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デジタル・ヒューマニティーズの動向と課題

  1. デジタル・ヒューマニ ティーズの動向と課題 於第66回日本西洋史学会大会(2016/5/22) 永崎研宣 一般財団法人人文情報学研究所
  2. デジタル・ヒューマニティーズとは • 紙媒体の特性に依拠した方法論を発達させてきた人 文学が、普及しつつあるデジタル媒体を基軸としてそ の方法論を再構築しようとする研究動向 • 具体的な内容は多岐にわたる • メタデータ付与、テキストの構造化、統計解析、可視化(視覚 化)、、、 • 既存の人文学手法を便利にする • 既存の人文学に新たな視点を提供する • 既存の人文学の成果を問い直す • 既存の人文学の方法論を問い直す • ⇒コンピュータを使わない研究もある • 既存の人文学には近づかないで人間文化についての研究 を行う/ビッグデータ分析等 多様な手法 と立場
  3. 研究分野としての動向 • 1970年代の欧米でのDH関連学会設立 • 1980年代の日本でのDH関連学研究会設立 • 2000年代のADHO (Alliance of Digital Humanities Organizations)設立 • 毎年、世界のどこかで主催学会開催。関連学会も各地 で開催。(カナダ/豪州/日本/ドイツ/イタリア…) • 欧米でのDHへの大規模な研究助成金 • 2000年代後半から • 「サマースクール」に注力 • 新規参入・知識のアップデートのため世界各地で開催。 • ヴィクトリア大学では毎年400人規模の参加者。
  4. 歴史学との関連(1) • 資料が少ない時代・分野ではテクストのデジタル翻刻と構 造化 • 書簡のデジタル化は大流行中 • TEIガイドラインで共通フォーマットが定められた • 財務・会計資料のマークアップ(構造化)が広まりつつある • 必ずしも整合しない数値を整合しないままに情報としては残しつつ議 論するための手法 • 「クラウドソーシング」によるデジタル翻刻が流行中 • ⇒課題も多い • 資料が多い時代/分野は…? • 一括デジタル撮影による公開と共有(とOCR) • 「可視化」研究が一部に行われているが研究としてどう評価し得 るか?
  5. 歴史学との関連(2):評価は? • 「デジタル歴史研究の評価のためのガイドライン」 • アメリカ歴史協会(AHA)よりリリース • 日本語訳(菊池、小風他) • http://www.jadh.org/guidelines-for-the-evaluation-of- digital-scholarship-in-history • DH全体としては • OUPより査読付ジャーナル • 複数のオンラインジャーナル • 日本デジタル・ヒューマニティーズ学会も。 • 査読付国際会議発表
  6. すでにある共通の枠組み • テクスト資料をうまく共有するために: • Text Encoding Initiative Consortium and Guidelines • 人文学資料のためのマークアップガイドライン • 資料そのものの情報をうまく共有するために: • Encoded Archival Description • アーカイブズのためのマークアップルール • 画像データをうまく共有するために: • International Image Interoperability Framework • 画像データと情報をWebで共有するための規格 • その他、色々… • 分野ごとにそれぞれ規格が提供されている場合がある • Unicode、CIDOC-CRM、、、
  7. TEIガイドライン - http://www.tei-c.org/ • テクスト資料を構造的にマークアップしてうまく共有す るための包括的なガイドライン • 欧米では1980年代から活動している。 • 様々なタイプの文書・構造に向けて様々なルールを提供して いる。 • コーパス、マニュスクリプト、辞書、韻文詩、散文、戯曲、、 • ⇒分野、手法ごとに異なったルールが必要 • (未知の資料と未知の方法論) • ⇒異なったルールをまとめた、極めて柔軟な仕組み • 「誰が作った/付与したか」「信頼性はどうか」「名前、地名、 時間の統合的表記」 • ⇒これは共通 • 欧米の多くの機関がテキスト資料作成の際に活用
  8. IIIF- http://iiif.io/ • トリプルアイエフ • この数年で広まりつつあるデジタルアーカイブの国際 規格 • 英国図書館、フランス国立図書館、バチカン図書館、エジプ ト国立図書館、ウェルカム財団、ゲティ財団、ハーバード大 学、スタンフォード大学、イェール大学、ライデン大学、香港 大学、DPLA、Europeana… • 「一度公開されれば色々なビューワを選択して見られ る」 • フリーソフトのビューワが少なくとも5つ公開されている。 • タグも簡単につけられる仕組み • 公開側では公開コストが大幅に低減。 • ビューワだけでなくサーバソフトもフリーのものが複数 • 公開用規格を一から検討する必要がなくなる
  9. 統合的なメタデータ基準? • 分野・用途ごとにメタデータは異なる • 同じ資料を見ても、問題にする事柄は様々 • TEIガイドラインはメタなメタデータ統合の仕組みと しても機能している • IIIFも今後はおそらくそのような方向になるだろう • 両者の共通するところとして: • 「コミュニティを重視」 • 完全な統合基準の完成は困難なので、それを目指すコ ミュニティをきちんと作って少しずつ対応していく • ⇒文字コードに関しても、徐々に変わっている。 • Ex. UnicodeにおけるMUFIやemojiなど
  10. オープンサイエンス オープンアクセス • 背景として • 公金で作ったデータへのアクセス性の平等な保証 • 「市民科学」「市民人文学(Public Humanities)」「市民アーキ ビスト」の推進 • 近年の政策動向との関係をうまく作ることは可能か? • 商業出版社・印刷会社等とどのようにしてうまく関係を 再構築するか • 欧米では: • 米国人文科学基金(NEH)ではDH事務局を作って財政面か ら支援 • 欧州でも様々なDH向け基金 • ⇒DHに取り組まざるを得ない状況
  11. DHとしての課題 • 表層的な批判にどう答えるか • 「読まずに批判」「知らずに批判」 • DH自らの課題にどう向き合うか • 持続可能性 • データ・ポータビリティ(特に利用許諾条件とデータの規格)が鍵となる • デジタル媒体の様々な制約 • 紙媒体での事例との対比が重要 • ⇒媒体の違いの問題なのか情報や情報交換における本質的な問題なの か。 • 評価と雇用 • 査読付学会発表、査読付ジャーナル、インパクトファクター等は用意。 • これまでの方法論とのすりあわせ • ⇒研究上の課題として取り組んでいく必要 • 教育 • 東京大学大学院人文社会系研究科では「人文情報学拠点」で副専攻と して複数の授業を展開
  12. 西洋史研究への期待 • 欧米での本場の歴史研究DHの研究動向を研究者 の立場から正当に評価できると存じます。 • 欧米の歴史研究DHの研究動向に直接踏み込ん で、それを日本の他の人文学に還元することがで きると存じます。 • 日本の人文学の将来のために、ぜひともよろしく お願いいたします。
  13. 参考情報 • メールマガジン『人文情報学月報』 • http://www.dhii.jp/DHM/ • 菊池信彦氏の過去の西洋史DHの連載記事 • 長野壮一氏のフランスDHの調査レポート • 欧米でのDH関連イベントの参加レポート • フェイスブック: Digital Humanities in Japan • Prezi: https://prezi.com/6b2thyj5pzvz/dh_in_japan/ • このスライドの掲載場所
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