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気道熱傷の評価(PLBA分類) 
1.鼻腔・咽頭の評価(P; Pharynx) 
・次のうち一つ以上あてはまれば,“Ps”と記載する. 
❑ 咽頭の高度な腫脹 
❑ 口腔内の大量分泌物 
・次のような所見は,”Pm”と記載する. 
❑ 鼻毛の焼失のみ 
2.喉頭の評価(L; Larynx) 
・次のうち一つ以上あてはまれば,”Ls”と記載する. 
❑ 喉頭蓋や披裂部が腫脹し,声門上にまで及ぶ 
❑ 声門が腫脹し,十分に開かない 
・ 次のような所見は,”Lm”と記載する. 
❑ スス付着のみ 
❑ 軽度の浮腫や発赤 
3.気管・気管支の評価(B; Bronchus) 
・次のうち一つ以上あてはまれば,”Bs”と記載する. 
❑ 浮腫,びらん,潰瘍,蒼白化,壊死などにより毛細血管が透見できない 
❑ 大量の気道分泌 
❑ 大量のスス 
・次のような所見は,”Bm”と記載する. 
❑ 少量スス付着のみ 
❑ 毛細血管が透見できる程度の軽度な充血や浮腫 
4.肺胞損傷の評価(A; Alveolar) 
・次のうち一つ以上あてはまれば,”A+”と記載する. 
❑ 泡沫状痰 
❑ 肺酸素化障害(PaO2/FiO2<300) 
❑ X線またはCTで肺水腫の所見が認められる 
※ 所見がない場合は”P-”,”L-”,”B-”,”A-”と記載する.観察できず,評価不能の場合 
は”P?”,”L?”,”B?”,”A?”と記載する.空白は認めない. 
※ 記載例:PmLsBmA+,PmLmB?A-など

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