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ユーザとベンダ双方にとって幸せなAI開発のための3つのポイント

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ユーザとベンダ双方にとって幸せなAI開発のための3つのポイント

  1. 1. ユーザとベンダ双方にとって幸せな AI開発のための3つのポイント 2018.06.21 STORIA法律事務所 弁護士 柿沼太一
  2. 2. 【自己紹介】 ▼ 2000年4月に弁護士登録 ▼ 2015年3月に神戸三宮にSTORIA法律事務所設立 ▼ AI、IT、知的財産、ベンチャーを主として取り扱う ▼ 2016年10月からAIに関して積極的な情報発信を始め、現在自 動車系、医療系、工場系、WEB系など多様なAI企業からの相談、 顧問契約を締結 ▼ 2017年12月東京事務所開設 ▼ 経産省の「AI・データ契約ガイドライン」検討委員会委員及 び作業部会員(~2018.3) 1
  3. 3. ユーザとベンダ双方にとって幸せなAI開発のた めの3つのポイント 2 性能保証 検収・瑕疵担保 権利・知財 責任
  4. 4. ユーザとベンダ双方にとって幸せなAI開発のた めの3つのポイント 3 性能保証 検収・瑕疵担保 権利・知財 責任
  5. 5. ユーザとベンダ双方にとって幸せなAI開発のた めの3つのポイント 4 性能保証 検収・瑕疵担保 権利・知財 責任
  6. 6. ユーザとベンダ双方にとって幸せなAI開発のた めの3つのポイント 5 性能保証 検収・瑕疵担保 権利・知財 責任
  7. 7. 1 AI開発契約において「性能保証」「検収」「瑕 疵担保」についてはどのように定めればいいのか (性能保証、検収、瑕疵担保) 6
  8. 8. 1 性能保証・検収・瑕疵担保 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 7 【よくある質問】 (1) ユーザから学習済みモデルを用いた出力の精度について一 定の保証をするようにと強く要請された場合、AIベンダはどのよう に対応すべきか (2) AI開発契約において検収基準や瑕疵担保についてどのよう に定めたら良いか。
  9. 9. 1 性能保証・検収・瑕疵担保 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 8 (1) 通常のシステム開発とAI開発の違い 通常のシステム開発 AI開発 開発手法 演繹型 帰納型 性能保証 可能 訓練データに統計的バイアスが 含まれることが避けられないた め、未知のデータに対する性能 保証は困難 性能不足の場合の事後検証 可能 原因の切り分け(データの品質、 ハイパーパラメータ設定、ソー スコードのバグ等)が困難 性能テスト 可能 ① 学習に利用しない独立した データセットが必要 ② (当然だが)未知データで のテスト不可能
  10. 10. 1 性能保証・検収・瑕疵担保 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 9 (2) ではどうしたらよいのか ① AI開発の特性をユーザとベンダが理解すること →AI・データ契約ガイドラインの活用 ② 開発プロセス及び契約の分割 →探索型段階型開発方式 ③ 契約内容の工夫 →準委任型
  11. 11. 1 性能保証・検収・瑕疵担保 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 10 ① AI開発の特性をユーザとベンダが理解すること →AI・データ契約ガイドラインを活用する (http://www.meti.go.jp/press/2018/06/20180615001/201 80615001.html) →2018年6月15日公表 →AI開発における基礎概念、AIの技術的特性、利点と限界に ついて詳細に記載
  12. 12. 1 性能保証・検収・瑕疵担保 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 11 ② 開発プロセス及び契約の分割:探索型段階型開発方式 →「開発を進めてみないと、うまくいくかどうかわからない」の が本質 →ユーザ・ベンダお互いのリスクヘッジのために徐々に開発を進 めていこうという発想 ガイドライン(AI編)より引用
  13. 13. 1 性能保証・検収・瑕疵担保 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 12 ② 開発プロセス及び契約の分割:探索型段階型開発方式 ガイドライン(AI編)より一部変更のうえ引用 アセスメント PoC 開発 追加学習 目的 一定量のデータを用いて 学習済みモデルの生成可 能性を検証する 学習用データセットを用 いてユーザが希望する精 度の学習済みモデルが生 成できるかどうかを検証 する 学習済みモデルを生成す る ベンダが納品した学習済 みモデルについて、追加 の学習用データセットを 使って学習をする 成果物 レポート等 レポート等 学習済みモデル等 再利用モデル等 契約 秘密保持契約書等 導入検証契約書等 ソフトウェア開発契約書 例:保守契約、学習支援 契約または別途新たなソ フトウェア開発契約など
  14. 14. 1 性能保証・検収・瑕疵担保 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 13 ③ 契約内容の工夫 通常のシステム開発 AI開発 契約の法的性質 工程によって異なる(上流工程 は準委任型、下流に行くにした がって請負型) 全工程で準委任型が親和的 性能保証 請負型が適用される工程では 合意可能 なし(モデル開発契約7条)。 ただし、一定の既知データを用 いた場合の性能であれば保証可 能な場合もある。 検収 請負型が適用される工程では 合意した検収基準により 検収実施可能 なし(モデル開発契約11条)。 ただし、一定の既知データを用 いた検収であれば合意・実施で きる場合もある。 瑕疵担保責任 請負型が適用される工程におい てはベンダに瑕疵担保責任あり なし
  15. 15. 2 生成された学習用データセット、学習済みモデ ル、学習済みパラメータは誰がどのような権利を 持っているのか(権利・知財) 14
  16. 16. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 15 【よくある質問】 AIベンダとして、事業会社との共同プロジェクトを立ち上げる際 の、知財・法務に対する最初のニギリ方 (契約書への文言の入れ 方) が事業会社側、AIベンダ側とも曖昧なケースが多く、実際に売 り上げが発生した際にモメそうな不安があります。
  17. 17. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 16 (1) 通常のシステム開発とAI開発の違い ① 通常のシステム開発と異なり、複数の材料、中間成果物、成 果物が存在する ② 材料、中間成果物、成果物が高い価値を持ち、ユーザ・ベン ダ共に独占/再利用したいという需要が存在する
  18. 18. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 17 ① 通常のシステム開発と異なり、複数の材料、中間成果物、成 果物が存在する 【通常のシステム開発の場合】
  19. 19. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 18 ① 通常のシステム開発と異なり、複数の材料、中間成果物、成 果物が存在する 【AI開発の場合】
  20. 20. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 19 ② 材料、中間成果物、成果物が高い価値を持ち、ユーザ・ベン ダ共に独占/再利用したいという需要が存在する ▼ ユーザ 学習用データセット、学習済みモデルは自社のノウハウや機密 が詰まった生データを用いて生成されたものであり、開発に際して 委託料も支払っていることから、自社で独占したい。 ▼ ベンダ 生データを用いて学習用データセットを生成する過程、訓練過 程いずれにおいても自社の高度のノウハウ及び多大な労力を用いて いること、額主要データセットや学習済みモデルは再利用が可能で あることから、この開発案件以外にも横展開したい。 →この2つの相反する希望を調整する枠組が必要
  21. 21. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 20 (2) どうしたらよいのか ① 材料・中間成果物・成果物について、何が知的財産権の対象 となるのか・ならないのかを知っておく ② ①についてデフォルトルール(=法律上のルール)として誰 がどのような権利を持っているかを知っておく ③ 契約条項をどのようにして自社に有利にデザインするかを 知っておく(「権利帰属」にこだわらず「利用条件」で「実」をと る)
  22. 22. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 21 (2) どうしたらよいのか ① 材料・中間成果物・成果物について、何が知的財産権の対象 となるのか・ならないのかを知っておく ② ①についてデフォルトルール(=法律上のルール)として誰 がどのような権利を持っているかを知っておく ③ 契約条項をどのようにして自社に有利にデザインするかを 知っておく(「権利帰属」にこだわらず「利用条件」で「実」をと る)
  23. 23. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 22 ▼ 法律と契約の関係 1 法律に書いてあることでも、契約で法律とは別の約束をすれば原則とし て契約の方が優先する。 2 契約に定めていないことがある場合には、自動的に法律に従うことになる。
  24. 24. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 23 ▼ 法律と契約の関係 法律の規定 当事者間の契約なし 当事者間の契約あり あり 法律の規定(デフォル トルール)がそのまま 適用される 法律の規定が 当事者の契約どおり 修正される なし ルールなし (原始状態) 当事者の契約どおり となる
  25. 25. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 24 ▼ 法律と契約の関係~AI開発の場合~ 法律の規定 当事者間の契約なし 当事者間の契約あり 知的財産権の対象 となるもの =法律上の規定あり 知財法(特許法や著作 権法)の規定(デフォ ルトルール)がそのま ま適用され、権利者や 権利内容が確定する 法律の規定が 当事者の契約どおり 修正される 知的財産権の対象 ではないもの =法律上の規定なし ルールなし (原始状態) 当事者の契約どおり となる
  26. 26. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 25 ▼ 法律と契約の関係~AI開発の場合~ 法律の規定 当事者間の契約なし 当事者間の契約あり 知的財産権の対象 となるもの =法律上の規定あり 知財法(特許法や著作 権法)の規定(デフォ ルトルール)がそのま ま適用され、権利者や 権利内容が確定する 法律の規定が 当事者の契約どおり 修正される 知的財産権の対象 ではないもの =法律上の規定なし ルールなし (原始状態) 当事者の契約どおり となる ① 材料・中間成 果物・成果物につ いて、何が知的財 産権の対象となる のか・ならないの かを知っておく
  27. 27. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 26 ▼ 法律と契約の関係~AI開発の場合~ 法律の規定 当事者間の契約なし 当事者間の契約あり 知的財産権の対象 となるもの =法律上の規定あり 知財法(特許法や著作 権法)の規定(デフォ ルトルール)がそのま ま適用され、権利者や 権利内容が確定する 法律の規定が 当事者の契約どおり 修正される 知的財産権の対象 ではないもの =法律上の規定なし ルールなし (原始状態) 当事者の契約どおり となる ② 知財法の規定 (デフォルトルー ルとして誰がどの ような権利を持っ ているかを知って おく
  28. 28. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 27 ▼ 法律と契約の関係~AI開発の場合~ 法律の規定 当事者間の契約なし 当事者間の契約あり 知的財産権の対象 となるもの =法律上の規定あり 知財法(特許法や著作 権法)の規定(デフォ ルトルール)がそのま ま適用され、権利者や 権利内容が確定する 法律の規定が 当事者の契約どおり 修正される 知的財産権の対象 ではないもの =法律上の規定なし ルールなし (原始状態) 当事者の契約どおり となる ③ 契約条項をどのようにし て自社に有利にデザインする かを知っておく(「権利帰 属」にこだわらず「利用条 件」で「実」をとる)
  29. 29. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 28 ① 材料・中間成果物・成果物について、何が知的財産権の対象と なるのか・ならないのかを知っておく ② 知財法の規定(デフォルトルールとして誰がどのような権利を 持っているかを知っておく
  30. 30. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 29 1 生データ 2 学習用プログラム 3 学習用データセット 4 学習済みモデル 5 学習済みパラメータ 6 ノウハウ ① 材料・中間成果物・成果物について、何が知的財産権の対象と なるのか・ならないのかを知っておく ② 知財法の規定(デフォルトルールとして誰がどのような権利を 持っているかを知っておく
  31. 31. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 30 【全体像】 特許法 著作権法 不正競争防止法 生データ 学習用プログラム 学習用データセッ ト 学習済みモデル 学習済みパラメー タ ノウハウ
  32. 32. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 31 (1) 生データ ① 知的財産権の対象となるのか・ならないのか ▼ 生データの種類によるが、産業用AI生成に用いられるセ ンサデータについては知的財産権は発生しない ▼ 「営業秘密」(不競法2条6項) 「限定提供データ」 (改正不競法2条7項)に該当すれば保護される ② デフォルトルール(=法律上のルール)として誰がどのよう な権利を持っているか ▼ 知的財産権の対象ではないので誰も権利を持っていない。 ▼ 契約で誰がどの範囲まで使えるかを定める必要あり。
  33. 33. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 32 (2) 学習用プログラム ① 知的財産権の対象となるのか・ならないのか ▼ ソフトウェア発明の要件満たせば特許を受ける権利の対象 となる。 ▼ プログラムの著作物(著作権法10条1項⑨)として著作 権法の保護対象となる。 ▼ 「営業秘密」(不競法2条6項) に該当すれば不正競争 防止法で保護される。
  34. 34. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 33 (2) 学習用プログラム ② デフォルトルール(=法律上のルール)として誰がどのよう な権利を持っているか ▼ 当該プログラムを発明・創作した者が特許を受ける権利・著 作権を有する。 ▼ ベンダが一から開発したのであればベンダが特許を受ける権 利・著作権を保有。 ▼ OSSとして提供されているものを利用する場合にはライセン ス条件に注意する必要あり。
  35. 35. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 34 (3) 学習用データセット ① 知的財産権の対象となるのか・ならないのか ▼ 情報の単なる提示に過ぎないため、「発明」に該当せず特許 を受ける権利の対象とはならない。 ▼ 個々のデータに著作物性がない場合でも、深層学習のために データを収集/加工した学習用データセットが「データベースの著 作物」(著作権法12条の2)に該当すれば著作権発生。 ▼ 「営業秘密」(不競法2条6項) 「限定提供データ」(改 正不競法2条7項)に該当すれば保護される。
  36. 36. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 35 (3) 学習用データセット ② デフォルトルール(=法律上のルール)として誰がどのよう な権利を持っているか 「データベースの著作物」に該当する場合、創作的な「情報の選 択」又は「体系的な構成」を行った者が著作権者となる。 ▼ベンダのノウハウのみを利用して加工行為を行ったのであれば ベンダが著作権者。 ▼ユーザ・ベンダが共同して創作的な行為を行ったのであれば ユーザ・ベンダの共有著作物ということもあり得る。
  37. 37. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 36 (4) 学習済みモデル ① 知的財産権の対象となるのか・ならないのか ▼ 学習用データセット同様、再利用可能であり、契約当事者の 関心が非常に高い成果物。 ▼ 契約上「学習済みモデル」という言葉が何を意味しているの か慎重にすりあわせする必要がある。 →「関数」「数理モデル」「アルゴリズム」「ネットワーク構 造」「プログラム」「パラメータ」「それら各概念の組み合わせ」 等多義的な意味を持っており、当事者が異なる意味で使うと大きな トラブルの原因となる。
  38. 38. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 37 (4) 学習済みモデル ① 知的財産権の対象となるのか・ならないのか A 関数としての学習済みモデル 例:開発課題との関係で非常に高い精度の出力が可能な独自の ネットワーク構造+学習済みパラメータで構成される関数 ▼ 「関数自体」「行列自体」には発明該当性は認められず特許 を受ける権利の対象にはならない。 ▼ 関数自体は著作物ではないので著作権によって保護されない。 ▼ 「営業秘密」(不競法2条6項)に該当すれば保護される
  39. 39. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 38 (4) 学習済みモデル ① 知的財産権の対象となるのか・ならないのか B プログラムとしての学習済みモデル 関数としての学習済みモデルを、推論フェーズで利用可能なプロ グラムとして記述したもの ▼ ソフトウェア発明として特許を受ける権利の対象となる可 能性あり ▼ 「プログラムの著作物」として著作権の対象となる ▼ 「営業秘密」(不競法2条6項)に該当すれば保護される
  40. 40. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 39 (5) 学習済みパラメータ ① 知的財産権の対象となるのか・ならないのか ▼ 「自動的に生成された」「大量の数値」なので、著作物には 該当せず、著作権の対象にはならない。 ▼ また,同様の理由で「発明」にも該当しない。 ▼ 「営業秘密」(不競法2条6項) 「限定提供データ」(改 正不競法2条7項)に該当すれば保護される。 ② デフォルトルール(=法律上のルール)として誰がどのよう な権利を持っているか ▼ 知的財産権の対象ではないので誰も権利を持っていない。 ▼ 契約で誰がどの範囲まで使えるかを定める必要あり。
  41. 41. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 40 (6) ノウハウ ① 知的財産権の対象となるのか・ならないのか ▼ 無形の情報なので、著作権の対象にはならない。 ▼ 「発明」の要件を満たすノウハウであれば特許を受ける権利 の対象となる可能性あり。 ▼ 「営業秘密」(不競法2条6項)に該当すれば保護される ② デフォルトルール(=法律上のルール)として誰がどのような 権利を持っているか ▼ 「発明」の要件を満たさない場合、知的財産権の対象ではな いので誰も権利を持っていない。 ▼ 契約で誰がどの範囲まで使えるかを定める必要あり。
  42. 42. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 41 【まとめ】 特許法 著作権法 不正競争防止法 生データ × × ○ (要件を満たす場合) 学習用プログラム ○ ○ ○ 学習用データセッ ト × △ データベースの著作物 に該当する場合 ○ 学習済みモデル × ただしプログラム としての学習済みモデ ルは○ × ただしプログラム としての学習済みモデ ルは○ ○ 学習済みパラメー タ × × ○ ノウハウ △ × ○
  43. 43. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 42 (2) どうしたらよいのか ① 材料・中間成果物・成果物について、何が知的財産権の対象 となるのか・ならないのかを知っておく ② ①についてデフォルトルール(=法律上のルール)として誰 がどのような権利を持っているかを知っておく ③ 契約条項をどのようにして自社に有利にデザインするかを 知っておく(「権利帰属」にこだわらず「利用条件」で「実」をと る)
  44. 44. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 43 ▼ 契約条項をどのようにして自社に有利にデザインするかを 知っておく(「権利帰属」にこだわらず「利用条件」で「実」をと る) 【典型的な暗礁乗り上げパターン】 ■ ユーザ 学習用データセットや学習済みモデルは、うちのノウハウや機密 が詰まった生データを用いて生成されたものですし、開発に際して 委託料も支払っています。うちに権利がありますよね? ■ ベンダ 生データだけでは学習済みモデルは生成できません。高性能なモ デルができるのは、データの前処理やモデルの訓練過程いずれにお いてもうちの高度のノウハウと多大な労力あってこそです。うちに 権利がありますよね?
  45. 45. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 44 ▼ 契約条項をどのようにして自社に有利にデザインするかを 知っておく(「権利帰属」にこだわらず「利用条件」で「実」をと る) ■ 「どちらが権利を持っているか」(権利の帰属)に双方がこ だわっている限り永久に溝は埋まらない。 ■ 交渉に多大な労力と時間がかかり結局競争力を失う。 →「権利の帰属」とは別の視点が必要 →本来、データ提供者(ユーザ)とモデル生成者(ベンダ)のビ ジネス構造は異なるのであって、双方のニーズを同時に満たしうる 契約条件は当事者双方が思うよりももっと多いはず。 →対象物の「権利帰属」ではなく「利用条件」で「実」をとる
  46. 46. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 45 ▼ 契約条項をどのようにして自社に有利にデザインするかを 知っておく(「権利帰属」にこだわらず「利用条件」で「実」をと る) 対象物の「権利帰属」ではなく 「利用条件」で「実」をとる →極端な話、自社が学習済みモデルに関する権利を保有していな くても、「モデルの第三者提供を含め、何の制限もなくモデルを自 由に利用できる」という利用条件を設定できれば、実質的にはモデ ルの権利を保有していることとほとんど同じ。
  47. 47. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 46 ▼ 契約条項をどのようにして自社に有利にデザインするかを 知っておく(「権利帰属」にこだわらず「利用条件」で「実」をと る) ■ 原則 全ての材料、中間成果物、成果物について「権利帰属」と「利 用条件」を契約で定める。 【対象】 生データ 【権利帰属】 【利用条件】 ユーザ帰属 利用条件1 ベンダ帰属 共有 利用条件10学習済みモデル ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 注:知財権の対象とならないものについては「権利帰属」は問題とならないが、理解の便宜のため上記のような整理をしている。
  48. 48. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 47 ▼ 契約条項をどのようにして自社に有利にデザインするかを 知っておく(「権利帰属」にこだわらず「利用条件」で「実」をと る) 【対象】 生データ 【権利帰属】 【利用条件】 ユーザ帰属 利用条件1 ベンダ帰属 共有 利用条件10学習済みモデル ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ モデル開発契約 16条、17条 モデル開発契約 13条、18条
  49. 49. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 48 ■ 権利帰属の考え方 ① ベンダ全部帰属 ② ユーザ全部帰属 ③ 共有 →モデル契約では「著作権の対象となるもの」と「著作権の対象 とならないもの」に分けて規定している。 「著作権の対象となるもの」:16条 「著作権の対象とならないもの」:17条
  50. 50. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 49 ■ 利用条件の考え方 ユーザ、ベンダそれぞれが、材料・中間成果物・成果物を、自社 のビジネスにおいてどのように利用したいかをよく検討しなければ ならない。 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 【主体】 ユーザ 【対象】 【利用条件】 生データ 利用条件1 学習用データセット ノウハウ 利用条件10ベンダ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 学習前モデル 学習済みパラメータ 学習済みモデル 利用条件2
  51. 51. 2 権利と知財 50 ■ 利用条件の考え方 ユーザ、ベンダそれぞれが、材料・中間成果物・成果物を、自社 のビジネスにおいてどのように利用したいかをよく検討しなければ ならない。 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 【主体】 ユーザ 【対象】 【利用条件】 生データ 利用条件1 学習用データセット ノウハウ 利用条件10ベンダ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 学習前モデル 学習済みパラメータ 学習済みモデル 利用条件2
  52. 52. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 51 ■ 権利帰属+利用条件の具体例 ▼ 対象 学習済みモデル ▼ 権利帰属 全部ユーザ ▼ 利用条件 ユーザ:当然何の制限もなく利用可能。 ベンダ:原則として制限なく利用可能。ただし平成●年●月● 日から●ヶ月間は、●●業の分野を事業領域とする事業者には提供 しない。 ▼ 条項例 モデル開発契約16条B案+18条A案【別紙】利用条件一覧 表(ケース3) 🄫Storialaw.jp All rights reserved.
  53. 53. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 52 【質問】 ユーザが提供した生データを用いて生成された学習済みモデル (プログラム)はユーザが独占的に利用できるのか、それともベン ダが横展開できるのか。学習済みモデル内の学習済みパラメータに ついてはどうか。 🄫Storialaw.jp All rights reserved.
  54. 54. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 53 【回答】 (1) 契約条項に学習済みモデルの権利帰属・利用条件に関する 記載がない場合 ①学習済みモデル(プログラム)は知的財産権(著作権)の対 象であり、同モデルを創作したのはベンダであるため、ベンダが著 作権者として権利保有。 ②パラメーターは知的財産権の対象ではないため、契約条項が なければ「保持している者が自由に利用できる」ことになる。した がって、ユーザに可読性がある形で納品していれば、ベンダ・ユー ザ双方自由利用可能。納品していなければベンダが独占して利用可 能。 🄫Storialaw.jp All rights reserved.
  55. 55. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 54 【回答】 (2)契約条項に学習済みモデルの権利帰属・利用条件に関する記 載がある場合 →契約条項に従う 例 ①学習済みモデルに関する知的財産権はユーザ帰属。 ②ユーザは学習済みモデルを特段の利用条件なく利用可能。 ③ベンダは学習済みモデルを再利用モデル生成目的のために 利用できるが、一定期間はユーザの競合事業者に対して、当該再利 用モデルを提供できない。また、ベンダは学習済みモデルをそのま まの形で第三者提供や譲渡ができない。 🄫Storialaw.jp All rights reserved.
  56. 56. 2 権利と知財 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 55 【まとめ】 ① 材料・中間成果物・成果物について、何が知的財産権の対象 となるのか・ならないのかを知っておく ② ①についてデフォルトルール(=法律上のルール)として誰 がどのような権利を持っているかを知っておく →「生データ」「学習用プログラム」「学習用データセット」 「学習済みモデル」「学習済みパラメータ」「ノウハウ」それぞれ について知っておく ③ 契約条項をどのようにして自社に有利にデザインするかを 知っておく → 「権利帰属」にこだわらず「利用条件」で「実」をとる
  57. 57. 3 AI開発・利用に際して生じる可能性のある損 害について契約ではどのように定めたら良いか 56
  58. 58. 3 責任 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 57 【よくある質問】 (1) ユーザの提供データを用いてベンダが開発したAIを組み込 んだシステムが誤作動をしてユーザや第三者に損害を与えた場合、 誰が責任を負うのか。 (2) AIの誤作動に備えて、AI開発契約においてはどのような 定めをすべきか。
  59. 59. 3 責任 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 58 (1) 通常のシステム開発とAI開発の違い 通常のシステム開発 AI開発 性能保証 可能 訓練データに統計的バイアスが 含まれることが避けられないた め、未知のデータに対する性能 保証は困難 性能不足の場合の事後検証 可能 原因の切り分け(データの品質、 ハイパーパラメータ設定、ソー スコードのバグ等)が困難 学習に用いたデータの学習済み モデルへの影響 なし あり 利用段階における出力データが 入力データの品質に依存するか しない する
  60. 60. 3 責任 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 59 (2) 3種類の責任 ① AI開発遂行に際して生じた損害についての責任 ②成果物であるAIの利用により生じた損害についての責任 ③AIの利用により第三者の知的財産権を侵害した場合の責任
  61. 61. 3 責任 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 60 (2) 3種類の責任 (ア) AI開発遂行に際して生じた損害についての責任 例:通常のAIベンダであればやらないレベルのミスにより納 期が遅延した ① 当然のことであるが「準委任契約=一切責任を負わない」 ということではない →ベンダは「善管注意義務」(民法644条。委任の本旨に 従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務) を負う。 ② 「開発遂行に際して生じた責任」についてはAI開発と通 常のシステム開発を区別する合理性がない。 →モデル開発契約22条では、モデル契約2007と同様の規定 を設けている。
  62. 62. 3 責任 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 61 (2) 3種類の責任 (イ)成果物であるAIの利用により生じた損害についての責任 例:ベンダがユーザに提供したAIを利用した生体認証システ ムが誤判定をした。 ① 誤判定の原因が不明(ユーザの提供したデータが原因、ア ルゴリズムが原因、想定外の入力デーが原因など様々な原因が考 えられる) ② システムに組み込まれている場合因果関係が否定される (フェールセーフ機能を設定すべき等) ③ ベンダにも結果が予見できないのでベンダに故意過失なし →ベンダが責任を負うケースは少ないのではないかと思われる。 →モデル開発契約20条では原則としてベンダの責任を否定す る条項にしている。
  63. 63. 3 責任 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 62 (2) 3種類の責任 (ウ) AIの利用により第三者の知的財産権を侵害した場合 例:ベンダがユーザに提供した学習済みモデルが第三者の特許 を侵害していたためユーザが特許権者から損害賠償請求を受けた →「AIの利用により生じた損害」の一種であるが、知的財産 権侵害についてはユーザの関心が非常に高く、ベンダが知財保証 (第三者の知的財産権を侵害しないことの保証)するように求め られるケースも多い 【考えられる契約条項のパターン】 ① 一切保証しないパターン ② 著作権非侵害のみ保証するパターン ③ すべての知的財産権の非侵害を保証するパターン →モデル開発契約においては②(21条B案)と③(21条A案) を提示
  64. 64. 【まとめ】ユーザとベンダ双方にとって幸せなAI開発のための3つのポイント 🄫Storialaw.jp All rights reserved. 63 1 性能保証、検収、瑕疵担保 (1)AIの特性と限界の相互理解:ガイドラインの活用 (2)プロセス・契約を分割する (3)開発契約の内容を工夫する 2 権利・知財 (1)材料・中間成果物・成果物について、何が知的財産権の対象となる のか・ならないのかを知っておく (2)(1)についてデフォルトルール(=法律上のルール)として誰が どのような権利を持っているかを知っておく (3)契約条項をどのようにして自社に有利にデザインするかを知ってお く(「権利帰属」にこだわらず「利用条件」で「実」をとる) 3 責任 AI開発における「責任」の種類を知り、契約でコントロールする
  65. 65. 64
  66. 66. STORIA法律事務所について STORIA法律事務所 〒650−0031 神戸市中央区東町123−1 貿易ビル8階 078−391−0232 http://storialaw.jp kakinuma@storialaw.jp 事務所名 所 在 地 T E L U R L メ ー ル AI、IoT、ビッグデータの法務面に関するご相談はお気軽に上記 メール宛にどうぞ。 65

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