幸育 藤村一成

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幸育 藤村一成

  1. 1. 2012 年度 卒業論文指導教員 川崎 一彦 幸育 -CULTIVATE HAPPINESS- 東海大学 国際文化学部 国際コミュニケーション学科 9awk1182 藤村 一成
  2. 2. 要旨「幸育」とは私が作った造語であり、「経験から生まれる幸せを育てる」という意味で用いている。その「幸育」が今必要不可欠である。現代の日本では「個性」を重んじているが、「幸育」の現場があまりにも尐ない。そこで「幸育」を成功させている企業を例にとりながらいかに「幸育」が大切かを紐解いていく。ここでは、学校教育現場ではなくあくまで企業における幸育を論じて行く。なぜかというと、教育現場でも尐しずつ幸育らしい動きはあるものの今の日本の現状からして、幸育を徹底的に行える環境は企業であるからである。9awk1182 藤村 一成 1
  3. 3. 幸育 -CULTIVATE HAPPINESS- 9AWK1182 藤村 一成I. 幸育とはII. 幸せの定義III. 幸育に必要な「幸福感」 Ⅲ−1.遺伝によって決まる幸福感 Ⅲ−2. 「環境」と「意図した活動」によって変動する幸福感IV. 幸育を実践している企業 Ⅳ-1.ディズニーランド Ⅳ-2.スターバックス Ⅳ-3.コールドストーンクリーマリー Ⅳ-4.共通する概念V. 幸育の敵 ブラック企業とはVI. 働く幸せVII. 「幸育」を広めるために 2
  4. 4. I. 幸育とは “あなたは幸せですか?” この質問に「はい」と即答できる人は何人いるだろう。 今の時代「幸せ」が一つの鍵になっている。たくさんの情報や便利な道具が出回り、次から次へと新しいものへ移り変わっていくこの世の中で、改めて幸せとは何か?それをこの論文でひも解いていきたい。 その中で、私が注目したのが「教育」の分野である。教育といっても今回は学校教育ではなく「企業」での教育に目を向ける。もちろん学校教育にも触れるが、あくまで企業における人材の教育を通して幸せについて触れていきたい。 表題の話をしよう。 「幸育」とは読んで字のごとく「幸せを育てる」ことである。個性の時代と呼ばれる現代の日本ではあるが、今まで、暗記や受け身中心の授業を受けてきた子どもたちが、いきなり「個性をだせ。 」といわれても、無理な話である。 そこで、外国の教育からヒントを得て、そしてそれを生かしている企業を例に幸育とは何かについて尐しずつ語っていきたい。II. 幸せの定義 幸育を語るにはまず、幸せについて語らなければならない。しかし、幸せは個人によって思想は違うし、考え方も十人十色。その考え方がそもそも合わない人も出てくるのは当然である。だからこそ、まずそもそもの「幸せ」を定義する必要がある。 ここで、私が使いたい「幸せ」の定義がある。それは、「すべての人が心から満足して、笑顔になる」というものである。どんな人も笑顔になる瞬間はある。たとえ価値観が違ってもその瞬間を共有した時間が、私にとっての「幸せ」である。その「幸せ」をここでひも解いていき 3
  5. 5. たい。III. 幸育に必要な「幸福感」 この章では、幸育に必要不可欠な「幸福感」について触れていく。Ⅲ−1.遺伝によって決まる幸福感 欧米で行われている研究によると、以下のことが分かっている。●幸福であると感じる程度は、50%程度は遺伝によって決まる。●時によって、幸福を感じる程度は上下するものの、遅かれ早かれ自分が元々持っている平均的なレベルの幸福感に収まる。 つまり、もともと幸福感を感じやすい人は、一時幸福感を感じなくてももとのレベルの幸福感に戻るが、感じにくい人は、一時幸福感を感じたとしても、さきほど同様、もとのレベルの感じにくさに戻ってしまう。こうなると、幸せを育てても意味ないのではないか。と、思うがそうではない。なぜなら、幸福感の変動がなぜ起るかは詳しく分かってはいないが、幸福感の度合いが変動するのは確かだからである。Ⅲ−2. 「環境」と「意図した活動」によって変動する幸福感 そこで、Lyubomirsky. Sheldon & Schkade. (2005)は、より幸福になるためは、また持続可能な幸福には何が必要か知るために研究を始めた。彼らは、幸福感が変動するきっかけとして、 「環境」の変化と、「意図した活動」の変化を挙げている。図表01 Sustainable Happiness Model (持続可能な幸福モデル) 4
  6. 6. 例えば、 「環境」の変化は、宝くじが当たった、大学に合格したなどの一時的なものだが、「意図した活動」には実際に行う活動の他に、その時の思考や選択など幅広い活動を含む。例えば、留学のために勉強をする、その日一日に起きた事に感謝することなどその種類は多種多様。 Lyubomisky らは、この二つの効果の最大の違いとして、持続性を挙げた。 「環境」の変化はその時、幸福感の上昇があるものの、慣れてくるとそれが当たり前となり幸福感が薄れてしまう。 「意図した活動」の変化は、自らの意思で特定の物事を進めるため、あるいは様々な活動に取組むため、その状態に慣れることなく幸福感を上げる効果が維持できると考えた。例えば、次のような研究を行い、この主張を支持する結果を得ている。図表01 変化のきっかけと幸福感の上昇効果の持続との関係 研究では、大学生の同じ対象者に 1 セメスター(学期)に3回繰り返して調査を実施した。毎回、その時の幸福感を評定するほかに、1 回目の調査から 2 回目の調査までの間に起 5
  7. 7. った「環境」の変化と「活動」の変化の程度を尋ねた。図表02はこの追跡調査の分析結果である。特にポジティブな「活動」の変化が合った人は、3回目の調査時にも幸福感が高かったのに対して、特にポジティブな「環境」の変化があった人は、2 回目の調査時には幸福感が高まったものの3回目の調査時にはその効果は消えていた。図表02 活動と環境の変化による幸福感の推移の違い幸育をするためには、この持続可能な「幸福感」が必要不可欠なのである。つまり、 「意図した活動」による幸福感の変動が必要なのだ。IV. 幸育を実践している企業 ここからは、幸育を実践していると思われる4つの企業から、幸育とは何かを詳しく書いていく。Ⅳ-1.ディズニーランド ホスピタリティ・マインドの精神 皆もよく知るディズニーランド。海外、もちろん日本でも有名な「夢の国」である。そ 6
  8. 8. の中にはたくさんの幸せを育てる精神が息づいている。まずは、従業員のことをキャストと呼ぶところから説明していこうと思う。なぜ「キャスト」という言葉を使うのかというと、簡単に言ってしまえば、ディズニーランドの園内全体をステージに見立てているからである。園内に入園したゲスト(お客様)をお出迎えし、どこにいても、何をしていてもショーを楽しんでもらう。そんな考えからまずキャストという言葉を使い、従業員も特別な一人であることを示している。 ディズニーランドは毎年、約 18,000 人ものアルバイトを採用している。そして、応募してきたアルバイトすべてを受け入れるのである。その反面、毎年約 9000 人のアルバイトが辞めてしまっている。人の入れ替わりが激しい業界なのは確かだ。ディズニーの考え方に「人は経験で変わる。育つ。」というものがある。経験し変わっていく人は残り、ディズニーの考え方に合わなかったりする人は辞めていってしまう。やはり、そこは中に入ってみないとわからない。ディズニーのキャストの約 9 割がアルバイトで構成されるため、アルバイトの存在はディズニーにとってとても大きなものである。だからこそ、そのアルバイトを育てることに時間、お金を惜しまず使い、一人前のキャストとしてデビューさせる。それが誰もが幸せになる近道だとディズニーは信じている。 その、アルバイト達を育てるのは、言うまでもなくディズニーランドで働く先輩・上司たちであるから、先輩や上司に課せられる使命は大きなものとなる。後輩教育が徹底されているディズニーランド。その基本的な考え方の核となるものが「ホスピタリティ・マインド(思いやり)」の精神である。まず、ディズニーランドでは、誰もがリーダーシップを持っている。自分の仕事に一切手を抜かない。だからこそ、全員がやりがいをもって仕事をやってのける。そしてホスピタリティ・マインドという精神が根付いているからこそ、ぶれないキャストができあがるのである。しかし、ただそういう精神を掲げるだけでは完璧とは言えない。きちんと全員がこの精神を理解し行動に移すことが大切なのだ。これは様々な機会を通じて繰り返し先輩や上司たちが伝えているからこそ全員に行き渡り、その考えが根付くのである。これは、ディズニーだからできるのではない。基本的な考え方は、規模や業種・業態を問わずすべての会社・組織に共通して言える。現に、ディズニーランドは大規模な会社でありながら、きちんと精神、基本的な考え方が全員に根付いている。このホスピタリティ・マインド、ある例を参考にしてわかりやすく伝えようと思う。例1 ある女性キャストの母親が女性キャストに向かって「ミッキーって全部で何人いるの?」と、聞いたところ、そのキャストは「何を言っているの、お母さん。ミッキーは一人だけに決まっているでしょ。 」と言ったそうだ 。これは、たとえ園内でなくても、家族であっても、その人の夢を壊さない優しさがにじみ出るものである。 それから、こんな話もある。 7
  9. 9. 例2 東京ディズニーランドにある若い夫婦が訪れた。そしてディズニーランド内のレストランで彼らは「お子様ランチ」を注文した。もちろんお子様ランチは9歳以下とメニューにも書いてある。子供のいないカップルに対してはマニュアルではお断りする種類のもの。当然の如く、「恐れ入りますが、このメニューにも書いておりますが、お子様ランチはお子様用ですし、大人の方には尐し物足りないかと思われますので・・・」と言うのがマニュアル通りのやり方である。 しかし、アルバイト(キャスト)の青年は、マニュアルから一歩踏み出して尋ねた。「失礼ですが、お子様ランチは誰が食べられるのですか?」 「死んだ子供のために注文したくて」と奥さんが応える。 「亡くなられた子供さんに!」とキャストは絶句した。 「私たち夫婦には子供がなかなか授かりませんでした。求め続けてやっと待望の娘が産まれましたが、身体が弱く一歳の誕生日を待たずに神様のもとに召されたのです。私たち夫婦も泣いて過ごしました。子供の一周忌に、いつかは子供を連れて来ようと話していたディズニーランドに来たのです。そしたら、ゲートのところで渡されたマップに、ここにお子様ランチがあると書いてあったので思い出に・・・」そう言って夫婦は目を伏せた。 キャストのアルバイトの青年は「そうですか。では、召し上がって下さい」と応じました。そして、「ご家族の皆さま、どうぞこちらの方に」と四人席の家族テーブルに夫婦を移動させ、それから子供用の椅子を一つ用意した。そして、「子供さんは、こちらに」と、まるで亡くなった子供が生きているかのように小さな椅子に導いたのだ。 しばらくして、運ばれてきたのは三人分のお子様ランチでした。キャストは「ご家族でゆっくりお楽しみください」と挨拶して、その場を立ち去った。 この行為はもちろん基本的な考えに反するものではないが、マニュアルには反するものである。しかし、誰も彼を咎める者はいない。むしろ、ディズニーランドではこの行為は称賛するに価すべきものとされている。 「マニュアルを超えたところに、感動がある。そのために、ホスピタリティ・マインドがある。 」この思いが夢の国たる由縁であろう。思いやり+行動が感動を生むのだ。Ⅳ-2.STARBUCKS キーワードはモチベーション スターバックスを語るには、まず押さえておきたいワードがある。「サード・プレイス」「スターバックス体験」の2つである。 8
  10. 10. ◎ サード・プレイス(第3の場所) 日常の仕事や生活に忙しい「日常生活」の中で、ほんのわずかな時間でも自分を見つめ直す、心を整える、そうした時間と空間が、今の時代は非常に大切だ。 ほっとする場所、自分に向き合える場所や時間を大切にしたいと考える人が多くなっている時代背景でもある。 一方で、家にいるより、 「誰かが居る」スタバの店に行くことで安心感や人とのつながりを求めている人も多くなっている。独りで居る事に不安を感じる、誰かと一緒でないと落ち着かない人が増えていることもあるのだろう。 例えば、5−1のようなディズニーランドへ行けば、普段の生活から完全に隔離された「非日常的」な世界に浸る事ができるが、そのためには長い時間が必要だ。 しかし、都会のオフィスの一角にあるスターバックスであれば、出勤前や仕事の合間など、ほんの尐しの時間でも手軽に行く事ができます。 そこには正に、 「自宅と仕事・学校などの間」にある「第三の場所」 (サード・プレイス)として、人々が自分を見つめ直す場所がある。◎ 「スターバックス体験」 独特で深い味わいのあるインテリア、おひとりさまでもゆったり座れるソファ、勉強や仕事が存分にできる大きな天板のデスク、その日、その時間帯ならではの個性的な音楽、全面ガラス張りの窓から見える景色のいい眺め、こうした要素がすべて一体となることで「スターバックス体験」とも言えるものをお客様に提供している。お客様はその体験を味わうために、スターバックスへと足を運ぶのだ。 こうした、非日常空間の中でスターバックスのパートナー達(従業員)は働いている。だからこそ、考え方や視点も普通の接客とは異なってくる。 スターバックスでは従業員同士のことを「パートナー」と呼ぶ。信頼し合い、協力する仲間としてそう呼ぶのだ。そのパートナー達はみんなモチベーションが高いのである。それは、各個人が“スターバックスとは何なのか” “私たちは何のためにここにいるのか” “何を考え、何を人々に伝えようとしているのか”をきちんと理解しているからこそ実現しているのである。さらに「人に対する興味」の度合いも高い。なぜ、そこまでのパートナーが育つのか。それはスターバックスを支える大切な理念の中に見て取れた。◎ スターバックスの大切な理念 9
  11. 11. スターバックスには、「OUR STARBUCKS MISSION」と「行動指針」がたくさんある。どの会社にも、 「経営理念」はある。その会社によっても多さはバラバラだ。しかし、どうだろう。すべての理念をそこで働くすべての人が理解しているだろうか。スターバックスでは、すべてのパートナーがこれを理解し、実践している。それぞれ形はどうあれ理解できていない人は一人もいない。これは、単に「マネジメント」や「モチベーション」といった言葉で表せるものではなく、パートナー一人ひとりの心と体に染み付き、溶け込んでいるのである。だからこそ、幸育がなされている会社のひとつとしてスターバックスを挙げたのである。OUR STARBUCKS MISSION OUR STARBUCKS MISSION は6つのセクションに分かれている。⑴Our Coffee⑵Our Pertner⑶Our Customer⑷Our Stores⑸Our Neighborhood⑹Our Shareholdersこの6つだ。一つひとつにきちんとした意味合いが込められている。 例えば、Our Customer の場合「心から接すれば、ほんの一瞬であってもお客様と繋がり、笑顔を交わし、感動体験をもたらすことができます。完璧なコーヒーの提供はもちろん、それ以上に人と人とのつながりを大切にします。 」 このセクションだけを見てもスターバックスのすべてが見えてきてしまうようである。こういった精神が全パートナーに統一されれば、幸育の先にあるものが見えてくる。それは「感動」である。 他のミッションの内容も尐しだけ見てみることにする。 Our Neighborhood「常に歓迎されるスターバックスであるために、すべての店舗がコミュニティの一員として責任を果たさなければいけません。そのために、パートナー、お客様、そしてコミュニティがひとつになれるよう日々貢献していきます。私たちの責任と可能性はこれまでにもまして大きくなっています。私たちに期待されていることは、これらすべてをリードしていくことです。 」 10
  12. 12. この他にも行動指針となる5つの精神がある。⑴歓迎する⑵心を込めて⑶豊富な知識を蓄える⑷思いやりをもつ⑸参加するこの5つである。一見どこにでもありそうだが、どこにでもあるからこそ大切な意味を持っている。お客様がくれば「歓迎」するのは当たり前だし、商品を「心を込めて」お客様に出すのも当たり前、商品を紹介するには「豊富な知識を蓄え」なければ、何を言う事もできないし、パートナー同士「思いやりを持」たなければ、真の信頼関係は築けない。そして、そういった意思がなければお客様の貴重な体験作りに「参加」できないし、店の運営にも「参加」できない。この5つは当たり前であって当たり前でいけない。だからこそ、スターバックスはこの行動指針を大切にしているのだ。 すべての人にこの精神が浸透しているからこそ「サード・プレイス」が生まれ、「スターバックス体験」が得られるのである。ただ、これだけの考えがあるが真に皆が考えていることは「一人ひとりのお客様に一杯ずつ心を込めてコーヒーをお出しする」といういたってシンプルなものにある。その一杯に全力を込めるからこそ、自然と OUR STARBUCKS MISSION を遂行することができ、行動指針のゆるがないバリスタが出来上がるのである。Ⅳ-3.コールドストーンクリーマリーパフォーマンスの奥にあるもの コールドストーンクリーマリーはご存知の方もそうでない方もいるかもしれないが、アイスクリームを変わった方法で提供するお店である。尐し紹介をすると、まず食べたいアイスとその大きさを選び、そのアイスに入れるトッピングを選ぶ。そして最後にワッフルに入れるか、カップにするかを選ぶ。注文が終わると、大きな冷たい鉄板の前に案内され、目の前で自分が選んだアイスとトッピングを混ぜてくれるのだ。そして、コールドストーンが“変わった”アイス屋だと言われる由縁のひとつがこの時に披露する“歌”である。アイスを混ぜている間に歌を歌ってパフォーマンスを披露するためお客は飽きることなくいつの間にか自分のアイスが出来てしまう。小さなテーマパークといったところだろうか。そんな、アイス屋が掲げている大きな理念がある。それは、 11
  13. 13. 「Make People Happy」の精神である。すべての人が幸せになるために掲げられたこの精神は、いたるところに息づいている。例えば、クルー同士のやりとりにもこの精神は生きている。クルーというのは、コールドストーンで働く従業員を指す。このクルー同士のやりと一つをとっても「Make People Happy」を見る事ができる。例えば、そのクルーのとった行為(アイスを作る、ワッフルを焼く、店内清掃をする等)が、素敵だ。すごい。と思ったらすかさず「ナイス○○」(店内清掃を褒めるときは「ナイスクリーン」と言う。)と声をかける。すると、言われたクルーは「センキュー(Thank you)」と返す。 「きちんとあなたの事を見ていました。素晴らしい。」という思いと、「見ていてくれてありがとう。」という思いが互いに見えて来て、言われた方はより向上心を持てるし、今度は誰かにこの思いをあげたい。という思いにかられ、相乗効果でどんどん皆が Happy になっていく。もちろん、クルーだけではなく、やはり一番はお客に満足して頂くことである。だからこそ、お客一人一人にあわせた対応、アイスがあるため、マニュアル通りにはいかない。中には、マニュアルには反するようなお客からの要望はある。だが、そこで「できません。」ではなく、「何とかしたい。」そういう思いにクルーは駆り立てられるのだ。そういう教育が、コールドストーンではしっかり根付いている。 だからといって、何も無い訳ではない。時には、クルー同士喧嘩することだってある。しかし、ただ喧嘩をするのではなく、互いに店の事を、お客のことを第一に考えるからこそ、時にはその考えがぶつかるときだってあるのである。お客と接する仕事にはきちんとした答えはない。それは、一人一人根本的に求めているものは違うからである。だからこそ、そのお客にあったニーズに答えなければならない。きちんとした正解がないからこそ、各自が悩み、答えを見つけ出そうと必死になる。そうなれば、ぶつかることは避けられない。結果的に、すべての人が幸せになる道が見つかればいいのだ。 Make People Happy の他にもクルーの中での鉄則がコールドストーンには存在する。この鉄則は5つあり、それぞれ⑴DO THE RIGHT THING(正しい事をしよう)⑵BE THE BEST …BE No.1(常にナンバーワンを目指そう)⑶BRING OUT THE BEST OUR PEOPLE(仲間のいい所を引き出そう)⑷PROFIT BY MAKING PEOPLE HAPPY(人々の幸せから利益を得よう)⑸WIN AS A TEAM(チームとして勝利をつかもう)となっている。 この精神がぶれないようにクルー達は、日々の活動でも気を配って生活している。例えば、⑴DO THE RIGHT THING では、嘘をつかない。遅刻をしない。など、日常的なルールを破らないようにするためにある。悪口を言ったりするのももちろんアウトである。普通の店や会社では、「店長って○○で困る」や「あの新人使えない」など、悪口の宝庫である。 12
  14. 14. が、コールドストーンは、その人に言いたいことがあったら、直接口で言う。尐し躊躇しそうなことでもだ。それで喧嘩になることはあるが、先ほども言ったようにその行き着く先に幸せになる道がみつかればいいのである。⑵BE THE BEST …BE No.1 では、常に上を目指すことによって向上心をつける取り組みがなされる。例えば、新人であってもおかしいなと思えば、店のことに口を出す。そうすることにより、いままでずっといたクルーには分からなかった問題も見えてくる。さらに、お店のことでよく話し合いが行われる。そこでたくさんの意見が出て、その意見が反映されるからこそ、率先して意見を出し合い、お店をよりよくしようと頑張るのだ。⑶BRING OUT THE BEST OUR PEOPLE では、仲間のいい所を最大限に引き出す工夫が、店内業務で見て取れる。店内の業務は主に5つに分かれる。CLEAN, POS, RANNER, WAFFLE, CLEMERL である。CLEAN は主に食器洗いや、清掃を担当。POSはレジを担当。WAFFLE はアイスに必要なワッフルを焼く。RANNER は、アイスを作る際のトッピングやアイスの補充をしたり、飲み物を入れたり、と何でもこなす。そして、CLEMERLはコールドストーンには欠かせない仕事である。それはアイスを作る(混ぜる)こと。これがないと、コールドストーンの存在意義がなくなると言っても過言ではなないかもしれない。この5つの作業を1時間交代でこなす。しかし、やはり人には得意不得意がある。この人は、食器洗いは得意でも、人と接するのは苦手。この人は、人と接するのは得意だが、ワッフルを焼くのは苦手。やはり誰でも苦手なことは極力避けたいものだ。そこで、この BRING OUT THE BEST OUR PEOPLE である。ワッフルを焼くのが苦手なら得意な人が代わってあげる。そのかわりその人の得意なことをさせる。“苦手を克服することよりも、得意を伸ばすことを大事にしている”のである。もちろん、苦手を克服することも大切だが、それよりもその人の得意分野、いいかれば“個性”を大切にして、その仲間の“個性”を活かす。これも、コールドストーンの魅力のひとつ。⑷PROFIT BY MAKING PEOPLE HAPPY では、お店の利益よりも、お客様の利益を優先して考えることを示している。たしかにお店の利益も大切だが、どうせ利益を得るなら、お客様に最大限に満足してもらい、そこから利益を得たい。そういう思いが込められている。だからこそ、歌を歌いながらアイスを作ったり、自分たちでアイスからワッフルまですべて手作りで提供したり、お客様の HAPPYの為に頑張ったりするのである。⑸WIN AS A TEAM では、読んで字のごとく「チームとして勝利をつかむ」ことを大切にしている。勝利は何にでも置き換えることが出来る。たとえば、その日の目標額に到達する。だとか、すべてのお客様に満足してもらう。だとか、挙げだしたらきりがない。しかし、自分たちがチームである以上、お互い協力しあい、時にはぶつかりあいながら、ともに、成長していく。そういった精神が、この WIN AS A TEAMには見てとれる。Ⅳ-4.共通する概念 13
  15. 15. 4つの企業の例を紹介してきたが、どの企業にも共通していることが何点か見えてくる。・ 企業理念の浸透性 まず、一番言えることが、紹介した会社で働くすべての人に企業理念がしっかり根付いていることである。例えば、コールドストーンクリーマリーの「Make People Happy」これは、私も働いているため実感しやすいが、働くすべての人がこの考えを念頭に置き常日頃行動している。だからこそ、誰かが「Make People Happy」の理念に背くようなことがあれば、すぐに分かるし、すぐにフィードバックしてその考えを改めさせる。 そして、それはほかの企業でも言える。ディズニーランドでは「ホスピタリティ・マインドの精神」、スターバックスでは「一人ひとりのお客様に一杯ずつ心を込めてコーヒーをお出しする」といったように、それぞれの企業独自の精神が、そこで働くすべての人の核となり息づいている。 こういった理念が、そこで働く人々の心を動かす。そのため、その考えにそぐわない人は辞めてしまう。悲しいことだが、十人十色という言葉が物語るように、人ひとりひとり異なった考え方をもっているため、仕方のないことでもある。それが故に、そこで働く人たちの団結力は固い。そして揺るぎない精神を持っている。 ・ 従業員のことを大切に思う 例えば、ディズニーではキャスト。スターバックスではパートナー。というように、 それぞれの企業理念に沿った呼び方で従業員を呼んでいる。これは、ただ現場で働く従 業員としてではなく、おおきなグループで大切な役割をしてくれる一人という意味合い も取れる。 ・ 従業員が自ら率先して動く 「マニュアルを超えたところに、感動が生まれる」とディズニーが言うように、従業 員が自ら考えて、自らの意思で行動した結果、予想以上のことが起こりうる。だから こそ、紹介した各企業の従業員たちは率先して動くのである。上司に言われたからで はなく、率先して動くことにより幸育の精神が息づいていることが伺える。さらに、 4章で述べたように「意図した行動」の変化も見て取れる。行動にプラスして意思や 選択をするため幸福感が持続して上昇する。そのため、また新たな「意図した行動」 の変化が起きる。 ・ 意図した活動の変化が日々起きている 14
  16. 16. 3章で述べたように。「意図した活動」の変化による幸福感は持続するものである。 この「意図した活動」がどの企業でも見て取れる。例えば、ディズニーの「ホスピタ リティ・マインド」の精神。これは自分で考え行動しなければ身に付かないものであ るし、スターバックスの「OUR STARBUCKS MISSION」 コールドストーンの も、 「Make People Happy」も意図して行動に移さなければ習得できないものである。この意図した活動 こそ、 “幸育に不可欠な要素”である。V. ブラック企業の存在 ここで、幸育とは全く無縁の企業を紹介する。 先ほどまでのようなきらびやかな世界とは打って変わり、現実とは思えないような企業も存在することが、今の世の中では明らかになっている。誰がみても働きたくないような、不幸を育てる。まさに「不幸育」を実践している企業が、多数存在する。その業種は様々で事業者金融から、大手の電器メーカーまでさまざまである。ブラック企業にも種類が様々あるが、どれにも“過度な労働”“良心の呵責”等の同じような言葉が並んでいた。こん 、な、労働が今もなお日本のどこかで絶え間なく行われている。 このような会社では、まず幸育が成される事は絶対にあり得ない。従業員同士に溝があるのにどうして幸せを育てられようか。従業員同士が信じあえていないのに、どうしてお客様に信頼できる商品を提供できようか。まず、働くことの意味をきちんと理解できていないのだ。だからこそ、次の章では、働くことの意味を問いていく。VI. 働く幸せ人のために動く 皆さんは、「日本理化学工業株式会社」を知っているだろうか。今、いろんなメディアで取り上げられたりしているが、もともとは地道に人畜無害なチョークを作ってきた小さな会社である。この会社はあることをきっかけに知的障害者の雇用を始める。最初は、戸惑っていた社長もだんだんと知的障害者のことを理解していき、逆に障害者の従業員たちに「働くことの意味」を改めて教えてもらう。 まず、印象に残ったのがこの言葉である「導師は人間の究極の幸せは、 人に愛されること、 人にほめられること、 人の役に立つこと、 15
  17. 17. 人から必要とされること、 の4つと言われました。 働くことによって愛以外の3つの幸せは得られるのだ。 私はその愛までも得られると思う。(大山 泰弘) 」 大山泰弘さんとは、この会社の社長である。大山さんは最初、知的障害者雇用など考えてもいなかった。だが、今では知的障害者雇用に力を入れている。当時、アメリカでさえやっていなかった民間企業での知的障害者が中心の会社を創りあげたのである。そこにはたった4つの決まりしか存在しない。 ⑴食事や排泄を含め、自分のことは自分で出来ること ⑵簡単でもいいから意思表示ができること ⑶一所懸命に仕事をすること ⑷周りに迷惑をかけないことこれは、入社時の約束でもある。これを、破るとすぐに家に帰される。しかし、解雇と言う訳ではない。尐しでも、反省してまだやる気があるようなら、すぐに帰って来てもらう。そして、辛抱強く待つと、だんだんと出来るようになってくる。 「仕事をやりたい」という気持ちが他の気持ちに勝つのだ。このことを読んでいたら、私は健常者のみの世界で「幸育」のことを書いていた自分が情けなくなった。「健常者」でなくとも、「幸育」の実現は可能なのだ。ただ、やり方を変えればいいだけ。その人にあったやり方にすれば、誰にでも「幸育」は可能なのだと、大山さんは教えてくれた。 そこには、たくさんの苦労、苦悩があったがやはり「働く幸せ」を見つけると人は違うものだ。やり方を変えれば、健常者と同じような作業を知的障害者の方達もできるようになる。むしろ、健常者よりも仕事に対して熱心で、いいモノを作りあげるのだ。さらに、慣れてくると新人の指導までも行える。これを聞くとすごい。と思うかもしれないが、よくよく考えてみたら一般的なことである。ただ、意欲が違うだけなのだ。その「意欲」こそ、現代における最も大切な「幸育」の指針である。Ⅶ. 「幸育」を広めるために2011年は、日本にとって戦後で一番つらい出来事が起きた年であった。誰もが知るあの東日本大震災である。だからだろうか、以前から注目されていた「幸せ」についてより深く考える人が多くなったのは。そんな時代はなったものの、まだまだ「幸せ」と感じる人口は尐ないままである。被災地はもちろん、ながびく不況の中で、今多く求められているのは雇用である。働く場があれば、やる気も生まれ、夢や希望を持てるようにもなる。そこに「幸育」の現場があれば、その持続可能な「幸福感」も生まれる。目先の利益は尐 16
  18. 18. し犠牲にしても、こんな時代にも社会的責任を意識して、積極的に支援活動に参加したり、雇用を増やそうとしたりする会社があることは、嬉しいことである。 「地域に根付いた企業が生き残る」そう言っていたのは、7章でとりあげた大山さんである。就職難と呼ばれる時代ではあるが、地域に根付いた会社こそ「幸育」がより行き届くのだ。 「今、会社が残っているのは社員と村のおかげです。 」こう話すのは、菊池製作所の菊池巧社長だ。この会社は福島県飯舘村にあり、携帯電話やデジタルカメラの試作をてがけており、2011年10月にジャスダック上場して話題になった。福島第一原発事故の影響で計画的避難区域に指定され、今なお全村避難が続くあの飯舘村である。 政府は、放射線量が比較的尐なかった村内の9つの事務所で事業継続を認めていた。その中に菊池製作所も含まれていた。菊池製作所の事業継続は村の要望でもあった。国が予算を拠出し、構内のアスファルトを除去するなど抜本的な除染を施した。しかも、菊池製作所は、最先端の技術を扱うすごい会社なのである。 しかし、その会社の道のりも最初は険しかった。村の人々に「東京で修行して、この村に必ず帰ってくるから、息子を私に託してほしい。 」そう一軒一軒社長は言って回ったと言う。しかし、当時雇用は探せばいくらでもある時代。そんな時代に快く中小企業の、しかもまだ開業もしていないところに息子をやる親はなかなか現れなかった。それでも6名の新人社員があつまり、スタートしたのだという。そんな会社が、今では村から事業継続の要望が出るほどの企業にまで成長したのだ。 「会社の名前は、菊池製作所だけれどもぼくはこの会社は村の工場、村の事業所だと思っているよ。」と菊池社長は語っていた。村と会社の信頼関係が築かれているからこそ、存続できたのである。 「幸育」とは、「意図した活動」が継続的に出来る環境があり、かつ地域に根付いている環境があればどこでも出来る事なのである。それがたとえ大企業であったとしても、そこで働くすべての人の胸にきちんとその心が刻まれていればなせる事である。地域でなかったとしても、関連するコミュニティに根付くものであれば実践可能である。 あなたは今、 「幸せ」ですか?この問いに、日本のすべての人が“はい”と即答できる未来を築いていくことが重要である。 17
  19. 19. 〈参考文献〉Ⅲ『職場に生かす心理学 幸福感を高めるために必要なこと』今城志保(http://www.recruit-ms.co.jp/research/report/120425.html 2012年)Ⅳ『9割がバイトでも最高のスタッフに育つディズニーの教え方』福島文二郎(中経出版2010 年)『なぜスターバックスは最高のスタッフを育てられるのか』草地真(ぱる出版 2012 年)Ⅴ『就職先はブラック企業〜20 人のサラリーマン残酷物語』恵比須半蔵(彩図社 2009 年)Ⅵ『働く幸せ〜仕事でいちばん大切なこと〜』大山泰弘(WAVE 出版 2009 年)Ⅶ『あってよかった!応援したい ニッポンを幸せにする会社』鎌田實(集英社 2012 年) 18

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