Successfully reported this slideshow.
We use your LinkedIn profile and activity data to personalize ads and to show you more relevant ads. You can change your ad preferences anytime.

VRゲーム開発の現在と将来

16,627 views

Published on

IIEEJ(画像電子学会) 第3回 画像エンタテイメントセミナー「バーチャルリアリティのデザイン」にて講演したスライドです。

Published in: Technology
  • Be the first to comment

VRゲーム開発の現在と将来

  1. 1. VR ゲーム開発の 現在と将来 渡部 晴人
  2. 2. 自己紹介 • Kickstarterで購入後、届く前からOculus Riftを使ったゲームソフト の開発を企画し、当時同じく最新だったLEAP Motionとの組み合 わせも実施 • 2014年1月からOculus Riftに関する執筆活動と講演活動を始め る • 日経ソフトウエア(2回) • 電撃オンライン(2回) • Build Insider (連載) • Developers Summit • OcuFes開発者会 • DC Expo • 2015年8月に独立
  3. 3. 講演のテーマについて 近年隆盛を迎えつつあるコンシューマVRについて、それを取り巻く テクノロジーについてソフトウェア開発者の立場から解説する • これまでに開発したVRゲーム • 将来的に要求されるVR環境 • VRソフトウェアに纏わるパフォーマンスの課題 • VRソフトウェアの課題を解決する方策 • 近い将来のVRハードウェアの発展
  4. 4. これまでに開発したゲーム • BLAST BUSTER (2013/6〜) • VR HMDを活かした360度シューティングゲーム • LEAP Motionを活かした手と指による入力操作 • 窓の杜大賞2014 ゲーム大賞受賞 • The Gunner Of Dragoon (2014/8〜) • JOBAと連携した奥スクロールシューティングゲーム • LEAP Motionのツールトラッキングを銃の位置として利用 • メディア掲載 • Shining Sword Dragoon (2015/5〜) • Gear VRで動作するゲーム • 頭の動きだけで遊べるゲームシステムを目標に作成
  5. 5. VR HMDソフトの大前提 • 処理落ちを(少なくとも恒常的には)発生させない • 処理落ちが発生するとHMDに描画されるフレー ムがズレる • 視界の時間軸が変調を来たすことで急激な酔いを 引き起こす • 処理落ちが発生した映像よりも、安定して動く映 像の方が眼には綺麗に映る
  6. 6. VR HMDソフトの大前提(2) • VRにおける処理落ちの原因 • 要求グラフィックス性能の増大によるパ ワー不足 • フル稼働で動作することによる発熱から のクロックダウン
  7. 7. VRデバイスに求められる パフォーマンス • 現在製品化が進められているVR製品は通過点でしか無い • より高度な体験が出来るハードウェアの実現が必要 現在 理想的な性能 HMD • フルHD〜WQHDの解像度 • 60〜120Hzの描画周期 • 視野角100度程度 • 16K以上の超高解像度 • 1000Hz以上の描画周期 • 視野角200度以上 入力装置 • 赤外線/RGB画像の認識 • 外部ハードウェア • 遅延は最適値で数十ms程度 • 認識エラーが皆無 • 装着の違和感が無い • 遅延は知覚できない程度
  8. 8. 将来のVRに必要な表現 写実的(Photorealistic) • 現実を切り取った写真のような映像 眼実的(実在的) • 眼で見ている現実かのような映像
  9. 9. VRのグラフィックス処理 • 両目に視差のある映像を表示するため処理コスト が2倍以上に • 要求性能の急激な向上 • 実際の眼の視差と異なる映像は酔いにも繋が る
  10. 10. グラフィックスの改善策 立体視を止めて平面視にする 処理コストの低減 視差ズレによる違和感の低減 視差が無くなるため実在感は減少する グラフィックスの品質を抑える 処理コストの低減 現実との差が大きくなるため実在感は減少する
  11. 11. VR HMDの性能向上 Oculus Rift DK1 2013Q1 1280x800@60Hz Oculus Rift DK2 2014Q2 1920x1080@75Hz Oculus Rift CV1 (2016Q1) 2160x1200@90Hz • 3年弱で秒間ピクセル数は4倍弱に • 処理コストの急激な増大
  12. 12. 業務用と家庭用の違い • 業務用(アーケード) • 環境が固定されている • ソフトウェアが重ければ高価なハードウェアスペックを調達する • 特殊なハードウェアを使いやすい • 業務用VRは以前から存在している • 家庭用(コンシューマ) • 環境は様々(環境依存の不具合も) • ソフトウェアが重くてもハードウェアはそうそう買い換えられない • 特殊なハードウェアはまず無い
  13. 13. 現時点のVRを電話に例えると? • 初代iPhone? • 80年代の携帯電話? • はたまた黒電話?
  14. 14. • 個人的な所感としては19世紀の電話発明直後 ※ 電話も発明当時から市場に熱狂的に受け入れられていたが、一家に一台、一 人一台にまで普及するには長い年月がかかっている ※ もちろんグローバル時代なのでVRの普及は電話の数十分の一で収まると思 われるが、商用のコンシューマ向けHMDが出ていない現状は「第0世代」市場と言 える ※ 電話が100年以上かけて築いた進化の歴史をVRが何年で辿るのか?
  15. 15. ムーアの法則 • コンピュータのスピードは18ヶ月ごとに倍になる • ゴードン・ムーアが1965年に論文で提唱 • 事実として現在のプロセッサの類は20世紀とは比べ物にならな い進化を遂げている • それに比例してコンピュータ応用の範囲も拡大  パーソナルコンピュータ(80年代に一般普及)  3Dゲーム機(90年代に一般普及)  携帯電話・スマートフォン(00年代に一般普及)  ウェアラブルデバイス(10年代中に一般化の見込み) • コンピュータ及び文明生活の進歩を支えている法則 • バーチャルリアリティの小型高性能化にも貢献
  16. 16. ヴィルトの法則 • ソフトウェアのスピードは18ヶ月ごとに半分になる • ニクラウス・ヴィルトが1995年に提唱 • Google創業者ラリー・ペイジも同様の意見を主張 • ムーアの法則は現在も保たれコンピュータの性能はおよそ1.5年 で倍になるが、にも関わらずレスポンスはそれほど向上していな い • とくにVRは従来のソフトウェアとはパラダイム自体が異なり、2倍 以上処理が複雑となる • 表示デバイス・入力機器の高性能化に比例し、ソフトウェアの速 度も低下
  17. 17. VRソフトの現状の懸念点 • コンピュータは速くなるが、ソフトウェアは遅くなっていく • Oculus Rift CV1が動作する推奨PCは非常に高い(現在のハイエ ンドPC) • Project MorpheusやGear VRは低価格だがその分性能も低くなり 出来ることは減る • コンシューマVRは高嶺の花になってしまうのか?
  18. 18. 将来改善が期待されること • VRでの使用を考慮したハードウェアの登場 プロセス微細化による性能の向上 2016〜 高速・広帯域メモリの採用(HBM) 2016〜 オーバーヘッドの小さなグラフィックスAPIの採用 2015 〜 DirectX 12 Vulkan (OpenGL Next) VRに特化したAPI 2015(beta)〜 AMD Liquid VR NVIDIA Gameworks VR
  19. 19. 将来改善が期待されること • VRソフトウェアに最適なアルゴリズムの研究 HMD装着者の表情認識 リアルタイムの物体認識 酔いの低減に繋がるノウハウ
  20. 20. プロセス微細化 • 現在のグラフィックス製品は28nmプロセスによって製造 • 14nm/16nmプロセス採用製品の登場が2016年から • 集積度の向上によって性能が向上 • 消費電力の低減に繋がりモバイル製品の性能も劇的に向上 • VRデバイスを動かせるPC/モバイルの小型・低価格化や、VRデ バイスそのもののスタンドアローン化が近い将来期待される
  21. 21. 高速・広帯域メモリの採用 • グラフィックス向けDDRメモリからTSV技術による積層メモリ(High Bandwidth Memory)への移行が開始 秒間1TB/sの広帯域が実現され処理の高速化が見込まれる 積層実装技術による製品の小型化 次期AMD/nVidia製品はどちらもHBM2を採用予定
  22. 22. 次世代グラフィックスAPI • 従来のDirectX/OpenGLは多数のメーカー間の互換性を吸収す るためAPIでのオーバーヘッドが増大 • グラフィックスハードウェアメーカーが収斂されつつあるため、互 換性重視ではなくパフォーマンス重視のAPIが開発 • Microsoft DirectX 12 • Khronos Group Vulkan (OpenGL Next) • Apple Metal 同じハードウェアでもより多くの処理を実行することが可能
  23. 23. VRグラフィックス専用API • 両目に対する描画やHMDレンズに合わせたディストーションなど、 HMD固有の処理をハードウェアに最適化した低レベルでの処理 で実現したAPI群 • ソフトウェア開発者からはアクセス不可能なレイヤーでメーカー側 が実装 • HMDのデバイス認識などユーザビリティの面でもサポート メーカーごとの独自対応による断片化・囲い込みが懸念点
  24. 24. VRグラフィックス専用API
  25. 25. VRに最適なアルゴリズムの研究 • アバター向けのリアルタイム表情認識 • HMDを装着している状態の顔の下部分を処理し、表情を認識して 3Dアバターに反映させる
  26. 26. • リアルタイムの物体認識 • カメラからの入力によってリアルタイムにポリゴンを生成 • 現実での相対位置を把握することによるポジショントラッキング • 現実のオブジェクトを反映した空間(Mixed Reality) VRに最適なアルゴリズムの研究
  27. 27. • 酔いに繋がるノウハウ • VR空間に鼻を映すか鼻が見えると酔いが軽減するという研究 • 現時点のVRは実証例自体が少ないため、こういった情報の積み重ね も次世代のソフトウェアへ繋がっていく VRに最適なアルゴリズムの研究
  28. 28. • 非同期タイムワープ+遅延ラッチング VRに最適なアルゴリズムの研究
  29. 29. 現在のVRソフト開発に 必要な考え方 • VRは従来のソフトウェアの延長線上ではない • PCやゲーム機、スマートデバイス開発の考え方 を持ち込まない • 同等クオリティ実現のためには多大な処理コストが 必要 • 従来のソフトで出来ることを全てやろうとしない • UI/UXも新規のものが必要
  30. 30. 現在のVRソフト開発に 必要な考え方 • アーケード向けかコンシューマ向けかターゲットをはっ きりと定める • 高級なハードウェアで最上の品質を目指すか(アーケード) • 一般普及したハードウェアで安定する品質を目指すか(コン シューマ)
  31. 31. 現在のVRソフト開発に 必要な考え方 • PCやゲーム機の黎明期のように、制限された動作 環境であることを意識する • 動作ハードウェアこそPCやゲーム機を用いてい るが、必要な処理コストは従来のソフトウェアと は規模が全く異なる • 第1世代ハードウェアから要求に沿った機能を 網羅したソフトウェアを作り出すことは(よほど工 夫しなければ)不可能だと意識する
  32. 32. 将来はどうなるか • HMD、入力装置、動作マシン全てが今後現状とは想像も付かな いくらい高いスペックを持つ時代が到来する • インターネット時代は「コンピュータの高性能化」「通信回線の普 及」の2つによって齎された • ワープロと電話回線の時代にGoogleを作れたか? • より没入感と実在感の高いVRが普及することによって全く新しい ソフトウェアやビジネスの需給モデルが発達していく
  33. 33. まとめ VRは発展途上の分野であり、最新動向のキャッチアップが必要 VRでは処理落ちが許されないためソフトウェアのスピードを従来 以上に意識する VR HMDの性能向上ペースは速く、将来の目標とされるハードル も高い VR HMDを動作させるハードウェアやアルゴリズムの発展も速い ため、悲観的な見方になることは不要 VRデバイスの発達によって、現在では想像も付かないソフトウェ アが生まれる可能性を大いに秘めている

×