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プラットフォームエコシステム理論の新潮流

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米国IT系プラットフォーマーが世界時価総額ランキングの上位を独占、GoogleとFacebookに見られるような、プラットフォーマーと補完者間の競合発生、新たなスタイルのプラットフォーム型企業台頭(例:Uber, Airbnb)など、最近のプラットフォーム関係の動きは目白押しだ。このダイナミックな変化の分析に従来のプラットフォーム理論は有用なのだろうか? また、プラットフォーム理論の最近の発展から新ビジネス動向へはどんな示唆が得られるだろうか?そんな問題意識でまとめてみた。

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プラットフォームエコシステム理論の新潮流

  1. 1. B-frontier研究所 高橋 浩 プラットフォームエコシステム理論 の新潮流
  2. 2. 2 通信会社 IT企業(米国) IT企業(中国) IT系プラットフォー マーが世界を支 配している
  3. 3. 多様なプラットフォームが登場 Kaggle, Innocentive, TopCoder, AWS,AZURE, e-business, Facebook,LinkedIn,Twitter, AppStore,Google Play,Search, Video-game,Internet, Windows,Linux,iOS,Android, Intel,ARM CPU 3 プラットフォームエコシステム定義 例:プラットフォームをより価値あ るものにする補完品を作成する イノベーションのネットワーク ・・Gawer and Cusumano 2002 ハードまたはハード機器 と接点が強い アプリケーション主導 (+個人データ) Predix VWのMQB トヨタのTNGA Netflix IT系 自動車系放送系IoT系
  4. 4. 最近の変化(1):頻繁になってきたプラットフォーム 所有者と補完者間の競争・競合 2012年、Facebookは、新「ホーム画面」 Facebook Homeを公開し、モバイル経験の ホーム・ポジションを獲得 ⇒Googleとの協力関係が競争関係に Facebookは自前ソーシャル検索でデジタル 広告を開始 ⇒Googleとは真正面から競合関係に FacebookはGoogleプ ラットフォームの超有力 補完者であったが・・ 今や、Facebook、Google は競合する独立プラット フォーマーの関係に 4
  5. 5. 5 最近の変化(2):世界的に発生している新たな事 業モデル変革の波
  6. 6. 問題意識 米国IT系プラットフォーマーが世界の時価 総額ランキングの上位を独占 プラットフォーマーと補完者間に異変発生 新たなスタイルのプラットフォーム企業 (Uber, Airbnb他)登場 このダイナミックな変化の分析に現プラッ トフォーム理論は有用だろうか? プラットフォーム理論発展で新動向への キャッチアップはどうすれば可能だろうか?6
  7. 7. このような問題意識にアプローチするため 以下のプロセスで検討する 1. 既存プラットフォーム理論の概要 問題は何か? 2. 現2プラットフォーム理論の統合 何が不足しているか? 3. 最近の研究からの示唆 主要問題領域と最近の成果 今後に向けた考察 7 目次
  8. 8. 1. 既存プラットフォーム理論の概要 • 現在まで、プラットフォームは限定的にし か理論化されてこなかった。 • 2視点からのプラットフォームの概念 化のみ – 経済理論から:市場と把握(両面市場) ・・・・Rochet and Tirole, 2003 – 工学設計から:モジュラー技術アーキテクチャ ・・・・・Baldwin and Woodard, 2009 8 Annabelle Gawer, “Bridging differing perspectives on technological platforms: Toward an integrative framework”, Research Policy 43 (2014) などを参考にしている
  9. 9. ゲイワー & クスマノ(2002) リーダーシップ論など ロチェ & ティロール(2003) パーカー & ファン・アルスタイン(2005) 両面市場モデルとその活用など プラットフォーム理論の創始者たち 9 経済学視点 工学視点 Gawer & Cusumano(2002) Imperial College London MIT Sloan School 2014年ノーベル経済学賞受賞のトゥルーズ 第1大学のジャン・ティロール教授 「プラットフォームの経済学」の創始者 モジュラー技術アーキテクチャ バルドウィン & ウッドワード(2009) Carliss Y. Baldwin Harvard Business School 1. 市場としてのプラット フォームが如何に異 なる顧客グループ 間取引を仲介させ るか? 2. ネットワーク効果が 如何にプラットフォー ム競争を活性化さ せるか? 1. 製品プラットフォーム が如何に企業のモ ジュラー型製品イノ ベーションを支援す るか?
  10. 10. 市場としてのプラットフォーム • 最も重視するのは市場の 「両側」に生じる「ネットワ ーク効果」の存在 • 両面市場定義の例: 「一方のグループのプラットフォームへ参加の 利益が他方のグループのプラットフォームへ の参加の大きさに依存し、・・・・相互作用する 2グループ・エージェントを含む市場」 ・・・ Armstrong (2006) 10 経済学視点
  11. 11. 調整メカニズムは価格 • プラットフォームなしでは取引できない消費者の 2(またはそれ以上の)グループを仲介すること で価値創造・・ • 調整は価格設定を通して行われる。 – 具体的には一方の優遇(最大の優遇は無料化)、 他方の冷遇 • プラットフォーム所有者の価値も、間接ネット ワーク効果の好循環に伴って増加 • 強いネットワーク効果は、一定の条件の下で、 「勝者全獲得」の結果をもたらす。 ・・・・・Eisenmann et al., 2006 Thomas R. Eisenmann ハーバード大学
  12. 12. 大きな制約 (a)プラットフォームの存在そのものが当たり前 のこととされている。 (b)消費者グループ間の需要の補完性が当たり 前のこととされている。 (c)プラットフォーム所有者と補完品開発者間の 競合的相互作用が欠落している。 (d)補完品開発者のイノベーションの動機が看過 されている。 ⇒補完的開発者は“消費者”としてのみ見られる。 12
  13. 13. 評価 • プラットフォーム競争の静的、需要サイド の見え方を提供 – 【プラットフォーム間競争としては理解できても、プ ラットフォームエコシステムではないとも言えるかも】 • プラットフォームが急速に市場支配力を 得る条件に焦点を当てることはできる が・・・ • プラットフォームの進化やプラットフォー ム・イノベーションに対応することはできな い。 13
  14. 14. 技術アーキテクチャとしてのプラットフォーム • 階層的で分解可能なシステムは複雑さの影 響を軽減 ・・・・Simon (1962) – 体系的設計理念がモジュール性を育成 – デザイン階層を探求 ・・・・・Clark(1985) • 製品ファミリー ・・Sanderson et al.(1995) • ドミナント・アーキテクチャ ・・・・Ulrich(1995) • イノベーション・テンプレート・・Krishnan( 2001) 14 Herbert Simon 「THE ARCHITECTURE OF COMPLEXITY」 製品プラットフォーム概念の登場はかなり古い 工学設計視点
  15. 15. プラットフォーム設計の特性 • モジュラー技術アーキテクチャが共有され ている。 • コアと周辺部で構成される特定タイプの 技術アーキテクチャである。 • システムを安定したコアコンポーネントと可 変な周辺コンポーネントに分割される。 • プラットフォーム自体は製品システムの 安定したコアで構成される。 ・・・ Baldwin et al(2009) 15
  16. 16. イノベーション容易化の仕組み • モジュール性で複雑さを管理できる。 – 単純な相互接続ルールに帰着される。 – 設計者は必要な情報範囲を減少させられる。 – イノベーティブな仕事の専門化と分割ができる。 • プラットフォームはモジュラーシステムとして 優れていることでイノベーションを促進 • モジュールの組換えを通じた自律的イノベー ションが促進 ・・・・Garud et al(1995) 16
  17. 17. 評価と制約 • イノベーション促進のため意図的に設計された 技術アーキテクチャ・・・ • イノベーションは安定したシステム・アーキテ クチャ内で発生し、安定したインタフェースに よって促進 ① プラットフォーム進化を説明するのに役立た ないし、・・・ ② プラットフォーム所有者と補完者間の競争も 扱えない。 17
  18. 18. モデル比較と今後に向けた問題点 18 経済学視点モデル 工学設計視点モデル プラットフォーム間競争 ○ × モジュール化、インター フェースによるイノベー ション × ○ 問 題 点 プラットフォーム進化 × × 補完者との競合 × × その他 今後に向けた課 題 エコシステムの範 囲拡大で、「ネッ トワーク効果」の みでは扱えない 領域が拡大 モノからソフト(+ データ)へのシフ トで、モノに準拠し たモデルの相対的 優位性が低下
  19. 19. 間接ネットワーク効果を「範囲の経済」と見る • ネットワーク効果はしばしば需要サイドの規 模の経済として特徴づけられる。 ・・・Katz and Shapiro, 1986 • しかし、直接ネットワーク効果は需要サイドの 規模の経済を構成しているが、・・・間接ネット ワーク効果は、実際には、需要側の「範囲の経 済」を構成していると考えられる。 条件① ・・・・Gawer,2014 19 Annabelle Gawer Imperial College London 2. 現2プラットフォーム理論の統合
  20. 20. 規模の経済 vs 範囲の経済 • 規模(スケール)の経済 – 事業規模が拡大するにつれて購買力が向上した り製品当りの固定費負担が減少したりすることで、 平均単価・平均費用が減少する結果利益率が高 まる傾向のこと • 範囲(スコープ)の経済 – 事業を多角化したり商品やサービスのラインアップを 拡大することで得られるシナジー効果を通じ、製 品当り・顧客当り平均コストが減少する結果利益 率が高まる傾向のこと 20 ・・巨大化・独占化 ・・設備・技術の共用 補足説明
  21. 21. イノベーションに「範囲の経済」を拡張する • 製品ファミリ内の異なる製品間のコンポーネント を系統的に再利用 • 「範囲の経済」は、共同製作コストが各製品の個 別生産コストより小さい時に発生 ・・・Panzar et al(1975, 1981)他 • 『イノベーションにおける「範囲の経済」の体系的 創造と装備』は、新製品開発の基本原理の一つ ⇒ 生産における「範囲の経済」概念をイノベー ションにおける「範囲の経済」に拡張 条件②・・Gawer(2014) 21
  22. 22. 「範囲の経済」はイノベーション・エコシステムでも成立 • 初期研究では企業内で観察 • サプライチェーン内企業でも確認 ・・・ Brusoni(2005)、他多数 • 最近では大規模ネットワーク内でも判明 – 「イノベーション・エコシステム」・・・Adner et al(2010) 産業プラットフォームを定義: 『・・・・イノベーション・エコシステムで緩く編成され ている他の企業でも、補完的製品、技術、サー ビスを開発できる基盤として機能するもの 』 条件③ ・・・Gawer(2009) 22 ロン・アドナー著 ダートマス大学教授
  23. 23. 23 視点尺度 経済学視点 工学設計視点 概念化 市場としての経済学 技術的アーキテクチャとし てのプラットフォーム 動向 需要サイド 供給サイド 焦点 競争 イノベーション 価値創造の 方法 需要サイドにおける範囲 の経済 供給サイドとイノベーション における範囲の経済 役割 買い手内で装置をコー ディネート イノベーター内で装置を コーディネート 経験的設定 ICT 製造業とICT 『範囲の経済』による統一化
  24. 24. 技術プラットフォームのスケールアップ 24 視点尺度 内部プラットフォーム サプライチェーン・プラットフォーム 産業プラットフォーム 分析レベル 企業 サプライチェーン 産業エコシステム プラットフォーム構成 一企業 アセンブラ プラットフォーム・リーダー エージェント その構成サブユニット サプライヤー 補完者 技術アーキテクチャ モジュラー設計、コアと周辺 インターフェース 閉じたインターフェース: インタフェース仕様は、企 業内で共有するが、外部 には開示されない 選択的にオープンなイン ターフェース: インタフェー ス仕様は、サプライチェー ン全体で排他的に共有さ れている オープン・インターフェー ス:インタフェース仕様は、 補完者と共有されている アクセス可能なイノ ベーション機能 企業の能力 サプライチェーンの能力 潜在的には外部の無制 限の機能 調整メカニズム 経営階層を通じた権限 サプライチェーン加盟組 織間の契約関係 エコシステム・ガバナン ス:マルチサイド市場の 特殊な場合には価格を 通じて排他的に 例 フォルクスワーゲン Sonyウォークマン ルノーと日産 ボーイング Facebook Google Apple などと Uber,Airbnbなども
  25. 25. プラットフォーム統一概念の特徴 • プラットフォームはエージェント(消費者or 補完者)を単に連携しコーディネートするも のとし、それ以上のものとは見做さない。 【理由:産業エコシステムではプラットフォームは 補完者を集団的に連携させる存在でもプロセス でもないから】 • プラットフォーム・リーダーの正当性を維持する ためだけでなく、集団育成のためにもエコシステ ム・ガバナンスが重要化 条件④・・・Gawer et al,(2007)25
  26. 26. 26 著者 タイトル 出展 回数 定義 Gawer, A., Cusumano, M. A. Platform Leadership: How Intel, Microsoft, and Cisco Drive Industry Innovation Harvard Business School Press, 2002 書籍 Cusumano, M.A., Gawer, A. The elements of platform leadership MITSMR,43 (3), pp. 51-58, 2002 99 条件④ Gawer, A., Henderson, R., Platform owner entry and innovation in complementary markets: evidence from Intel. Journal of Economics and Management Strategy 16 (1), 1-34, 2007 97 条件③ Gawer, A. Platforms, Markets and Innovation Edward Elgar, UK and USA Mass, 2009 書籍 Gawer, A., Cusumano, M. A. Industry platforms and ecosystem innovation Journal of Product Innovation Management, 31 (3), pp. 417-433, 2014 32 条件② Gawer, A. Bridging differing perspectives on technological platforms: Toward an integrative framework Research Policy, 43 (7), pp. 1239-1249, 2014 21 条件① Gawer氏の論文一覧 SCOPUSの引用 補足説明
  27. 27. 統合理論で不足している点 1. (設計、評価、戦略などの)具体的施 策やアクションに結びつく方法論 2. イノベーションと競争の共存をまとめ て取り扱えるモデル 3. プラットフォーム理論と組織論の関 係性への橋渡し 4. 具体的事例に対する明快な分析の 蓄積 27
  28. 28. Kaggle, Innocentive, TopCoder, AWS,AZURE, e-business, Facebook,LinkedIn,Twitter, AppStore,Google Play,Search, Video-game,Internet, Windows,Linux,iOS,Android, Intel,ARM CPU ハードまたはハード機器と接点が強い アプリケーション主導(+個人データ) 新たなクローズアップの側面 ・プラットフォーマーと補完者間 の競争 ・補完者間の競争 ・補完者(サービス提供者)と 消費者間の直接相互作用 【背景】 1.ハード(製造)絡みの プラットフォームからソフ ト中心のプラットフォー ムへのシフト 2.プラットフォーマーのエコ システムガバナンス依存 で多様な形態が登場 新たな変化 3. 最近の研究からの示唆 主要問題領域と最近の成果 Predix VWのMQB トヨタのTNGA Netflix 自動車系放送系IoT系 IT系
  29. 29. クローズアップされてきた相互作用 29 ソフト・プラットフォーマー 消費者 補 完 者 1 補 完 者 2 補 完 者 n A(協調)A(競合) B(連携)or (競合) C(補完者と消費者間の直接相互作用) ソフト・プラットフォーマー
  30. 30. 統合理論適用による プラットフォーム進化と競争共存モデル 技術プラットフォームの組織的連続体と見做す 30 成果1:A 組織構造 インタフェース アクセス可能 領域 ガバナンス
  31. 31. 1. 企業⇒サプライチェーン⇒産業プラットフォー ムの移動に連れて、イノベーティブ・エー ジェントや多様な能力へのアクセが拡大 2. 同時に、プラットフォーム構成エージェント 間の競合の公算も増大 3. 産業エコシステム内では協力は当然のこと ではない。 4. モジュール化は性能向上を可能にする一 方、・・・同時に競争と模倣を通じて利益が 侵食される可能性も増大 31 組織的連続体の解説
  32. 32. 32 仮説 事例 分類 1.インターフェイスがオー プンになるほどプラット フォームエコシステムに引き 付けられ大きな補完イノ ベーションが実現される。 Google, Twitter, Flickr, Amazon, Facebook等は補完 イノベーションを組み込んで もらうためAPIを開発し提供 している。 A(協 調) 2. プラットフォームエコシス テムのエージェントの大部 分は補完イノベーションを 行う。これらのイノベー ションがプラットフォーム に競争力を付与しイノ ベーションは開始される。 Facebookは「ホーム画面」ア プリFacebook Home立ち 上げでエンドユーザーの関心 と広告収入を競う挑戦者に 転身した。 A(協 調) ⇒ A(競 合)Netflixは、独自の高品質オリ ジナル番組コンテンツ開発で HBO(伝統的コンテンツプロ バイダ)と競合へ転身した。 プラットフォーム進化と競争共存モデルにおける仮説(1)
  33. 33. 33 仮説 事例 分類 3. 共同ガバナンスは補完 者のインセンティブを増加 させるので、補完者からの 競争の出現はエコシステ ムのガバナンスに依存す る。 Intelは直接補完者と競争す ることを控えることで補完者 が収益性の高い状態でいら れることを確実にした。 A(協調) 逆に、Netscape、Javaに向け てMicrosoftは、補完者を弱 体化させ取り除くための施策 を実施した。 A(競 合) 4. 補完者からの競争出現 では、産業エコシステムか ら離れて囲い込むか、イン タフェースを閉じるかが発 生し、補完者から転身する ライバルと競合する可能 性が高い。 Twitterは、Twitterコンテンツ を伴って成長するLinkedIn にストップをかけ、彼らの注 意を広告販売収益に戻すた め、LinkedInに表示される ユーザー・ツイートを防止す るAPIにルール変更した。 B(競合) A(競 合) Twitter LinkedIn LinkedIn Twitter or プラットフォーム進化と競争共存モデルにおける仮説(2)
  34. 34. 仮説充足の図式:組織変革の経路 34 仮説1 仮説2 仮説3 仮説4 イノベーティブエージェント はより自律的である イノベーティブエージェント は自律的で無い 競 争 の 可 能 性 が 高 い 競 争 の 可 能 性 が 低 い プラットフォーム・イノベーション プラットフォーム競争
  35. 35. 補完者(トイザらス)の犯し易いミス 35 • 2000年、トイザらスはアマゾンと10年間の独 占販売契約を締結 – トイザらス経営陣はこれがオンライン販売の打っ てつけの解決策と想定 【契約内容】:アマゾン・サイト内でトイザらスの オンライン・ショップを構築・運営してもらうこと に年間5000万ドル+売上歩合を支払う。 • ところが、4年足らずでトイザらスは大きな損 失をこうむり、2億ドルの損害賠償を請求 【原因】:アマゾンは他ベンダーにも自社サイト 内で玩具・ゲーム販売を許可していた。 成果2:B Hagiu, A., Yoffie, D.B., “What's your google strategy?”, Harvard Business Review, Volume 87, Issue 4, April 2009.引用①・・Hagiu
  36. 36. 2年に渡る法廷闘争:ケンカ両成敗 36 • トイザらスの主張 – アマゾンは独占販売契約に違反し、競争を激化させた。 – その結果、トイザらスのオンライン事業に損害が発生 した。 • アマゾンの主張 – トイザらスが満たせなかった(あるいは満たそうとしな かった)顧客ニーズに他ベンダーが対処したから他ベ ンダーも参入させた。 • 裁判所の判断 – アマゾンは契約違反。両者は提携解消すること。 – 但し、トイザらスの損害賠償請求は却下する。 アマゾン(プラットフォーマー)はロングテール戦略 一方、トイザらスは売れ筋注力(ショートテール戦略)。 プラットフォーム所有者と補完者は根本的矛盾を内包して いることが多い。
  37. 37. 改良MSPモデル 1. プラットフォームの存在を当たり前のこと とせず、既存組織(垂直統合モデルなど) との比較において検討する。 2. 補完者(Aサイド)と消費者(Bサイド)の補 完性を当たり前のこととせず、両者間の 直接相互作用の可否から検討する。 3. 補完品のイノベーションの動機を看過せ ず、専門サービス提供者(Aサイド)の側面 から検討する。 37 Andrei Hagiu ハーバード・ビジネ ススクール準教授 成果3:C 市場としてのプラットフォームの制約を克服する取組み A. Hagiu, J. Wright, “Multi-sided platforms”, International Journal of Industrial Organization 43 (2015) 162–174.引用②・・Hagiu
  38. 38. 改良MSPモデルの定義 ① 2つ以上の異なるサイド間の直接的相互作 用を可能にする。 ② 各サイドはプラットフォームに加入(affiliate) する。 • 直接的相互作用: 相互作用のキー項目制御を維持 – キー項目例:取引価格、包装、マーケティング、配送、 サービスの性質/品質/項目/契約条件など • 加入:相互作用に必要な投資の実施 – 投資例:固定アクセス料金支出、資源支出(例:アプリ ケーション開発学習の時間や金)、機会費用(例:ショッピ ング・モール、ロイヤルティプログラムへの参加)、など 38
  39. 39. 39 MSPと代替ビジネスモデルの関係 専門サービス提供者 消費者 加入 加入 MSP 垂直統合
  40. 40. VIモード、MSPモード選択時のトレードオフ • 垂直統合(VI)モード選択は・・・ –個々の専門家(Aサイド)の意思決定を跨い だ企業内スピルオーバーの利点が大きい場 合 vs • MSPモード選択は・・・・・・ –専門家(Aサイド)が顧客向けに観察不能な 努力を行う動機づけが可能で・・ –専門家(Aサイド)の個人情報を顧客への適 応に活用させる利点が大きい場合 40 (組織内の一員) (個人経営者~フリーランサー)
  41. 41. 専門サービス提供者の帰属心理 41 条件 MSP > VI MSP < VI 従業員の努力を奨励 するため売上高に基 づいてVI企業がボー ナスを支給 ボーナス支給制 度が柔軟で無 い場合 ボーナス支給 制度が柔軟で シフトが顕著な 場合 販売促進を誘導する ため売上高に基づい て専門サービス提供 者に可変手数料を許 容 MSPによる料金 可変制度の導 入が顕著な場 合 可変手数料制 度が柔軟で無 い場合
  42. 42. 42 著者 タイトル 出展 回数 Hagiu, A. Pricing and commitment by two-sided platforms RAND Journal of Economics, 37 (3), pp. 720-737, 2006 79 引用① Hagiu,A., Yoffie, D.B. What's your google strategy? Harvard Business Review, 87 (4), 2009 12 Hagiu, A. Two-sided platforms: Product variety and pricing structures Journal of Economics and Management Strategy, 18 (4), 1011-1043, 2009 37 Hagiu, A. Strategic decisions for multisided platforms MIT SMR, 55 (2), pp. 71- 80, 2014 10 Hagiu,A., Wright, J. Multi-sided platforms HBS Working Paper 15- 037, 2015 129* Hagiu,A., Wright, J. Marketplace or reseller? Management Science, 61 (1), pp. 184-203, 2015 2 引用② Hagiu,A., Wright, J. Multi-sided platforms International Journal of Industrial Organization, 43, pp. 162-174, 2015 1 Hagiu氏の論文一覧 SCOPUSの引用 補足説明 *:インターネットによる引用数(SCOPUSでは無い) Hagiuは類似のものをHBS CASEとしても出版している。
  43. 43. 最近の成果のまとめ プラットフォーム理論と組織論の組合せが必 要で、組織デザインが有効な場面が増加し ている。 新たな市場としてMSP市場が有望視されてい る。 調整メカニズムが価格だけでなく、サービス 提供者のインセンティブや心理まで考慮する 必要が生じている。 次段階では顧客の異質性の考慮まで必要な 状況にある。 43 ~プラットフォームエコシステム理論の新潮流~
  44. 44. 今後に向けた考察のスタンス 1)重心が供給サイドから需要サイドにシフト 2)調整メカニズムが価格からミッション(目的 合意)更にはインセンティブも含む形態に 3)合意成立の枠組みとして「範囲」の中味追加 の可能性も(経済的合理性に加えて、安全性、 信頼性、インセンティブ、・・) 背景:経済よりも技術が先に進んでいる影響 消費者主導(サービス重視)に移行の影響 IT起因問題に制度との接点が登場の影響 44 3. 最近の研究からの示唆 今後に向けた考察
  45. 45. 制度との接点:データに起因する新たな問題 • プラットフォーマーの個人データ蓄積が膨大化 • IoT普及による機械由来データ蓄積が増大 – 広告一本鎗の価値獲得が困難になり、価値獲得 の多様化が進展 – 例:蓄積データに基づくサービス価値向上による対 価獲得およびデータ販売 • これはプライバシー問題と直結 – サービス拡張のための投資とデータ販売のためプ ライバシ問題がトレードオフになる場面も • エコシステムガバナンスに制度的要因が侵入 45
  46. 46. 「範囲の経済」からの視点(1) 【現状の解釈】 データ収集を定常化させた大手IT系プラット フォーマーは、AIも駆使したサービス内容改善 によって、「範囲の経済」の効果を高め、産業 エコシステムで有効なエコシステムガバナンス の能力を増大させている。 プラットフォーマーのコンテンツ主導戦略と消 費者の個人データ提供がバランスし、単純な ネットワーク効果を超えた相互依存が生じて いる。 46
  47. 47. 「範囲の経済」からの視点(2) 【今後について】 安全を担保するセキュリティーの役割が重要 になり、これが「範囲の経済」の一つの重要 要因になる傾向が登場している。 IoT系ではリアル系統合が重要になり、これが 新たな「範囲の経済」の要因となる可能性が 登場している。 広告が有効でないデータ由来のビジネス成 立ニーズも高まるため、ビジネスモデルの多 様化が進む可能性がある。 47
  48. 48. プラットフォーム理論発展による新動向へのキャッチアップ プラットフォーム理論の変質化への先行 適応/活用 – 特定メタ組織と親和するビジネスモデルの組合せ 「範囲の経済」の「範囲」特定によるコネク テッドエコシステム構築の先行/独自展開 – 独自視点での個人データの着眼などで 新タイプ企業で顕著なMSP型モデルの自 律的立上げ – 未開拓の特定専門サービス提供者の凝集などで 48
  49. 49. 新動向へのキャッチアップシナリオ(例) 1. プラットフォーマーを目指して、サービス提 供者、顧客間相互作用のためのプラット フォーム擁立のチャンスを窺い、 2. また、有力サービス提供者を目指して、 顧客との直接的相互作用の機会を求め、 3. チャンスに急速&敏感に対応可能な組織 デザイン・アプローチを実践する。 4. 早期にエコシステム的形態を整えつつ、 顧客変化、ビジネス環境変化への柔軟な 変化対応を継続する。 49 MSP型モデルの自律的立上げに向けて
  50. 50. 今後の取組みと課題 ITプラットフォーマーにどう対応(対抗)すべき か? – プラットフォーマー同士のイノベーション・ジレン マ発生待ちや「IT起因新変化と制度」活用なども 考えられる。 MSP取組み勃興の波にどう乗るか? ー 身近なニーズを専門サービス提供者を巻き込ん でプラットフォーム仕立てで提供。文化的・組織 的ハードル乗り越えの覚悟が問われる。 50 ターゲット 絞り込み グローバル ニーズ把握 まずメジャー・プ ラットフォーマー の特権補完者へ 補完者連携のす り合わせなどで、 次の一手へ ネットワーク効果、モジュール化、データ蓄積、AI、・・ ⇒ New Design for Complex System

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