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イノベーションと法規制設計:Airbnbと民泊を事例に

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イノベーションと法規制設計:Airbnbと民泊を事例に

  1. 1. イノベーションと法規制設計 Airbnbと民泊を事例に 東北学院大学 経営学部 尾田 基 1 2016/11/29Hajime Oda 東北学院大学 経営学部 「おもてなしの経営学」 2016年11月24日2時限 @842 一般公開用
  2. 2. スライドの一般向け公開にあたって 2015/12/10Hajime Oda2  元々は尾田が経営学部3年生向けの授業用資料として作 成したものです。  2016年11月現在の情報に基づいており,本スライドで取 り扱った民泊に関する情況は刻々と変化しておりますの でご留意ください。  著作権,その他の都合でスライドの一部分を削除してい ます。  お問い合わせはhoda[at]tohoku-gakuin.ac.jp へお願いいた します([at]を@に置き換えてください)。
  3. 3. Airbnb(エアビーアンドビー) 2016/11/29Hajime Oda3  事業概要  米国サンフランシスコ発のウェブサービス  宿泊場所を探す旅行者と空いている部屋を貸したい人をつなげ るマッチング・ウェブサイト  ホスト,ゲストの双方から手数料収入  沿革  2008年開始  2012年のロンドンオリンピックで一躍有名に  2015年現在,190カ国超,34000都市,200万部屋以上(全世界 のホテルよりも多い)
  4. 4. 社会的コンテクスト① 2016/11/29Hajime Oda4  シェアリング・エコノミー  不要な物を譲ったり,自分一人で全てを所有しないで共有する ことで,効率的に過ごしたり,付随するコミュニケーションを 楽しむ  特に,ICTによって既存の血縁・地縁を超えた範囲にまでシェ アを拡大すること  子供服をゆずる,自動車を共有する,活用していないスキルを 売りにだす・・  配車サービスUberなどと共に,Airbnbはシェア経済の代表例と して挙げられる  国内だとメルカリ,タイムズカープラスなど
  5. 5.  ICTの進歩による,サービス評価情報の効率化  情報が限定されている状況下では,ホテル選びは価格や大手 チェーンのブランドに頼るしかなかった  宿泊旅行サイトの発展により,個々の部屋の広さや設備,利用者 の口コミなどの情報を我々は精細に利用することができるように なった。  Airbnbでは,ホストとゲスト両方の信用情報が蓄積される  Facebookなどとともに,これからはレピュテーション・エコノ ミー(評価経済)の時代だと評する人もいる。価格情報に要約さ れた評価だけでなく,偏在する評価情報を直接やりとりできるよ うになるという考え方。 C to C (Consumer to Consumer)の商取引の進展 社会的コンテクスト② 2016/11/29Hajime Oda5
  6. 6. 借り手のメリット 2016/11/29Hajime Oda6  家主との交流を含めて楽しむサービスとして  家主の居住している家の中で,一室を借りる  夕食を共にしてコミュニケーション  抹茶の体験などの付加サービス  普通は住むことができない高級マンションや住宅に一泊  住戸を丸ごと借りるケース。ホストのおもてなしなどはなく, 対面しないことが多い  ホテルよりも安い物件も  仮設例)1ヶ月5万円のアパートを1泊4000円で貸し出すと,13 泊で損益分岐点超
  7. 7.  未活用の物件(相続した実家など)を短期で貸し出す  賃貸物件の空き室で,次の借り手が見つかるまでの機会 損失補填  長期旅行・出張中の我が家に 貸し手・借り手双方に様々な利活用が期待されている 貸し手のメリット 2016/11/29Hajime Oda7
  8. 8. 実際の宿泊例 2016/11/29Hajime Oda8  普通のアパート,東京 都都心部  2016/11/18(金)-11/20 (日),2泊で14000円, 手数料2000円の計16000 円  楽天トラベルで普通の ホテルを探すと1泊 15000円ぐらい。
  9. 9. 様々な外部性と規制 2016/11/29Hajime Oda9  外部性  ある取引が行われることによって,取引の当事者ではな い第三者に生じる影響  特に,望ましくない影響が生じる場合を負の外部性,あ るいは外部不経済と呼ぶ  課税などで外部性を内部化する他,法律による直接規制 などの手段で是正される
  10. 10. 世界各国で生じたAirbnbのいろいろな問題 (解決済みの物も含む) 2016/11/29Hajime Oda10  サービス初期には様々な問題が生じた  設備・備品の破損に対する弁償問題  借り主が出て行かない  同居人が勝手に貸し出したのをやめさせたい  賃貸期間中に貸し主あるいは借り主の死亡  夜通しのパーティーによる騒音,設備破損  監視カメラ,盗撮  当事者間や規約改訂や保険で対応できる物もあれば, 第三者に悪影響がでるものも・・
  11. 11. 日本国内で挙げられている法的論点 2016/11/29Hajime Oda11  旅館業法  衛生面の規制,伝染病の予防  旅行業法  仲介業者に対する登録管理  消防法  不特定多数の人が出入りする場所は,普通の住居よりも規制が厳しい  都市計画法  ホテルを建設して良い場所は限られている  その他,契約上の問題  事業活動利用を禁止した賃貸契約  住宅ローンの契約上の問題
  12. 12. イノベーションと法制度 2016/11/29Hajime Oda12  法制度は既存の事業を前提に設計されている  イノベーションの中には,既存の法制度で違法扱いされてしまうも のもある  イノベーションの推進者はどのようにして,自社事業が有益である ことを社会に認めさせることができるか  ロビイング,ロビー活動  議員やその候補者,公務員への直接・非公開コミュニケーションによる説得活 動  パブリック・アフェアーズ  公共的側面についての企業広報や,ステイクホルダーとのコミュニケーション  アドボカシー活動  社会問題などへの政策提言(公開コミュニケーション)
  13. 13. 例:ドローンと航空法(その他電波法等) 2016/11/29Hajime Oda13 https://drone.beinto.xyz/wp/wp-content/uploads/2015/07/koukuhou.png
  14. 14. イノベーションと法制度 2016/11/29Hajime Oda14  規制はビジネスを制限するものであると共に,どこ までが合法であるかの境界を明確にするものでもあ る。新事業が普及するための前提条件。  法制度は技術や規範,市場に間接的に影響を与える こともできる  直接規制だけでなく,間接規制  官民の共同規制,民間の自主規制
  15. 15. 規制動向の読み方 2016/11/29Hajime Oda15  関係するステイクホルダーを確認する  焦点となっているクレイムについて,各アクターの 立場や成果,目的を確認する  最初から論点が整理されているわけではなく,各アク ターが正当化のために新たな論点を創出して,説得合戦 を行う(クレイム申し立て活動)  消える論点・アクターと残る論点・アクター  著しい事件などで急変することもある
  16. 16. 米国での運動例 2016/11/29Hajime Oda16  法律や条例を改正するなどの対応をとっている都市もあるが, 多くの国・都市では違法状態のまま運用されている  http://mashable.com/2015/07/15/short-term-rentals-lobbying  ホテル業界が反対のために打ち出した“怖い体験”募集サイト  http://www.overnightoversight.com/  ニューヨークでは保有者不在の状況で30日未満の貸し出し禁 止,罰金措置  Airbnbは専用サイトを立ち上げて反論  https://new-york-state.airbnbcitizen.com/
  17. 17. 日本でも(まだ合法化していないが) 着実に実績を伸ばしている 2016/11/29Hajime Oda17  Airbnb社プレスリリース(2016年11月16日)「Airbnb利用のインバウ ンドゲストが300万人を突破」 http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000016248.html  Airbnbを利用したインバウンドゲスト数の増加 2015年に日本のAirbnbリスティングに宿泊したインバウンドゲスト の数は約130万人でした。2016年は現時点ですでに300万人を超え、 前年からの伸び率は230%を記録しています。  Airbnbを利用したインバウンドゲストの出身地域 アジアからのゲスト:69% ヨーロッパからのゲスト:12% アメリカからのゲスト:12% オーストラリア/ニュージーランドからのゲスト:6%
  18. 18. 日本での「民泊」の政策課題化 2016/11/29Hajime Oda18  2014年12月4日規制改革会議,地域活性化ワーキング・ グループ(第8回)  星野リゾートの社長に対するヒアリング  どのような規制関連の問題が観光業・宿泊業にあるかという広 範な話題提供が求められ,その話題の一つとしてAirbnbと規制 設計の問題が挙げられた  2015年6月規制改革会議「規制改革に関する第3次答申」  「インターネットを通じ宿泊者を募集する一般住宅、別荘等を 活用した宿泊サービスの提供」
  19. 19. 日本国内のステイクホルダー 2016/11/29Hajime Oda19  Airbnbなどの仲介業者  規制改革派  規制遵守,規制回避派  ホスト側  副業を行いたい個人  不動産会社(賃貸,サブリースなど)  ホスト向けにクリーニングなどのサービスを提供する業者  ゲスト側  安価に泊まりたい消費者  外国人観光客  ホテル・旅館業界  物件の近隣住民,マンションの管理組合  政府  行政
  20. 20. 合法的に対応しようとする業者 2016/11/29Hajime Oda20  五島民泊潮騒塾  旅館業法の許可をとった上で,民泊は演出として提供する  消防法令適合認定及び旅館業法の営業許可を取得し、年に1回以上の保健 所の衛生管理講習会を受けた民家さんが受入れしております。また「衛 生管理基準」を設け、衛生上の管理を強化いたしております。  http://www.gotominpak-siosaijuk.jp/qa/  とまれる(株)  (株)百戦錬磨の子会社,国家戦略特区での参入を予定  マッチングサイトTOMARERU  「旅館業法の取得要件を踏まえると一般的な民家で旅館業の認可を受け るのは不可能に近く,現状法的にブラックなので当社はホワイトになっ てからスタートするつもりです」 『月刊レジャー産業資料』2015.07,p.54。
  21. 21. その他,合法的な民泊 2016/11/29Hajime Oda21  行政内でも,文部科学省や農林水産省が民泊を推進 していた時期がある  農村振興目的で,小中学生が農家に宿泊するイベントが 開催されるケース  修学旅行等の一環で,地方での民泊が日程に組み込まれ るケース(教育目的)  ただし,Airbnb関連の議論では特に主張なし
  22. 22. ホテル・旅館業の立場 2016/11/29Hajime Oda22  異なる規制・コスト負担で競争させられるのは不公 正だ,と主張  ただし,近年供給量不足が生じている  インバウンド需要やオリンピックに向けて,一時的な需 要拡大が見込まれるが,いずれ人口減少することを想定 すると,ホテルの新設による供給量拡大は容易ではない ■ホテル業界にとっての弱点。社会的責務を果たして いないと思われてしまう
  23. 23. ホテル・旅館業の立場 2016/11/29Hajime Oda23  宿泊特化型のホテルや, カプセルホテルなどの 簡易宿泊所は供給増  旅館業法の規制の問題  カプセルホテルなどの簡 易宿泊所は,窓がなくて も対応できるので,既存 のビルの中にカプセルの モジュールをはめ込むこ とで比較的容易に工事で きる
  24. 24. 政府・政治家の立場 2016/11/29Hajime Oda24  政府  アベノミクス第3の矢  規制改革会議の議題にも挙げられている ■これは法整備に向けて大きな進展のシグナル。少なくとも行政が前向き でなかったとしても政策課題として“なかったこと”にはできなくなる  政治家の場合,目に見える成果が挙げられたかどうかが問題となり がち  イシュー・セイリアンス(issue salience)  理想は,選挙の票になること  実質的効果がなくとも,動きがめだつとか,観察可能であることが重視 される
  25. 25. 行政の立場 2016/11/29Hajime Oda25  関係省庁  国交省 建築基準法,安全管理  消防庁 消防法,安全管理  観光庁 旅行業法  厚生労働省 旅館業法,衛生管理  地方自治体 都市計画,保健所管轄,旅館業法の認可 等  各省庁は,短期的成果よりも,持続的に管理可能か どうかを懸念する傾向にある
  26. 26. マンション自治の動き 2016/11/29Hajime Oda26  ブリリアマーレ有明  共用部分が高級なタワーマンション  2013年にシェアハウスなどを禁止するマンション管理規約  「民泊禁止の新築マンション 住友不動産、住民の不安 考慮」 http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ07HYW_X01C15A2E A1000/ ■ただし,これらの動きは合法化の後押しにもなる  自治でわざわざ禁止するということは,自治の範囲外では社会 的には認められる権利であることを追認することでもある
  27. 27. 成立した規制・規制緩和 2016/11/29Hajime Oda27  国家戦略特区による対応  旅館業法を特例で適用除外  訪日客向け,6泊7日以上の滞在などの条件  →2泊3日以上に規制緩和の予定 (国家戦略特別区域諮問会議 「国家戦略特区における追加の規制改革事項につい て(案)」平成28年9月9日)  東京都大田区,大阪府などが条例を制定済 ■特区による対応というのは,進展しているようで実は立ち消えになる可能性があり, よくないフラグ。社会を巻き込む変化に進展しづらい・・  2016年4月より 旅館業法施行令を規制緩和,簡易宿所  延べ床面積と玄関帳場(フロントの設置義務)について規制緩和  簡易宿所として登録してくれれば,行政にとっては実態を把握できるメリットが ある(実際にはどうか?)
  28. 28. 法改正に向けての交渉 2016/11/29Hajime Oda28  2015年11月27日 第1回「民泊サービス」のあり方 に関する検討会  規制改革会議(提案するのが仕事)から,ステイクホル ダーによる合意形成のテーブルへ  ■この種の検討会・研究会・懇談会には,本当にその場 で議論するものもあるが,今回は裏で各省庁の基本方針 に合意がとれたから開催できているものと推測される。  当初の予定では2016年夏~秋に答申をだし,2017年の通 常国会提出を見込んでいた
  29. 29. 第1回「民泊サービス」のあり方に関する検討 会 観光庁の挨拶 2016/11/29Hajime Oda29  「観光庁といたしましては、(中略)訪日外国人の中には、日本の生活を 実際に自分で体験して、日本の方々と交流を深めたいというホームステイ のような形でのニーズも多々ございまして、そういった宿泊ニーズにどう やって応えていくかということも大きな課題であると認識しております。 こういう大都市等における需給逼迫の改善ですとか、外国人のお客様のい ろいろな宿泊ニーズの多様化といった観点からも、民泊のあり方を御検討 いただくことは非常に重要なテーマであると認識しております。一方で、 現在行われております民泊には多くのものが旅館業法の許可をとらない形 で行われておりまして、安全の確保の問題ですとか近隣の皆様とのトラブ ルなど、さまざまな問題が指摘されている状況でございます。したがって、 我が国の実情に合った民泊のあり方、それから、どのようなルールを整備 していくかということについて、先生方から幅広く御意見を頂戴いたした いと思います。どうぞよろしくお願いいたします。」 「2015年11月27日 第1回 「民泊サービス」のあり方に関する検討会 議事録」より引用。 中略および太字は引用者によるものである。もう片方の事務局である厚生労働省の担当者は不在のため挨拶をしていない。
  30. 30. 反対派は国会議員に陳情 2016/11/29Hajime Oda30  2016年6月8日 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連 合会の全国大会  「規制緩和の前に、まずは不法民泊の取り締まりか ら始めなくてはならない」自民党の伊吹文明議員 (元衆院議長)  「「民泊サービス」のあり方に関する検討会」の結 論は「民泊の営業日数を年間最大180日以内に制限」 という中間的な案に留まった
  31. 31. 推進派内部の温度差 2016/11/29Hajime Oda31  不動産事業を営む会社にとって,年間180日の営業で は採算がとれないので,ホテル・旅館業界との妥協 はできない  Airbnbなどのプラットフォームや,個人が副業とし て行うホストは,ホテル・旅館業界と妥協しても合 法化できれば利益は大きい  営業日数については時間をかけて規制緩和に取り組んで 行けばよい
  32. 32. 顧客とのコミュニケーションを重視する広告 (2016年10月17日のプロモツイート) 2016/11/29Hajime Oda32
  33. 33. 東北のホテル・旅館業の立場でどう考えるか 2016/11/29Hajime Oda33  東北の旅行客数,宿泊客 数は,震災前の水準まで 回復していない  (主に近畿圏や都内のホ テル不足に対応するため に)特区や条例によらな い全国的な民泊の法制度 整備が進むと,供給量が 増え,価格競争が激しく なる可能性がある 追加必 要客数 新設・ 増設計 画数 過不足 東北 0 1360 1360 東京 13843 9549 -4294 東京除 く関東 2418 4519 2101 近畿 23476 3765 -19711 (出所)『金融財政ビジネス』2015.8.20,p.19。
  34. 34. 宿泊施設の業態別稼働率(2015年) 2016/11/29Hajime Oda34 出所)『宿泊旅行統計調査』(平成27年版)より,47都道府県の宿泊施設の 業態別稼働率を元に筆者作成。上方の特異点は旅館については東京都であり(42%), リゾートホテルとビジネスホテルについては大阪府の稼働率が高くなっている。
  35. 35. 業態別の特徴 2016/11/29Hajime Oda35  旅館  小規模経営,近隣地域の顧 客  複数人利用,宴会や法事な どの団体客  食事や温泉などの宿泊以外 のサービスが本質サービス に含まれる  ビジネスホテル  チェーン展開  単身利用  宿泊のみ  シティホテル  大規模,洋室  ビジネス・観光両方  商圏が広い,外国人観光客  会議室・結婚式などの補助 事業  リゾートホテル  小規模から大規模  複数人利用  商圏は広い,外国人観光客
  36. 36. 供給客室数にしめる旅館客室数のシェア (上位10県と下位10都府県の比較,2015年) 2016/11/29Hajime Oda36 出所)『宿泊旅行統計調査』(平成27年版)より筆者作成。 ただし,供給客室数は稼働率と稼働客室数から逆算して推計した値を用いている。 地方の場合,旅館の業態転換やニーズの変化への対応が未 だに課題
  37. 37. 競争政策・消費者の立場でどう考えるか 2016/11/29Hajime Oda37  法的なハードルを越え たあとに,民泊とホテ ルが競争すれば,ホテ ルのサービス改善が期 待できる  価格競争  補助サービス  全自動洗濯乾燥機  モバイルWi-Fiルーター  シーツの交換をしないこ とによる値引き

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