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「ルールメイキング」の定義と重要性、細胞農業におけるルールメイキングの国内外の最新状況

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  1. 1. 細胞農業のルールメイキング
 2020.09版 一般公開用
  2. 2. 細胞農業のとりうる将来像の幅 家畜と農村風景はどうなる? 独占大企業と大規模培養工場? 培養肉を誰がどうやって売る? そこに至るまでに何が起こる?
  3. 3. 技術的でない理由での失敗事例 ・社会による理解が不足し、消費者が偽物に騙されたり、無用な不安を煽られたりする。 ・情報不十分のまま「とりあえず禁止」で停滞、技術的に遅れて国際競争に敗れる。 ・対立を招き、安全性や産業振興とは別次元での感情問題になる。 ・健康被害の末に、場当たり的な法制度ができ、技術発展の道が閉ざされる。
  4. 4. 「ルールメイキング」 ある新規技術が社会で広く有効活用されるように、法律、ガイドラ イン、事業モデル、技術標準などの在り方を議論し、「社会全体と しての最適解(ルール)を探る活動」 ・一般消費者、企業、学術、政府機関など、参加者の幅の広さが 「最適解」の説得力にもなる。 ・ある技術規格や事業形態が社会全体の利益になるという「大義」 を作る側面もある。 検討会の 立ち上げ 様々な属性 の参加者 総意として の合意形成 政治サイドも 参加 政策提言や 意見書など 関連省庁・ 具体的基準 要点1: 多様な属性の参加者 要点2: 政治家の参加 要点3: 海外からどう見えるかの視点 国際標準化 など
  5. 5. 細胞農業のルールメイキングの現場 (特に米国) 構想A 構想B 構想C … 技術規格、事業モデル、ゴール設定からマーケティング経路まで、「フル構想」を立 てた上での、社会構想vs.社会構想、大義vs.大義のロビー活動 ・X社Y社連合が中心 ・会社規模によらず平等なオープンソー ス開発者コミュニティーを提唱 ・「安全安心な社会」を大義とする ・技術規格Aを提唱する。 ・規格Aは非常に高い安全性を誇る ・構想Aは中小企業も支持しており、業 界標準化の動き。 ・NPO法人Wが中心 ・社会的弱者にもサービスが届く事業モ デルを提唱する。 ・「フェアな社会の構築」を目指す ・技術規格Bを提唱する。 ・規格Bはフェアネスを大義とする ・構想Bはある著名人が支持を表明して おり、SNSで拡散している。 ・Z社が中心 ・事業モデル ・ゴール設定 ・技術規格 ・価値観の軸 ・広報の方法 ・お墨付き ・ほか色々 政府 機関 著名 な人 認証 団体 … ←構想の主導者が、各々にア プローチ(ロビー活動)する。
  6. 6. ルールメイキングを巡る対立構図(米国) USCAなどの畜産団体: 植物や培養の肉(meat)を ”meat”と呼ぶことに、消費者を 欺くとして規制を提言 ミズーリ州が呼応して 州法を制定、ほか25 州が追従(2019末) https://www.foodnavigator-usa.com/Article/2019/1 0/29/The-Real-MEAT-Act-2019-Plant-based-bran ds-should-use-term-imitation-meat 細胞農業企業は 業界団体”AMPS Innovation”を設立 してロビー活動 https://ampsinnovation.org/ 動物愛護団体の影響 規制当局1:米国農務省 規制当局2:米国食品医薬品局 GFIの「対立を煽る」 活動に対して温度差 植物肉と培養肉の推進 のためにロビー活動 植物肉会社とこ の州法に対して 違憲訴訟 従来肉の優位性と区別を示す 食品表示を巡ってロビー活動 安全性の立証に向け、情報提供や データ開示を交えたロビー活動 など
  7. 7. 米国での対立の背景 ルールメイキングでの疎外や排除で「アンチ」が発生、政治対立へ 推進団体が設立趣意文で、既存 事業者を「時代遅れ」と呼ぶ 畜産業の崩壊を「ディスラプション」文脈で 話題化するメディアの論調 戦闘的な動物愛護運動やビーガン運動の影響?
  8. 8. 遺伝子組み換え食品(GMO)での事例 特定大企業の秘密主義(知財保護)の傍らで、社会コミュニケー ション無き事業化が行われ、「アンチ」を生んだ。 ⇒科学的には安全であっても、不信感 により安心が醸成されず、政治問題化。 「細胞農業の社会受 容:GMOからの教訓」 詳細論文レビュー https://www.slideshare.net/2co/gmo-191585387
  9. 9. https://doi.org/10.1016/j.a ppet.2019.104408 参考文献:Jacy Reese論文(2019) 「細胞培養肉: GMOへの受 容と抵抗からの教訓」 消費者意識、反テクノロジー運動、事 業者の行動の3つの観点から、GMOと 細胞農業を比較した。
  10. 10. 細胞農業の一般普及に必要なもの 低価格で利用可能な培養装置 培養液原料のコ モディティー化 オープンな培養レ シピ共有手段 安価? DIY? 誰でも使える? 一般にも利用可能な 細胞保存庫と取引所 培養肉の「海賊版」を防ぐ仕組み
  11. 11. ルールメイキングでの落とし穴 細胞の登録認証 個人農家も金銭的に 利用可能? 食品衛生管理のルール 個人経営レストランや地元 中小企業も遵守可能? これらのルールにより、誰かを事実上排除していないか? 原料と培養設備 個人経営レストランや地元 中小企業も調達可能?
  12. 12. 各国での法規制の整備状況 2019/03にUSDAとFDAの共同管轄が決 定、具体的な法制度を策定中。米国の動向 は影響力が大きく、各国当局が注目。製品 開発はベンチャーが圧倒的に先行。 2018/01施行の(EU)2015/2283にて、細胞農業製品を新開 発食品として規定、欧州委員会からEFSAの認証手順を制定 した。細胞農業について、環境保護やSDG’sを論点とした官 や政の動きが先行している。 https://eur-lex.europa.eu/legal-content/en/TXT/?uri=CELEX%3A32015R2283 食料自給率(現10%)の改善を狙うFoodInnovateプログラム の下でフードテック産業の振興政策を開始(2018)、A*Starで の産学連携コンソーシアム発足などの動き https://www.straitstimes.com/singapore/health/new-government-strategy-will-drive-food-innovation https://www.foodnavigator-asia.com/Article/2020/01/22/Next-gen-products-Safety-first-as-Singapore-delves-into-regulatory- framework-for-cell-based-meat 食肉 USDA/FDA[1] 管轄合意(2019/03) 魚介類 FDA [1]USDA=米国農務省、FDA=米国食 料医薬品局、食肉と鶏肉とナマズは例 外的にUSDAが管轄する。 細胞抽出 細胞培養 肉の回収 最終製品 個体確保 USDA USDA FDA ・培養肉の製造設備の認可について、FDAは上市前相談を通じて案件毎で判断する体 制。具体的な数値基準よりも製造プロセス管理体制の完成度で判断するも、残留成長 因子の濃度については、具体的な数値基準を策定する動きがある。 ・培養肉の製造設備に関するFDAのガイドラインと根拠文書 https://www.fda.gov/food/food-ingredients-packaging/foods-made-cultured-animal-cells https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfcfr/CFRSearch.cfm?CFRPart=117
  13. 13. 細胞農業の社会受容へ 向け、誰も取り残さない 包摂的な方針で進む 農家による細胞ラ イセンス業? 食品大企業と細胞 農業ベンチャーの 連携? 製品開発方針への 消費者意見の反映 方法? など... 食品会社 農林水産事業者 細胞農業企業 学術関係者 政策関係者 一般市民 ほか細胞農業に 関連しうる団体 海外状況を踏まえての国内の動向 フードテック研究会 2020.04~ 培養肉の部会 を引き継ぎ? 細胞農業研究会 2019.07~ ・投資環境なども含めた産業振興策の検討 ・多様な業界業種から 300人以上が参加 ・中間まとめ:https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/kihyo01/200731.html ほか様々な 官民協議会
  14. 14. まとめ ・新技術の社会実装の形は、ルールメイキングの結果に依存し、最悪の 場合は「失敗」もありえる。 ・近年のルールメイキングは、社会モデルvs.社会モデル、大義vs.大義 となる傾向が強い。 ・細胞農業のルールメイキングでは、遺伝子組み換え食品の先例や、 米国での政治問題化が目立っている。 ・細胞農業の一般普及には、培養肉の消費者受容ではなく、その技術 が作る世界の景色について、広く社会的な合意が必要になる ・以上の先例を受け、国内では包摂的な方針でのルールメイキングが 進められている。
  15. 15. 細胞農業のルールメイキングへの参加について 直接参加者を募集しています 日本細胞農業協会 https://www.cellagri.org/ https://twitter.com/cellagri_jp 個人として活動したい場合 (法人格なし) 正式な活動をしたい場合 (法人格あり) Shojinmeat Project https://shojinmeat.com https://twitter.com/shojinmeat_jp とりあえず参加したい場合 海外NPO への参加 細胞農業研究会 フードテック 官民協議会など

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「ルールメイキング」の定義と重要性、細胞農業におけるルールメイキングの国内外の最新状況

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  1. 1. 細胞農業のルールメイキング
 2020.09版 一般公開用
  2. 2. 細胞農業のとりうる将来像の幅 家畜と農村風景はどうなる? 独占大企業と大規模培養工場? 培養肉を誰がどうやって売る? そこに至るまでに何が起こる?
  3. 3. 技術的でない理由での失敗事例 ・社会による理解が不足し、消費者が偽物に騙されたり、無用な不安を煽られたりする。 ・情報不十分のまま「とりあえず禁止」で停滞、技術的に遅れて国際競争に敗れる。 ・対立を招き、安全性や産業振興とは別次元での感情問題になる。 ・健康被害の末に、場当たり的な法制度ができ、技術発展の道が閉ざされる。
  4. 4. 「ルールメイキング」 ある新規技術が社会で広く有効活用されるように、法律、ガイドラ イン、事業モデル、技術標準などの在り方を議論し、「社会全体と しての最適解(ルール)を探る活動」 ・一般消費者、企業、学術、政府機関など、参加者の幅の広さが 「最適解」の説得力にもなる。 ・ある技術規格や事業形態が社会全体の利益になるという「大義」 を作る側面もある。 検討会の 立ち上げ 様々な属性 の参加者 総意として の合意形成 政治サイドも 参加 政策提言や 意見書など 関連省庁・ 具体的基準 要点1: 多様な属性の参加者 要点2: 政治家の参加 要点3: 海外からどう見えるかの視点 国際標準化 など
  5. 5. 細胞農業のルールメイキングの現場 (特に米国) 構想A 構想B 構想C … 技術規格、事業モデル、ゴール設定からマーケティング経路まで、「フル構想」を立 てた上での、社会構想vs.社会構想、大義vs.大義のロビー活動 ・X社Y社連合が中心 ・会社規模によらず平等なオープンソー ス開発者コミュニティーを提唱 ・「安全安心な社会」を大義とする ・技術規格Aを提唱する。 ・規格Aは非常に高い安全性を誇る ・構想Aは中小企業も支持しており、業 界標準化の動き。 ・NPO法人Wが中心 ・社会的弱者にもサービスが届く事業モ デルを提唱する。 ・「フェアな社会の構築」を目指す ・技術規格Bを提唱する。 ・規格Bはフェアネスを大義とする ・構想Bはある著名人が支持を表明して おり、SNSで拡散している。 ・Z社が中心 ・事業モデル ・ゴール設定 ・技術規格 ・価値観の軸 ・広報の方法 ・お墨付き ・ほか色々 政府 機関 著名 な人 認証 団体 … ←構想の主導者が、各々にア プローチ(ロビー活動)する。
  6. 6. ルールメイキングを巡る対立構図(米国) USCAなどの畜産団体: 植物や培養の肉(meat)を ”meat”と呼ぶことに、消費者を 欺くとして規制を提言 ミズーリ州が呼応して 州法を制定、ほか25 州が追従(2019末) https://www.foodnavigator-usa.com/Article/2019/1 0/29/The-Real-MEAT-Act-2019-Plant-based-bran ds-should-use-term-imitation-meat 細胞農業企業は 業界団体”AMPS Innovation”を設立 してロビー活動 https://ampsinnovation.org/ 動物愛護団体の影響 規制当局1:米国農務省 規制当局2:米国食品医薬品局 GFIの「対立を煽る」 活動に対して温度差 植物肉と培養肉の推進 のためにロビー活動 植物肉会社とこ の州法に対して 違憲訴訟 従来肉の優位性と区別を示す 食品表示を巡ってロビー活動 安全性の立証に向け、情報提供や データ開示を交えたロビー活動 など
  7. 7. 米国での対立の背景 ルールメイキングでの疎外や排除で「アンチ」が発生、政治対立へ 推進団体が設立趣意文で、既存 事業者を「時代遅れ」と呼ぶ 畜産業の崩壊を「ディスラプション」文脈で 話題化するメディアの論調 戦闘的な動物愛護運動やビーガン運動の影響?
  8. 8. 遺伝子組み換え食品(GMO)での事例 特定大企業の秘密主義(知財保護)の傍らで、社会コミュニケー ション無き事業化が行われ、「アンチ」を生んだ。 ⇒科学的には安全であっても、不信感 により安心が醸成されず、政治問題化。 「細胞農業の社会受 容:GMOからの教訓」 詳細論文レビュー https://www.slideshare.net/2co/gmo-191585387
  9. 9. https://doi.org/10.1016/j.a ppet.2019.104408 参考文献:Jacy Reese論文(2019) 「細胞培養肉: GMOへの受 容と抵抗からの教訓」 消費者意識、反テクノロジー運動、事 業者の行動の3つの観点から、GMOと 細胞農業を比較した。
  10. 10. 細胞農業の一般普及に必要なもの 低価格で利用可能な培養装置 培養液原料のコ モディティー化 オープンな培養レ シピ共有手段 安価? DIY? 誰でも使える? 一般にも利用可能な 細胞保存庫と取引所 培養肉の「海賊版」を防ぐ仕組み
  11. 11. ルールメイキングでの落とし穴 細胞の登録認証 個人農家も金銭的に 利用可能? 食品衛生管理のルール 個人経営レストランや地元 中小企業も遵守可能? これらのルールにより、誰かを事実上排除していないか? 原料と培養設備 個人経営レストランや地元 中小企業も調達可能?
  12. 12. 各国での法規制の整備状況 2019/03にUSDAとFDAの共同管轄が決 定、具体的な法制度を策定中。米国の動向 は影響力が大きく、各国当局が注目。製品 開発はベンチャーが圧倒的に先行。 2018/01施行の(EU)2015/2283にて、細胞農業製品を新開 発食品として規定、欧州委員会からEFSAの認証手順を制定 した。細胞農業について、環境保護やSDG’sを論点とした官 や政の動きが先行している。 https://eur-lex.europa.eu/legal-content/en/TXT/?uri=CELEX%3A32015R2283 食料自給率(現10%)の改善を狙うFoodInnovateプログラム の下でフードテック産業の振興政策を開始(2018)、A*Starで の産学連携コンソーシアム発足などの動き https://www.straitstimes.com/singapore/health/new-government-strategy-will-drive-food-innovation https://www.foodnavigator-asia.com/Article/2020/01/22/Next-gen-products-Safety-first-as-Singapore-delves-into-regulatory- framework-for-cell-based-meat 食肉 USDA/FDA[1] 管轄合意(2019/03) 魚介類 FDA [1]USDA=米国農務省、FDA=米国食 料医薬品局、食肉と鶏肉とナマズは例 外的にUSDAが管轄する。 細胞抽出 細胞培養 肉の回収 最終製品 個体確保 USDA USDA FDA ・培養肉の製造設備の認可について、FDAは上市前相談を通じて案件毎で判断する体 制。具体的な数値基準よりも製造プロセス管理体制の完成度で判断するも、残留成長 因子の濃度については、具体的な数値基準を策定する動きがある。 ・培養肉の製造設備に関するFDAのガイドラインと根拠文書 https://www.fda.gov/food/food-ingredients-packaging/foods-made-cultured-animal-cells https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfcfr/CFRSearch.cfm?CFRPart=117
  13. 13. 細胞農業の社会受容へ 向け、誰も取り残さない 包摂的な方針で進む 農家による細胞ラ イセンス業? 食品大企業と細胞 農業ベンチャーの 連携? 製品開発方針への 消費者意見の反映 方法? など... 食品会社 農林水産事業者 細胞農業企業 学術関係者 政策関係者 一般市民 ほか細胞農業に 関連しうる団体 海外状況を踏まえての国内の動向 フードテック研究会 2020.04~ 培養肉の部会 を引き継ぎ? 細胞農業研究会 2019.07~ ・投資環境なども含めた産業振興策の検討 ・多様な業界業種から 300人以上が参加 ・中間まとめ:https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/kihyo01/200731.html ほか様々な 官民協議会
  14. 14. まとめ ・新技術の社会実装の形は、ルールメイキングの結果に依存し、最悪の 場合は「失敗」もありえる。 ・近年のルールメイキングは、社会モデルvs.社会モデル、大義vs.大義 となる傾向が強い。 ・細胞農業のルールメイキングでは、遺伝子組み換え食品の先例や、 米国での政治問題化が目立っている。 ・細胞農業の一般普及には、培養肉の消費者受容ではなく、その技術 が作る世界の景色について、広く社会的な合意が必要になる ・以上の先例を受け、国内では包摂的な方針でのルールメイキングが 進められている。
  15. 15. 細胞農業のルールメイキングへの参加について 直接参加者を募集しています 日本細胞農業協会 https://www.cellagri.org/ https://twitter.com/cellagri_jp 個人として活動したい場合 (法人格なし) 正式な活動をしたい場合 (法人格あり) Shojinmeat Project https://shojinmeat.com https://twitter.com/shojinmeat_jp とりあえず参加したい場合 海外NPO への参加 細胞農業研究会 フードテック 官民協議会など

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