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GISA学術研究発表WEB大会

通信販売の拡大による
競合店舗の均衡配置と非競合店舗の最適配置
競合店舗 均衡配置 非競合店舗 最適配置
の変化

慶應義塾大学大学院
理工学研究科
小澤誠明 岸本達也
発表資料の流れ
研究背景
– 通販と実店舗の関係

通販の影響を考慮したモデルの提案
– 均衡配置・最適配置の導出

通販の魅力による均衡配置・最適配置の変化
モータリゼーションの発展による両配置の変化
タリ
ションの発展 よる両配置の変化
まとめ
2
研究背景
研究の位置づけ
仮想データ
消費者の選択行動モデル
立地競争の構造分析
既存モデルの拡張

モデルの適用

実データ
商圏の分析
商業施設の立地の分析

モデル化
デ

本研究

研究背景
ロジットモデル・ハフモデルなどによる立地競争
商業施設の均衡配置の構造
均衡配置と最適配置の関係性
…etc

→ 通信販売の影響を考慮した立地競争
を解いた研究がない

3
通販と実店舗の関係性
右肩あがり
IT産業の発展 通販に対する不安の解消
高齢化
物流システムの高度化

通販市場規模

通販店の競争

年度

通販需要の増加 , 市場規模の拡大

出所:日本通信販売協会「通信販売市場調査」

小売市場規模

横ばい

小売市場の分析に“通販の影響”が不可欠となる
本論文の内容
2 の実店舗と1 の通販
2つの実店舗と1つの通販 の競争の構造
通販の魅力向上による、実店舗の配置の変化
モータリゼーションの発展による、均衡配置の変化

年度
出所:経済省「商業販売統計」

4
通販の影響を考慮したモデルの提案
s1

実店舗1
実店舗

s2

実店舗2
実店舗

通販
0

x1

x2

L

2つの実店舗と通販の集客力の様子

si f (| xi − x |)
実店舗 pi ( x) =
s1 f (| x1 − x |) + s2 f (| x2 − x |) + s3
(i=1,2)

– 仮想一次元都市の条件
L : 市場の大きさ
β : 距離減衰パラメータ
ρ(x) : 座標 x の需要量(一定)

– 店舗 i について
通販

p3 ( x) =

s3
s1 f (| x1 − x |) + s2 f (| x2 − x |) + s3

xi : 出店座標
si : 店舗の魅力
pi : 選択確率
Gi : 集客量

f i (x ) = exp(− β | x − xi |)

: 距離による魅力の減衰関数
5
通販の影響を考慮したモデルの提案
s1

実店舗1
実店舗

s2

実店舗2
実店舗

通販
0

x1

x2

L

2つの実店舗と通販の集客力の様子

si f (| xi − x |)
実店舗 pi ( x) =
s1 f (| x1 − x |) + s2 f (| x2 − x |) + s3
(i=1,2)
通販の魅力は距離に依存しないと仮定

通販

p3 ( x) =

s3
s1 f (| x1 − x |) + s2 f (| x2 − x |) + s3

– 仮想一次元都市の条件
L : 市場の大きさ
β : 距離減衰パラメータ
ρ(x) : 座標 x の需要量(一定)

– 店舗 i について
xi : 出店座標
si : 店舗の魅力
pi : 選択確率
Gi : 集客量

f i (x ) = exp(− β | x − xi |)

: 距離による魅力の減衰関数
6
通販の影響を考慮したモデルの提案
s1

実店舗1
実店舗

s2

実店舗2
実店舗

通販
0

x1

x2

L

2つの実店舗と通販の集客力の様子

si f (| xi − x |)
実店舗 pi ( x) =
s1 f (| x1 − x |) + s2 f (| x2 − x |) + s3
(i=1,2)
通販の魅力は距離に依存しないと仮定

通販

p3 ( x) =

s3
s1 f (| x1 − x |) + s2 f (| x2 − x |) + s3
市場全体の店舗i の集客量

– 仮想一次元都市の条件
L : 市場の大きさ
β : 距離減衰パラメータ
ρ(x) : 座標 x の需要量(一定)

– 店舗 i について
xi : 出店座標
si : 店舗の魅力
pi : 選択確率
Gi : 集客量

f i (x ) = exp(− β | x − xi |)

: 距離による魅力の減衰関数

L

Gi = ∫ ρ ( x ) ⋅ pi ( x )dx
0

7
均衡配置 最適配置の導出
均衡配置・最適配置の導出
均衡配置
実店舗(i=1,2)が各々、集客量
Giを最大化するように出店座標
xi を決定する。この最適化問題
を繰り返し解き、均衡した状態。

x2に対してG1を最大化するx1

中心部以外で均衡

例. (L=3 , β=2, s1=s2=1, s3=0.5)
(1.4 , 0)

x1に対してG2を最大化するx2

8
均衡配置 最適配置の導出
均衡配置・最適配置の導出
均衡配置
実店舗(i=1,2)が各々、集客量
Giを最大化するように出店座標
xi を決定する。この最適化問題
を繰り返し解き、均衡した状態。

x2に対してG1を最大化するx1

中心部以外で均衡

例. (L=3 , β=2, s1=s2=1, s3=0.5)
(1.4 , 0)
↓
(1.4,1.7)

x1に対してG2を最大化するx2

9
均衡配置 最適配置の導出
均衡配置・最適配置の導出
均衡配置
実店舗(i=1,2)が各々、集客量
Giを最大化するように出店座標
xi を決定する。この最適化問題
を繰り返し解き、均衡した状態。

x2に対してG1を最大化するx1

中心部以外で均衡

例. (L=3 , β=2, s1=s2=1, s3=0.5)
(1.4 , 0)
↓
(1.4,1.7)
↓
(1.2 ,1.7)

x1に対してG2を最大化するx2

10
均衡配置 最適配置の導出
均衡配置・最適配置の導出
均衡配置
実店舗(i=1,2)が各々、集客量
Giを最大化するように出店座標
xi を決定する。この最適化問題
を繰り返し解き、均衡した状態。

x2に対してG1を最大化するx1

中心部以外で均衡

例. (L=3 , β=2, s1=s2=1, s3=0.5)
(1.4 , 0)
↓
(1.4,1.7)
↓
(1.2 ,1.7)
↓

(1.2 1 8)
(1 2 , 1.8)
均衡配置

x1に対してG2を最大化するx2

11
均衡配置 最適配置の導出
均衡配置・最適配置の導出
最適配置
実店舗の非競合性を仮定し、集
客量の総和G(= G1+ G2)を最大
化するように出店配置 xiを決定
する。

x2に対してGを最大化するx1
x1に対してGを最大化するx2

例. (L=3 , β=2, s1=s2=1, s3=0.5)
(1.4 , 0)

12 12
均衡配置 最適配置の導出
均衡配置・最適配置の導出
最適配置
実店舗の非競合性を仮定し、集
客量の総和G(= G1+ G2)を最大
化するように出店配置 xiを決定
する。

x2に対してGを最大化するx1
x1に対してGを最大化するx2

例. (L=3 , β=2, s1=s2=1, s3=0.5)
(1.4 , 0)
↓
(1.4 , 2.2)

13 13
均衡配置 最適配置の導出
均衡配置・最適配置の導出
最適配置
実店舗の非競合性を仮定し、集
客量の総和G(= G1+ G2)を最大
化するように出店配置 xiを決定
する。

x2に対してGを最大化するx1
x1に対してGを最大化するx2

例. (L=3 , β=2, s1=s2=1, s3=0.5)
(1.4 , 0)
↓
(1.4 , 2.2)
↓

(0.8 , 2.2)
最適配置
14 14
通販の魅力による均衡配置の変化
x

均衡配置について
均衡配置に いて
(L, β, s1, s2)=(3,2,1,1)
) (3,2,1,1)

3.0
2.5
25
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0

集積

0- 4 0.1 2
-

分散

1
0
sG
3

集積

10
2

100
4

実店舗間で需要の奪い合い
→ ライバル実店舗に寄り添う(集積)
s3の増加によって“中央部で更なる競合”、“都市の“端部分の需要を通信販売
に奪われる”
→ 実店舗は互いに広がる(分散)
一定以上にs3が増加すると 「通信販売集客力 >> ライバル実店舗の集客
定以上にs が増加すると、「通信販売集客力
力」となる
→ ライバル実店舗を無視した中央部に配置(集積)

15
通販の魅力による最適配置の変化
x

最適配置について
最適配置に いて
(L, β, s1, s2)=(3,2,1,1)
) (3,2,1,1)

3.0
2.5
25
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0

集積方向のみ

0- 4 0.1 2
-

1
0

10
2

100
4

sG
3

実店舗間での集客の奪い合いを避ける。
他店舗からシェアを奪い自店舗の集客量を増加しても、集客量の総和は増加
するとは限らない。
→ 施設同士を離し配置
s3の増加に伴い 、「通信販売集客力 >> 他店舗の集客力」
→他の実店舗を無視した中央部に配置(集積)
他 実店舗を無視 た中央部
置(集積)
16
モ タリゼ ションの発展の表現
モータリゼーションの発展の表現
モータリゼーションの発展
タリゼ シ の発展
– βは距離減衰パラメーター
→βを変化させ、モータリゼーションの発展を表現
β値が減少(集客力が低下しにくい) : モータリゼーションの発展

f i (x ) = exp(− β | x − xi |)
β大

0

x1

β小

x2

L

0

x1

x2

L

17
モータリゼーションの発展による
両配置の変化
置 変化

0- 4 0.1 2
-

1
0

10
2

100
4

x

最適配置

x

sG
3

3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
00
0.0

0.2

0.4

0.6
G

0.8

1.0

3.0
2.5
25
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0

0- 4 0.1 2
-

3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
00
0.0

1
0

10
2

100
4

sG
3

x

3.0
2.5
25
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0

x

均衡配置

x

β 大

x

モータリゼーションの発展
モ タリゼ ションの発展

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

G

3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0

小

0- 4 0.1 2
-

3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
00
0.0

1
0

10
2

100
4

sG
3

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

G

2施設が都市の両端へ広がる幅が、減少する。
施設が都市の両端 広がる幅が、減少する。
中心部での収束するためのs3値が減少している。
モータリゼーションの発展に伴い、実店舗の遠くの需要点への集客力は、弱まりにくくなる。

→ 市場全体の需要の取りこぼしを避けるため中心へ立地

18
まとめ
2つの実店舗と1つの通販 の競争の構造分析
均衡配置、最適配置の定義、導出方法
都市の中心部以外でも均衡状態が生じる

通販の魅力向上による、実店舗の配置の変化
均衡配置と最適配置の変化の違い
均衡配置:
均衡配置 集積 → 分散 → 集積
最適配置: 集積方向のみ

0- 4 0.1 2
-

1
0
sG
3

10 100
2 4

3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0

x

3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0

x

2施設が都市の両端へ広がる幅が、減少する
中心部に収束するためのs
中心部に収束するための 3値が減少している

x

モータリゼーションの発展による、均衡配置の変化

0- 4 0.1 2
-

1
0
sG
3

10 100
2 4

3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0

0- 4 0.1 2
-

1
0

10 100
2 4

sG
3

19
今後の展望
モデル化
– 不均一の店舗規模による配置変化
– 二次元仮想都市への拡張
– 3施設以上の実店舗での配置
→ 新たな示唆

モデルの適用
– 交通利便性による店舗配置の相違
– 通販の影響を受けやすい店舗の立地分析
→ 今後の都市の変化を予測
20

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