1. 電子メディア論
赤⑥
フレーミング

2. flaming
 フレーミング：電子フォーラム
で起こる喧嘩。揚げ足取り。悪
罵の応酬。ののしりあい。炎が
赤々と勢いよく燃えさかる様
( 逆に言えば，短期間で鎮火す
る)
 CMC(computer-mediated
communication) 研究で主要課
題となるも，解決策は見あたら
ず

3. 喧嘩はネットの華 ?
 人を怒らせる，イライラさせる
，からかい，侮蔑するようなメ
ッセージがとめどなくやりとり
される言い争いを「ネットの華
」として捉え，行く末を楽しみ
に観察 ( 関与 ) するバトルウォ
ッチャーという名の野次馬の存
在

4. flaming 訴訟
 Nifty-Serve の現代思想フォー
ラムでの誹謗中傷・脅迫をめぐ
り，発言者とシスオペ ( 管理者
) が訴えられた
 「シスオペには，他人の名誉が
不当に害されることがないよう
必要な措置をとる条理上の義務
がある」 ( 東京地裁判決
97/5/26)

5. 控訴審判決
 書き込みをした男性については
名誉毀損の事実を認め，慰謝料
など 50 万円の支払いを命じたが
，ニフティとシスオペについて
は「発言削除義務違反等の責任
は認められない」とした
 東京高裁判決 01/9/5

6. 管理者に削除義務がある
 フォーラムの円滑な運営及び管理と
いうシスオペの契約上託された権限
を行使する上で必要
 標的とされた者がフォーラムにおい
て自己を守るための有効な救済手段
を有していない
 会員等からの指摘等に基づき対策を
講じてもなお効果がない――などの
一定の場合

7. 対抗言論
 互いに言論を交わすことができ
る平等な立場であることを前提
に，ただちに自ら反論すること
によって処理するのが原則
 名誉毀損が成立するのは、具体
的事案において対抗言論が機能
しない場合，またはプライバシ
ー侵害の場合

8. 名誉の回復
 ネット社会では，意見が異なるもの
からの批判を受けることを覚悟して
おくべきで，批判が辛辣な言葉にな
ったり、時には人格批判に至る場合
でも、論争内容と関係がある限りは
不当といえない。反論する機会が用
意されている限り，その論争の「聴
衆」の評価で自己の名誉回復を図る
べきであり，名誉毀損を簡単に認め
るべきではない

9. ただし
 相手が少なくとも一度は反論し
たにもかかわらず，批判者が同
じ理由での攻撃を執拗に続け，
そのつど相手の反論を求めるか
のごとき様相は，もはや対抗言
論の域を超えるものであり，単
なる「嫌がらせ」にすぎないも
のである

10. 論点①
 ネット上の flaming は，名誉毀
損として扱うべきか
 対抗言論の手段が用意されてい
る限り，すぐに逃げ込まずに名
誉回復の措置を自らとるべきか
 そこでも“敗北した”場合，削
除要請や訴訟に及ぶのはやむを
えないか

11. flaming の種別
 アクシデンシャル ( 論争の果て
の悪罵合戦 )→ 論壇・大学でも
実在
 インテンショナル ( 特定の人に
狙いを定めて，罠を仕掛ける )
 パッセージ ( 通過儀礼 )
 コンパニオン ( 仲間意識による
じゃれ合いに紛れ込む他者 )

12. 社会的手がかりの減少
 Reduced Social Cues→ プラス面
も
 対人的手がかり
 社会的アンデンティティの手がかり
 情報を伝えるバンド幅
(bandwidth) の違い ( テキストで
しか情報が伝わらず，非言語的情
報が欠落 )
 発言のコンテクスト ( 社会的文脈
・背景事情 ) がわからない，特殊

13. 課題志向的
 Task oriented
 ネットではコミュニケーション
相手や「集団」「社会」を意識
しにくくさせ，規範の影響力を
低下させる
 コミュニケーション内容自体が
社会志向 (socially oriented)
ではなく，問題解決型になる

14. 感情と論理の対立
 テキスト＝論理という考え方←
→テキスト＝感情という考え方
 ASCII アート，顔文字のように
，感情を伝えようとする努力
 テキスト主体の電子メディアで
は感情がダイレクトに伝わらず
，曲解されてしまう余地も

15. モデルは会話 ( 情緒性 )
 電子フォーラムのモデルは文章
のやりとり ( ラング ) ではなく
会話 ( パロール )
 パロールは単語も文法も規則を
無視され，自己目的化される。
メッセージ伝達よりも感情の共
振 ( 相互感応 : コミュニオン )
が重要

16. 平等性
 相手の社会的地位をみえづらく
させ，平等・対等な立場での発
言 ( 参加 ) を促す ( プラス面 )
 攻撃性の抑制が利かないメッセ
ージのやりとりを招く ( マイナ
ス面 )
 社会的に高い地位にいる人が要注意

17. 記録 ( 蓄積 ) 性
 過去に遡ってコミュニケーショ
ン過程が再検証できるため，昔
話が蒸し返される ( 時間が経過
しても，ログが残っている限り
，過去の記憶は色褪せない : が
，永遠ではない )
 対面型では頻繁にみられる「水
掛け論」が少なくなるが…

18. 支配する空気
 全体の意見が極端な方向に偏る
集団極性化現象
 多数派意見が螺旋状に増えてい
き，少数派が沈黙する「沈黙の
螺旋」現象
 少数派意見を述べる人は「空気
嫁 ! 」とバッシングの対象に

19. コンピュータ文化の影響
 ハッカーのコミュニケーション
規範の影響 ( キースラーらの研究 )
 形にはまらない
 大胆で率直な ( ずけずけとした ) 物言
い
 慣習にとらわれない
 電子掲示板 / 会議室などのプロ
グラム構造そのものに象徴的に
反映され，利用者に影響を与え

20. 演技的・遊戯的自己
 電子メディアで呈示される自己
像は意識の中で客体化された仮
構のキャラクター ( アクター )
の場合がある ( 本来の自己とは
異なる )
 シナリオなき即興劇を演じる舞
台俳優であり，他者との競合を
調整しつつ，キャラクターを修
正していく

21. 傷つけられるキャラクター
 本来の自己を批判されるよりも，
自分が創造したもの ( キャラク
ター ) を批判されるときに強い怒
りを覚える
 無視・逃避すればよいところを深
入りしてしまう
 キャラクターと本来の自己との間
の境界線が不鮮明に

22. 他者を受容するための儀式 ?
 flaming は他者を斬り捨てるため
のものではなく，自分が理想とす
るコミュニケーションのあり方を
他者に受け容れてもらい，望まし
い空間を構成していく願望の現れ
 「相互行為と関係形成を具体化し
活性化するポイントとして火がつ
けられる」 ( 安川一『感情の社会
学』 )

23. flaming を許容する規範
 特定の場所で集中的に起こる
 攻撃行動を許容する特殊な約束事
に基づいて， flaming は起こっ
ている可能性が高い
 社会的文脈を模索し，コミュニケ
ーション様式をポジティブにもネ
ガティブにも変更しうる利用者

24. 論点②
 対面よりも電子メディアのほうが
flaming が本当に多いのか ? 被害
は深刻なのか ?
 利用者が成熟すると， flaming は
なくなるのか ? あるい
は， flaming をなくすためにはど
うすればいいのか ?
 そもそも flaming は排除すべきも
のか ?

25. やっぱり最終課題
 「電子メディア ( インターネット
) によって，日本人の『世間』意
識はどう変わったのか。具体的事
例に則して述べよ」
 世間が単一・巨大化した ?
 複数の世間に属するようになった ?
 世間からの縛りが強くなった ?
 世間意識はまったく変わらない ?
 ヲタクにはもともと世間がない ?

26. 最終課題提出要領
 字数 :600 ～ 800 字
 電子メール ( 本文へのペースト推
奨)
 report@akaokoichi.jp
 締切 :7 月 31 日 ( 金 )23:59:59
 評価全体に占める割合 :20 ％
 プレゼン演習： 30 ％
 グループ演習： 7 ％ +8 ％ =15 ％
