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知識労働者生産性向上


Abstract
資産を活用し、企業業績に貢献させることに関しては、終焉が存在しないのでな
かなか測定が難しい。一方で、企業が持続的競争優位性を維持・向上させていく
ためには、一人でも多くの人材が、
「いかにして社会...
目次
第 1 回;時代の流れとナレッジワーカーの位置づけ ........................................................... 5

1.

ナレッジワーカーの位置づけ ...............
6.

生産性の向上とは社内の内部努力の結晶 ........................................................... 39

7.

MBM, monitoring based managemen...
図 16;思考時間管理(対象;営業) ......................................................................... 24
図 17;情報システム部と現場の繋がり..........
第 1 回;時代の流れとナレッジワーカーの位置づけ
1.

ナレッジワーカーの位置づけ

図 1;ナレッジワーカーの位置付け

ナレッジワーカーとは、英語で「Knowledge worker(以下、ナレッジワーカー)
」と書
く。表記通り、知識...
の通り。
図 2;ナレッジワーカーの定義

ナレッジワーカーに、処理的な業務(
“量”的業務)がゼロなのか?

というと、そうで

もない。一方で、ホワイトカラーに思考的な業務(
“質”的業務)がゼロなのか?

という

と、これもそうでもない...
している。知識とは「ある物事について知っていることがら」
、であり、知恵とは「正しく
「知識を活用して知恵
物事を認識し判断する能力」である1。つまり、ナレッジワーカーは、
を養うことが期待されている人」
、と大きく解釈して良いだろう。
しかし...
従事できる業務は、コスト競争にさらされ、人件費が安いところに移ってしまっているの
である。それは中国であり、日本国内であったとしても BPO(business process
outsourcing)しているなど3。
図 5;Developed...
第 2 回;効果性向上を期待されている理由
1.

効果性と生産性の定義

図 6;生産性向上のステップ

生産性を向上させるためには、大きく 3 つの対策が考えられる(図 6;生産性向上のス
テップ)
。
①

分子が一定で分母を低減する。
...
図 7;生産性=効果性×効率性

2.

効果性向上が期待される理由
では、
「何が正しいのか?」という議論になる。形容詞はメタファーな言葉なので定義し

ないと聞き手の見解がまちまちになる。
ここで表現している「正しいこと」とは、
「自社の戦...
に破たんする。
例えば、
世間が
「リーン生産方式」
と言えば、
自社もその仕組みを取り入れ、
世間が
「BSC;
balanced score card」
と言えば、
自社もそのマネジメントを取り入れ、
世間が
「competence
man...
4.

バランスが大切

図 8;業務ウェートの比較

では、
「オリジナルなアイデア・知恵」を必要とされる業務量4が多ければ多いほど素晴ら
しい人材なのだろうか?

という仮説が出てくるだろう。

答えは「No」である。例えば、業務量全体の内...
図 9;非定型業務投入時間の比較

図 9;非定型業務投入時間の比較は、様々な方々(会社を含む)が提言しておられる集
中する業務(=わくわくする業務)に対する投入時間の内訳である。上記にあるように、
最大でも全体の 30%(ユニ・チャーム)
。...
5.

目的・貢献度生産性

&

業務処理量生産性

図 10;目的・貢献度生産性 vs 業務処理量生産性

定型業務のイメージは簡単ではあるが、非定型業務のイメージは難しいかもしれない。
なぜなら、
「定型されていない(=非)
」からである...
第 3 回;IT と効果性向上
1.

何に結び付けるために IT 投資を行うのか?

図 11;収益性の分解式

設備、及び、IT などの投資によって人件費や他のコストが下がり、分子が向上する。そ
の低減された余力資源を活かすことによって、売...
①

(事実として)IT 投資が売上向上に貢献していますか?

②

(過程として)IT 投資と売上向上を相関させる測定を行っていますか?

この問いに答えることは難しい。むしろ、①はもっと難しい。理由は簡単で、売上の向
上に確実性は伴わないか...
ちなみに、これらの目的はこれまでほぼ達成されてきている。しかし、忘れてはいけな
いことがある。IT はツールであるからこそ、そこには「投資」という概念が働く。つまり、
クライアントは予算をわざわざ計上して IT ツールに投資するのである。決して...
に「生産性指標」と言う。
3.

入力することが目的になってはいけない
IT を導入することによって起こっている現場(例;営業現場)の弊害として、よく耳に

するのは「情報を入力することが一つの仕事になっている」
、という状況。これでは
IT ...
数字は、信憑性の高い数字だと思っているのですか?」
。それに対して「そりゃそうだろ
う!」 そこでこう切り返した。
。
「では、
なぜ顕著に売上数字が向上しないのでしょうかね?」
。
この原因は、実は会社内にあるのではなく市場にある。マクロ的に...
語とするならば、極端に言えば管理者は不要となる。担当者が直接経営者に報告するツー
こんにち

ルは今日既に整っている。
一方で、実際に 3 者が財務指標で運用できている国もある。欧米では成果主義で評価さ
れるので結果だけで判断されることからその...
してもっともっと緊張感を持つべきであり、そのためにも生産性指標で管理することが求
められるのである。特に、人件費は他の経営資源と異なり繊細な資源である。一方で、投
資以上の効果にも期待できる不思議な資源でもある。
生産性指標を共通言語にするとい...
執筆者紹介

坂本

裕司(さかもと

ゆうじ)

yuji.sakamoto@hppt.jp
hppt.jp

1973 年奈良市生まれ。01 年英国ノッティンガム大学経営大学院修士課程修了(MBA;経営学修士)
。統計士。鐘紡
株式会社(現...
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知識労働者生産性向上;競争優位を創造する

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資産を活用し、企業業績に貢献させることに関しては、終焉が存在しないのでなかなか測定が難しい。一方で、企業が持続的競争優位性を維持・向上させていくためには、一人でも多くの人材が、「いかにして社会に貢献するべきか?」を考え続けなければならない。組織内人材であれば「いかにして自社に貢献すべきか?」を考えることと同義である。

ここでは、資産の対象を「知識労働者(ナレッジワーカー)」に絞り、生産性向上(主に、効果性向上)を追求する。

尚、ナレッジワーカーの活動を解説する為に本論文ではナレッジワーカーである「営業担当者」を例として展開を進めている。

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知識労働者生産性向上;競争優位を創造する

  1. 1. 知識労働者生産性向上  Abstract 資産を活用し、企業業績に貢献させることに関しては、終焉が存在しないのでな かなか測定が難しい。一方で、企業が持続的競争優位性を維持・向上させていく ためには、一人でも多くの人材が、 「いかにして社会に貢献するべきか?」を考え 続けなければならない。組織内人材であれば「いかにして自社に貢献すべきか?」 を考えることと同義である。 ここでは、資産の対象を「知識労働者(ナレッジワーカー) 」に絞り、生産性向上 (主に、効果性向上)を追求する。 尚、ナレッジワーカーの活動を解説する為に本論文ではナレッジワーカーである 「営業担当者」を例として展開を進めている。 執筆;坂本 裕司 株式会社エイチ・ピィ・ピィ・ティ Human Performance & Productivity Technology, Inc., 1 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  2. 2. 目次 第 1 回;時代の流れとナレッジワーカーの位置づけ ........................................................... 5 1. ナレッジワーカーの位置づけ ............................................................................... 5 2. 「知」の定義 ........................................................................................................ 6 3. 労働“量” vs 成果の“質” ............................................................................... 7 第 2 回;効果性向上を期待されている理由 ......................................................................... 9 1. 効果性と生産性の定義 ......................................................................................... 9 2. 効果性向上が期待される理由 ............................................................................. 10 3. 非定型業務 ......................................................................................................... 11 4. バランスが大切 .................................................................................................. 12 5. 目的・貢献度生産性 & 業務処理量生産性 ................................................... 14 第 3 回;IT と効果性向上 ................................................................................................... 15 1. 何に結び付けるために IT 投資を行うのか? ..................................................... 15 2. IT 投資の目的は何か? ...................................................................................... 16 3. 入力することが目的になってはいけない ........................................................... 18 4. システム定着化という問題(例;CRM/SFA) ................................................. 18 第 4 回;学問のススメ........................................................................................................ 22 1. 天は・・・(By 福沢諭吉) .............................................................................. 22 2. 知的生産と知的消費の違い ................................................................................ 22 3. 投入経営資源(=時間)の投資先 ..................................................................... 23 4. 高い行動目標 > 高い販売目標 ......................................................................... 25 5. マネジメント・コンサルティングとシステム・エンジニアリングの融合 ........ 25 第 5 回;測定できないものはマネジメントできない ......................................................... 28 1. ナレッジワーカーの業務価値を数値に落とすには・・・? .............................. 28 2. ランチェスターの法則(対象;U 面=utilization) ......................................... 29 4. ナレッジワーカーの業務と機会利益の算出(対象;P1 面=process) ............. 36 5. 付加価値はどこにある? .................................................................................... 37 2 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  3. 3. 6. 生産性の向上とは社内の内部努力の結晶 ........................................................... 39 7. MBM, monitoring based management(対象;P2 面=performance) .......... 40 9. まとめ ................................................................................................................. 42 最終回;生産性指標と結果指標と財務指標の違い ............................................................. 44 1. 生産性指標と結果指標と財務指標の違い ........................................................... 44 2. 労務費、及び、人件費と在庫 ............................................................................. 45 3. “時間”という投入経営資源と人件費に関して ................................................ 48 4. ナレッジワーカーにとっての産出経営成果とは何か? ..................................... 49 5. 処理的業務は人間の秩序を失わせる .................................................................. 51 6. 生産性向上は収益性向上への貢献が大きい ....................................................... 51 7. ホワイトカラー・エグゼンプション .................................................................. 52 8. 最後に ................................................................................................................. 54 執筆者紹介 .......................................................................................................................... 55 挿入図 図 1;ナレッジワーカーの位置付け ............................................................................. 5 図 2;ナレッジワーカーの定義 .................................................................................... 6 図 3;業務ウェート比較 ............................................................................................... 6 図 4;インプット⇒プロセス⇒アウトプット ............................................................... 7 図 5;Developed vs Developing .................................................................................. 8 図 6;生産性向上のステップ ........................................................................................ 9 図 7;生産性=効果性×効率性 .................................................................................. 10 図 8;業務ウェートの比較 ......................................................................................... 12 図 9;非定型業務投入時間の比較 ............................................................................... 13 図 10;目的・貢献度生産性 vs 業務処理量生産性 .................................................... 14 図 11;収益性の分解式 ............................................................................................... 15 図 12;意識⇒行動⇒事実⇒成果 ................................................................................ 16 図 13;管理者の意識は財務指標 ................................................................................ 19 図 14;管理者の意識は生産性指標 ............................................................................. 20 図 15;入れる⇒創る⇒活かす .................................................................................... 23 3 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  4. 4. 図 16;思考時間管理(対象;営業) ......................................................................... 24 図 17;情報システム部と現場の繋がり...................................................................... 26 図 18;生産性向上分解式 ........................................................................................... 27 図 19;業務ウェート比較 ........................................................................................... 28 図 20;ランチェスターの法則(第 2 法則) ;8h/D の場合 ......................................... 29 図 21;非定型業務投入時間の比較 ............................................................................. 30 図 22;ランチェスターの法則(第 2 法則) ;10h/D の場合 ....................................... 30 図 23;思考時間管理(対象;営業) ......................................................................... 31 図 24;改革の効果 ...................................................................................................... 32 図 25;問題定義(B 社) ........................................................................................... 33 図 26;事例;改革の進捗(B 社) ............................................................................. 33 図 27;問題定義(A 社) ........................................................................................... 34 図 28;事例;改革の進捗(A 社) ............................................................................. 35 図 29;事例;業務実態調査内容 ................................................................................ 36 図 30;基本機能業務と補助機能業務の定義 .............................................................. 37 図 31;思考時間管理(対象;営業) ......................................................................... 38 図 32;時間の流れ(/日) .......................................................................................... 39 図 33;TPI=TPM×OPM ........................................................................................... 40 図 34;事例;TPI のバラツキ .................................................................................... 41 図 35;事例;TPI 移動平均(3 ヶ月) ...................................................................... 42 図 36;デザインアプローチによる革新的業績効果 .................................................... 43 図 37;生産性指標と結果指標と財務指標の違い ....................................................... 44 図 38;人件費と在庫 .................................................................................................. 46 図 39;業務ウェート比較 ........................................................................................... 47 図 40;思考時間管理(対象;営業) ......................................................................... 50 図 41;収益性の分解 .................................................................................................. 52 図 42;年間実労働時間の国際比較 ............................................................................. 53 4 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  5. 5. 第 1 回;時代の流れとナレッジワーカーの位置づけ 1. ナレッジワーカーの位置づけ 図 1;ナレッジワーカーの位置付け ナレッジワーカーとは、英語で「Knowledge worker(以下、ナレッジワーカー) 」と書 く。表記通り、知識(knowledge)を活用して働く人(worker)である。補足までに、ド ラッカーやトフラーが知識社会の到来を看破したと言われている。トフラーは著書「パワ ーシフト」において、 「21 世紀には、 “知”を持ったものがその時代を征する」と書いてい るほどである。 図 1;ナレッジワーカーの位置付け、によれば、ナレッジワーカーは、White collar(以 下、ホワイトカラー)より上位概念に位置している。では、ホワイトカラーとナレッジワ ーカーとは何が異なるのだろうか? そもそも、ナレッジワーカーという概念はここ数年 でメジャーになってきた言葉であり、このナレッジワーカーが従事していた業務は、これ まで(=1990 年代初頭まで)ホワイトカラーの業務に含まれていたのも事実である。 時代を遡ってみると、農業社会から工業社会に移り変わり、さらに、情報社会へと変遷 するにあたって、経済が瞬く間に成長したことは記憶に新しい。しかし、情報社会の到来 が経済成長を促した結果、市場が成熟してしまい、情報社会を継続するだけでは次の社会 が見えなくなってしまった結果登場してきたのが、 「知識社会」である。成長の時代は、 (大 げさかもしれないが)放置しておいても経済が成長した時代である。対前年比という考え 方が通用した時代である。しかし、成熟の時代は放置しておくと経済が低下してしまう時 代である。つまり、 「成長させよう」という斬新なアイデアに基づく強い意識と行動力を元 に、意識的に成長させないと成長しない厳しい(楽しい?)時代であり、そこで活躍する 人材をナレッジワーカーと呼んでいる。 ナレッジワーカーとホワイトカラーの違いについては、 2;ナレッジワーカーの定義、 図 5 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  6. 6. の通り。 図 2;ナレッジワーカーの定義 ナレッジワーカーに、処理的な業務( “量”的業務)がゼロなのか? というと、そうで もない。一方で、ホワイトカラーに思考的な業務( “質”的業務)がゼロなのか? という と、これもそうでもない。どちらにも含まれているものの、ナレッジワーカーとホワイト カラーでは、その業務のウェートが異なるだけである(図 3;業務ウェート比較) 。 図 3;業務ウェート比較 2. 「知」の定義 ここで、 “知”識労働者の「知」を定義しておきたい。筆者は「知=知識×知恵」と定義 6 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  7. 7. している。知識とは「ある物事について知っていることがら」 、であり、知恵とは「正しく 「知識を活用して知恵 物事を認識し判断する能力」である1。つまり、ナレッジワーカーは、 を養うことが期待されている人」 、と大きく解釈して良いだろう。 しかし、 「知識を活用する」ことはイメージできるが、 「知恵を養う」とはどういうこと なのだろうか。そこで「知恵を養った結果」を想像してもらいたい。例えば、 「正しく物事 を認識」するためには知識が必要であり、それらに「判断を下す」ためには「何か新しい 物の見方・考え方」が必要である。その「何か新しい物の見方・考え方」を創出すること こそが知恵を養った結果であり、これらをここでは「アイデア」と呼ぶことにする。 図 4;インプット⇒プロセス⇒アウトプット この「アイデア」とは、 「知識を入れて(input) 、それを思考し(process) 、その結果導 かれるオリジナルなモノ(output)と位置づけることができる(図 4;インプット⇒プロ セス⇒アウトプット) 。 逆説的に言うと、オリジナルなアイデア(output)を創出するために、内外問わず世の 中にある知識(input;情報を含む)をふんだんに使いきれる(process)人材といえるだろ う。 3. 労働“量” vs 成果の“質” 一般的に処理的な業務は、時間の投入量がそのまま成果に現れる。一方、思考的な業務 には、何かをオリジナルで発想する業務が含まれている。 これは、時間の投入量がそのまま成果に現れない。ただし、時間を投入しなければ決し て成果には現れない・・・ というように管理することが難しい厄介な業務である。 ここで敢えて、読者を「日本市場で活躍する人材」に絞ってみたい。 (良いか悪いかはさ ておき)昨今、処理的な業務が自社から消えていっていないだろうか?2 これは、誰もが 1 参照;三省堂国語辞典 IT 化と称して、労働集約的な業務は IT へ委ねられているようには見えるものの、実際の 現場では IT が導入されることによる実効性のある経済効果を企業にもたらせているかどう かは疑問が残る。むしろ IT 導入後に発生してはいけない、外部損失コスト(解説;苦情処 理・訴訟関連費用、など)が発生していないだろうか。このような状態ではシステム導入 に費やした投資金額を回収できないどころか、余分なコスト(ここでは外部損失コスト) まで発生させ、自社の収益性に多大なるマイナス要因を発生させていることに気付かなけ ればならない。 2 7 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  8. 8. 従事できる業務は、コスト競争にさらされ、人件費が安いところに移ってしまっているの である。それは中国であり、日本国内であったとしても BPO(business process outsourcing)しているなど3。 図 5;Developed vs Developing これは時代の流れであって、労働集約的な業務は要求品質を満たす努力以上に業務の量 のマネジメントに重点が置かれているので、必然的にコストが競争優位性のターゲットに なる。特に、Developed countries の一員である我々は、 「労働量で対価が決まる時代では なく、成果の質で対価が決まる時代」に生きていることを正しく認識する必要がある。 今後、益々、ブルーカラーやホワイトカラーの定型業務は自社内から外部の専門機関へ 移行し (ゼロになることはなく、 ただ、 賃金の高い人材が対応することはないということ) 、 正社員として社会に貢献する雇用形態は、ナレッジワーカーだけの時代が、もう、すぐそ こまで来ているのである(図 5;Developed vs Developing) 。 ユニクロや楽天、そして日本の証券業界においても、英語を公用語にしているが、この 動きからみても、日本国内に限定して業務に従事するだけでは生き残れないことを示唆し ている。 海外移転や BPO が生産性向上に貢献している、と発言しているのではなく、そういう事 実がある、ということを理解しておきたい。 3 8 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  9. 9. 第 2 回;効果性向上を期待されている理由 1. 効果性と生産性の定義 図 6;生産性向上のステップ 生産性を向上させるためには、大きく 3 つの対策が考えられる(図 6;生産性向上のス テップ) 。 ① 分子が一定で分母を低減する。 ② 分母が一定で分子を向上させる。 ③ 分母の低減と分子の向上を同時に達成する。 どの対策を実行しても、生産性は向上している。筆者は、①を効率性(efficiency) 、②を 効果性(effectiveness) 、そして、③を生産性(productivity) 、と定義している(図 7;生 産性=効果性×効率性) 。 ドラッカー (1973) によれば、 Efficiency is doing things right, effectiveness is doing the right things.と定義されている。日本語訳すると、 ① doing things right;正しく取り組む ② doing the right things;正しいことに取り組む 「効果性の向上」とは、 「正しいことに取り組んだ結果向上した内容」を指す。さらに、 「正しいことに取り組んだ結果」は、分母の低減(=効率性の向上)ではなく、分子の向 上で表わされる。つまり、 「効果性の向上」も効率性向上同様に「生産性の向上」に繋がる のである。 9 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  10. 10. 図 7;生産性=効果性×効率性 2. 効果性向上が期待される理由 では、 「何が正しいのか?」という議論になる。形容詞はメタファーな言葉なので定義し ないと聞き手の見解がまちまちになる。 ここで表現している「正しいこと」とは、 「自社の戦略に沿って正しいこと」であって、 「世間一般に正しいこと」 、もしくは、「自分にとって正しいこと」ではない。例えば、世間 が「どの会社も ERP を導入し経営効率を改善し収益性を向上させている」としよう。この 世間の動きに倣って自社も「ERP を導入し収益性を向上させる」ことは「正しいこと」な のか? ということである。 「伝言の罠」という考え方がある。ヒトは、直接聞いたことの 80%くらいしか理解でき ておらず、その情報を誰かに伝える段階において、90%くらいしか伝えられないのが実情 である。つまり、全体の 72%しか伝えきれない。 日本の芸の世界(守・破・離)も同様で、弟子は師匠から技術を盗もうとするが 100%完 璧には盗むことができない。なぜなら、すべてが形式知ではないからだ。しかし、100%に 足りない暗黙知を弟子が自分でオリジナルで考えて、 「トータル 100%」 、もしくは、 「> 100%」にするから、その弟子は師匠を超えた人材になっていくのである。一方で、全てを ゼロからオリジナルで開発する必要もない。愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ(ビス マルク) 。このちょっとした努力(=100%コピーできない事実を正しく認識し、足りない 分を補うために知恵を創出する努力)を怠っていないだろうか? 知恵のない経営は簡単 10 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  11. 11. に破たんする。 例えば、 世間が 「リーン生産方式」 と言えば、 自社もその仕組みを取り入れ、 世間が 「BSC; balanced score card」 と言えば、 自社もそのマネジメントを取り入れ、 世間が 「competence management」と言えば、自社もそのマネジメントを取り入れ、果たして他社とどの程度 の優位性を生んでいるのだろうか? 上記、伝言の罠や芸の世界の解説にあるように、 「決 して 100%コピー」はできないのである。つまり、(仕組みを導入しただけでは)決して競 「 争優位性は導けない」のである。 オリジナルを考える! という行動は決して楽ではない。しかし、努力の軌跡とは、 「決 められたことを一生懸命取り組む以上に、オリジナルなことを考え続ける」ことにこそ、 価値を見出すべきではないだろうか。 だから、企業(=個人)は成長し続けるのである。つまり、効果性向上(分子の向上) は期待し続けなければならないのである。 3. 非定型業務 例えば、 「オリジナルの良さはどのように測定するのか?」であるが、ここには正しい基 準はない。基準は決めないと決まらない。つまり、成果(=分子)は予めレベル 1~5 のよ うに成果レベルの状態を設定しておくことが必要になる。 考え方として、新人が 1h 投入して導かれた結果がレベル 1 に対して、ベテランが 1h 投 入して導かれた結果がレベル 5 であった場合、後者の方が生産性が高いことが一目瞭然で ある。同時に、これらのレベルのギャップには、その人の経験やスキルなど見えない能力 も影響することが予想される。だから、 「非定型業務」なのである。 11 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  12. 12. 4. バランスが大切 図 8;業務ウェートの比較 では、 「オリジナルなアイデア・知恵」を必要とされる業務量4が多ければ多いほど素晴ら しい人材なのだろうか? という仮説が出てくるだろう。 答えは「No」である。例えば、業務量全体の内、100%全てを非定型業務(思考的業務) で従事していたならば、おそらく、その人材は倒れるだろう。そもそも、非定型業務とは 正しい答えのない業務であるからこそ、 成果のレベルは青天井である。 エンドレスである。 一方で、人間は機械ではないので集中するにも限界がある。同時に、定型業務(主に、処 理業務)が全くゼロという職種はこの世の中に存在はしない。 「オリジナルなアイデア・知恵」に該当する業務は、図 8 における質的業務(quality) に相当する。 4 12 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  13. 13. 図 9;非定型業務投入時間の比較 図 9;非定型業務投入時間の比較は、様々な方々(会社を含む)が提言しておられる集 中する業務(=わくわくする業務)に対する投入時間の内訳である。上記にあるように、 最大でも全体の 30%(ユニ・チャーム) 。時間に換算すると約 2.4h(/D) 。8h 全てを非定 型的な業務に集中することは人間としては無理なことであることを今一度理解しておきた い。 一方で、もし「定型業務=100%」であったならば、人間はどのような感情を抱くだろう か。今一度、自分を振り返ってみてもらいたい。 答えは「つまらない・・・」である。逆説的に検証しているのであるが、定型業務ばか りでは人間は「イライラ」してくるものなのである。この「イライラ」は人間の秩序を保 つためには排除する必要があり、だから、定型業務に対しては「効率性向上活動」が望ま しいのである。 US の自動車メーカーGM が破たんした際にトヨタ自動車とよく比較されていたが、一番 」を与えてい の違いは、トヨタ自動車はラインワーカー5にも「思考的業務(=非定型業務) たことである、と評されていた。小集団活動と称して、ラインワーカーにもアイデア提案 業務を課しているのである。つまり、ラインワーカーを歯車の一つとして取り扱っていな かったところにトヨタ自動車の強さがあるのではないか? という仮説内容であった。 5 ラインワーカーはナレッジワーカーではないが、 トヨタ自動車のラインワーカーには改善 提案と称して、アイデアを創出する業務はある。 13 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  14. 14. 5. 目的・貢献度生産性 & 業務処理量生産性 図 10;目的・貢献度生産性 vs 業務処理量生産性 定型業務のイメージは簡単ではあるが、非定型業務のイメージは難しいかもしれない。 なぜなら、 「定型されていない(=非) 」からである。筆者は、この非定型業務を「目的・ 貢献度生産性対象業務」 と呼んでいる (図 10 目的 貢献度生産性 vs 業務処理量生産性) ; ・ 。 また、略称として、 ① 目的・貢献度生産性 対象業務 (ア) 必要投入時間は、自らが決める業務;TPM(total productivity monitoring) ② 業務処理量生産性 対象業務 (ア) 必要投入時間は、組織として決まる時間;OPM(operational productivity monitoring) と表現している。 14 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  15. 15. 第 3 回;IT と効果性向上 1. 何に結び付けるために IT 投資を行うのか? 図 11;収益性の分解式 設備、及び、IT などの投資によって人件費や他のコストが下がり、分子が向上する。そ の低減された余力資源を活かすことによって、売上の増加が見込める。もし、これらのコ ストを下げるために投資が増える一方であるならば、売上が増えても収益性が低下してい ることを見逃していることが多い。 つまり、投資をせずにコストを低減させることが重要であり、 「投資=収益性向上」には 繋がらない。コストダウン指向の強い管理職が一般的に失敗するのは、コストダウンには 投資が伴っている、ということを理解していないからである。だから、収益性指向を強く して管理を進めなければ売上が増加してもキャッシュが残っていないということも考えら れる。 効果性向上に関する IT 投資が影響を及ぼしてほしい要因としては、収益性の分解式の内 「売上」に貢献することが望ましい。しかし、その前に、人件費や他のコストの低減効果 を確実に回収できていることが大前提であり、 売上貢献のための IT システム投資は、 例え、 クラウドと称して固定資産を保有しなくても、様々な IT システム(アプリケーションを含 む)でコストが増加しているならば、収益性は低下していることに気付くべきである。 このような会社がよく使う言葉が、 「結局、今回の IT 投資で現場の何が変わったのか? そして、当社業績の何に結び付いたのか?」 。決して導入することが目的であってはならな い。 そこで、質問。 15 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  16. 16. ① (事実として)IT 投資が売上向上に貢献していますか? ② (過程として)IT 投資と売上向上を相関させる測定を行っていますか? この問いに答えることは難しい。むしろ、①はもっと難しい。理由は簡単で、売上の向 上に確実性は伴わないからである。しかし、だからと言って結果オーライでは経営は成り 立たない。 図 12;意識⇒行動⇒事実⇒成果 成果を向上させるためには、事実を変えなければならない。事実を変えるためには、行 動を変えなければならない。行動を変えるためには、意識を変えなければならない。しか し、意識を変えることはなかなか難しいし、また、意識の変化を定量的に測定することも 難しいだろう(図 12;意識⇒行動⇒事実⇒成果) 。 そうであるならば、行動を変えること、及び、行動変化の測定は可能であるからこそ、 この「行動」を対象に何かしらのアクションを起こせば、成果(=結果)に対するポジテ ィブなインパクトは期待できるのではないだろうか? つまり、 「成果の不確実性」のバラ ツキをできるだけ抑えるためには、 「行動の確実性」を高めることによりそれらは解決され ることが期待できる。 また、 「行動」 その とはキー・パフォーマンス・インディケーター (KPI;key performance indicator)であり、この「行動(=要定義)を取る」ことによって、成果に影響を及ぼす ことが期待される。 このように建設的に考えてみると、IT の導入が一人ひとりの「行動」に「どのように影 響しているのか?」を観ることが、IT の効果性(=売上)向上への期待を見ることに繋が るはずである。 そこで、再質問。 ① ② 2. IT の導入後、現場一人ひとりの行動がポジティブに変わっていますか? その行動変化に関する状況を定量的に測定できていますか? IT 投資の目的は何か? そもそも、IT はツール(道具)であり、そこには目的があるはずである。例えば、 「これ までは日報を紙で提出させていたものを、 デジタル化させ、 管理を簡素化させたい」 や 、 「数 字の進捗管理をデータベース化したい」などである。 16 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  17. 17. ちなみに、これらの目的はこれまでほぼ達成されてきている。しかし、忘れてはいけな いことがある。IT はツールであるからこそ、そこには「投資」という概念が働く。つまり、 クライアントは予算をわざわざ計上して IT ツールに投資するのである。決して高い買い物 をして心理的ベネフィットに対してのみ満足しているのではない。 ということは、IT を導入するだけでは「コストが増える、もしくは、資産が増えるだけ なので、 結果的に収益性を悪化させている」 ということに現場は気づかなければならない。 IT が何に影響を及ぼしているのか? シッカリと監査しなければならない6。少なくとも、 クライアントの経営陣は、 に対してこのように期待していることに IT 関係者は気付いて IT いるだろうか。 つまり、IT を導入する目的とは、本来 ① 処理的な業務(=業務処理量生産性向上業務)をできるだけ簡素化させ、もしく は、手離れさせ、 ② そこで創出された経営資源(=時間)を、売上向上に繋がるであろう業務(=目 的・貢献度生産性向上業務)にシフトさせ ③ それらがシフト出来ている状態をモニタリングできていること が望まれているのである。 上記を踏まえ、例えば「目的・貢献度生産性向上業務」の生産性が高めることが目的で あるならば、不確実性の高い売上向上を期待できるのではないだろうか。 ソフトバンクグループ代表の孫氏が自社内で行った事例をインターネットで発表されて いた(テーマ;iPad は日本の労働生産性を上げる重要な武器;10-10-20; http://businessnetwork.jp/Detail/tabid/65/artid/759/Default.aspx)7。 内容は、iPad と iPhone を組み合わせて活用すると、一人当たり約 50 分(/D)の時間 を新たに創出することが出来、その時間を売上向上に繋がるであろう業務に投入した結果、 受注回線が増え売上が向上した、という内容である。 この事例を筆者の言葉を借りて解説するならば、iPad と iPhone を組み合わせて活用す ることによって、業務処理量生産性を向上させ、そこで創った余力を目的・貢献度生産性 を向上させる業務に投入し、最終的には収益性向上に貢献できた、と言える。まさに、こ の事例は、IT の導入が自社の収益性向上に貢献したと言える、最適な事例ではないだろう か。 このように見てくると、効果性向上を期待しているならば、管理対象としては「不確実 性の高い成果目標(例;販売目標、利益目標)ではなく、確実性の高い行動目標を管理す る」ことが、原理原則に適っていると言えるのではないだろうか。この行動目標を一般的 6 昨今、 クラウドの台頭により固定資産としてシステムを保有するという考え方は低減され る傾向はある。 7 サイト内の定量的測定結果は、社内アンケートによるもの。 17 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  18. 18. に「生産性指標」と言う。 3. 入力することが目的になってはいけない IT を導入することによって起こっている現場(例;営業現場)の弊害として、よく耳に するのは「情報を入力することが一つの仕事になっている」 、という状況。これでは IT を投資することによって発生したコスト、及び、資産の増加による収益性の悪 ① 化だけでなく、 ② 従業員一人ひとりの経営資源(=時間)を余計に奪っているなら、尚更、収益性 を低下させていることに繋がりかねない。 そもそも、人間という動物がなぜイライラするのだろうか? 人間は機械ではない。だ からこそ、同じ作業の繰り返しは飽きてくる。この繰り返しを長期間行っていると、人間 としての秩序が崩れる場合がある。この秩序が崩れた状態を「イライラしている」と表現 できる。 だからこそ、この種の業務は人間の手から解放されることが求められる。つまり、これ らの対象業務は業務処理量生産性の向上が期待されている。この業務には IT は多大なる貢 献をしてくれるはずである。しかし、 「入力することが仕事になっている」のでは、業務処 理量生産性を低下させていることにつながっている、と言える。なぜ、こんなことが起こ るのだろうか? 答えは、 「入力(=input)した後の output」が不明確であるからだ。もしくは、使える (or 必要とされる)output ではないからだ。 逆に考えると、 output が定義されているからこそ、 input の重要性に気づくものである。 例えば、日報一つ取っても「担当者が管理者からのフィードバックをもらって最終 output とする」からこそ、部下は「どんなフィードバックをもらえるのか?」という期待を膨ら ませて、記入(=入力)するものである。しかし、 「部下が入力した内容を最終 output と する(=上司は読むだけ) 」ならば、おそらく、入力する作業にイライラが募るだろう。こ のような場合なら、 「日報」という業務を廃止(改善 4 原則の eliminate)することの方が 望ましい。目的が廃止されれば業務は存在しなくなる。生産性向上効果が一番大きな手段 の一つである。 意外と、現場では忙しさを理由に後者のような実態(=上司は読むだけ)が散見されて いないだろうか? これは言わば、 悪循環や他責の始まりである。 目的やそれに伴う output の定義が不明確であるならば、結果も不明確になるものである。 4. システム定着化という問題(例;CRM/SFA) ある企業の経営者とお話をしている際に、下記のような内容が出てきた。 「SFA を導入し て売上の見込み数字が見えるようになってきた。ところで、いつになったら売上が向上す るのだろうか」 。そこで筆者は逆に質問を投げかけた。 「社長、そもそもその売上見込みの 18 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  19. 19. 数字は、信憑性の高い数字だと思っているのですか?」 。それに対して「そりゃそうだろ う!」 そこでこう切り返した。 。 「では、 なぜ顕著に売上数字が向上しないのでしょうかね?」 。 この原因は、実は会社内にあるのではなく市場にある。マクロ的に観ると昨今の不景気 (2012 年 11 月末現在)が構造的問題として考えられる。担当者のマインドに配慮してみ よう。売上見込み数字は企業経営上正しく報告しなければいけないものの、もし、その報 告した数字が計画倒れした際に自身に非難が集中することが考えられるならば、人間とし て「契約の確実性が高まってから報告しよう」と思うものである。更に、管理者が担当者 を財務指標で管理しているなら尚更担当者の意識として、 「契約可能性が定かでない案件の 報告は避けよう」と思うだろう。 図 13;管理者の意識は財務指標 一方で管理者の立場としても経営層からは財務指標で管理されているからこそ、担当者 にも同じ財務指標で管理できれば管理上手間が省ける(図 13;管理者の意識は財務指標) 。 もしくは、 財務指標からブレークダウンされた結果指標での管理であっても良い。 しかし、 財務指標も結果指標も外部効果の数値であって、この数値を導きだした過程に言及するた めには、どちらの指標も参考にはできない。 また、別の視点で考えると、担当者、管理者、そして経営者の 3 者が財務指標を共通言 19 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  20. 20. 語とするならば、極端に言えば管理者は不要となる。担当者が直接経営者に報告するツー こんにち ルは今日既に整っている。 一方で、実際に 3 者が財務指標で運用できている国もある。欧米では成果主義で評価さ れるので結果だけで判断されることからその過程にまで言及する必要はなく、また、担当 者としても結果次第によっては雇用が守られないことを意識しているからこそ、その過程 にまで口を挟まれることには逆に抵抗があるものである。但し、成果主義が運用上可能な のは成果如何において企業も担当者の雇用を市場で自由に流動させられるからであって、 日本はまだまだ自由に雇用を調整することはできない。だから、運用上財務指標で管理す ることは構造的に無理な話なのである。 図 14;管理者の意識は生産性指標8 従って、雇用を自由に調整できない中で財務指標で運用管理することは、経営者は自ら 苦しい経営を推し進めているようなものである。なぜなら成果(例;営業利益)に応じて 投資(例;人件費)が調整できないからである。だからこそ日本市場内では、人件費に対 生産性指標内における、T とは「total productivity monitoring;目的貢献度生産性向上 業務」 であり、 とは O 「operational productivity monitoring;業務処理量生産性向上業務」 。 8 20 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  21. 21. してもっともっと緊張感を持つべきであり、そのためにも生産性指標で管理することが求 められるのである。特に、人件費は他の経営資源と異なり繊細な資源である。一方で、投 資以上の効果にも期待できる不思議な資源でもある。 生産性指標を共通言語にするということは、担当者の実践(=行動)を科学することに 管理者が関与することとも言える(図 14;管理者の意識は生産性指標) 。特に、日本では生 産性指標での管理が社会構造上必要であることを認識しておくべきだろう。 生産性指標が担当者と管理者の共通言語である限り、仮にこの指標が向上しない責任は 両者に存在するわけであるから、必然的に結果指標に関する情報の信憑性は高くなること が期待できる。 有能な人材という経営資源を活かしている進捗状況を確認するために生産性指標が存在 し、その結果を表現するために結果指標や財務指標が存在している。昨今の厳しい市場環 境において、勝負(=対象;生産性指標)に勝ったが試合(=対象;結果指標・財務指標) に負けた、ということは許容できない。しかし試合に勝たないと勝負に勝てる可能性は高 まらない。 21 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  22. 22. 執筆者紹介 坂本 裕司(さかもと ゆうじ) yuji.sakamoto@hppt.jp hppt.jp 1973 年奈良市生まれ。01 年英国ノッティンガム大学経営大学院修士課程修了(MBA;経営学修士) 。統計士。鐘紡 株式会社(現クラシエ HD 株式会社) 、独立系コンサルティングファーム;コンサルタント、外資系コンサルティングフ ァーム;Director(NY・US) 、独立系コンサルティングファーム;取締役(Tokyo・Jpn) 、ISPI(international society for performance improvement;米国本部)日本支部プレジデントを経て、12 年株式会社エイチ・ピィ・ピィ・ティ; 代表取締役。生産性を「効果性 × 効率性」と分解し、知識労働者であるナレッジワーカーを対象にした“効果性”向上マ ネジメント技術;Per HPT(Human Performance Technology)及び管理・間接部門のホワイトカラーを対象にした“効 率性”向上マネジメント技術;Pro HPT(Human Productivity Technology)を開発し、ナレッジワーカー・ホワイトカ ラーの生産性向上に関するマネジメント・コンサルティング活動並びにマネジメント担当者の育成活動を、 国内・欧米・ アジアを中心に展開。各測定技術(BF/AF, MBM, HQM, BPR-I など)を駆使したマネジメント・コンサルティングは、 実効性のある経済効果が期待できることからクライアントの評価も高い。 専門は経営工学・経営科学・統計学。 領域は、 Human Performance & Productivity Technology. ナレッジワーカー・ホワイトカラー生産性向上研究団体である ISPI 米国本部と提携を促進させ、アジア地域・日本国 内で最初となる日本支部を設立しプレジデントに就任(03-11) 。在任中に、ISPI Global Annual Conference にてアジ ア初となる 4 年連続プレゼンテーション・セッションのリードプレゼンター(03-06) 、更に日本人初となる ISPI グロ ーバル・セッションのパネリスト(04)を務める。 「マネジメント・アプローチ × IT アプローチ」もコーポレートテーマとし、Global IT vendor、Domestic SIer、 Global IT consulting firm 等と研究会活動を推進させ、個人の生産性向上を企業の収益性向上に貢献させる新しいコン セプトを数多く発信している。現在弊社が取り組んでいる IT アプローチとの組み合わせ代表例として、 「測定技術 × “ERP / SCM / CRM / HCM / Talent Management”、など、他多数。 」 その他、独立行政法人中小企業基盤整備機構、株式会社マーケティング研究協会、四国生産性本部、社団法人日本能 率協会、テンプル大学、などの講師も務める。 主要著書・訳書・寄稿 『考える営業』 (09)『戦略的営業利益向上マネジメント』 、 (08)『ホワイトカラーの生産性を飛躍的に高めるマネジ 、 メント;HPT の実践マニュアル』 (07) 、以上産業能率大学出版部。 『メンタリングの奇跡』 (03)『MBA のリスクマネ 。 ジメント』 (02) 、以上 PHP 研究所。 『週刊東洋経済(東洋経済新報社)、 』『人材教育(JMAM)、 』『人事マネジメント(ビ ジネスパブリッシング)、 』『ビズテリア経営企画(ビズテリア)、 』『病院経営(産労総合研究所)、 』『ALN World(US)、 』 など、他多数。 55 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.

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