λgµν − 8πTµν = 0) を 3 種の成分に分解
する.
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 10 / 34
Riemann テンソルの分解
最初に 4 次元 Riemann テンソル (4)Rµλνω を 3 次元部分に分解する
基本となるのは Gauss-Codazzi 方程式と Codazzi-Mainardi 方程式:
Pµ
iPλ
aPν
jPω
b
(4)
Rµλνω = (3)
Riajb − KijKab + KbiKaj (4)
nµ
Pλ
aPν
jPω
b
(4)
Rµλνω = −DbKaj + DjKab (5)
である (Di は γij に沿った 3 次元共変微分).
(4)Rµλνω の nµ, Pν
i を用いた分解は, (4)と(5)に加えもうひとつ
Pµ
iPν
jnλ
nω(4)
Rµλνω = Kj
ℓ
Kℓi +
1
α
DiDjα +
1
α
Lαn(Kij) (6)
である. これ以外は, Riemann テンソルの対称性から恒等的に 0 になる.
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 11 / 34
Ricci テンソル, スカラー曲率の分解
次に, 4 次元 Ricci テンソル (4)Rµν の Pµ
iPν
j 方向, Pµ
inν 方向, nµnν 方
向の分解を考える.
(4)-(6)を用いることでそれぞれ,
Pµ
iPν
j
(4)
Rµν = (3)
Rij + KijK − 2KℓiKℓ
j −
1
α
DiDjα −
1
α
Lαn(Kij),
(7)
Pµ
inν(4)
Rµν = −DℓKi
ℓ
+ DiK, (8)
nµ
nν(4)
Rµν = −KijKij
+
1
α
Dℓ
Dℓα +
1
α
Lαn(K), (9)
が得られる.
スカラー曲率 (4)R は(7), (9)を用いると
(4)
R = (3)
R + K2
+ KijKij
−
2
α
Dℓ
Dℓα −
2
α
Lαn(K). (10)
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 12 / 34
Einstein 方程式の時空分解
以上から Einstein 方程式 (1) を (γij, Kij) に対する方程式系に再構築する.
nµnν(Gµν + Λgµν − 8πTµν) = 0 に対して (9), (10)を用いると
H ≡ (3)
R + K2
− KijKij
− 2Λ − 16πρH ≈ 0,
を得る (ρH ≡ nµnνTµν). これはHamilton 拘束方程式と呼ばれる.
Pµ
inν(Gµν + Λgµν − 8πTµν) = 0 から (8)を用いると
Mi ≡ DjKj
i − DiK − 8πJi ≈ 0,
が得られる (Ji ≡ nµPν
iTµν). これは運動量拘束方程式と呼ばれる.
(7)より
∂tKij = α((3)
Rij + KKij − 2KiℓKℓ
j) − DiDjα + Lβ(Kij) − Λγij
− 8π{Sij + (S − ρH)γij/2},
が得られる (Sij ≡ Pµ
iPν
jTµν, S ≡ Si
j).
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 13 / 34
Einstein 方程式の時空分解 (まとめ)
ADM Formulation(York-Smarr)
H ≡ (3)
R + K2
− KijKij
− 2Λ − 16πρH ≈ 0, (11)
Mi ≡ DjKj
i − DiK − 8πJi ≈ 0, (12)
∂tγij = −2αKij + Lβ(γij), (13)
∂tKij = α((3)
Rij + KKij − 2KiℓKℓ
j) − DiDjα + Lβ(Kij) − Λγij
− 8π{Sij + (S − ρH)γij/2}. (14)
(13) は外部曲率の定義式 (2) より導ける.
実際に数値計算を行う際には, 解くのは(13)と (14)であり, (11)と (12)は計
算のチェック (正しく計算が行われているか) に用いる.
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 14 / 34
数値相対論における Formulation 問題
Einstein 方程式から時空分解によって得られる発展方程式系は一意に決ま
らない (数学的には, ADM Formulation(11)-(14) の同値変形であれば何で
も良いため).
ただし, 発展方程式系の形によって数値安定性は当然異なる.
数値相対論では, 数値スキームや初
期値, 境界値などの方程式系以外の
条件をうまく設定したとしても, 拘束
値の破れが増大し, 計算が止まって
しまう.
これを数値相対論におけるFormulation 問題 と呼ぶ.
ADM Formulation 以外の Formulation を構築する必要がある.
(最近では普通 Baumgarte-Shapiro-Shibata-Nakamura (BSSN)
Formulation が用いられる (今回は省略)).
数値安定な方程式系をどのように構築すべきか.
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 15 / 34
1 数値相対論の概要
2 Einstein 方程式の時空分解
3 拘束伝播方程式
4 振幅拡大ファクター
5 補正システム
6 C2-adjusted System
7 数値計算
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 16 / 34
拘束伝播方程式
方程式系の数値安定性を解析する手段として, 拘束伝播方程式を用いるの
が良い.
拘束伝播方程式とは拘束値の時間発展方程式のこと.
拘束伝播方程式
∂tH = Lβ(H) + 2αKH − 2α(Di
Mi) − 4(Di
α)Mi, (15)
∂tMi = Lβ(Mi) −
1
2
αDiH − (Diα)H + αKMi. (16)
各発展方程式が拘束値の線形和で表現できているので, 初期に拘束値が
満たされていれば (H = Mi = 0), 時間発展後も満たされる
(∂tH = ∂tMi = 0) ことが保証されている.
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 17 / 34
1 数値相対論の概要
2 Einstein 方程式の時空分解
3 拘束伝播方程式
4 振幅拡大ファクター
5 補正システム
6 C2-adjusted System
7 数値計算
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 18 / 34
漸近安定な系の概念
a(̸= 0) を定数とするある発展方程式 ∂tu = au の解は, C0 を定数として
u = C0eat となる. よって, t → ∞ で
a > 0 ⇒ uは発散,
a < 0 ⇒ uは0に収束,
となる.
固有値 λi ̸= 0 をもつ行列 A = (aij) を定係数とする, ある発展方程式系
∂tui = ai
juj の解は C0 を定数として ¯ui = C0eλit となる (¯ui はもとの発展
方程式系を標準形にしたときの変数). よって, t → ∞ で
λi > 0 ⇒ 解は発散,
λi < 0 ⇒ 解は0に収束,
となる.
⇒ ADM Formulation の拘束値 (H, Mi) が漸近的に 0 に収束していくよう
に同値変形してやればよい.
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 19 / 34
Constraint Amplification Factors(CAFs)
Constraint Amplification Factors(CAFs) 解析 (米田 -真貝)
拘束伝播方程式の係数行列の固有値によって, 数値安定性の構造を解析
する方法.
拘束伝播方程式 ∂tCa(x, t) = g(Ca, ∂iCa, . . . ) に対して, その Fourier 変
換した方程式
∂t
ˆCa
= Ma
b
ˆCb
, where Ca
(x, t) =
∫
ˆC(x, t)a
exp(ik · x)d3
k (17)
の係数行列 Ma
b の固有値に対して,
▶ 固有値の real-part が負 ⇒ 安定
▶ 固有値の real-part が正 ⇒ 不安定
固有値の imaginary-part は安定性を悪化させず, 数値誤差の伝播を担うと
考えられる.
また一般的には, 固有値の解析をするには背景時空を固定する必要あり.
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 20 / 34
ADM Formulation の CAFs の例
拘束伝播方程式は
∂t
(
H
Mi
)
=
(
2αK + Lβ −2Dj − 4(Djα)
−(Diα) − α(Di)/2 Lβδj
i + αKδj
i
)(
H
Mj
)
. (18)
▶ Fourier 変換
▶ flat な時空 (α = 1, βi = Kij = 0, γij = δij)
から以下が得られる:
∂t
(
ˆH
ˆMi
)
=
(
0 −2ikj
−1
2 iki 0
) (
ˆH
ˆMj
)
. (19)
係数行列の固有値 (CAFs) は
(0, 0, ±i|k|) (20)
よって, 不安定ではないと考えられるが, 安定であるともいえない.
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 21 / 34
1 数値相対論の概要
2 Einstein 方程式の時空分解
3 拘束伝播方程式
4 振幅拡大ファクター
5 補正システム
6 C2-adjusted System
7 数値計算
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 22 / 34
補正システム
拘束条件付き発展方程式系において, 発展方程式に拘束値を付加する方
法 (Constraint Damping Technique) は制御工学などでは一般的な方法
(ペナルティー法など).
拘束値付加による拘束伝播方程式の変化については, 以下が一般的.
補正システム
ある発展方程式に拘束方程式の任意の階数の微分の線形和で作られる項
を付加する:
∂tui
= [Original Terms] + f(Ci
, ∂jCi
, · · · ) (21)
このとき, 拘束伝播方程式は
∂tCi
= [Original Terms] + g(Ci
, ∂jCi
, · · · ) (22)
と変化する.
(22)の CAFs の解析より, もとの方程式系よりも安定であるかがわかる.
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 23 / 34
ADM Formulation における補正システム例
ADM Formulation に対して, 以下のように修正する.
Detweiler System (Detweiler)
H = [Original terms], (23)
Mi = [Original terms], (24)
∂tγij = [Original terms] − κDα3
γijH, (25)
∂tKij = [Original terms] + κDα3
(Kij − Kγij/3)H
+ κDα2
[3(D(iα)Mj) − (Dℓ
α)Mℓγij]
+ κDα3
[D(iMj) − Dℓ
Mℓγij/3]. (26)
κD は実定数.
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 24 / 34
補正システム例 1 の CAFs
Detweiler System(23)-(26) の
▶ Fourier 変換
▶ flat 背景
による拘束伝播方程式は以下:
拘束伝播方程式 (Detweiler System)
∂t
(
ˆH
ˆMi
)
=
(
−2κD|k|2 −2ikj
−iki/2 −κD|k|2δi
j − κDkikj/6
) (
ˆH
ˆMj
)
. (27)
赤文字は補正項から生成された項.
CAFs は
(−κD|k|2
/2, −κD|k|2
/2, −4κD|k|2
/3 ±
√
|k|2{−1 + 4κD|k|2/9}) (28)
κD > 0 であれば, 固有値すべてが負. よって, (κD > 0 のもとで) 安定で
ある.
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 25 / 34
補正システムの問題点
補正システムでは, 拘束値付加による数値安定性の議論ができる.
しかし,
▶ どのように付加項 f(Ci, ∂jCi, · · · ) を加えればよいか?
▶ 計算とともに背景時空が変化していく場合にこの解析は正しいのか?
という問題が生じている.
そのため, ⇒ 背景時空に依存しない付加項を設定する 1 つの方法として,
C2-adjusted System.
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 26 / 34
1 数値相対論の概要
2 Einstein 方程式の時空分解
3 拘束伝播方程式
4 振幅拡大ファクター
5 補正システム
6 C2-adjusted System
7 数値計算
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 27 / 34
C2
-adjusted System
ある拘束条件付き発展方程式
{
∂tui = fi(ui, ∂jui, . . . )
Ci = gi(ui, ∂jui, . . . ) ≈ 0
(29)
に対して, 以下のように発展方程式を修正する:
∂tui
= fi
(ui
, ∂jui
, . . . )−κij δC2
δuj
(30)
where, C2
=
∫
Ci
Cid3
x, κij
: Positive definite (31)
このとき, C2 の拘束伝播方程式は以下のようになる:
∂tC2
= [Original terms]−κij
(
δC2
δui
) (
δC2
δuj
)
< 0 (32)
(この手法は Fiske により提案された)
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 28 / 34
C2
-adjusted ADM Formulation
C2-adjusted System を ADM Formulation に適用する.
C2
-adjusted ADM Formulation(土屋 -米田 -真貝)
H = [Original Terms], (33)
Mi = [Original Terms], (34)
∂tγij = [Original Terms] − κγijmn
δC2
δγmn
, (35)
∂tKij = [Original Terms] − κKijmn
δC2
δKmn
. (36)
Lagrange 乗数係数 κγijmn, κKijmn は正定値とする. ここで
C2
=
∫
{
H2
+ γij
MiMj
}
d3
x (37)
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 29 / 34
拘束伝播方程式 (C2
-adjusted ADM Formulation)
背景時空を flat, Lagrange 乗数係数を
κγijmn = κγδimδjn, κKijmn = κKδimδjn (κγ > 0, κK > 0) としたとき, 各
拘束伝播方程式は以下のようになる:
拘束伝播方程式 (C2
-adjusted ADM Formulation)
∂tH = [Original Terms]−2κγ∆2
H (38)
∂tMi = [Original Terms]+κK∆Mi + 3κK∂j∂i(M)j
(39)
補正項の部分にdamping 項が現れる. これが拘束値の破れ減少に大きな
影響を与えると考えられる.
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 30 / 34
CAFs(C2
-adjusted ADM Formulation)
κγ = κK = κ として, Fourier 変換した拘束伝搬方程式は
∂t
(
ˆH
ˆMi
)
=
(
−4κ|k|4 −2ikj
−1
2 iki κ(−|k|2δi
j − 3kikj)
) (
ˆH
ˆMj
)
. (40)
この係数行列の固有値は
(−κ|k|2
, −κ|k|2
, λ+, λ−), (41)
where λ± = −2κ|k|2
(|k|2
+ 1) ± |k|
√
−1 + 4κ2|k|2(|k|2 − 1)2. (42)
このとき κ > 0 ならば
λ+ + λ− < 0 and λ+λ− > 0. (43)
そのため, λ± はともに実部が負 ⇒ 安定.
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 31 / 34
1 数値相対論の概要
2 Einstein 方程式の時空分解
3 拘束伝播方程式
4 振幅拡大ファクター
5 補正システム
6 C2-adjusted System
7 数値計算
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 32 / 34
Test 計量
Polarized Gowdy wave
ds2
= t−1/2
eλ/2
(−dt2
+ dx2
) + t(eP
dy2
+ e−P
dz2
) (44)
P = J0(2πt) cos(2πx) (45)
λ = −2πtJ0(2πt)J1(2πt) cos2
(2πx) + 2π2
t2
[J2
0 (2πt)
+ J2
1 (2πt)] − (1/2){(2π)2
[J2
0 (2π) + J2
1 (2π)]
− 2πJ0(2π)J1(2π)} (46)
ここで, Jn は Bessel 関数.
この Einstein 方程式の真空の厳密解は, t = 0 から宇宙が膨張していく様
子を表したもの.
▶ ゲージ条件 (座標条件) : ∂tα = −α2K, βi = 0.
▶ 境界条件: 周期境界条件.
▶ 数値スキーム: 差分法 +second order iterative Crank-Nicolson.
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 33 / 34
数値結果
▶ C2-adjusted ADM Formulation の場合 (青線) のほうが, Standard
ADM Formualtion の場合 (赤線) や Detweiler System(緑線) よりも計
算時間が伸びた
▶ C2-adjusted ADM Formulation の拘束値の破れが減少した
土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 34 / 34

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Takuya Tsuchiya

  • 1. Einstein 方程式の数値計算法 —その手法と数値安定性について — 土屋拓也1 1 早稲田大学理工学術院数学科 2015 年 3 月 30 日 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 1 / 34
  • 2. Table of Contents 1 数値相対論の概要 2 Einstein 方程式の時空分解 3 拘束伝播方程式 4 振幅拡大ファクター 5 補正システム 6 C2-adjusted System 7 数値計算 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 2 / 34
  • 3. 1 数値相対論の概要 2 Einstein 方程式の時空分解 3 拘束伝播方程式 4 振幅拡大ファクター 5 補正システム 6 C2-adjusted System 7 数値計算 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 3 / 34
  • 4. 数値相対論とは 一般相対論における方程式に対して数値計算によって解析を行う分野 ▶ 広義には 一般相対論における方程式全般, 測地線方程式や Einstein 方程式な どに対して数値計算を用いて解析を行う, もしくは, そのための準備の 計算を行うこと. ▶ 狭義には Einstein 方程式の (時間) 発展計算の解析を行うこと (初期値構成は 含まない). ここでは, Einstein 方程式の数値計算 (初期値構成と発展計算) を数値相 対論と呼ぶことにする. 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 4 / 34
  • 5. Einstein 方程式 Einstein 方程式は (時空の曲がり具合) = (物質の配置) というつりあい式を表している. 時空の曲がり具合は 4 次元 Riemann テンソル (4)Rλ µων により知ることが できる ((µ, ν, · · · ) は (0, 1, 2, 3) を表す). 4 次元計量 gµν を用いて表せば (4) Rλ µων = ∂ω (4) Γλ µν − ∂ν (4) Γλ µω + (4) Γλ σω (4) Γσ µν − (4) Γλ σν (4) Γσ µω, (4) Γλ µν ≡ 1 2 gλω (∂µgων + ∂νgων − ∂ωgµν), となる. ただし, 上下の添え字が一致した場合は和をとる規則 (Einstein の 規約) を用いている. 以下も同様. 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 5 / 34
  • 6. Einstein 方程式と数値計算 Einstein 方程式 Gµν + Λgµν = 8πTµν, Gµν ≡ (4) Rµν − 1 2 (4) Rgµν. (1) ここで, (4)Rµν ≡ (4)Rλ µλν は 4 次元 Ricci テンソル, (4)R ≡ (4)Rµ µ は 4 次 元スカラー曲率, gµν は 4 次元計量, Λ は宇宙定数, Tµν はエネルギー運動 量テンソルを表す. ▶ (1) を解くことで様々な宇宙的な現象を知ることができる. ▶ しかし, (1)は非線形連立 2 階偏微分方程式なので, 一般解を得ること は非常に困難. ⇒ 数値計算による Dynamical な計算. ▶ 目的の 1 つは重力波の数値計算. 現在, 重力波の直接観測のための 大型低温重力波望遠鏡 (KAGRA) の建設が進行中. 観測したデータ の解析には, 長時間の高精度な数値計算によって作られるテンプレー トが必要. ▶ (1) は時間と空間の入り混じった4 次元共変的な形式となっている. ⇒ 数値計算を行うには, 時間 1 次元と空間 3 次元に分解 (3+1 分解) を 行うのが一般的. 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 6 / 34
  • 7. 時空の分解の必要性とその流れ ▶ Einstein 方程式(1)のまま数値計算はできないのか? ▶ 数値計算による時間発展を行うには時間軸が固定されねばならない. ⇐ 4 次元共変のままでは不可能. ▶ 時間軸を取り出す必要がある. ▶ Einstein 方程式から時間軸を最初にうまく取り出したのは, Arnowitt, Deser, Misner による Einstein 方程式の正準形式 (本来は量子重力理 論のため). ⇒ この時空分解をADM Formulation とよぶ. ▶ 正準形式では幾何構造が良くわからない. ⇒ 後に York, Smarr らが, 4 次元 Riemann 多様体 M4 を時間一定面 の 3 次元 Riemann 多様体 M3 の連続体であると捉え直して時空分解 を行った (現在ではこちらを普通 ADM Formulation とよぶ). 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 7 / 34
  • 8. 時空の分解 Figure: 時空分解の概念図.M4 を時間 一定面の M3 で構築する. gµν = ( −α2 + βℓβℓ βj βi γij ) , gµν = ( −1/α2 βj/α2 βi/α2 γij − βiβj/α2 ) (i, j, · · · ) は空間成分 (1, 2, 3) を表 す. α はラプス関数と呼ばれ, 時間の 間隔を表す. βi, はシフトベクトルと 呼ばれ, 空間座標のねじれを表す (α, βi はゲージ変数). γij は M3 上の3 次元計量を表す. また, M3 上の法線ベクトル nµ を用いて 外部曲率を以下で定義: Kij ≡ −Ln(γij)/2. (2) Lv(Vij) は任意のテンソル Vij に対して, vi 方向に沿った Lie 微分を表す. 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 8 / 34
  • 9. 1 数値相対論の概要 2 Einstein 方程式の時空分解 3 拘束伝播方程式 4 振幅拡大ファクター 5 補正システム 6 C2-adjusted System 7 数値計算 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 9 / 34
  • 10. 法線ベクトルと射影テンソル 接平面 Tp(M3) の法線ベクトル nµ と nµ に直交する射影テンソル Pµν ≡ gµν + nµnν (3) を用いると, 任意の 2 階のテンソル Vµν は nµ nν Vµν, nµ Pν iVµν, Pµ iPν jVµν の 3 つの成分に分解できる. ⇒ Einstein 方程式 (1) (Gµν + Λgµν − 8πTµν = 0) を 3 種の成分に分解 する. 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 10 / 34
  • 11. Riemann テンソルの分解 最初に 4 次元 Riemann テンソル (4)Rµλνω を 3 次元部分に分解する 基本となるのは Gauss-Codazzi 方程式と Codazzi-Mainardi 方程式: Pµ iPλ aPν jPω b (4) Rµλνω = (3) Riajb − KijKab + KbiKaj (4) nµ Pλ aPν jPω b (4) Rµλνω = −DbKaj + DjKab (5) である (Di は γij に沿った 3 次元共変微分). (4)Rµλνω の nµ, Pν i を用いた分解は, (4)と(5)に加えもうひとつ Pµ iPν jnλ nω(4) Rµλνω = Kj ℓ Kℓi + 1 α DiDjα + 1 α Lαn(Kij) (6) である. これ以外は, Riemann テンソルの対称性から恒等的に 0 になる. 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 11 / 34
  • 12. Ricci テンソル, スカラー曲率の分解 次に, 4 次元 Ricci テンソル (4)Rµν の Pµ iPν j 方向, Pµ inν 方向, nµnν 方 向の分解を考える. (4)-(6)を用いることでそれぞれ, Pµ iPν j (4) Rµν = (3) Rij + KijK − 2KℓiKℓ j − 1 α DiDjα − 1 α Lαn(Kij), (7) Pµ inν(4) Rµν = −DℓKi ℓ + DiK, (8) nµ nν(4) Rµν = −KijKij + 1 α Dℓ Dℓα + 1 α Lαn(K), (9) が得られる. スカラー曲率 (4)R は(7), (9)を用いると (4) R = (3) R + K2 + KijKij − 2 α Dℓ Dℓα − 2 α Lαn(K). (10) 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 12 / 34
  • 13. Einstein 方程式の時空分解 以上から Einstein 方程式 (1) を (γij, Kij) に対する方程式系に再構築する. nµnν(Gµν + Λgµν − 8πTµν) = 0 に対して (9), (10)を用いると H ≡ (3) R + K2 − KijKij − 2Λ − 16πρH ≈ 0, を得る (ρH ≡ nµnνTµν). これはHamilton 拘束方程式と呼ばれる. Pµ inν(Gµν + Λgµν − 8πTµν) = 0 から (8)を用いると Mi ≡ DjKj i − DiK − 8πJi ≈ 0, が得られる (Ji ≡ nµPν iTµν). これは運動量拘束方程式と呼ばれる. (7)より ∂tKij = α((3) Rij + KKij − 2KiℓKℓ j) − DiDjα + Lβ(Kij) − Λγij − 8π{Sij + (S − ρH)γij/2}, が得られる (Sij ≡ Pµ iPν jTµν, S ≡ Si j). 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 13 / 34
  • 14. Einstein 方程式の時空分解 (まとめ) ADM Formulation(York-Smarr) H ≡ (3) R + K2 − KijKij − 2Λ − 16πρH ≈ 0, (11) Mi ≡ DjKj i − DiK − 8πJi ≈ 0, (12) ∂tγij = −2αKij + Lβ(γij), (13) ∂tKij = α((3) Rij + KKij − 2KiℓKℓ j) − DiDjα + Lβ(Kij) − Λγij − 8π{Sij + (S − ρH)γij/2}. (14) (13) は外部曲率の定義式 (2) より導ける. 実際に数値計算を行う際には, 解くのは(13)と (14)であり, (11)と (12)は計 算のチェック (正しく計算が行われているか) に用いる. 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 14 / 34
  • 15. 数値相対論における Formulation 問題 Einstein 方程式から時空分解によって得られる発展方程式系は一意に決ま らない (数学的には, ADM Formulation(11)-(14) の同値変形であれば何で も良いため). ただし, 発展方程式系の形によって数値安定性は当然異なる. 数値相対論では, 数値スキームや初 期値, 境界値などの方程式系以外の 条件をうまく設定したとしても, 拘束 値の破れが増大し, 計算が止まって しまう. これを数値相対論におけるFormulation 問題 と呼ぶ. ADM Formulation 以外の Formulation を構築する必要がある. (最近では普通 Baumgarte-Shapiro-Shibata-Nakamura (BSSN) Formulation が用いられる (今回は省略)). 数値安定な方程式系をどのように構築すべきか. 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 15 / 34
  • 16. 1 数値相対論の概要 2 Einstein 方程式の時空分解 3 拘束伝播方程式 4 振幅拡大ファクター 5 補正システム 6 C2-adjusted System 7 数値計算 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 16 / 34
  • 17. 拘束伝播方程式 方程式系の数値安定性を解析する手段として, 拘束伝播方程式を用いるの が良い. 拘束伝播方程式とは拘束値の時間発展方程式のこと. 拘束伝播方程式 ∂tH = Lβ(H) + 2αKH − 2α(Di Mi) − 4(Di α)Mi, (15) ∂tMi = Lβ(Mi) − 1 2 αDiH − (Diα)H + αKMi. (16) 各発展方程式が拘束値の線形和で表現できているので, 初期に拘束値が 満たされていれば (H = Mi = 0), 時間発展後も満たされる (∂tH = ∂tMi = 0) ことが保証されている. 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 17 / 34
  • 18. 1 数値相対論の概要 2 Einstein 方程式の時空分解 3 拘束伝播方程式 4 振幅拡大ファクター 5 補正システム 6 C2-adjusted System 7 数値計算 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 18 / 34
  • 19. 漸近安定な系の概念 a(̸= 0) を定数とするある発展方程式 ∂tu = au の解は, C0 を定数として u = C0eat となる. よって, t → ∞ で a > 0 ⇒ uは発散, a < 0 ⇒ uは0に収束, となる. 固有値 λi ̸= 0 をもつ行列 A = (aij) を定係数とする, ある発展方程式系 ∂tui = ai juj の解は C0 を定数として ¯ui = C0eλit となる (¯ui はもとの発展 方程式系を標準形にしたときの変数). よって, t → ∞ で λi > 0 ⇒ 解は発散, λi < 0 ⇒ 解は0に収束, となる. ⇒ ADM Formulation の拘束値 (H, Mi) が漸近的に 0 に収束していくよう に同値変形してやればよい. 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 19 / 34
  • 20. Constraint Amplification Factors(CAFs) Constraint Amplification Factors(CAFs) 解析 (米田 -真貝) 拘束伝播方程式の係数行列の固有値によって, 数値安定性の構造を解析 する方法. 拘束伝播方程式 ∂tCa(x, t) = g(Ca, ∂iCa, . . . ) に対して, その Fourier 変 換した方程式 ∂t ˆCa = Ma b ˆCb , where Ca (x, t) = ∫ ˆC(x, t)a exp(ik · x)d3 k (17) の係数行列 Ma b の固有値に対して, ▶ 固有値の real-part が負 ⇒ 安定 ▶ 固有値の real-part が正 ⇒ 不安定 固有値の imaginary-part は安定性を悪化させず, 数値誤差の伝播を担うと 考えられる. また一般的には, 固有値の解析をするには背景時空を固定する必要あり. 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 20 / 34
  • 21. ADM Formulation の CAFs の例 拘束伝播方程式は ∂t ( H Mi ) = ( 2αK + Lβ −2Dj − 4(Djα) −(Diα) − α(Di)/2 Lβδj i + αKδj i )( H Mj ) . (18) ▶ Fourier 変換 ▶ flat な時空 (α = 1, βi = Kij = 0, γij = δij) から以下が得られる: ∂t ( ˆH ˆMi ) = ( 0 −2ikj −1 2 iki 0 ) ( ˆH ˆMj ) . (19) 係数行列の固有値 (CAFs) は (0, 0, ±i|k|) (20) よって, 不安定ではないと考えられるが, 安定であるともいえない. 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 21 / 34
  • 22. 1 数値相対論の概要 2 Einstein 方程式の時空分解 3 拘束伝播方程式 4 振幅拡大ファクター 5 補正システム 6 C2-adjusted System 7 数値計算 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 22 / 34
  • 23. 補正システム 拘束条件付き発展方程式系において, 発展方程式に拘束値を付加する方 法 (Constraint Damping Technique) は制御工学などでは一般的な方法 (ペナルティー法など). 拘束値付加による拘束伝播方程式の変化については, 以下が一般的. 補正システム ある発展方程式に拘束方程式の任意の階数の微分の線形和で作られる項 を付加する: ∂tui = [Original Terms] + f(Ci , ∂jCi , · · · ) (21) このとき, 拘束伝播方程式は ∂tCi = [Original Terms] + g(Ci , ∂jCi , · · · ) (22) と変化する. (22)の CAFs の解析より, もとの方程式系よりも安定であるかがわかる. 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 23 / 34
  • 24. ADM Formulation における補正システム例 ADM Formulation に対して, 以下のように修正する. Detweiler System (Detweiler) H = [Original terms], (23) Mi = [Original terms], (24) ∂tγij = [Original terms] − κDα3 γijH, (25) ∂tKij = [Original terms] + κDα3 (Kij − Kγij/3)H + κDα2 [3(D(iα)Mj) − (Dℓ α)Mℓγij] + κDα3 [D(iMj) − Dℓ Mℓγij/3]. (26) κD は実定数. 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 24 / 34
  • 25. 補正システム例 1 の CAFs Detweiler System(23)-(26) の ▶ Fourier 変換 ▶ flat 背景 による拘束伝播方程式は以下: 拘束伝播方程式 (Detweiler System) ∂t ( ˆH ˆMi ) = ( −2κD|k|2 −2ikj −iki/2 −κD|k|2δi j − κDkikj/6 ) ( ˆH ˆMj ) . (27) 赤文字は補正項から生成された項. CAFs は (−κD|k|2 /2, −κD|k|2 /2, −4κD|k|2 /3 ± √ |k|2{−1 + 4κD|k|2/9}) (28) κD > 0 であれば, 固有値すべてが負. よって, (κD > 0 のもとで) 安定で ある. 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 25 / 34
  • 26. 補正システムの問題点 補正システムでは, 拘束値付加による数値安定性の議論ができる. しかし, ▶ どのように付加項 f(Ci, ∂jCi, · · · ) を加えればよいか? ▶ 計算とともに背景時空が変化していく場合にこの解析は正しいのか? という問題が生じている. そのため, ⇒ 背景時空に依存しない付加項を設定する 1 つの方法として, C2-adjusted System. 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 26 / 34
  • 27. 1 数値相対論の概要 2 Einstein 方程式の時空分解 3 拘束伝播方程式 4 振幅拡大ファクター 5 補正システム 6 C2-adjusted System 7 数値計算 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 27 / 34
  • 28. C2 -adjusted System ある拘束条件付き発展方程式 { ∂tui = fi(ui, ∂jui, . . . ) Ci = gi(ui, ∂jui, . . . ) ≈ 0 (29) に対して, 以下のように発展方程式を修正する: ∂tui = fi (ui , ∂jui , . . . )−κij δC2 δuj (30) where, C2 = ∫ Ci Cid3 x, κij : Positive definite (31) このとき, C2 の拘束伝播方程式は以下のようになる: ∂tC2 = [Original terms]−κij ( δC2 δui ) ( δC2 δuj ) < 0 (32) (この手法は Fiske により提案された) 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 28 / 34
  • 29. C2 -adjusted ADM Formulation C2-adjusted System を ADM Formulation に適用する. C2 -adjusted ADM Formulation(土屋 -米田 -真貝) H = [Original Terms], (33) Mi = [Original Terms], (34) ∂tγij = [Original Terms] − κγijmn δC2 δγmn , (35) ∂tKij = [Original Terms] − κKijmn δC2 δKmn . (36) Lagrange 乗数係数 κγijmn, κKijmn は正定値とする. ここで C2 = ∫ { H2 + γij MiMj } d3 x (37) 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 29 / 34
  • 30. 拘束伝播方程式 (C2 -adjusted ADM Formulation) 背景時空を flat, Lagrange 乗数係数を κγijmn = κγδimδjn, κKijmn = κKδimδjn (κγ > 0, κK > 0) としたとき, 各 拘束伝播方程式は以下のようになる: 拘束伝播方程式 (C2 -adjusted ADM Formulation) ∂tH = [Original Terms]−2κγ∆2 H (38) ∂tMi = [Original Terms]+κK∆Mi + 3κK∂j∂i(M)j (39) 補正項の部分にdamping 項が現れる. これが拘束値の破れ減少に大きな 影響を与えると考えられる. 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 30 / 34
  • 31. CAFs(C2 -adjusted ADM Formulation) κγ = κK = κ として, Fourier 変換した拘束伝搬方程式は ∂t ( ˆH ˆMi ) = ( −4κ|k|4 −2ikj −1 2 iki κ(−|k|2δi j − 3kikj) ) ( ˆH ˆMj ) . (40) この係数行列の固有値は (−κ|k|2 , −κ|k|2 , λ+, λ−), (41) where λ± = −2κ|k|2 (|k|2 + 1) ± |k| √ −1 + 4κ2|k|2(|k|2 − 1)2. (42) このとき κ > 0 ならば λ+ + λ− < 0 and λ+λ− > 0. (43) そのため, λ± はともに実部が負 ⇒ 安定. 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 31 / 34
  • 32. 1 数値相対論の概要 2 Einstein 方程式の時空分解 3 拘束伝播方程式 4 振幅拡大ファクター 5 補正システム 6 C2-adjusted System 7 数値計算 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 32 / 34
  • 33. Test 計量 Polarized Gowdy wave ds2 = t−1/2 eλ/2 (−dt2 + dx2 ) + t(eP dy2 + e−P dz2 ) (44) P = J0(2πt) cos(2πx) (45) λ = −2πtJ0(2πt)J1(2πt) cos2 (2πx) + 2π2 t2 [J2 0 (2πt) + J2 1 (2πt)] − (1/2){(2π)2 [J2 0 (2π) + J2 1 (2π)] − 2πJ0(2π)J1(2π)} (46) ここで, Jn は Bessel 関数. この Einstein 方程式の真空の厳密解は, t = 0 から宇宙が膨張していく様 子を表したもの. ▶ ゲージ条件 (座標条件) : ∂tα = −α2K, βi = 0. ▶ 境界条件: 周期境界条件. ▶ 数値スキーム: 差分法 +second order iterative Crank-Nicolson. 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 33 / 34
  • 34. 数値結果 ▶ C2-adjusted ADM Formulation の場合 (青線) のほうが, Standard ADM Formualtion の場合 (赤線) や Detweiler System(緑線) よりも計 算時間が伸びた ▶ C2-adjusted ADM Formulation の拘束値の破れが減少した 土屋拓也 (早稲田大学理工学術院数学科 ) Einstein 方程式の数値計算法 2015 年 3 月 30 日 34 / 34