ネットワークの中立性

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ISPの集い@奄美大島(2014/4/18)で使用する資料です。

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ネットワークの中立性

  1. 1. ネットワークの中立性 九州大学 実積寿也 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 1
  2. 2. 「ネットワーク中立性」問題とは? • ”Net neutrality (also network neutrality or Internet neutrality) is the principle that Internet service providers and governments should treat all data on the Internet equally, not discriminating or charging differentially by user, content, site, platform, application, type of attached equipment, and modes of communication.” (Wikipedia) • 最初に言い出したのは、コロンビア大学ロースクールのTim Wu教授 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 2
  3. 3. 以前は、End-To-End Principle(あるいはEnd-To-End Arguments)と呼ばれていたもの Lawrence Lessig Director of the Edmond J. Safra Center for Ethics at Harvard University Professor of Law at Harvard Law School. Jerome H. Saltzer MIT David P. Reed MIT David D. Clark MIT 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 3
  4. 4. 近年の議論の背景1:メディアのリッチ化 出典:Noam (2008, p.28) © 2008 COMMUNICATIONS & STRATEGIES, originally published in C&S special issue (Nov. 2008), reprinted with permission. 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 4
  5. 5. 近年の議論の背景2:トラフィック爆発 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 90,000 2012 2013 2014 2015 2016 2017 Fixed Internet Managed IP Mobile data PB per month 出典:Cisco Visual Networking Index: Forecast and Methodology, 2012–2017 よ り作成第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 5 5年間で2.6倍 (年+21%) 5年間で2.4倍 (年+20%) 5年間で12.6 倍 (年+66%)
  6. 6. 近年の議論の背景3:固定ネット契約者数の伸びは低 い 0 5 10 15 20 25 30 35 40 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012* 2013* PER100INHABITANTS Global ICT developments, 2001-2013 Individuals using the Internet Active mobile-broadband subscriptions Fixed (wired)-broadband subscriptions 出典:ITU Statistics (http://www.itu.int/ict/statistics)より作成第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 6 年+14% 年+39% 年+26%
  7. 7. 日本のケース 1% 10% 100% 1000% 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 国内ISPのバックボーン容量の拡大率 トラフィック量の増加率 出典:情報通信データブック2012(情報通信総合研究所編 2011)および総務省報道 発表(http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban04_02000042.html)より作成 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 7
  8. 8. 問題の兆候 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 0 5 10 15 表示速度と 実効速度の 比率(%) 平均実効速度(MBPS) Actual QoS 日本(2009年11 月) 日本(2011年1 月) 日本(2012年3-4 月) 日本(2013年3 月) 米国(2009 年) 英国(2010年5 月) 豪州(2008年 Q4) アイルランド(2008 年) 注:測定方法や対象が一定ではないので国際比較については参考値である。 出典:Akamai、Epitiro、FCC資料等より作成 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 8
  9. 9. ネットワーク中立性に関するさまざまな解釈 ネットワーク事業者(ISP)は、 ネット上を流れるトラフィック に対して一切関与すべきではな い。 ISPは、ネット上を流れるトラ フィックに対して、ネットワー ク機能の維持・管理の観点から 以外は、一切関与すべきではな い。 ISPは、コンテンツ市場に おける健全な競争を育成す る観点から、コンテンツ市 場に対し一切進出すべきで はない。 ISPは、コンテンツ市場に おける健全な競争を育成す る観点から、著作権保護の ために積極的に介入すべき である。 ISPは、健全に競争が機能して いる前提条件が満たされるの であれば、ネット上のトラ フィックを一定範囲内で制御 することはかまわない。 ISPは、利用者のQoEを改 善するためには、ネット上 を流れるトラフィックに介 入してもかまわない。 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 9
  10. 10. インターネット政策声明(Internet Policy Statement) 2005年8月、「ブロードバンド普及を促進し,公共インターネットの開 放性と相互接続性を維持・促進するため」の次に掲げる4原則 を採択 1. 消費者は自らが選択する合法的コンテンツにアクセスする権利を有 する. 2. 消費者は法の執行の要請に服しつつ,自らが選択するアプリケー ションやサービスを利用する権利を有する. 3. 消費者はネットワークに損傷を与えないのであれば,自らが選択す る合法的端末装置を接続する権利を有する. 4. 消費者はネットワーク事業者,アプリケーションサービス事象者, コンテンツ事業者の間の競争を享受する権利を有する. 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 10
  11. 11. FCC命令(2008年8月1日) 2008年末までに現行の差別的ネットワーク管理をとりやめて「プロトコル差別 を行わないネットワーク管理(protocol-agnostic network management)」を採 用すること,さらに30日以内に以下の3項目を達成することを命じた . 1. 現行のネットワーク管理方法をFCCに開示すること 2. 新管理方法に移行するプロセスを示した遵守計画を提出すること 3. 新たなネットワーク管理方法を顧客とFCCに開示すること 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 11
  12. 12. Comcast社の対応 • Comcast社は,この命令に服し,2008年9月19日,要求資料をFCC提出 • 新たなネットワーク管理方法は,P2Pを利用した通信トラフィックを選択して通 信阻害を行っていたこれまでのプロトコル選択的な管理手法とは異なり,データ 通信を大量に利用している利用者の通信トラフィックを混雑が生じている時間帯 のみ非優先取扱いの処理を行うことで,混雑回避を目指すというもの • これにより,P2Pの差別的取扱いに関するComcast事件は一応の終結 • 一方で,インターネット政策声明自体には法的強制力がないことを指摘し, 2008年9月4日,本命令の効力についてコロンビア特別区巡回控訴裁判所に提 訴 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 12
  13. 13. Comcast判決(2010年4月6日) • FCCは先のインターネット政策声明および 通信法の諸条文を根拠として、通信法第4 条i項の付帯的管轄権の行使として当該命令 の有効性を主張したが、裁判所は、付帯的 管轄権を発動できるための法的権限をFCC に与えた具体的条項が十分に論証されてい ないことを理由に、2010年4月6日、命令 の有効性を否定。 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 13
  14. 14. 敗訴直後のFCCの対応 • 2010年5月6日,ブロードバンドサービスをFCCの規制権限がより明確な「電 気通信サービス」(通信法第Ⅱ編)に再分類し,規制の運用においてはその大 部分の適用を差し控えるという「第三の道」構想を新たに提案。 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 14
  15. 15. Open Internet Order (2010/12/21) 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 15
  16. 16. オープンインターネット命令(2010年12月21日) 固定ブロードバンド接続サービス fixed broadband Internet access service 移動ブロードバンド接続サービス mobile broadband Internet access service サービスの定義 主に固定位置に存在する利用者に対して移動し ない機器を用いたサービス提供.固定無線ブ ロードバンドや固定衛星ブロードバンドサービ スを含む. 主としてモバイル機器を用いたサービス提供. スマートフォンを用いたサービスを含む. 透明性の確保 Transparency サービス提供事業者は,消費者が十分な情報の下でサービスの選択ができ,さらに端末事業者が インターネット機器を開発・販売・保守できるよう,ネットワーク管理方法や実効品質,取引条 件に係る情報を開示しなくてはならない. 利用拒否の禁止 Anti blocking サービス提供事業者は,合理的ネットワーク管 理の名の下に,適法なコンテンツ,アプリケー ション,サービスの利用,あるいはネットワー クに障害を及ぼさない端末の接続を拒否しては ならない. サービス提供事業者は,合理的ネットワーク管 理の名の下に,適法なウェヴサイトへのアクセ スを拒否してはならない.また,同様に,自身 の音声・ビデオサービスと競合するアプリケー ションの利用を拒否してはならない. 不当な差別の禁止 Anti discrimination サービス提供事業者は,適法なネットワークト ラフィックの伝送について不当な差別を行って はならない.合理的ネットワークの管理は不当 な差別には該当しない. 規定なし. (ただし,このことが一般的なオープンイン ターネット原則に反して行為を認容するもので はないことは別途明記.)第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 16
  17. 17. 今回の訴え • VerizonとMetroPCSは規則が公になるや否や,その有効性を否認する訴えをコ ロンビア特別区巡回控訴裁判所に提起 • 2011年1月20日に提起された最初の訴えに関しては,新規則が官報に掲載される 前であったために却下.その後,同年9月23日の官報掲載を待ち,再度訴えが提起 • MetroPCSからの同種の訴えも提起された結果,併合審理の決定がなされた. • Verizonは,プロバイダによるネットワーク管理は合衆国憲法修正第1条に根拠 を持つ表現の自由によって保護されているとも主張。 • 2013年3月にMetroPCSが訴訟を取り下げたため、Verizonの単独訴訟に 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 17
  18. 18. Open Internet Order判決(2014年1月14日) 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 18
  19. 19. 判決概要 • Open Internet Orderそのものが政策として適切か否かではなく、当該命令が FCCの権限内のものであるか否かのみを検討対象として下されたもの • 1996年電気通信法706条に基づきブロードバンド事業者(プロバイダ)に一定 の命令を発するFCCの権限は認めた。 • FCCはブロードバンド普及の目的であれば、706条を根拠としてプロバイダに規 制を及ぼすことができる • オープンインターネット命令のうち、anti-discrimination義務(以下、公平義 務)とanti-blocking義務(同、接続義務)についてはその有効性を否定。 • disclosure義務(同、開示義務)の有効性を否定しなかった。 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 19
  20. 20. FCCにとっての意味 • 本判決をうけて米国のメディア では「FCCがネットワーク中 立性問題において再び敗れた」 という基調での報道が数多く観 察された。 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 20
  21. 21. FCCは行動の自由を得た。 • Comcast判決により、FCCは、プロバイダに対して規制を行う根拠を法的に確 立できないという状況に一旦は陥った。その状況を基準として判断すると、 1996年電気通信法706条を権限行使の根拠とするFCCのロジックを否定しな かった今回の判決は、FCCにとって待望の結果。 • ブロードバンドの全米への普及は今日のFCCの政策の一丁目一番地 • 議会からの自由 • 本判決はFCCが議会の立法的措置を待つまでもなく、既存の通信法の規制のみに 基づいてブロードバンド事業に規制権限を及ぼせることを明らかにした。 • 民主党と共和党間の対立で機能不全に陥る状況が散見される今日の米国の政治状況の 下で、ネットワーク中立性政策をはじめとするブロードバンド政策全般を安定的かつ 継続的に執行できるだけの基礎を得たことになる。 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 21
  22. 22. 今回の判決の評価 • 本判決が明確にしたもの 1. FCCがブロードバンド事業に管轄権を有する根拠を容認したこと 2. その根拠がこれまでのブロードバンド政策と軌を一にしているこ と 3. 開示義務についてはその有効性を否定しなかったこと 4. 接続義務だけであれば有効と判示される可能性が高いこと • さらに、公平義務をあきらめても命令の効力にほとんど差は生じない。 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 22
  23. 23. 米国以外でも注目 オランダ フランス チリ 韓国 イギリス EU OECD Neelie Kroes European Commissioner for the Digital Agenda第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 23
  24. 24. 経済学的観点から問題を整理すると….. • 経済理論的に見た場合、ネットワーク中立性問題はネットワークの容量制約が もたらしたトラフィック混雑を克服して資源の最適配分を回復する問題 • 派生する論点はいずれも、容量制約の存在自体、あるいは、希尐な容量を支配す ることによって隣接市場などを支配する力を得たプレイヤーへの懸念から派生 • 「インターネット利用の急増によるネットワーク上のトラフィック混雑」と、 「ネットワークを掌握し、それにより顕著な市場支配力(SMP)を持つ事業 者による隣接市場での反競争的行為」の2つの要素に分割して、議論を行うこ とが適当 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 24
  25. 25. つまり、 トラフィック混雑の制御 最適なネットワーク容量の確保 垂直統合型プロバイダ による市場支配力の行使 短期的施策 長期的施策 ダイナミックなネット環境において,効 率性と公平性をどう確保するか? 最適容量をどのように決めるか? 必要資金をどう確保するか? 低い 参入障壁 特殊な ビジネス慣行 自然独占性 高い 参入障壁 隣接市場への参入・関与 ネットワーク事業者の市場支配力の 行使をどのように規律付けるか? 隣接市場への参入は効率性基準を 満たすことができるか? 反競争的な市場支配力レバレッジを どう抑制するか? 「インターネット利用の急増によるネット ワーク上のトラフィック混雑」(要素A) への対処 「ネットワークを支配するSMPによる隣接市 場での反競争的行為」(要素B)への対処 プロバイダ ネットワーク事業者 利用者 コンテンツ事業者 アプリケーション事業者 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 25
  26. 26. トラフィック混雑への対処 • 短期 • 既存容量の有効活用のために適切なイ ンセンティブを利用者に与えることが 必要 • 混雑料金 • smart market • 長期 • 最適なネットワーク容量の決定 • 必要な投資資金の継続的確保 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 26
  27. 27. SMP事業者による反競争的行為への対処 • プロバイダ単独では市場支配力の獲得・行 使は困難 • 問題となるのは、ボトルネックを支配する 事業者がその優越的地位を利用してプロバ イダ市場に参入しているケース • ネットワーク事業者が垂直統合等を通じて 隣接市場支配を試みることを一律に禁止す ることには問題が多い。 • 『補完財効率性の内部化』(Internalizing Complementary Efficiencies: ICE) 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 27
  28. 28. 日本政府のアプローチ • NTT東西に対する各種規制や電気通信事業法に基づく 接続規制が機能し、ブロードバンドプロバイダ市場の 競争性が確保されてきたと認識されていたため、反競 争的行為の抑制はネットワーク中立性の中心課題とし ては認識されてはいなかった。 • 市場支配的事業者への対処についてはこれまでの規制を 維持することで十分という認識 • 「次世代ネットワーク」(NGN)の出現に対応し、従来の 規制に必要最小限の修正を加えることが論議されたにとど まる。 • ネットワーク中立性規制の具体的運用面においても、ブ ロードバンド市場の競争にその解決を委ね、規制庁によ る直接の介入は差し控えるという姿勢が採用 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 28 電気通信事業法 日本電信電話株式会社 等に関する法律
  29. 29. ブロードバンド産業の構造 アクセス回線 卸売り業者 プロバイダ (ISP) サービス ベースの 競争事業者 設備ベースの 競争事業者NTT東西 既存事業者が提供するネットワーク設備に対するアクセス ISP 電気通信会社 サービス ベースの 競争事業者 ISP ケーブルテレビ 会社 ISP 米国日本 物理的な ネットワーク設備 ブロードバンド アクセス回線 インターネット 接続サービス 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 78.6% 49.1% 29.1% 13.5% 5.8% 3.8% 0% 20% 40% 60% 80% 100% Estimated market share NTT group Power company Cables Other telcos Municipalities Others BB access line wholesale market BB access market BB ISP market NTT Group Powercos Other telcos Cablecos Others Municipalities Estimated market share in Japan Source: Created on the basis of MIC (2008), FCC (2008a, 2008b), and Noam (2009) Note 1: ISP shares in the US are based on revenues in 2006 (Noam, 2009), which include satellite Internet; the shares in other markets are based on the FCC’s line count and include fixed lines only. Note 2: RBOCs stand for Regional Bell Operating Companies, telcos for telecommunications companies, powercos for power companies, and cablecos for cable companies. 43.6% 36.7% 36.3% 53.9% 53.9% 44.2% 0% 20% 40% 60% 80% 100% Estimated market share RBOC Cables Others Estimated market share in the US RBOCs Cablecos Others 物理的な ネットワーク設備 ブロードバンド アクセス回線 インターネット 接続サービス 29
  30. 30. 日本政府は要素Aに集中できた • プロバイダによる恣意的な帯域制御を回 避するための客観的な基準が必要 • 「帯域制御に係る必要最小限の運用基準 に関するルールを構築し、当該運用基準 を踏まえて、各プロバイダ等が帯域制御 の具体的な運用方針を自らの判断で設 定・実施するという2段階のアプローチ」 • 日本インターネットプロバイダー協会等 は、2008年5月に「帯域制御の運用基準に 関するガイドライン」をまとめた 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 30
  31. 31. 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 31
  32. 32. 帯域制御ガイドラインの欠点 • 制度的・形式的欠陥 1. 各プロバイダの遵守状況をチェックする監査メカニズムを内包していないこと 2. ガイドラインに違反したプロバイダに対してペナルティを与えるシステムを持 たないこと 3. 違反状況を改善するメカニズムを構築していないこと • 自主規制としての正統性の欠如 • ガイドライン作成の段階で利用者の意見が反映されていないため、策定された自 主的ルールの正統性には民主主義の観点からの不備がある。 本ガイドラインは、裁判例や行政機関による法令の適用関係に関す る解釈をまとめたものではなく、あくまでも事業者としての行動の 指針として、事業者団体が自主的に策定するものである。したがっ て、本ガイドラインは、法的効力を有するものではなく、これを遵 守するか否かについては、個々の事業者の判断に任される。 しかしながら、帯域制御に係る要件が本ガイドラインによって整 理・公表されることにより、今後、電気通信事業者が本ガイドライ ンに従って制御を実施した場合には、形式的には「通信の秘密」を 侵害する態様で帯域制御が行われた場合でも、正当業務行為として 違法性が阻却されるとの判断がなされることが期待される。(pp.2- 3) 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 32
  33. 33. 本問題に関していろいろ実証分析を行いました。 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 33
  34. 34. 実証分析から得られた知見1 • トラフィック急増に対処するための投資 資金を得る手法としてのプレミアムサー ビスの提供が支えうる期間は僅か数年 • 新しいビジネスモデルを早急に見出す必 要がある 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 34
  35. 35. 実証分析から得られた知見2 • (特に短期の)解決策として重要なネットワーク管理について、現状では、固定系ブ ロードバンドについては過小な、移動系については過大な目標設定がなされている • 実効品質に対するリテラシーの改善がトラフィック混雑問題の短期的改善に有効 • 利用者教育がプロバイダの利潤最大化にも資する • 日本のアプローチが前提としてきたプロバイダ市場の競争性は不十分 • 競争が実質的に成立するのは、ネットワーク設備を自前でそろえているプロバイダ間の み。 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 35
  36. 36. ということは、 • ネットワーク中立性問題の解決のためには利用者に適切なコスト負担を課すビジネス モデルを早急に導入する必要がある。 • 競争市場が成立している場合、ビジネスモデル導入をめぐる関係者の利害や必要なリテラ シーの獲得は価格メカニズムを通じて調整され、パレート効率的資源配分が達成される。 • 現状では、当該市場は存在せず、近い将来に状況が改善することも期待薄。 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 • 代替案として政府による最小限の関与。 • 政策決定の歪みを防止するためには、利用者の合理的判断 を巻き込む工夫が必要 36
  37. 37. 政府に求められる環境整備1:QoS情報の計測・開示 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 情報開示による競争促進 37
  38. 38. 政府に求められる環境整備2:消費者への情報提供 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 http://dsm-publishing.com/images/internet-marketing-services1.jpg http://i.telegraph.co.uk/multimedia/archive/02220/wine1_2220880b.jpg • 購入時の価値が時間とともに変化する。 • 財の実力は補完財によって初めて発揮され、補完財の品質に大きく左右され る。 • 財の品質は十分に開示されているとはいえず、しかも素人にはいささか難 解。 • 財の品質に影響を与える要因は無数にあり、利用者や供給者によって完全に コントロールすることは望みがたい。 • 財の品質に問題があった場合に問題解決を一任できる主体は存在しないし、 時には利用者自身が問題の原因である。 • 利用者やTPOに応じた「最適品質」が存在するが、具体的な特定は難しい。 38
  39. 39. プロにはプロの、アマチュアにはアマチュアのサービ スを 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 39
  40. 40. ネットワーク中立性は価値中立的な概念ではない • ネットワーク中立性は、一定の中立性基準を採用するように政府の積極 的関与を求める。 • ネットワーク中立性論者は、「アプリケーション間の公平な競争が確保されてい る状況」を将来にわたって維持していくため、政府が積極的な役割を果たすべき であると主張。社会経済活動におけるインターネットの役割が強まりつつある今 日、一部プロバイダによるネット支配を許すべきではないと説明される場合もあ る。 • 競争中立性や技術中立性がプレイヤー間の自由な競争に資源配分の帰結 を委ねるために政府の意思決定を制約することを志向したものであった のに対し、ネットワーク中立性が大きくその性質を異にする点。 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 40
  41. 41. 「中立的なネットワーク」が破壊するもの • 特定利用者向けの高品質サービスの提供が規制されることで、①弱小ベンチャーに とって、資金力を有する既存ネット事業者への競争機会が喪失され、②高品質な回線 確保を前提とするサービスが広く安価に普及する途が閉ざされる。 • zero-price rule(ISPに対し直接の契約関係にはないコンテンツ事業者への課金を認め ない)は、設備投資負担をネットワーク事業者のみに転嫁することでコンテンツ事業 者を実質的に補助している仕組み 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 41
  42. 42. Curse of Internet Extremistsからの解放 • ネットワーク中立性原則の下では、勝者と敗者を 分けるラインが市場競争ではなく、政策決定によ り描かれかねず、資源配分の効率性が担保されな い。 • 市場メカニズムを活用すべき • 一方、暫定的なネットワーク中立性ルールを政府 が作成することは、あくまでも、輻輳問題への緊 急避難 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 http://williamsinstitute.law.ucla.edu/wp-content/uploads/free.jpg • 目指すべきは、「ネットワーク中立性のルール化」ではなく、特定の中立性「基準」 を恣意的に決定することを避けること、つまり、「『ネットワーク中立性』からの中 立性」 42
  43. 43. ネットワーク中立性 九州大学 実積寿也 第40回ISPの集いin奄美大島 Apr. 18, 2014 43

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