東京大学　大学院　大学経営・政策コース 社会人大学院 大学職員 大学経営 高等教育 大学図書館 図書館司書 研究計画 情報収集

1. 大学職員が
社会人大学院で学ぶ意義とは？
梅澤 貴典
「大学職員のつながりとまなび」
～大学職員としてのキャリア・ビジョンを考える～
2014年度 大学行政管理学会 大学改革研究会 第２回ワークショップ
1

2. 大学職員が大学院で学ぶ意義とは？
★ １．大学経営・高等教育政策の基礎知識を学び、
歴史・国際・政策的背景を踏まえた
幅広く俯瞰的で、偏りのない視座を得る。
★ ２．調査の設計・データの収集・分析方法を学び、
数字（データ）で語り、数字の嘘を見破る。
★ ３．研究の手法を学んで「学術」の世界を知り、
自らも学術的新規性が求められる研究成果
（修士論文）を執筆し、発信・提言する。

3. １．基礎知識を学ぶ。
★ 大学経営・高等教育政策に関する基礎知識を学ぶ授業科目
（東京大学大学院 大学経営・政策コースの例）
http://ump.p.u-tokyo.ac.jp/
「高等教育論」 （小方 直幸 教授）
「大学財務会計特論」 （山本 清 教授）
「高等教育政策論」 （小方 直幸 教授 ほか）
「比較大学論」 （福留 東土 准教授）
「大学経営事例研究」 （両角 亜希子 准教授）
「大学経営政策各論」 （非常勤講師によるオムニバス）
→ 大学そのものの歴史・形成過程から、高等教育政策と重点課題、
質保証と評価システム、グローバル化と国際比較、財政…等々
→大学基準協会・リクルートワークス研究所・文部科学省など
様々な「現場」から多彩なゲスト講師を招聘しての講義も多い。

4. 国際的視座を得る。
★ 海外の大学の事例研究を、
実際に現場に行って学べる。
「比較大学経営論」（夏学期・集中講義）
2014年度の訪問先：アメリカ合衆国ペンシルバニア州立大学
ユニバーシティパーク・キャンパス
受入組織：高等教育研究センター（Director: John Cheslock准教授）

5. 「比較大学経営論」について
★１週間海外の大学に訪問し、その国の
特色や取り組みを集中的に研究する。
２００５年： ペンシルバニア大学 (米国 Philadelphia)
２００６年： 北京大学（中国・北京）
２００７年： ノースイースタン大学 (米国 Boston)
２００８年： ソウル大学・高麗大学（韓国・ソウル）
近年は、リバプール大学（英国・Liverpool）で複数年に渡り実施
進め方は前項と同様、事前研究と現地での受講、事後発表と報告書。
中国語はＴＡが通訳してくれたが、英語は自力で理解する。
ただし毎日午後に、理解のためのグループ討論の時間あり。

6. ２． 「調査法」を学び、データで考える。
★ 調査法（調査の企画・データの収集・分析・考察）
「高等教育調査の方法と解析」
（小林 雅之 東京大学 大学総合教育研究センター 教授）
（大多和 直樹 帝京大学教育学部教育学科 准教授）
調査統計の思想と技法・確率と確率分布・推測統計と検定・
クロス表の分析・多重クロス表の分析・多変量解析・
相関と回帰分析・重回帰解析・因子分析
→ 数字（データ）で語る・数字の嘘を見破る。

7. ３． 「研究」について学び、自ら実践する。
★ 研究の手法を学ぶ
「大学経営政策研究」（山本 清 教授）
（研究の基礎と理論・研究プロジェクトの構造化・
研究倫理と文献検索・レビュー）
→「学術」の世界を知り、自らが体験するチャンス。
教員が「論文を書く」・「学会発表をする」意義とは？
★ 修士論文の執筆
「大学経営政策論文指導」
→ 隔週で土曜日の午前中に論文執筆の進捗確認と
研究指導をおこない、２年間での修士学位取得を目指す。

8. 【参考】学術情報の流れ
新しい発見や技術
新聞・ネット
のニュース
学術雑誌（冊子＆
電子）に論文が載る
論文執筆
査読
世界中で
情報共有
START!
基礎・概論
が本になる
大学で学習・研究

9. 大学職員が大学院で学ぶ意義とは？
★ ４．知識を体系化する。
→ 自分の業務・問題意識は、
「大学・高等教育政策全体から見ると、
どのような位置づけにあるか？」
「大学図書館」を例に考えても、様々な切り口がある。
→高大接続・初年時教育・財政・評価と質保証・
研究支援・事務組織・専門職育成・国際競争力…

10. ５．改善策を提言する（学会発表）
○「マルチリテラシー時代における大学図書館と職員の役割
－教育・研究の高度化と教員の負担軽減を目指して－」
（日本高等教育学会 第17回大会）平成26年6月28日、大阪大学
○「大学図書館による社会人を対象とした情報リテラシー教育とその発展
可能性」（日本高等教育学会 第15回大会）平成24年6月3日、東京大学
○「大学図書館における教育研究支援の高度化を目的とした戦略的アウトソ
ーシング」（日本高等教育学会 第14回大会）平成23年5月28日、名城大学
○「大学図書館における、教職協働による教育研究支援機能の高度化」
（大学評価学会第31回研究会）平成22年8月28日 キャンパスプラザ京都
○「アメリカ大学図書館協会の基準に学ぶ、職員と成果の評価による
大学図書館改善策」（日本高等教育学会 第13回大会）
平成22年5月29日、関西国際大学
○「アメリカにおける大学図書館の資金調達」
（日本高等教育学会 第12回大会）平成21年5月23日、長崎大学
○「大学図書館職員の教育研究支援能力とその規定要因
―アンケート調査による育成政策の立案―」
（日本高等教育学会 第11回大会）平成20年5月24日、東北大学

11. ５．改善策を提言する（専門誌への論文掲載）
○「大学職員による企画・立案力のための図書館・学術情報データベース
活用法」、『大学職員ジャーナル』17号
○「高度情報化社会・マルチリテラシー時代に生きる社会人のための図書館
と公的データベースを活用した学術情報収集法」、『知研フォーラム』324号
○「高度情報化社会における大学図書館の役割と、職員の専門スキル向上
策〜ＦＤ・ＳＤ・大学経営・政策の視点からの改善案」『大学マネジメント』9(1)
○「マルチリテラシー時代における大学図書館と職員の役割」
『現代の図書館』51(1)
○「大学図書館における戦略的アウトソーシングと、教育研究支援の向上に
つながる評価システム」『大学事務組織研究』2
○「大学図書館職員の教育研究支援能力―米国大学図書館協会の
基準に学ぶ、職員と成果の評価による改善策―」『図書館雑誌』103(11)
○「大学図書館の役割と必要とされるスキル」
『ＩＤＥ現代の高等教育』No.510
○「アメリカの大学図書館における資金調達」『情報の科学と技術』 58(10)

12. 大学経営・政策コースの概要 （１）
★２００５年に新設された、大学院だけのコース。
★大学・高等教育の管理者、政策担当者がターゲット。
（８割以上が、国公私立の大学職員）
★高等教育政策について理論的・実践的な教育を行うとともに、
この新しい分野の研究者、将来のリーダーを育成する。
★基本理論+ケーススタディを中心に修士論文を書くことを通じて、
広い視野と実践的な判断力をもつ幹部事務職員・行政職員を養成
＆この分野での研究者を目指す人に基礎的な教育をおこなう。
公式サイトより抜粋要約。 http://www.p.u-tokyo.ac.jp/gs/c8/index.html

13. 大学経営・政策コースの概要 （２）
★（平日の夜） + 土曜日午後 + 集中講義 + 論文で修了可能。
（夏学期）
金曜日 土曜日
10：20-12：00 論文指導 （適時）
13：10-14：50 高等教育論
15：00-16：40 高等教育各論
18：00-19：40 高等教育政策の経済分析
19：50-21：30 高等教育調査の方法と解析
★比較大学経営論 集中講義（８月）
リバプール大学・ソウル大学・北京大学・ノースイースタン大学などに研究訪問。
（英語圏の場合は、通訳無し）
（冬学期）
金曜日 土曜日
10：20-12：00 論文指導 （適時）
13：10-14：50 高等教育論
15：00-16：40 高等教育各論
18：00-19：40 高等教育の経済分析 高等教育政策論
19：50-21：30 高等教育調査の方法と解析

14. 大学経営・政策コースの概要 （３）
★学費
検定料 ３０，０００円
入学金 ２８２，０００円
授業料 ５３５，８００円
×２年分＝１，０７１，６００円
集中講義（必須ではない）の渡航費
アメリカ ２００，０００円くらい
中 国 １００，０００円くらい
書籍代 数千円（梅澤）～数万円（普通）～数十万円（勉強家）

15. 授業内容の例 （１）
★高等教育論 （金子元久 教授）
【高等教育の歴史】
近代大学の始祖・パリ大学・ボローニャ大学はなぜ生まれたか？
オックスフォード・ケンブリッジ大学の成り立ち
フンボルト（ベルリン）大学の理念、研究と教育、大学の自治とは。
海を渡ってハーヴァード・イェール大学へ。大学院の誕生
【日本の高等教育】
大学の起源と発展（ベビーブームと臨時定員）
高等教育進学率の拡大と停滞、再拡大
規制緩和・認証評価機関制度（アクレディテーション）
国立大学の法人化がもたらした影響

16. 授業内容の例 （２）
★高等教育政策論 （金子元久 教授）
大学マネジメントに経営学はそのまま適用できない。
18才人口減少・新しい潜在的需要拡大 →特化・新しい個性が必要。
新しいマーケット（社会人）具体的に“その大学”でどう実現するか？
マーケティング
USA：寄付金が重要な収入源。タダでは貰えず説明必要。
投資をする大学が何をするか？誰が寄付をしてくれそうか？
ファンディング （政府支出・家計支出・寄付金・金融市場）
各国の大学改革について （ゲスト講師：潮木守一先生）
文部科学省の高等教育政策 （ゲスト講師：小松 親次郎先生）

17. 授業内容の例 （３）
★大学経営政策各論
（オムニバス外部講師・
肩書きは2007年当時のもの。
・敬称略）
大学経営と職員 （山本眞一 広島大学高等教育研究開発センター長）
大学教育と労働市場 （大久保幸夫 リクルートワークス研究所長）
大学の戦略的経営 （清成忠男 法政大学前総長・理事長）
高等教育の日本的特質 （天野郁夫 東京大学名誉教授）
大学とマーケティング （足立寛 進研アド「Between」編集長）
高等教育の法制的基礎 （大崎仁 人間文化研究機構理事 ）
大学基準と認証評価 （前田早苗 財団法人 大学基準協会）

18. 授業内容の例 （４）
★大学財務会計論 （山本 清 教授）
財務諸表の読み方
資金収支と消費収支とは？
基本金組み入れの仕組み
減価償却の仕組み
財源と資金配分 剰余金の扱い
説明責任 評価の方法 セグメント会計
経常費補助金（日本私立学校振興・共済事業団→学校法人 ）
運営費交付金（国→国立大学法人）

19. 授業内容の例 （５）
★高等教育政策の経済分析（小林雅之教授）
社会ニーズと消費者行動
学費と志願者動向
家計負担・学力による
進学動向と支援策
労働市場と失業問題
？高等教育の将来像の課題？
「なぜ大学・短大進学率は18歳人口の50％で止まっているのか？」

20. 梅澤の研究テーマ －志願の理由と経緯－
★２００４年秋・私大図書館協会の派遣を受け、
図書館学の最先端校・イリノイ大学で学び、
アメリカの図書館司書や大学職員の
専門性の高さに圧倒される。
（詳細は『大学図書館研究』７４号を参照のこと。）
★大学院レベルの学習研究支援専門職の必要性を痛感するが、
自分自身が大学時代に卒業論文すら書いていないことに気づく。
★図書館学を学ぶことを検討。→自分１人は高度な司書になれるが、
協会への恩返しには、大学図書館の世界を少しでも改善すべきでは？
★より広い視野から、専門職制の改善を提唱できる知識と力を渇望。
ちょうどその前年に発足した「大学経営・政策コース」に出逢う。
詳細はこちら：http://ump.p.u-tokyo.ac.jp/study/mes-completion/post-56.html

21. 修士論文指導
★月２回程度、土曜日の午前中に実施。
修士・博士・研究生など全員で受ける。
★各自、進捗状況をレジュメと口頭で報告。
研究範囲・実現性・調査手法・必要なデータについて
指導教授からアドバイスをいただく。
★梅澤が受けた指導
「主観的な仮説を立てて政策を語ることは簡単で、誰にでもできる。
必要なのは客観的・数値化できるデータだ。
たとえば全国の大学図書館職員１００人に、いったい何が問題で
どう解決すべきかアンケートを取ってみては？」 → 実施！

22. -0.1
-0.05
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
0.3
0.35
Ａ．外国語 0.097 0.181 0.19 0.221 0.217 0.174
Ｂ．コンピュータ 0.324 0.29 0.246 0.224 0.206 0.263
Ｃ．電子ツール 0.166 0.171 0.055 0.027 -0.015 0.086
Ｄ．ﾚﾌｧﾚﾝｽ･ﾘﾃﾗｼｰ 0.267 0.089 0.114 0.113 0.004 0.09
Ｅ．図書館学 0.097 0.156 0.215 0.105 0.024 0.065
Ｆ．学問主題 0.106 0.158 0.186 0.116 0.029 0.028
Ｇ．対人コミュ 0.122 0.055 0.032 -0.035 -0.074 0.066
１．導入教
育
２．学部学
習支援
３．卒論支
援
４．修士研
究支援
５．博士研
究支援
６．教員研
究者支援
分析の内容と結果
各
ス
キ
ル
と
支
援
達
成
度
の
相
関
係
数
** １％水
準で有意
* ５％水
準で有意
22
詳細は、『ＩＤＥ現代の高等教育』No.510に
「大学図書館の役割と必要とされるスキル」として掲載

23. 修了生の論文テーマ 2013年度の例
■大学における授業手法に対する教員と学生の意識の比較研究
■大学における倫理審査委員会機能の拡大と変容
－研究の自由と規制の視点から－
■国立工業高等専門学校の進路特性と私的収益率
■現代日本における教養系学部の類型－教育内容から見た分析－
■大学組織改革における政策調整機能の役割
－同志社大学の学部新設の事例から－
■大学教員の職務満足とワークモチベーションの規定要因に関する実証的研究
■グローバル30事業による留学生受け入れへの効果に関する研究
－筑波大学を事例として－
■大学生の学修成果に関する分析
－立教大学の英語科目における事例研究－
■私立大学における全学部統一試験導入のインパクトに関する研究
－Ａ大学の事例から－
■日本の高等教育機関における寄付のリピーターに関する研究
－Ａ大学の事例を中心に－ http://ump.p.u-tokyo.ac.jp/results/student/

24. 入学試験について
★英語 （１５０分） 心理学・教育学に関する記事文献。
英文→和訳のみ。 ただし、大学職員経験が２年以上あれば
辞書持込み可の「英語Ⅱ」を受けられる可能性あり。
★専門科目（１８０分） 大学経営・高等教育政策に関する問題。
会計基準・財務・評価制度・法規・ガバナンスなどから論述２問・
語句の説明が５問中３問選択。 （あまりビビらないでください）
★口述試験（１５～２０分程度） 研究計画書の内容・実現性について。
問題意識は何か？どう研究するか？そのスキルはあるか？
過去問題・入試体験記はこちらのサイトへ！
http://www.geocities.jp/utam2005/
★ 研究計画書 （最重要。何を、どのように研究するか？）

25. キーワードだけでなく、
文章からも関連書を
検索できる！
その本を自大学が持って
いるか？なければ
どこの大学にあるか？
までが分かる！
文献情報の集め方（書籍編）
http://webcatplus.nii.ac.jp/

26. 文献情報の集め方（雑誌編）
★大学マネジメント / 大学マネジメント研究会
大学職員による寄稿が多いため、実例が豊富。
★IDE 現代の高等教育 / 民主教育協会
高等教育問題の代表誌。学長クラスの投稿多し。
★大学時報 / 日本私立大学連盟
毎号「FDの実践と課題」「多様化する入試」などの特集が組まれる。
★ Between/ （株）進研アド Ｗｅｂでも閲覧可能。
各ステークホルダーの視点から多角的に高等教育に提言。
※雑誌記事は毎号すべて読むのではなく、自分に必要な記事を検索するツールを使う。
★カレッジマネジメント / リクルート Ｗｅｂでも閲覧可能。
リクルートが行う調査データ、国内外の先進事例、人材市場、解説

27. 日本の雑誌記事・論文データベースの例
（CiNii articles）
http://ci.nii.ac.jp/

28. 大学院への進学を志す方へ。
★学ぶのに早すぎることはない！遅すぎることもない！
（院生は、２０代の若手から６０代の理事クラスまで。）
★大学を取り巻く全てがテーマ。 臆することはない！
あなたが、その問題の先駆者として開拓できるチャンス。
★得られる成果は、知識だけではない！
問題発見・分析・解決する力。情報を集めて活用する力。
説得力を付与して発信する力。自分を信じて踏ん張る力。
…そして、何よりもかけがえのない仲間たち！！
★ただし、やりたい目的はハッキリと。学ぶだけなら聴講も良案。
大学院は研究の場。発信が大切！しかも醍醐味。

29. 29
・大学院で研究するテーマはある一点に絞られるが、
その問題に関連する事項・視点は無限に広がっている。
→修了後も、様々な角度から追究し続けることが大切。
・それにより、隣接分野の論文執筆を依頼されたり
学会発表での出逢いから思わぬ発展につながったり、
「まさか！？」と思うような広がりが生まれる。
→セレンディピティー 【serendipity】 （小学館 大辞林より。）
求めずして思わぬ発見をする能力。思いがけないものの発見。
運よく発見したもの。偶然の発見。
[補説]イギリスの作家ホレス＝ウォルポール（1717～97）の造語。
ウォルポール作の寓話 The Three Princes of Serendip（1754）の主人公に
このような発見の能力があったことによる。Serendipはセイロン（現、スリランカ）の旧称。
29
大学院への進学を志す方へ。

30. 【注】
１．一部の開講科目・教員名などは、作成者が
履修した当時（2006～2008年）のものです。
２．入学試験の詳細や学費・カリキュラム等は、
変更の可能性があります。
必ず公式サイトでご確認ください。
http://ump.p.u-tokyo.ac.jp/
３．文献情報の集め方
（大学職員のための情報収集法）については、
こちらにも詳述しましたので、ご参照ください。
http://www.slideshare.net/takanoriumezawa/ss-35032215