PISA2015 ICT活用調査で日本の国際的な位置付けを明らかにするとともに、教育情報化の対費用効果指標として「死蔵率」を提案してみた。学校の情報機器死蔵率はどうすれば減らせるか？

1. 日本は教育情報化先進国？
国際大学GLOCOM 豊福晋平

2. PISA調査からみた
日本の教育情報化の国際的レベル
教育情報化の対費用効果
どう測ったらよいか？

3. PISA調査とは
• OECD国際学習到達度調査 Programme
for International Student Assessment, PISA
• 15歳対象（義務教育終了段階）
科学的リテラシー・読解力・数学的リテラシー
＋生徒（学習環境・ICT活用）
＋学校質問
• 2015調査は72国/地域 OECD加盟は35国/地域

4. PISA2015 調査参加国/地域
• 国/地域により調査実施項目が異なる
• ICT活用調査の場合は75・72もしくは47
Algeria, Australia, Austria, Belgium, Brazil, Bulgaria, Canada, Chile,
Chinese Taipei, Colombia, Costa Rica, Croatia, Czech Republic,
Denmark, Dominican Republic, Estonia, Finland, France, Georgia,
Germany, Greece, Hong Kong, Hungary, Iceland, Indonesia, Ireland,
Italy, Japan, Jordan, Korea, Kosovo, Lebanon, Latvia, Lithuania,
Luxembourg, Macao, Malta, Mexico, Moldova, Montenegro,
Netherlands, New Zealand, Norway, Peru, Poland, Portugal, Puerto
Rico (USA), Qatar, Romania, Russian Federation, Singapore, Slovak
Republic, Vietnam, Slovenia, Spain, Sweden, Switzerland, Thailand,
Trinidad and Tobago, United Arab Emirates, Tunisia, Turkey,
Macedonia, United Kingdom, United States, Uruguay, B-S-J-G
(China), Spain (Regions), USA (Massachusetts), USA (North Carolina),
Argentina (Ciudad Autónoma de Buenos)

5. PISA ICT活用調査
•利用開始年齢
•ネット利用時間
•情報機器環境
•私的用途頻度
•学習用途頻度
•ICTに対する態度
•家庭環境

6. ネット利用時間
IC006平日学外 IC007休日
• 学校のある日に、学校以外の場所でインター
ネットをどのくらい利用しますか（携帯電話で
の利用も含む）
• 休みの日に、学校以外の場所でインターネット
をどのくらい利用しますか（携帯電話での利用
も含む）。

7. PISA2015ネット利用時間 IC005/006
校外平日×休日
47カ国/地域の平均利用時間をプロット（日本は平日校外2.03h 休日校外3.10h）

8. 世界平均と比較すると
日本のネット利用時間は短い

9. 情報機器環境
IC009学校
デスクトップ・コンピュータ
ノートパソコン
タブレット型コンピュータ（iPadなど）
インターネットに接続している学校のコンピュータ
無線LANを介したインターネット接続
自分の文書を保存するフォルダーなど、学校に関係するデー
タのための保存領域
USB（メモリ）スティック
電子ブックリーダー（アマゾンキンドルなど）
プレゼンテーションなどに使うプロジェクター
スマートボードなどの電子黒板
はい、使っています
はい、でも使っていません
いいえ
次のもののうち、学校であなたが利用出来る機器はありますか。

10. 47カ国/地域の【使っている】比 日本はいずれの項目も平均より低い。
世界的に見ても日本の学校の機器活用状況は貧弱。
PISA2015 情報機器環境 IC009
学校 日本 平均

11. 日本の学校の情報環境は
世界的にみてもきわめて貧弱

12. ICT学習用途頻度
IC010校外での学習用途
IC011学校での学習用途

13. PISA2015 ICT用途頻度 IC011
学校での学習用途
IC011Q01TA 校内でオンライン・チャット利用
IC011Q02TA 校内でメール利用
IC011Q03TA 校内で学校課題のためにネット閲覧
IC011Q04TA 校内で学校サイトの閲覧・取得・登録
IC011Q05TA 校内で学校サイトに作品を投稿
IC011Q06TA 校内でシミュレーション
IC011Q07TA 校内で外国語や数学のドリル練習
IC011Q08TA 校内コンピュータで宿題をする
IC011Q09TA 校内コンピュータでグループ作業や他生徒とやり取り

14. PISA2015 ICT用途頻度 IC011Q03TA
学校で課題のためにネット閲覧する頻度
47カ国/地域の【ほぼ毎日・毎日】が占める割合は 日本が最下位
日本の70％以上は学校の課題のためにネットを閲覧したことがない。

15. PISA2015 ICT用途頻度 IC010/011
校外×校内学習活用
47カ国/地域の活用度スコア平均をプロット

16. 47カ国/地域での校内・校外における
学習ICT活用度は最低レベル

17. PISA調査からみた
日本の教育情報化の国際的レベル
後進国確定 orz..

18. 普及率と死蔵率
IC009 学校の情報機器環境
学校情報機器の死蔵率はどうすれば減らせるのか

19. 情報機器の対費用効果
数値化の悩み
① 整備実績 by 設置者
• 実際に使ってるかどうか分からない
② 稼働率 by 学校
• 教員自己申告はアテにならない
③ 利用頻度や充足度 by 学習者
• 学習者側に見える効果がないとカウントされない
④ 間接効果（学力等）
• 実証が困難、統制要因が多過ぎ

20. PISA調査を利用して作ってみた

21. 普及率と死蔵率
はい、使っています はい、でも使っていません いいえ
普及率
死蔵率
IC009 質問：次のもののうち、学校であなたが利用出来る機器はありますか。
死蔵率はどうすれば下がるのか？

22. 電子黒板
死蔵率ソート

23. 電子黒板
普及率ソート

24. 回帰分析のモデル式
死蔵率＝-0.72×普及率＋61.102
• 調整済みR2=0.517

25. “教育情報化の対費用効果
どう測ったらよいか？”
機器普及率を1％上げると
死蔵率は0.72％下がる
全教室・1人1台整備への強力な理論的後押し

26. 教育×ICT をどう捉えるか

27. #1デジタルシフト
携帯情報端末は多様なメディアを統合する
情報端末は以前の数倍の情報を一度に扱える

28. #2-1学校が気にする効果
?
学校は紙と手書きが基本、ICTは特別なもの
期待されるICT効果も限定的
?

29. #2-2デジタルデバイドが深刻
ICTの普及した家庭は圧倒的に情報量が多い
児童生徒の日常は学校学習の想定外
?
?

30. #2-3デバイドの正当化
学校は意図的にICTを学習から切り離す
過小評価と矮小化、過剰な管理と統制
?
?勉強に関係ない
ICTはチート
SNS依存で学力低下
手書きが真っ当
毎日大量のプリント
スマホを持込めない
SNSで連絡できない
ノートは手書き

31. #2-4日常の延長に学校・授業を
学びはデジタルシフトを前提に
連絡もノートも授業も日常にあわせて変える
?
?1人1台/BYOD
Wi-Fi・クラウド
Blended Learning
学校広報

32. “学びもデジタルシフトを”
ということで、
心折れそうだけど頑張りましょう

33. ご質問をどうぞ
• データはOECD PISAから粗データを得た
http://www.oecd.org/pisa/data/2015database/
• 解説記事はこちら http://i-learn.jp/archives/category/ict