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200908dhcのepr

  1. 1. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 01-08 An Electronic Journal of The MOTTAINAI Society Online ISSN 1882-2975 地域冷暖房の EPR を考える 早坂 投稿受付:2009 年 8 月 23 日 房次 受理日:2009 年 月 日 WEB 公開日: 月 日 要旨 地域冷暖房についてその導入を強く主張する方々がいる。 欧米においては暖房需要が主であるの に対し、亜熱帯に近い気候の日本は冷房需要が主である。このような空調需要の質的な差異を無視 し、地域冷暖房の導入や温熱需要を主に考えているコージェネレーションシステムやバイオマス、 ごみの焼却排熱利用を盲目的に主張されているのではないかと懸念される。 地域冷暖房もその効率 はシステム間で大きな差があり、ヒートポンプ利用の優位性は明らかである。さらに、エネルギー の面的利用を地域冷暖房やコージェネレーションシステムを捉える向きもあるが、 人口が稠密で国 土が狭い日本は電力系統の中ですでにエネルギーの面的利用が図られている。 以上をEPRの視点 を主軸に検討してみた。 【キーワード】 :地域冷暖房、ヒートポンプ、EPR、電気、ガス 1. はじめに 図 1 地域冷暖房(熱供給事業・DHC) 『地域冷暖房』とは「一か所または数か所 の熱発生所(プラント)から複数建物等に、 導管で結んで冷房・暖房・製造などに使用す る為に、冷水・温水・蒸気を送る事業」を言 う。 (熱供給事業便覧) 【図1参照】 1 早坂 房次(はやさか 学修士(MBA) ふさじ) 東京電力株式会社、再開発コーディネーター協会個人正会員、経営管理 © もったいない学会
  2. 2. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35 地域冷暖房はこのような熱供給システムで 成 20 年 3 月 31 日現在の地域別事業者数・区 あるが、表1の要件を全て満たすものが熱供 域数は表2の通りである。 給事業と言われ、熱供給事業法の適用を受け 表 2 地域別許可事業者数・許可区域数 る。 表 1 北海道 東北・関東 中部 近畿・中国・四国 九州 合計 熱供給事業法の適用を受ける場合(要 件を全て満たす場合) 需要 供給数 熱媒体 規模 一般の需要(導管で供給) 複数の建物 加熱され、若しくは冷却された水 または蒸気 加熱能力 21 ギガジュール/時以上 事業者数 10 51 8 12 5 86 区域数 12 89 12 27 8 148 例えば、東京都では、都市計画において容 積率が 400 パーセント以上とされている近隣 商業地域、商業地域、準工業地域内や都市再 開発法に基づく再開発促進地区と定められて (1GJ=百万kJ) いる地域などで、おおむね床面積の合計が5 万㎡以上で多量のエネルギー(周辺地域を含 地域冷暖房 (熱供給事業・熱供給システム: 以下『地域冷暖房』に用語を統一)の導入が めて熱需要が1時間当たり 21 ギガジュール 検討されるのには以下の理由がある。 以上)を消費されると予想される建築計画の ① 利用の時間差により熱源容量の縮減が可 場合、地域冷暖房の導入についての検討が義 務付けられている。 能である。 また、大気汚染の防止と省エネルギーを図 ② 個別設置より設置面積が小さい。 るため、地域冷暖房を導入することが必要で ③ 大規模化による機器の効率の向上が可能 あると認められる計画については、都民の健 である。 ④ 未利用エネルギーの利用による省エネル 康と安全を確保する環境に関する条例「環境 ギー・温室効果ガス排出量削減がより容 確保条例」により、当該地域を地域冷暖房計 易である。 画区域として指定される。 具体的には図2のような手続きとなる。 ⑤ 少数の運転要員で運用できる。 しかし、問題として次のような点がある。 図 2 ① 管の敷設など初期投資が大きい。 ② 管路が長くなると維持管理や熱媒の搬送 の費用が増大する。 欧米は高緯度地域にあるため、冷房需要が 7割を占めると言われる亜熱帯に近い気候の 日本と異なり、 『地域暖房』として 100 年以上 の歴史がある。これに対し、我が国では 1970 年の大阪万国博覧会会場に『地域冷房』が導 入されたのを契機に地域冷暖房が始まった。 全国の熱供給事業者数は平成 20 年3月 31 日 現在、86 事業者、148 地点となっている。平 2 地域冷暖房計画区域指定手続きの流れ
  3. 3. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35 特に地球温暖化対策から東京都では「環境 を目的とする。 確保条例」が改正され『地域におけるエネル ギーの有効利用に関する計画制度』が平成 22 2.総合エネルギー効率からみた地域冷暖房 年1月1日より実施される。本制度では『特 図3は平成 18 年度における住宅以外の地域 定開発事業者』 [おおむね床面積の合計が5万 冷暖房の総合エネルギー効率 (販売熱量/一次 ㎡以上で多量のエネルギー(周辺地域を含め エネルギー)を縦軸に、横軸に規模(販売熱 て熱需要が1時間当たり21ギガジュール以 量)をとったグラフである。参考に東京都地 上)を消費されると予想される建築を計画す 域冷暖房推進指導基準で定められた総合エネ る者] は 地域冷 暖房の導 入検討 が義務 づ けら ルギー効率0.8という基準も書き加えてあ れている。なお、その際には総合エネルギー る。 効率(販売熱量/一次エネルギー)が0.8以 ご覧いただくと、地点間でエネルギー利用 上であることが求められている。 [東京都地域 効率が大きく異なることがお分かりいただけ 冷暖房推進指導基準第六項(2)①]この背景 るであろう。東京都の地域冷暖房指導基準で には、地域冷暖房にはシステム間でエネルギ 利用効率(総合エネルギー効率)を導入した ー利用効率に実は大きな差があることが認識 ことも頷ける。この総合エネルギー効率がど されだしたことがある。 のような意味を持つかについて、元東海大学 エネルギーの利用効率の議論では機器単体 学長で空気調和・衛生工学会会長でおいでだ での効率比較とシステム間の比較など異なる った田中俊六先生の「温対法と省エネ法の原 ベースに基づく議論がそれぞれ展開されてい 単位問題」オーム社 る。また、効率比較において最も効率がいい やや長くなるが引用したい。 2007 年 pp99-100 より もの(いわゆるチャンピオンデータ)を各々 が引っ張ってきて議論しているケースも多い。 「都市ガス方式の新宿副都心の販売熱量 後者の議論は、亜熱帯に近く冷房需要が多い に対して、電気式の晴海アイランドの総合エ 日本に、暖房需要が主な欧米の事例を適用し ネルギー効率と「全電源平均」原単位を当て てなされる主張が散見される事態を招いてい はめると、・・・原油換算エネルギー使用量 る結果となっている。 は・・・約1/3に減少し、・・・光発電住宅、約 地域冷暖房は熱供給事業法に基づく認可事 40万戸分の省エネルギー効果を相殺してい 業なので公的統計があり、チャンピオンデー ることになります。 」 タ競争のようなサンプルではなく、センサス (全数調査)の議論が可能になる。 このように大変大きなエネルギー消費の削 本稿では“政策的”に言われている「エネ 減余地がある。費用対効果を考えた合理的施 ルギーの面的利用=地域冷暖房」について、 策が望まれる所以である。 その真価をEPR的視点も含め検証すること 3
  4. 4. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35 図 3 地域冷暖房の総合エネルギー効率(平成 18 年度) 蓄熱空調(未利用エネルギー活用)0.65~1.26 1.4 高崎市中央地区:1.26 1.2 幕張新都心ハイテク・ビジネス地区:1.25 蓄熱空調0.67~1.22 晴海アイランド地区:1.22 総 合 1 エ ネ ル ギ 0.8 ー 効 率 コージェネレーションシステム0.42~0.85 蓄熱(未利用エネルギー) 蓄熱(一般) ガス(コージェネ) ガス(一般) ガス空調0.31~0.92 0.6 各地区のグループ分けは、 平成14~18年度の実績 に基づき選定 *グループ内の対象地区は、 H18年度の実績に基づ き選定 0.4 0.2 1000 10000 100000 販売熱量(GJ) 対象地点:主に業務用,商業用施設に対し,冷水・温水 (蒸気・給湯含む)の両熱媒を供給している地点 1000000 出典:熱供給事業便覧平成19年版 電気:9,760kJ/kWh、都市ガス:45.0MJ/m3で換算 総合効率=販売熱量/投入一次エネルギー 3.計算の範囲 グループ化 蓄熱(未利用エネ) 蓄熱(一般) ガス(コジェネ) ガス(一般) 電気比率80%以上 電気比率80%以上 電気・ガス比率不問、CGSプラント設置 ガス比率70%以上 これを、総合エネルギー効率などと比較し 図4は地域冷暖房のエネルギーの流れを示 て整理したものが、 図5である。 別論文の 『各 したものである。 図 4 10000000 種暖房のEPRを考える』 も参照して欲しい。 地域冷暖房のエネルギーの流れ 様々な指標があるが、地域冷暖房のEPR 分析以外はあくまでも一部のみを取り出した I7 分析であることがわかる。全体のシステムを 燃料の採掘輸送への投入エネルギー I6 I5 見て議論しなければ大きな過ちに陥る危険性 発電設備等への投入エネルギー を改めて認識必要がある。 I3 I2 W0 発電された電力 (送電端) 地域冷暖 房の消費 電力 I4 I1 送・配電線の建設・保守・補修 への投入エネルギー 地域冷暖房設備(熱源・ 導管など)製造・保守の ための投入エネルギー 地域冷暖房の販売熱量 地域冷暖房のEPRは下記のように定義で きる。 地域冷暖房のEPR =W 0 /(I 1 +I 4 +I 5 +I 7 ) 4
  5. 5. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35 図 5 電気の非効率を主張する人々の陥りや 図 7 すい罠 送配電ロスと送配電線の運営・保守エ ネルギー 送配電エネルギー率:η=I4/I2 ∴I4=ηI2 I7 燃料の採掘輸送への投入エネルギー 各電源のエネルギー収支比 I3/(I5+I7) 送配電設備の 建設・運用エネ ルギー:I4 発電設備等への投入エネルギー I6 I5 送・配電線の建設・保守・補 修への投入エネルギー 発電された電力(送電端) I4 I3 地域冷暖房の消費電力 地域冷暖房設備(熱源・導管など)製造・保守 のための投入エネルギー I2 W0 I1 電気の非効率を主張する人々 I2/I6 送電線 変電所 エアコン運転時 消費電力:I2 変電所 エアコンのCOP W0/I2 発電所 エアコンの一般的なLCA分析 W0/(I1 +I2) 送配電ロス率:θ=(I3-I2)/I3 I =I2 /(1-θ) ∴ 3 送電端電力量:I3 地域冷暖房の総合エネルギー効率 W0/(I1’ +I6) : I 4 =ηI 2 地域冷暖房のEPR W0/(I1 +I4 +I5 +I7) 地域冷暖房の販売熱量 配電線 ※I1’はI1の一部の意味 またI 5 +I 7 は下記のようになる。 I 5 +I 7 =I 3 /ε 4.考察 I 3 =I 2 /(1-θ) 地域冷暖房の販売熱量(W 0 )と使用した電 ∴I 5 +I 7 =I 2 /{ε(1-θ) } 気・ガス・重油など(I 2 )は統計として地点 ごと熱供給事業便覧にある。図6のように各 ここで地域冷暖房設備(熱源・導管・管理 種電源のEPRでは分析されているのでその 施設など)製造・保守のための投入エネルギ 値を(ε)とするとI 5 +I 7 は下記によって ー (I 1 ) を便宜的に無視する (別途考察する) 求めることができる。 とすると以下のようになる。 I 5 +I 7 =I 3 /ε 地域冷暖房のEPR 図 6 各種電源のエネルギー収支の検討範囲 =W 0 /(I 4 +I 5 +I 7 ) = {ε(1-θ)}W 0 /[{ηε(1-θ)+1}I 2 ] 5.パラメーターについて 上記式に関するパラメーター[各種電源の EPR(ε) ・送配電ロス率(θ) ]について 具体的に考察すると以下のようになる。送配 電エネルギー率(η)については電中研天野 治氏の計算によって0.3%という数字があ 図7は発電所から家庭(電力メーターのと るのでこれを用いる。 ころ)まで必要なエネルギーを示したもので 5.1 ある。地域冷暖房においても過程はまったく 各種電源のEPR(ε) 各種電源の定義は既に述べた。図8は電力 同じである。 中央研究所の天野治氏の研究結果である。 5
  6. 6. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35 図 8 各種電源のエネルギー収支比率 図 9 これを、平成18年度の電力10社の発受 5.3 電実績から加重平均して求めたEPRは表3 送配電ロス率の推移 ガスのEPR(ε‘) 国内で使われる天然ガスのEPRを試算し の通り9.45となる。 た。結果は図10の通りであり、全ての投入 エネルギーを採録している訳ではない。計算 表 3 各種電源の電力10社発受電実績(送 の諸元は、内山洋司・山本博巳、 「発電プラン 電端)による加重平均EPR LNG 石油 石炭 その他ガス 地熱 その他新エネ 水力 原子力 EPR 構成比 10社計 2.14 26.2% 2,605 7.9 7.8% 779 6.55 24.5% 2,444 7 1.0% 99 6.8 0.3% 31 5 0.6% 61 15.3 9.1% 905 16.9 30.5% 3,034 9,958 トのエネルギー収支分析」電力中央研究所報 告 Y90015(1991)による。 図 10 9.45 注意:構成比は平成18年度電力10社発受電実績     その他「新エネ」と「その他ガス」のEPRは暫定値 5.2 送配電ロス率(θ) 図9は電力10社の火力発電設備の熱効率 (高位発熱量)と送配電ロス率の時系列的推 移のグラフである。1955年度には18. 4%あった送配電ロス率も低減し、近年は 5%前後の数字となっている。計算では20 05年度の5.1%を用いた。 6 天然ガスのEPR
  7. 7. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35 6. EPRは暫定的な分析 (図11) であっても、 計算結果(暫定) 総合エネルギー効率(図3)のシステム間で 以上から地域冷暖房のEPRを計算した結 果が図11である。既に述べたように、地域 の格差がさらに大きくなっていることが解る。 冷暖房設備(熱源・導管・管理施設など)の このように『地域暖房』が先行していた欧 製造・保守のための投入エネルギー(I 1 )を 米ではあったが、亜熱帯に近く冷房需要が主 考慮していない暫定のものである。 な日本においては『地域冷房』が主であり状 考察においては一部だが地域冷暖房設備 況が異なる中で教条的主義的ドグマに陥って (熱源・導管・管理施設など)製造・保守の いる危険性がある。 ための投入エネルギーについて考察を進めた また、電気式(ヒートポンプ)優位性につ い。 いては欧米でも認識されつつあり、ヒートポ ガス・石油関連燃料については、国内イン ンプを再生可能エネルギー指標に入れるなど フラ設備に関係するエネルギー投入0、途中 の動きがある。 (詳しくは財団法人ヒートポン でのエネルギー損失0 (電気は考慮している) プ蓄熱センタープレスリリース参照された と、ガス・石油系燃料に有利な前提を置いて い)以下では、巷間言われている『エネルギ ある。 ーの面的利用(地域冷暖房)推進』の真価を そのような状況下であるが、地域冷暖房の 図 11 問う考察も行って行きたい。 地域冷暖房のEPR(暫定) 幕張新都心ハイテク・ビジネス地区:29.63 高崎市中央地区:29.87 蓄熱空調(未利用エネルギー活用)13.25~29.87 30 蓄熱空調15.90~28.96 25 晴海アイランド地区:28.96 20 蓄熱(未利用エネルギー) 蓄熱(一般) ガス(コージェネ) ガス(一般) E P R 15 コージェネレーションシステム1.16~6.20 10 各地区のグループ分けは、 平成14~18年度の実績 に基づき選定 *グループ内の対象地区は、 H18年度の実績に基づ き選定 ガス空調0.60~7.41 5 0 1000 10000 100000 販売熱量(GJ) 1000000 対象地点:主に業務用,商業用施設に対し,冷水・温水 出典:熱供給事業便覧平成19年版 (蒸気・給湯含む)の両熱媒を供給している地点 都市ガス:45.0MJ/m3で換算 7 10000000 グループ化 蓄熱(未利用エネ) 蓄熱(一般) ガス(コジェネ) ガス(一般) 電気比率80%以上 電気比率80%以上 電気・ガス比率不問、CGSプラント設置 ガス比率70%以上
  8. 8. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35 7. 考察 以上の地域冷暖房のEPR分析では地域冷 域冷暖房設備(熱源・導管・管理施設など) 暖房設備(熱源・導管・管理施設など)の製 』 の製造・保守のための投入エネルギー(I 1 ) 造・保守のための投入エネルギー(I 1 )を考 として計上したい。 慮していなかった。この問題における先駆的 ① 共同溝:開削および推進工事の配管お 研究として林英明・高橋章・松木直子・横尾 よび仮設工事の平均【37,865MJ/m】 昇剛・岡健雄(1999)地域配管の建設による ② 専用洞道:開削および推進工事の全項 エネルギー消費と二酸化炭素排出量、日本建 築学会計画系論文集 第 521 号、81-87 目の合計の平均【77,000MJ/m】 が ③ 直埋:直埋工事の合計【9,131MJ/m】 ある。 ④ その他:開削および推進工事の全項目 この研究では地域導管の施設方法について、 の合計の平均【77,000MJ/m】 開削工法・推進工法・直埋工法の3種類、6 ⑤ 熱源水管延長:開削および推進工事の 事例について調査している。具体的には工事 全項目の合計の平均【77,000MJ/m】 項目別に主要材使用量を拾い出している。 これをもとに産業連関表から消費材当たり このほか、熱供給事業便覧には熱源機(熱 エネルギー投入量を掛け、工事距離から単位 発生機器等) の種別と能力が公表されている。 長さ当たりのエネルギー消費量を出している。 さらに精緻な議論では熱源の製造エネルギー その結果が表4である。 についてもアプローチの可能性があるが、今 熱供給事業便覧では地点 (区域) ごとの (地 回は見送り別の機会に検討してみたい。 域)導管および熱源水管延長が公表されてい また、管理施設の建設への投入エネルギー る。さらに導管は①共同溝②専用洞道③直埋 および各施設の保守への投入エネルギーも考 ④その他に区分し道路往復延長距離がある。 慮されていない。こちらも今後の検討課題と 表4の結果をみると工事ごとのばらつきが したい。 多い感は否めない。そこで、第一次接近とし て以下に述べるようなアプローチで導管の建 設エネルギーを地点(区域)毎に算出し、 『地 表 4 工事項目 土工事 土留工事 地盤改良工事 基礎工事 躯体工事 推進工事 推進設備工事 推進管材 配管工事 仮設工事 合計 単位長さ当たりエネルギー消費量(MJ/m) 開削 A1 9328 21038 2155 776 36652 - - - 51765 36165 157879 開削 A2 8324 13011 4762 744 16631 - - - 18799 32851 95123 開削 A3 9978 6683 - 7228 6797 - - - 7271 7803 45761 8 推進 B1 - - 29706 - - 5587 3639 3838 13166 13966 69903 推進 B2 - - - - - 4331 1774 2691 4186 3354 16335 直埋 C 1721 - - - - - - 3982 - 9131
  9. 9. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35 地域導管の建設に関するエネルギー投入量 にヒアリングをしたところ大まかな数字とし は以上により求めることができた。地域冷暖 て40年程度という数字が出てきた。 房の EPR を計算するために導管の更新年数が したがって、地域導管の建設に関するエネ 必要になるが、残念ながら統計としてない。 ルギー投入量を40で割った数字を加味して 更新年数は導管の敷設状況(共同溝・専用洞 再計算した。この結果が図12である。 道・直埋)によっても異なるし、また、熱媒 図11と図12の違いは地域導管の建設に 体(蒸気・温水・冷水・凝縮水)によっても 伴うエネルギー投入(40分の1)を分母側 異なる。また、管の種類も単純な鋼管に塗覆 に加えることによる低下を示している。そこ 装したものから、保温材を間に挟んだ複層構 で、このEPRの低下率と地域導管の建設に 造のものなど種類ごとに異なる。そこで、東 伴うエネルギー投入(40分の1)の販売熱 京電力株式会社の子会社で15区域の熱供給 量に占める割合を見たのが図13である。 事業を営んでいる東京都市サービス株式会社 図 12 地域冷暖房の EPR 晴海アイランド地区:20.03 厚木テレコムタウン:25.03 25 蓄熱空調9.84~25.03 幕張新都心ハイテク・ビジネス地区:17.66 20 蓄熱空調(未利用エネルギー活用)7.55~19.37 コージェネレーションシステム1.15~6.00 E 15 P R 蓄熱(未利用エネルギー) 蓄熱(一般) ガス(コージェネ) ガス(一般) 10 ガス空調0.56~5.89 各地区のグループ分けは、 平成14~18年度の実績 に基づき選定 *グループ内の対象地区は、 H18年度の実績に基づ き選定 5 0 1000 10000 対象地点:主に業務用,商業用施設に対し,冷水・温水 (蒸気・給湯含む)の両熱媒を供給している地点 100000 販売熱量(GJ) 1000000 出典:熱供給事業便覧平成19年版 都市ガス:45.0MJ/m3で換算 10000000 グループ化 蓄熱(未利用エネ) 蓄熱(一般) ガス(コジェネ) ガス(一般) 電気比率80%以上 電気比率80%以上 電気・ガス比率不問、CGSプラント設置 ガス比率70%以上 導管建設への投入エネルギーが販売熱量に を置いていることと、システム間でのEPR 占める割合が大きいほどEPRの低下は大き の差が大きいことから、この散布図から断定 い。しかし、すでに述べたように導管の建設 的な結論を導くには更なる検討が必要であろ エネルギーの推計についてはかなり強い仮定 う。 9
  10. 10. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35 図 13 EPRの低下と導管建設エネルギー投 する損失のほうが送電ロスより大きいことを 入の関係 失念していることに起因していると推測され る。 0.3 単 年 度 当 た り の 導 管 建 設 エ ネ 率 ル ギ ー 図14は「財務省 関する検討・フォローアップ有識者会議」で 0.2 (2008 年 5 月 15 日)東京電力説明資料であ 0.15 が 販 売 熱 量 に 占 め る 比 る。左上にある一次エネルギー効率の比較は 0.1 図3とほぼ同じものである。違いは地域冷暖 0.05 房ではないソニーシティ(個別空調方式)が 加えられていることである。ソニーシティの 0 -70% 国有財産の有効活用に 0.25 -60% -50% -40% -30% -20% -10% 0% 導管の建設エネルギー算入に伴うEPRの低下率 総合エネルギー効率は下水の再生水を利用し ていることもあって、1.9 と大変高い値とな 8.まとめ(面的エネルギー利用の真価を問 っている。これは図12で求めたEPRでは う) 51.95 に相当する驚異的な値である。 『エネルギーの面的利用(地域冷暖房)推 エネルギーの利用については、同じく東京 進』が巷間で謳われるケースが多い。地域冷 電力が「財務省 暖房についてその導入を強く主張する方々が 国有財産の有効活用に関す る検討・フォローアップ有識者会議」で説明 いる。欧米においては暖房が主であったので した図15の右上にあるように共同利用方式 『地域暖房』として長い歴史がある。これに と個別方式がある。①日本における空調需要 対し、日本は亜熱帯に近い気候にあり、冷房 の質的差(日本:冷房需要が主・欧米:暖房 需要が主である。このような空調需要の質的 需要が主)と②欧米でのヒートポンプ利用の な差異を無視し、地域冷暖房の導入や温熱需 立ち遅れという事実を忘れた議論が、観念 要を主に考えているコージェネレーションシ 的・イデオロギー的な教条主義のドグマと言 ステムやバイオマス、ごみの焼却に伴う排熱 ってもいいかもしれない「エネルギー面的利 利用を盲目的に主張する結果を招いているの 用」絶対主義になっている可能性がある。 ではないかと懸念される。地域冷暖房もその 今後は、 建築物まで含めたEPR分析 『 ( (仮 効率はシステム間で大きな差があり、ヒート 題)建築物(住宅)のEPRを考える』 )を進 ポンプ利用の優位性は明らかである。 さらに、 めることとし、本論文の分析はいったんここ エネルギーの面的利用を地域冷暖房やコージ までとする。 ェネレーションを捉える向きもあるが、人口 が稠密で国土が狭い日本は電力系統の中です でにエネルギーの面的利用が図られているこ とが忘れられている。これは、熱として輸送 10
  11. 11. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35 図 14 財務省 国有財産の有効活用に関する検討・フォローアップ有識者会議東京電力説明資料 より(2008 年 5 月 15 日) 図 15 財務省 国有財産の有効活用に関する検討・フォローアップ有識者会議東京電力説明資料 より(2008 年 5 月 15 日) 11
  12. 12. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35 観念的・イデオロギー的な教条主義のドグ ス事業部が『新エネルギー大量導入に対応し マと言ってもいいかもしれない「エネルギー た電力の系統安定化対策等について』という 面的利用」絶対主義の危険性についてはすで 配布資料からの引用になる。図を見るまでも に述べた。本論文でその背景について若干の なく日本の国土はカリフォルニア州1州程度 指摘をし、別途社会システムのEPR分析 の面積しかない。大規模な電力の消費地が密 ( (仮題)社会システムをEPRから考え 『 集している日本と諸外国とは異なる。大陸で る』 )を行うこととする。 あるヨーロッパ諸国において国別の議論は日 図16は資源エネルギー庁の「低炭素化電 本でいえば都道府県別の議論に相当すること 力供給システムに関する研究会」で電力・ガ 図 16 も分かっていただけるであろう。 日本・米国・欧州の電力系統の特徴 以上のように、エネルギーの面的利用の推 解を得て電気を関東地方に届けているのは事 進と称し、地域冷暖房の推進を金科玉条のご 実であるが、こう見てみるとアメリカでいえ とくの主張では、日本は電力系統の中ですで ばロス・アンゼルス市郊外の発電所からロ にエネルギーの面的利用が図られていること ス・アンゼルス市に電気を送っているのに相 が忘れられている。これは、熱として輸送す 当するのかとも思えてしまう。 る損失のほうが送電ロスより大きいことを忘 結論として、気象などの自然条件、島国か れた議論と換言しても過言ではない。 大陸国かなどという地理的条件、資源の賦存 図17は関東平野とロス・アンゼルス市周 状況、国際関係、人口密度など国ごと、地域 辺を同じ尺度の地図で比較したものである。 ごとの個別性を無視した議論は大きな過ちを 東京電力では長野県・新潟県・福島県など 犯す危険性があることを認識しなければなら 受け持ち区域外に発電所を持っている。 ないと言える。 大変な距離を受け持ち区域外の方々のご理 EPRを無視した観念的イデオロギー主義 12
  13. 13. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35 かイデオロギー的観念主義かは分からないが ある。石井吉徳もったいない学会会長が常に 教条主義のドグマは避けなければならない。 おっしゃっておいでの通り『エネルギーは質 EPR的視点がまさしく求められているので が全て』である。 図 17 関東地方とロス・アンゼルス市の大きさの比較 ロス・アンゼルス市 関東平野 ©2009 Google 地図データ©2009ZENRIN ©2009 Google 地図データ©2009 Tele Atlas 参考文献 林英明・高橋章・松木直子・横尾昇剛・岡健 天野治(2007) エネルギーの質から、将来の石 雄(1999)地域配管の建設によるエネルギー 油代替エネルギーを考える、電中研ニュース 消費と二酸化炭素排出量、日本建築学会計画 No.439,http://criepi.denken.or.jp/jp/pub 系論文集 /news/pdf/den439.pdf 正田栄介・丹羽信昭(1997)電力システム、 天野治(2008)石油ピーク後のエネルギー、愛 オーム社 智出版 資源エネルギー庁電力・ガス事業部(2009) 新 内山洋司・山本博巳(1991)、発電プラントの エネルギー大量導入に対応した電力の系統安 エネルギー収支分析、電力中央研究所報告 定化対策等について、 Y90015 http://www.meti.go.jp/committee/material 社団法人熱供給事業協会(2008)熱供給事業便 s2/downloadfiles/g90522a02j.pdf 覧 財務省(2008) 国有財産の有効活用に関する 田中俊六(2007)温対法と省エネ法の原単位 検討・フォローアップ有識者会議東京電力説 問題―「前電源平均」と「火力平均」―、オ 明資料、 ーム社 http://www.mof.go.jp/singikai/zaisanfoll 財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター(2009) ow_up/siryou/20080515/tepco.pdf 再生可能エネルギー導入指標にヒートポンプ、 http://www.hptcj.or.jp/chikunetu_lib/wha tsnew_bn/doc/newsrelease090422.pdf 13 第 521 号、81-87

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