ソフトウェア基礎講座資料

1. 第4回「テスト・ケースの設計Ⅱ」
2011年7月1日（金）
服部 健太
ソフトウェア・テスト入門

2. 原因－結果グラフ
2011/7/1ソフトウェア・テスト入門４
 限界値分析と同値分割の弱点の１つは，入力の状
況の組み合わせを明確にすることができないこと
 例：質問数と学生数の積がある限界を超えたら誤動
作する，といったエラーは限界値テストで発見され
るとは限らない
 原因－結果グラフの手法によって，入力の組合せ
を系統的に選ぶことができる
2

3. 原因－結果グラフを用いた
テスト・ケースの作り方
2011/7/1ソフトウェア・テスト入門４
 仕様を「扱いやすい」断片に分割する
 例：個々コマンドの使用，入力の各文
 仕様のなかの原因と結果を見分ける
 例：WTLへの作業線入力はDBの更新の原因となる
 それぞれの原因―結果に一連の番号をつける
 仕様の意味内容を分析し，それを原因と結果をむすびつけ
るブールグラフへうつす（原因－結果グラフ）
 構文上または状況上の制約から不可能であるような原因と
結果の組合せを説明するような制約をつけて，このグラフ
を注釈する
 このグラフの状態条件を形式にしたがってたどり，このグ
ラフをエントリーの制限されたデシジョン・テーブルに変
換する．テーブルの各列はテスト・ケースをあらわす
 デシジョン・テーブルの各列をテスト・ケースに変換する
3

4. 基本的表記法
2011/7/1ソフトウェア・テスト入門４
a b
IDENTITY（同値）
a b
NOT（否定）
a
db
c
OR（和）
a
c
b
AND（積）
∨
∧
4

5. 原因－結果グラフの例
2011/7/1ソフトウェア・テスト入門４
 仕様：
 第1列目の文字は“A”か“B”でな
ければならない．
 第2列目の文字は数字でなけれ
ばならない．
 この状況においてファイルの
更新が行われる
 最初の文字が正しくなければ
X12のメッセージを出力
 2番目の文字が数字でなければ
X13のメッセージを出力
 原因：
1. 第1列の文字が“A”
2. 第1列の文字が“B”
3. 第2列の文字が数字
 結果：
70. 更新される
71. メッセージX12が印字される
72. メッセージX13が印字される
1
11
2
3
71
72
70
∨
∧
5

6. 制約をあらわす表記法
2011/7/1ソフトウェア・テスト入門４
a
b
E
排他的
a
bI
包含する
c
a
b
O
1のみ
a
b
R
必要とする
a
b
M
隠す
たかだか1つが
Tになる
少なくともどれ
か1つはTになる
どれか1つだけが
Tになる aがTならbもTで
ある必要がある
aがTならbはFでな
ければならない
6

7. 例：dumpコマンドの仕様
2011/7/1ソフトウェア・テスト入門４
 dumpコマンドは，メモリ領域の内容を16進表示する
 命令の書式：
 dump [start_loc] [-end_loc|-END|.bytes]
 start_locは表示する最初のバイトの番地を指定する
 省略時は番地0
 -end_locは最後のバイトの番地を指定
 end_locはstart_locより大きいか等しくなければならない
 end_locはメモリ領域内でなければならない
 -ENDを指定するとメモリ領域の最後まで表示される
 .bytesは表示される領域のバイト数を指定する
 少なくとも1以上の値でなくてはならない
 省略時は1byte表示される
 start_loc,end_loc,bytes引数は1～6桁の16進整数形式
 dumpコマンドの例：
dump, dump 77F, dump 77F-407A, dump 77F.6, dump 50FF-
END
7

8. 例：dumpコマンドの仕様（２）
2011/7/1ソフトウェア・テスト入門４
 表示形式：
 以下の形式が1行以上つづく
 xxxxxx = word1 word2 word3 word4
 xxxxxxはword1の16進数表示の番地
 start_locの値，または表示される領域の大きさに関係なく，
ワード（4バイト）の全体が表示される
 ワードの最初のバイトの番地は4の倍数となる
 すべての出力行はつねに4ワードふくんでいる
 表示領域の最初のバイトは最初のワード内にある
 エラーメッセージは以下のとおり
 Ｍ１ 無効なコマンド構文
 Ｍ２ 表示する大きさがメモリ領域を超えている
 Ｍ３ 表示する大きさがゼロか負の値になっている
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9. 仕様の分析（原因）
2011/7/1ソフトウェア・テスト入門４
1. 1番目の引数が「ある」
2. start_locは16進数表示の数字だけを含む
3. start_locは1～6個の文字を含む
4. start_locはメモリ領域内にある
5. 2番目の引数はENDである
6. 2番目の引数はend_locである
7. 2番目の引数はbytesである
8. 2番目の引数は省略されている
9. end_locは16進数表示の数字だけを含む
10. end_locは1～6個の文字を含む
11. end_locはメモリ領域内にある
12. end_locはstart_locより大きいか等しい
13. bytesは16進数表示の数字だけを含む
14. bytesは1～6個の文字を含む
15. start_loc+bytes ≦ メモリ領域の大きさ
16. bytes ≧ 1
17. 指定された領域は，複数の出力行に表示されるために必要な大きさをもっている
18. 領域の最初は，ワード境界にあっていない
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10. 仕様の分析（結果）
2011/7/1ソフトウェア・テスト入門４
91. メッセージＭ１が表示される
92. メッセージＭ２が表示される
93. メッセージＭ３が表示される
94. 記憶域が1行に表示される
95. 記憶域が複数行に表示される
96. 表示される範囲の最初のバイトは，ワード境界
にあっている
97. 表示される範囲の最初のバイトは，ワード境界
にあっていない
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11. 原因－結果グラフ（はじめ）
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97
31
32
∧
∨
33∧
34
∧
35∨
36∧
構文上有効な
第1引数
構文上有効な
第2引数
構文上有効な
コマンド
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12. 原因－結果グラフ（制約なし）
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31
32
∧
∨
33∧
34∧
35
∨
36∧
37∨
38∨
39∧
40∨
指定領域がメ
モリの範囲内
指定領域のサ
イズが1以上
∧
∧
∧
∧
12

13. 原因－結果グラフ（完全版）
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∧
∨
33∧
34∧
35
∨
36∧
37∨
38∨
39∧
40∨
∧
∧
∧
∧
R
R
R
R
R
E
R
R
R
R
R
R
R R
R
R
R
R
13

14. デシジョンテーブルの作成
2011/7/1ソフトウェア・テスト入門４
 存在（真となる）状態にある結果をえらぶ
 このグラフを逆にたどりながら，この結果を真に
設定する原因のすべての組み合わせをみつける
 原因の各組み合わせのためのデシジョン・テーブ
ルの列をつくる
 それぞれの各組み合わせについて，他のすべての
結果状態をきめ，これを各列に配置する
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15. 有用性の低いテストケースを減らす
2011/7/1ソフトウェア・テスト入門４
 Or節点を通って逆戻りするとき，複数の入力を同時
にT（真）に設定しないこと．（１つの原因が他の原
因を隠すことによるある種のエラーを避ける）
 出力がF（偽）となるand節点を通って逆もどりする
とき，Fの出力をみちびくすべての入力の組み合わせ
を列挙する．ただし，１つの入力がFで，他の１つま
たは複数の入力がTである状況をしらべているならば，
ほかの入力がTになりうるようなすべての条件を列挙
する必要性はない
 出力がFとなるand節点をとおって逆戻りするとき，
すべての入力がFであるただ１つの状況を列挙する必
要がある
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16. グラフのたどり方
2011/7/1ソフトウェア・テスト入門４
 もしxがTならば，a=b=Tの
状況をつくってはならない
 もしxがFならば，a=b=Fで
あるすべての状況を列挙す
る
 もしxがTならばa=b=c=Tと
なるすべての状況を列挙す
る
 もしxがFならば，a=b=c=F
となる１つの状況だけを含
む．
FFT,FTF,TFF,FTT,TFT,TTFの
状態はそれぞれ１つの状況
だけを含む
∧
∨
x
x
a
b
a
b
c
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17. デシジョン・テーブル（１）
2011/7/1ソフトウェア・テスト入門４
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 91 92 93 94 95 96 97
1 T T F T T T T F F F F F F
2 T F T T T T T F F F F F F
3 T F F T T T T F F F F F F
4 T T T F F F F T F F F F F F
5 T T T T T F T F F F F F F
6 T T T T F T T F F F F F F
7 T T T T F F T F F F F F F
8 T T T T T F T F F F F F F
9 T T T T F T T F F F F F F
10 T T T T F F T F F F F F F
11 T T F T F T T F F F F F F
12 T T T T T T T F F T F F F F F
13 T T T T T T T F F T F F F F F
14 T T T F T F T F F F F F
15 T T T F T T T F F T F F F F F
16 T T T T T T T T F F F T F F F F
17 T T T T T T T F F F T F F F F
18 T T T T T F T F F F T F F T
19 T T T T T F T F F F T F F T
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18. デシジョン・テーブル（２）
2011/7/1ソフトウェア・テスト入門４
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 91 92 93 94 95 96 97
20 T T T T T T T T T F T F F F T F F T
21 T T T T T T T T T F T F F F T F F T
22 F T F F F F F T F T F
23 F T F F F F F T F T F
24 F T T T T F F F F F T F T F
25 F T T T T F F F F F T F T F
26 T T T T T F F F F F T F T F
27 T T T T T F F F F F T F T F
28 T T T T T T T T T F F F F F T F T F
29 T T T T T T T T T F F F F F T F T F
30 T T T T T T T F F F F T F T
31 T T T T T T T T T T T F F F F T F T
32 T T T T T T T T T T T F F F F T F T
33 F T T F F F F F T T F
34 F T T T T T T F F F F F T T F
35 F T T T T T T F F F F F T T F
36 T T T T T T F F F F F T T F
37 T T T T T T T T T T F F F F F T T F
38 T T T T T T T T T T F F F F F T T F
18

19. テストケースへの変換
2011/7/1ソフトウェア・テスト入門４19
1. dump 234AF74-123 (91)
2. dump 2ZX4-3000
(91)
3. dump HHHHHHHH-2000 (91)
4. dump 200 200 (91)
5. dump 0-22222222 (91)
6. dump 2-2X (91)
7. dump 2-ABCDEFGHI (91)
8. dump 3.1111111 (91)
9. dump 44.$42 (91)
10. dump 100.$$$$$$$ (91)
11. dump 10000000-M (91)
12. dump FF-8000 (92)
13. dump FFF.7001 (92)
14. dump 8000-END
(92)
15. dump 8000-8001
(92)
16. dump AA-A9 (93)
17. dump 7000.0 (93)
18. dump 7FF9-END
(94,97)
19. dump 1 (94,97)
20. dump 21-29 (94,97)
21. dump 4021.A (94,97)
22. dump -END (94,96)
23. dump (94,96)
24. dump -F (94,96)
25. dump .E (94,96)
26. dump 7FF8-END (94,96)
27. dump 6000 (94,96)
28. dump A0-A4 (94,96)
29. dump 20.8 (94,96)
30. dump 7001-END (95,97)
31. dump 5-15 (95,97)
32. dump 4FF.100 (95,97)
33. dump -END (95,96)
34. dump -20 (95,96)
35. dump .11 (95,96)
36. dump 7000-END (95,96)
37. dump 4-14 (95,96)
38. dump 500.11 (95,96)
記憶域の最後の番地は
7FFFとみなす

20. 補足説明
2011/7/1ソフトウェア・テスト入門４20
 条件の組合せを表現しながらテスト・ケースを系統
的に作成する手法
 組合せを場当たり的に選ぶと，大切なテストケースを見
落としてしまう危険性がある
 原因－結果グラフを作成することで，仕様上のあい
まいさと不備がみつかることもある
 例：すべての出力行は４つのワードを含む
 テストケース18，26はおこりえない
 限界値分析と組み合わせることとで，より効果的な
テストケースを作成できる
 デシジョンテーブルへの変換は機械的な操作ででき
るので自動化可能

21. 演習問題
2011/7/1ソフトウェア・テスト入門４21
 Foo言語インタプリタはバッチモードと対話モー
ドがある
 -bオプションをつけて起動するとバッチモードとな
る
 対話モード時は起動後にプロンプトが表示され，
ユーザーからの入力を受け付ける
 バッチモード時は，指定されたファイルを実行し，
終了する
 起動時にプログラムファイルを指定すると指定さ
れたファイルを読み込んで実行してから起動する

22. エラー推測
 ある特定のプログラムがあたえられたとき，直観と経験からある種の起こりそ
うなエラーの型を推測して，これらのエラーを発見するためのテスト・ケース
を書く
 ソートのテスト例：
 入力リストはない
 入力リストは1つの項目を含む
 入力リスト上のすべての項目がすべて同じ値をもつ
 入力リストはすでにソートされている
 二分探索のテスト例：
 探索されるテーブルは１つの項目しかない
 テーブル・サイズが２のべき数
 テーブルサイズが２のべきより１つ少ないか多い
 MTESTの例：
 空白を答えとして認めるか
 答えのレコードが学生のレコード集合にあらわれる
 レコードの８０桁目が２と３のどちらでもないレコード
 二人の学生が同一の名前か番号をもっている
 （中央値は項目数が偶数か奇数で計算が異なるので）奇数の学生数と偶数の学生数
 質問数のフィールに負の値がはいっている
2011/7/1ソフトウェア・テスト入門４22

23. 戦略
 これまで議論してきた手法を統合する
1. 仕様が入力条件の組み合わせをふくんでいる場合は，原因－結
果グラフの作成からはじめる
2. どんな場合でも限界値分析をつかう
 入力および出力限界の分析であることに注意
3. 入力と出力の有効と無効の同値クラスを見分け，もし必要な見
分けたテスト・ケースを補足する
4. さらにテストケースを得るためエラー推測技法をつかう
5. テストケースのセットを考慮にいれながら，プログラムの論理
をしらべる
 判定条件網羅，条件網羅，判定条件/条件網羅，複数条件網羅基準
のうちのどれかを使う
 この基準が，前の4段階で見分けたテストケースになく，この基準
にあわせることが不可能な場合，この基準が十分満たされるだけ
のテスト・ケースを加える
2011/7/1ソフトウェア・テスト入門４23

24. 次回予定
 日にち
 ２０１１年７月７日（木）
 時間
 １７：００～１８：３０
 場所
 ＬＢ／２ＦＡ
 内容
 モジュール・テスト
2011/7/1ソフトウェア・テスト入門４24