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「粉飾決算企業」の手法と見分け方、これからの動向(大熊将八)

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日本の「粉飾決算企業」について、
・粉飾に使われる手法
・見分け方
・最近の動向
・これから起きることの予測
を論じています。

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「粉飾決算企業」の手法と見分け方、これからの動向(大熊将八)

  1. 1. 「粉飾決算企業」の手法と見 分け方、これからの動向  大熊将八@Showyeahok
  2. 2. 粉飾決算が明らかになる企業が増加している
  3. 3. 大企業による巨額の粉飾事例も後を絶たない 東証一部(当時を含む)の主な粉飾決算企業 社名 明らかになった年 粉飾額(推定) 粉飾手法 山一證券 1997年 約2700億円 関係会社への飛ばしなど 日興コーディアル證券 2006年 約189億円 関係会社への飛ばしなど 西武 2004年 株式保有比率の虚偽記載 カネボウ 2005年 約800億円 資産の架空計上など多数 ライブドア 2006年 約53億円 利益の付け替えなど オリンパス 2011年 約1200億円 損失隠しなど多数 沖電気 2012年 約80億円 循環取引など リソー教育 2014年 約85億円 売上の架空計上 東芝 2015年 2000億円以上? 押込販売や減損隠しなど多数
  4. 4. そもそも粉飾とは?どんな種類がある?ど うやって見分ければいいの?
  5. 5. そもそも粉飾とは?どんな種類がある?ど うやって見分ければいいの?
  6. 6. 粉飾決算≒「有価証券報告書の虚偽記載」 「(有価証券報告書の虚偽記載) 10 年以下の懲役若しくは 1,000 万円以下の罰金に処 し、又はこれらを併科する。」(金商法197条1項1号) →刑事罰 開示規則違反により罰金が発生する ・有価証券届出書の不提出等・発行開示書類の虚偽記載等・継続開示書類の不提出・ 継続開示書類等の虚偽記載等・公開買付開始公告の不実施・公開買付届出書等の虚 偽記載等・大量保有報告書等の不提出・大量保有報告書等の虚偽記載等・特定証券情 報の不提供等・特定証券等情報の虚偽等・発行者等情報の虚偽等・虚偽開示書類等の 提出に加担
  7. 7. 粉飾決算の契機 ・経営陣が赤字回避を狙い損失隠したり利益の水増しを行う。(東芝、オリンパ ス、ライブドア、日興コーディアル、山一など) ・経営者の掲げる無理な利益目標を達成するために現場が不正に走る。(東芝 やリソー教育など) ・ガバナンスの不備をついて子会社の経営陣が不正する。(江守や沖電気な ど) ・前から続いてきた不正を現経営陣が継ぐ。(カネボウなど) ・時価総額を釣り上げ経営者や関係者が儲けようとする(新興に多い)
  8. 8. 粉飾のパターンは、 「資産を水増しする」 「収益を水増しする」(この2つが典型的)か 「費用を過少計上する」(大企業での巨額の損失)か 「負債を過少計上する」(これ単体はあまり見られない)
  9. 9. 粉飾決算の定量的要因 粉飾決算 収益・資産の過 大計上 ⑤費用・負債の 過少計上 ⑤その他の虚偽 記載 ①売上債権の架 空計上 ②資産の架空計 上 ③認められない 項目の売上計上 ④売上先行計上
  10. 10. 粉飾決算の定量的要因 粉飾決算 収益・資産の過 大計上 ⑤費用・負債の 過少計上 ⑤その他の虚偽 記載 ①売上債権の架 空計上 ②資産の架空計 上 ③認められない 項目の売上計上 資産の回転期 間や営業CFを 分析することで 兆候を発見可 能。大半の粉 飾がこれに該 当する。 ④売上先行計上
  11. 11. 収益・資産の過大計上:①売上債権と②資産の架空計上 ⑴押し込み販 売 ⑵循環取引 ⑶工事進行 基準 ⑷在庫の架 空計上 ⑸繰延資産 の架空計上 ⑹のれん代 の架空計上 ①売上債権 の架空計上 ②資産の架 空計上 収益・資産の 過大計上 ③認められない 項目の売上計上 東芝、カネボウなど 東芝・沖電気・江守な ど 東芝など カネボウなど カネボウなど オリンパスなど ④売上の先行計 上
  12. 12. 典型的なBSとPL:収益と費用の差額が当期純利益  貸借対照表(BS)  損益計算書(PL)   資産       純資産    資産  純資産   負債  負債  費用  収益  費用  収益 当期純利益 当期純利益
  13. 13. 典型的なBSとPL:費用>収益なら損失  貸借対照表(BS)  損益計算書(PL)   資産       純資産    資産  純資産   負債  負債  費用  収益  費用  収益 当期純損失 当期純損失  負債  負債
  14. 14. ①売上債権の架空計上:収益が増え、水増し分の利益が増える  貸借対照表(BS)  損益計算書(PL)   資産       純資産    資産  純資産   負債  負債  費用  収益  費用  収益 当期純利益 当期純利益 架空売上架空売上  負債  負債 架空売上
  15. 15. ①売上の水増しを行う方法 粉飾の手法名 やり方 行った企業 ⑴押し込み販売 注文していない商品を無理やり納品し て売上に計上 東芝・カネボウなど ⑵循環取引 関係会社間でお金と伝票を循環させ て売上に計上 東芝・沖電気・江守グループ H など ⑶工事進行基準 工事費総額の過少見積もりにより売 上を過大に計上 東芝など
  16. 16. ②資産の架空計上:費用が減り、水増し資産分利益が増える  貸借対照表(BS)  損益計算書(PL)   資産       純資産    資産  純資産   負債  負債  費用  収益  費用  収益 当期純利益 当期純利益 資産※の水 増し 資産※の水 増し 資産※の水 増し  負債  負債 ※在庫や繰延資産、のれん代など
  17. 17. ②資産の架空計上を行う方法 粉飾の手法名 やり方 行った企業 ⑷在庫の架空計上 在庫を増やす・在庫を過大評価する・ 在庫の評価損を計上しない 東芝・カネボウなど ⑸繰延資産の水増し 費用計上すべきものを繰延資産として 計上 カネボウなど ⑶のれん代の水増し 費用計上すべきものを子会社ののれ ん代として計上 オリンパスなど
  18. 18. 大半の粉飾について、「資産の回転期間」 や「営業キャッシュ・フロー」を分析すること で兆候を発見可能。
  19. 19. 「資産回転期間の長期化」に注意 ・売上債権の回転期間(日)=売上債権/売上高*365 ・棚卸資産の回転期間(日)=棚卸資産(在庫)/売上原価*365 →何年にも亘って長期化している場合は、売上債権か棚卸資産の水増しの可能性が高い ・業種にもよるが、〜60日(2ヶ月)ぐらいまでが正常、120日(4ヶ月)〜は異常 ※急成長中のベンチャーでは長期化しやすいので差し引いて考える ※業態転換による長期化の可能性も検討する。(ex.ZOZOTOWNの「ツケ払い」など) ※業態によっては構造的に長期化するものもある(ex.政府案件の多い日立) →該当企業の固有要因、業種の固有要因、競合との比較、も踏まえて分析する
  20. 20. 「資産回転期間の長期化」に注意
  21. 21. 「営業キャッシュ・フロー」はプラスか? ・営業キャッシュ・フロー = 純利益 + 減価償却費や減損損失費(現金支出の伴わない損失) + 仕入債務(買掛金など)の増加(未払いの費用) ー 売上債権の増加ー 棚卸資産の増加  ・資産の回転期間が長期化していると、利益出てても営業CFがマイナス ※金融業や不動産業は、現金支出が多く、恒常的に営業CFマイナスも
  22. 22. 「営業キャッシュ・フロー」はプラスか?
  23. 23. 売上の過大計上:③認められない項目の売上計上 粉飾の手法名 行った企業 ⑺子会社の預金を親会 社の売上へ付け替え ライブドアなど ⑻株式売却益の売上へ の算入 ライブドアなど ⑼返金済みのサービスを 売上に計上 リソー教育など
  24. 24. ④売上先行計上 ・利益の先食いによって見かけ上の 業績がよく見える ・実際には含み損を抱えている。 ・ある時期に一気に損失が出るケー スが多い。 ・在庫の増加などと連動しているこ とが多いため、回転期間の分析が 有効な場合がある。
  25. 25. ⑤費用・負債の過小計上 (12)引当金未 計上 (13)連結の範 囲の操作 (14)減損テス トの不正 (10)減価償却 費の未計上 減損損失の 認識回避 ⑤費用・負債の 過小計上 (11)親会社外へ の損失の飛ばし カネボウなど オリンパス・ライブドア・日興コーディアル証券・山一 証券など カネボウなど 東芝など
  26. 26. ⑤費用の過少計上:費用が減少することで利益増  貸借対照表(BS)  損益計算書(PL)   資産    純資産    資産  純資産   負債  負債      費用  収益    費用  収益 当期純利益 当期純利益  負債  負債 ※減価償却費や減損損失、引当金など 費用※の過 少計上分 費用※の過 少計上分 費用※の過 少計上分
  27. 27. ⑤費用の過少計上:費用が減少することで利益増 ・本来費用に計上すべき減価償却費や減損 損失、引当金を計上しない。 ・費用圧縮分の資産と利益が増える。 ・子会社に損失を「飛ばす」手法を大企業がよ く使い粉飾額は膨らみがち。 ・日本企業の海外進出の増加に伴い海外子 会社を使った粉飾が増える懸念。 ・粉飾ではなくても、「のれん代」を多く抱える 企業には減損リスクあり。
  28. 28. ⑥その他の虚偽記載 粉飾の手法名 行った企業 (15)株主保有比率の虚 偽記載 西武など (16)帳簿の書き換え 中国企業など多数 (17)預金残高のごまかし
  29. 29. 粉飾決算の定性的兆候 ⑴PR/IR ⑵買収・ 海外進出 ⑶資金調達 ⑷人事 ⑸会計/業 績 ⑹その他 ・会社や社長 が無闇にメ ディア露出す る ・本業と 無関係の M&Aを頻 発 ・MSCBなど のスキーム で増資を頻 発 ・監査役 の頻繁な 交代 ・会計方針 の頻繁な変 更 ・SNSでのサービ スの炎上 ・社長が社内/ メディア/アナ リストから神 格化されてい る ・実態の ない子会 社・海外 展開 ・既存大 株主の売 り抜け ・競合他社 より不自然 に高い利益 率 ・内部告発のタレ こみ ・流行の用語 を多様したIR を多発 目的不明 のファンド を設立 役員給与 の急激な 増減 ・「ぎりぎり赤 字回避」など 不自然な業 績 ・業界と企業の 「バブル感」
  30. 30. 粉飾決算の定性的要因:全てつながっている 「本業が不振」だからこそ、資金調達のために「社長が無闇にメディアに出る」「流行の用 語を多用したIRを多発」したり、「無理なスキームで増資を頻発」 利益をかさ上げしたり損失を隠すため、「本業と無関係のM&Aを頻発」「目的不明のファ ンドを設立」したり、「実態のない海外展開・子会社の設立」を行う 結果、粉飾のため「会計方針の頻繁な変更」が生じたり、粉飾の結果「ぎりぎり赤字にな らない」「競合他社より異様に利益率が高い」など不自然な状態に そして内部統制がとれなくなり「監査役の頻繁な交代」「既存大株主の売り抜け」「役員 給与の急激な増減」が生じる サービス・企業・業界への過大評価や炎上はネットでも兆候を察知可能
  31. 31. 粉飾決算まとめ ・粉飾額が大きい場合は回転期間分析や営業CFの分析により兆候は発見可 能 ・大抵は複数の粉飾を同時併行している。 ・帳簿自体をごまかしたり監査法人がグルになっている場合は発見困難 ・中小企業の場合は①や②の粉飾が多い ・大企業の場合は③や⑤も多い→特に海外子会社の動向に注意 ・①〜⑥まで大半のケースで、粉飾決算が発覚しても現在保有している現金が 減るわけではない。
  32. 32. 粉飾決算とは言えないまでも、実態以上に 利益が大きく見えるケースや、巨額の損失 リスクが孕んでいるケースがある
  33. 33. ⑥「利益の質」に注意
  34. 34. ⑦のれんの減損:巨額の損失となるリスク
  35. 35. ⑦一期にまとめて損失計上し翌期に急激に業績回復
  36. 36. ⑧潜在的債務発生:費用が激増し資産が激減するリスク  貸借対照表(BS)  損益計算書(PL)         純資産    純資産   負債  負債  費用  収益  費用  収益 当期純利益 ※ 潜在的債務 ※違約金(スカイマーク)、賠償金(東芝)、債務保証など  資産 ※ 潜在的債務  資産 ※ 潜在的債務 資産<負債だと債務超過
  37. 37. 引当金計上/資産の評価損による損失発生  貸借対照表(BS)  損益計算書(PL)         純資産    純資産   負債  負債  費用  収益  費用  収益 当期純利益 引当金/減損 損失  資産 引当金/減損 損失  資産 引当金/減損 損失
  38. 38. 引当金計上/資産の評価損による損失発生  貸借対照表(BS)          純資産    負債 当期純利益  資産 引当金/減損 損失 引当金/減損 損失 当期純利益>  資産 引当金/減損 損失 になった場合は赤字転落 <  負債 になった場合は債務超過
  39. 39. ⑧潜在的債務発生:費用が激増し資産が激減するリスク ・取引先との違約金の発生や、敗訴による賠償金の発生、債務保証などの潜 在的債務が顕在化することがある。 ・財務諸表の「注記」への記載を怠った場合は粉飾となる。 ・突然リスクが顕在化し、粉飾以上に経営難に陥れる要因となり得る。 ・粉飾の場合は、キャッシュが出るリスクは主に課徴金だけだが、違約金や賠 償金によって会社の支払い能力を超えた額のキャッシュが請求されて一気に 債務超過になり、倒産する可能性がある。
  40. 40. ⑧潜在的債務発生:費用が激増し資産が激減するリスク
  41. 41. 粉飾ではないが注意するべきケースまとめ ⑥負ののれん発生益や受取補償金など特別利益が慢性的に発生                →「利益の質」が悪い可能性 ⑦巨額の貸倒れによる引当金の計上/棚卸資産の評価損/のれんの減損損失発生                →投資した資金が回収不能                →その後業績V字回復するケースも ⑧巨額の違約金や賠償金の発生                →キャッシュアウト発生、債務超過リスク
  42. 42. 筆者紹介ーこういった内容を話題の企業を例に解説した本が出ます 大熊将八@Showyeahok 1992年5月4日生 話題の企業の財務分析や、海外ファンドの動向、メディア業 界分析などをテーマに講談社「現代ビジネス」等で連載、「東 洋経済オンライン」「週刊文春」などに寄稿 著書に「進め!!東大ブラック企業探偵団」(講談社) 「東大式スゴい決算書の読み方」(扶桑社・3月12日発売): 「明日の東芝」が見抜ける!?話題の企業を実例に、決算 書の読み方を学ぶことで不祥事企業の兆候をつかむ、話題 の企業の意外な実態がわかる。 予約開始中です。 ⇨www.amazon.co.jp/dp/459 4076793
  43. 43. 急な宣伝、失礼しました。
  44. 44. これからの粉飾や、巨額損失発生にはどう いったケースがありえるか?
  45. 45. 従来型+技術ベンチャー特有の不正? ・最もオーソドックスである売上架空計 上や在庫架空計上が一番多い →回転期間の分析や営業キャッシュ・フ ローの分析が有効 ・海外企業買収に伴うのれんの減損損 失の認識や、海外子会社への損失隠し は大企業で増加? ・外部から評価困難な技術企業が大幅 に過大評価される可能性:技術の発達 につれ適正な評価は困難に
  46. 46. 粉飾企業を減らしていくにはどうすればいい か?
  47. 47. コーポレート・ガバナンスの強化 ・バブル崩壊後の会計ビッグバン(1990年代後半)や監査強化が行われた2006年度 後半にも粉飾発覚は相次いだ →「今、粉飾企業が増えている」わけではなく、内部告発などが増加し、「これまでの粉 飾の発覚が増えている」過渡期にある。発見数が増えるのは良いこと。 ・「コーポレート・ガバナンスコードの制定」(2015年6月) →実態を伴うように、社外取締役の育成・増加などが急務 ・「空売りファンド」に期待? →企業の不正を追及するファンドで、海外においては不正発見の立役者
  48. 48. 「空売りファンド」に期待?:高い不正発見能力
  49. 49. 「空売りファンド」に期待?:大規模な企業に対してはあまり有力でない?
  50. 50. 「空売りファンド」に期待?:日本において成り立つかは未知数
  51. 51. 企業不正は株主にとっても経営者にとって も従業員にとっても銀行にとっても監査法人 にとっても消費者にとっても 「割に合わない」。長期的に、減らしていく必 要がある。
  52. 52. 参考書籍 ・「最近の粉飾ーその実態と発見法(第6版)」(税務経理協会) ・「M&Aにおける 財務・税務デュー・デリジェンスのチェックリスト」(中央経済社) ・「カラ売りの美学」(日経 BP社) ・「融資力トレーニングブック 粉飾決算の見分け方」(ビジネス教育出版社) ・「スタンダードテキスト財務会計論」(中央経済社) ・「粉飾の論理」(東洋経済新報社) ・「東芝 粉飾の原点 内部告発が暴いた闇」(日経 BP社)

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