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行政機関が保有するデータの新規公開促進に向けた「オープンデータラウンドテーブル」の考察

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2019年度春季(第40回)情報通信学会大会での発表資料です。

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行政機関が保有するデータの新規公開促進に向けた「オープンデータラウンドテーブル」の考察

  1. 1. 行政機関が保有するデータの 新規公開促進に向けた 「オープンデータラウンドテーブル」の考察 庄司昌彦(武蔵大学社会学部 教授) Masahiko.shoji.@cc.musashi.ac.jp 1
  2. 2. 基盤整備の「1.0」と実効性の「2.0」 • 日本政府のオープンデータ政策 • 欧米諸国の動向や東日本大震災(2011年)の反省を踏まえ「電子行政オープンデータ戦 略」(2012年)で具体的に開始 • 目標は2015年度末までに「他の先進国と同水準の公開と利用を実現」 • 2016年までの主な成果 • データカタログサイトData.go.jpの整備 • G7諸国中、中位程度の件数のデータ公開 • 全府省による「政府標準利用規約2.0(オープンデータ対応ライセンス)」適用 • 地方自治体のためのガイドライン作成 • 2016年時点の主な課題 • 価値の高いデータの公開・API提供が少ない • 市民活動的な利用は盛ん • ビジネスでは日本独自事例が複数登場。大きな新規ビジネスが誕生したとまではいえない • 自治体カバー率は13%、取り組みがバラバラで使い勝手が悪い 2 参考:庄司昌彦, 「「オープンデータ1.0」の評価とオープンデータ活用推進基本法の構想」, 社会情報学会大会発表予稿, 2016年9月.
  3. 3. 基盤整備の「1.0」と実効性の「2.0」 • 実効性を求める「2.0」の取り組み • 「【オープンデータ 2.0】官民一体となったデータ流通の促進」 (IT総合戦略本部、2016年) • 基盤整備から実効性を求める段階へ • 事例集「オープンデータ100」 • オープンデータ伝道師 • 自治体向け「データアカデミー」 • オープンデータラウンドテーブル • 官民データ活用推進基本法(2016年) • 政府・都道府県に「官民データ活用推進計画」策定義務 • 市町村にも努力義務 • 本発表 • オープンデータラウンドテーブルのあり方について考察・提案する。 • 官民データの活用をより実効的なものにしていくため、行政機関や地方自治体 の仕組みづくりの参考にしていただきたい。 3 参考:庄司昌彦, 「「オープンデータ1.0」の評価とオープンデータ活用推進基本法の構想」, 社会情報学会大会発表予稿, 2016年9月.
  4. 4. 東日本大震災への反省から社会基盤へ 4 年度 キーワード 政府などの動き 2009 米国オバマ政権 「透明性とオープンガバメントに関する覚書」 2011 東日本大震災 自発的取組み(電力・避難所・物資等)と課題の露呈 2012 萌芽的取組み 電子行政オープンデータ戦略 2013 国際的な政策課題へ 政府データカタログサイトβ版(Data.go.jp) G8オープンデータ憲章 2014 民間活動の活性化 シビックテック(Code for Japanほか各地) 2015 オープンデータ1.0完成 政府標準利用規約2.0版 2016 オープンデータ2.0開始 官民データ活用推進基本法 2017 官民データ活用 改正個人情報保護法施行 官民データ活用推進計画 2018 官民データ活用 さまざまな課題の表出 都道府県官デ計画、データアカデミー 欧州一般データ保護規則(GDPR)施行 公文書管理/統計問題/働き方改革 問題 2019 デジタルガバメント 世界経済の課題とDFFT デジタルファースト(デジタル手続)法 G20 “Data Free Flow with Trust” 筆者作成
  5. 5. オープンデータ官民ラウンドテーブル • 経緯・概要 • 従来の取組み • アンケート調査、アイデアボックス(電子会議室)、データカタログから の要望受付、アイデアソン・ハッカソン、コンテストなど • 情報公開請求の分析 • 米国ニューヨーク大 GovLabの「Open Data 500」の取組みを参照 • 官民の当事者と有識者が一堂に会し、議論や相談をする双方向性 • 議論の進め方 • 内閣官房IT総合戦略室主催、発表者がモデレーター • 提供希望企業などが具体的にニーズを表明 • 所管する府省の担当者が可否や、関連する取組み、課題などを説明 • IT戦略本部オープンデータワーキンググループの有識者が助言 • 終了後も内閣官房IT室が進捗を把握・フォローアップ 5参考(情報公開請求関連):庄司・本田・青木・渡辺(2015)、庄司・横田・本田・青木・渡辺(2016)
  6. 6. 米国における取組み • 開催回数・時期 • 2014年より政府と企業・非営利機関代表によるオープンデータ・ラウンドテーブルを開催。 • 2014年から2015年11月までの間にそれぞれ別の省庁とのパートナーシップで8回開催。 2016年3月からは「データプライバシー」「データ品質の改善」「研究データの共有」な ど省庁横断的なテーマの下で4回開催 • 参加者 • 2016年のラウンドテーブルには、連邦政府関係機関関係者、学術機関関係者、民間団体関 係者、政策や法律の専門家、企業関係者などが4回合計で290名参加。 • 多くの参加者は各組織の有識者というよりは組織の代表としてラウンドテーブルに参加 •運用方法 •1:毎回、既存文献をレビュー、課題・解決策・専門家を特定するための初期枠組みの開発 •2:一般向けオンラインアンケート調査による情報収集 •3:背景説明の事前説明資料の作成と参加者レビュー •4:ラウンドテーブル実施 •5:補足的なインタビューや机上での調査 •成果・果たした役割 •以下の内容に関する課題と推奨事項に関するレポートが作成された。 • データ収集、標準化、プライバシー管理、データリリース、品質改善、キュレーション・ 保存・管理、コミュニティと協働 6
  7. 7. オープンデータ官民ラウンドテーブル 7あかま二郎内閣府副大臣ウェブサイトより
  8. 8. 第1回ラウンドテーブル(2018年1月25日) • ぐるなび:飲食店の営業許可・停止状況(厚生労働省) • 一部自治体で提供しているが、検索サイト等が使用するためには、全国的なデータ整備や形式・ 項目・内容等の標準化、タイムリーな更新などが必要 • 厚生労働省:自治体が情報を保有しているためまとめて提供はできない。各自治体が標準的な形 式で公開できるよう内閣官房IT室と連携し「推奨データセット」化へ • ウイングアーク1st:外国人出入国記録(法務省)、免税品購買データ(国税庁)、訪日 外国人消費動向調査(観光庁) • 法務省:外国人出入国記録は電子データで保有しており統計の作成・公開は検討可能。オープン データではないが行政機関個人情報保護法に基づく「非識別加工情報」としての対応は可能。 • 国税庁:現在は電子データを保有していない。ただし2020年度からは電子化の予定があるため、 そのタイミングに合わせて法令等を整備していく可能性を表明 • 観光庁:民泊関連項目の追加は対応済み。空港・海港別データ提供は、サンプル数が少ない場所 があり提供は困難と表明。有識者からは主要な空港・海港に限るなどの方法もあると指摘 • ジョルダン・凸版印刷:公共交通リアルタイム運行情報、駅構内図・バリアフリー経路 (国土交通省) • 国土交通省:データ保有者は民間企業であり困難。実証実験により意義を各社に理解してもらう 必要があると表明。有識者はバリアフリー経路のような公共的な情報は国が主導すべきと指摘。 8
  9. 9. 第2回ラウンドテーブル( 2018年3月27日) • パスコ:交通事故発生場所(警察庁)・急ブレーキ位置(国土交通省)・通学路(文部科学省) • 警察庁:交通事故発生日時や緯度・経度情報のCSV形式提供は準備中。 • 国土交通省:急ブレーキ位置の道路改善への活用開始済。公開や取得デフォルト化の検討を表明。 • 文部科学省:国として把握しておらず、機微な情報も含まれるため公開は困難。有識者からは、学 校周辺のスクールゾーンは必ずしも機微情報ではないため国が主導できるのではと指摘 • Singular Perturbations:犯罪発生状況データ(警察庁)の全国提供や更新頻度の増加 • 警察庁:都道府県警を通じCSV形式でのオープンデータ提供と罪種拡大を実施予定であると表明 • 全国地質調査業協会連合会:ボーリング柱状図データ(国, 自治体, 高速道路, 公益事業者) • 国土交通・総務・経済産業省:「国として公開や提出を求めていない」「各民間事業者が判断する もの」と後ろ向き。政府CIOが現状の説明ではなく公開に向けた検討を進めるよう要求 • アールシーソリューション:雨量・水位等データ(国土交通省) • 国土交通省: (一財)河川情報センターが独占有償提供。有識者は実費額の適切性など透明性を要求 • ITS Japan:指定避難所情報(内閣府) • 内閣府:指定様式で全国市町村データを集約しているが「混乱が生じる」ため公開拒否。有識者は 「あるのに使えないのは損失。利用責任で公開すべき、非公開の理由にはならない」と反発。 9
  10. 10. 第3回ラウンドテーブル(2018年9月14日) • LIFUL:住所表記一覧(総務省)・不動産登記(法務省)・REINS(国土交通省) • 総務省:住居表示ルールは定めているが情報は自治体が保有(J-LISと国土地理協会が販売)。公表 は自治体が判断すべき。一括公表すべきと考えないと否定。IT室が自治体の取組みを支援していく と表明。 • 法務省:民事法務協会が有償提供。費用負担問題や個人情報保護の検討が必要と消極的。 • 国土交通省:個人情報保護のため個別の取引を特定できない形で提供中。それ以上は要検討。 • 十勝農業協同組合連合会:地理院地図・電子基準点リアルタイムデータ(国土交通省) • 国土交通省:地理院地図の問題は対応予定。電子基準点は無償提供データを日本測量協会が販売。 安価な提供方法について検討予定。 • オーチャードアンドテクノロジー:農業経営に関する統計・土壌成分量(農林水産省) • 農林水産省:新たに公開する仕組み(WAGRI)を通じて順次提供していく • 富士通:農薬・病害虫データベース、病害虫発生データ(農林水産省) • 農林水産省:農薬は法改正を踏まえシステムの再構築を予定。病害虫についてはオープンデータ化 を予定。病害虫発生データは都道府県と協力し公開を進める。 10
  11. 11. 見えてきた構造的な課題(1) • 「困難」とされるデータの典型 • 自治体や民間企業が提供しており国は保有していない • 国が推奨フォーマットを提案していくことは可能 • 国は保有しているが公開をしたくない(個人情報保護) • 統計化したものを使いやすい形式で提供することは可能 • 行政機関個人情報保護法を活用し非識別加工情報としての提供も可能 • 国は保有しているが公開をしたくない(混乱を呼ぶ) • 政府標準利用規約は「免責」を定めている • 十分な説明を付与して提供すれば手続的には十分ではないか • なぜ消極的か • 二次利用は「目的外利用」であり積極的に進める意義を感じないのは自然 • 政府CIO「光の当て方を変えると有益なデータに化けることがあるから、こ こではそのために議論をするのだ」という発言が重要 • 転用可能性のあるデータに気づくことが、ラウンドテーブルの意義 11
  12. 12. 見えてきた構造的な課題(2) • 既に国の関係団体が独占的・限定的に提供している • 多数の事例 • 民事法務協会、河川情報センター、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)、国 土地理協会、日本測量協会、WAGRI等の事例 • 他に道路交通情報センター、気象業務支援センター、学校保健会、国立印刷局等 • 既存のルールが制約となりオープン化が進まない • サーバ管理等に費用がかかる • 収益事業になっている(参考:事業仕分けの影響) • 要検討:登録する、会員になる等の手続が利用の制約になっている • 要検討:無償提供を受けていることの正当性は? • 要検討:価格設定の適切性(天下り?) • 今後の方向性 • 加工・蓄積・販売等プロセスの中で一部でもオープン性を高められないか • よりデータ活用を促進するエコシステムに進化していくことも必要 • 一律の対応は困難。個別事情を踏まえながら解きほぐしていく必要 12
  13. 13. ラウンドテーブルの発展可能性 • 各府省版・地方自治体版 • 内閣官房IT室「はじめてみよう!地方版オープンデータ官民ラウンドテー ブル」の作成(2018) • 愛知県、中国総合通信局でも実施。今後もさまざまな自治体で実施計画中 • 定まった形式はない • 方法:時間、ワークショップ形式、公開・非公開 • 時間が限られているため「知恵だし」「交渉」になっていない • 公開の場であるために担当府省の発言がより消極的になっている可能性 • 形式:テーブルの配置の工夫、雰囲気作り • 「口」の字型の配置が対立的な雰囲気を醸成している可能性 • 参加者:決定権限のある当事者の参加の可否 • 副大臣・政府CIOが出席・発言することのプラス面とマイナス面 • 試行錯誤、ノウハウの共有により、手法を磨き整理していくことが必要 13
  14. 14. 参考文献 • 庄司昌彦, 「「オープンデータラウンドテーブル」のすすめ(連載企画 行政情報化新時代No.43)」『行政& 情報システム』2018年8月号. • Gray, Jonathan. : “Towards a Genealogy of Open Data”, the General Conference of the European Consortium for Political Research in Glasgow, 3-6th September 2014.. Available at SSRN: http://ssrn.com/abstract=2605828 • 庄司昌彦, 「日本におけるオープンデータ」の系譜学に向けて」, 社会情報学会大会発表予稿, 2015年9月. • 庄司昌彦, 「「オープンデータ1.0」の評価とオープンデータ活用推進基本法の構想」, 社会情報学会大会発表予 稿, 2016年9月. • New York University Governance Lab (Gov Lab) “Open Data 500” http://www.opendata500.com/ • 庄司昌彦, 本田正美, 青木佑一, 渡辺智暁(2015), 「Innovation Nippon 研究会報告書:地方自治体の情報公開請 求から見たデータの商業利用ニーズ」, http://innovation-nippon.jp/reports/2014StudyReport_ODFOIA.pdf. • 庄司昌彦, 横田明美, 本田正美, 青木佑一, 渡辺智暁(2016), 「Innovation Nippon 2015 研究報告:地方自治体に おける情報公開制度とオープンデータ~利用価値の高い公共データを誰もが自由に使えるようにする ~」, .http://innovation-nippon.jp/reports/2015StudyReport_OpenData_all.pdf. • 内閣官房IT総合戦略室「はじめてみよう!地方版オープンデータ官民ラウンドテーブル」(2018) 14

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